CELLineTM - BD Biosciences

CELLine
TM
培地注入口
細胞接種口
代謝産物
培地栄養成分
フラスコ
酸素
BD Cell MAb
細胞産生物
細胞塊
培地
細胞接種部
半透膜
培地栄養成分
供給チャンバー
細胞培養
チャンバー
酸素供給
チャンバー
ガスダクト付き透明板
ガス透過膜
酸素供給部
CELLine メンブレンテクノロジー
細胞の培養が行われるのは、培地栄養成分供給チャンバー(1000 mL)から半透膜で隔てられた細胞培
養チャンバー(15 mL)内です。栄養分などの小分子は、細胞培養チャンバー上部の半透性セルロースア
セテートメンブレンを通過します。分子量10,000 ドルトン以上の細胞分泌生成物はすべて、容器の細胞
培養チャンバー内に残ります。容器底面にあるシリコンでできたガス透過膜を通って下から酸素が細胞
に送られます。細胞は、このガス透過膜の上にある細胞培養チャンバーの底面に定着します。ガス透過
膜を通って酸素や二酸化炭素が速やかに拡散します。この方法により、容量の小さい細胞培養チャン
バーのなかでも高い細胞濃度を得ることができます。
培地栄養成分供給チャンバーと細胞培養チャンバーの注入口は別々なので、操作に応じて注入口を選択
できます。細胞培養チャンバーの接種口には小さいキャップが、培地栄養成分供給チャンバーの注入口
には大きいベントキャップ(通気性キャップ)がついています。細胞培養チャンバーへの操作は、ピペット
を使って細胞培養チャンバーの接種口から行います。
CELLine システム全体が透明なので、フラスコ内を観察できます。
CELLineフラスコ
CELLineは、メンブレンテクノロジーを用い、
細胞培養用に新しく開発されたシステムで
す。組換えタンパク質発現や高収率のモノ
クローナル抗体産生が容易に行えます。
モノクローナル抗体(MAb)
は、研究用ツー
ルとしてますます重要になってきています。
研究に必要な量のMAb(10 mgから500
mg)
を得るための主な方法には、静置細胞
培養、スピナーまたはローラーシステム、マ
ウスの腹水液などがあります。MAbの需要
が高まるにつれ、動物使用の低減、プロセ
スの単純化、産生物のバラツキの低減と
いった問題に対応するため、in vitroで産
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生できる代用方法の必要性が急浮上して
きました。これらの要求事項を満たす生産
方 法を模 索 する中で、開 発され たのが
CELLineです。
CELLineシステムでは、腹水に匹敵する抗
体濃度が得られます。一つのCELLineフラ
スコを使って12匹のマウスが産生するのと
同じ量の抗体を産生することができます。
ローラーボトルや組織培養フラスコの50∼
100倍の高濃度の抗体が得られます。BD
Cell MAb 培地での14日間プロトコールを
用いれば、2週間ごとに平均30∼150 mg
の抗体が産生されます。モノクローナル抗
体の平均収量は、1∼5 mg/mLです。
BD Cell MAb培地
3種類のBD Cell MAb培地は、高通気性
培養条件下(酸素存在下)
で抗体産生が
最大限になるように開発された製品です。
CELLine容器は、フラスコ底にあるシリコン
膜を通して 酸 素 交 換を行 い、BD Cell
MAb培地で最適な抗体産生を行うことの
できるコンパクトで簡便な製品です。
BD Cell MAb培地は、Sp2/0、NS-1、
P3X63 Ag9、FOX-NYのような様々なミエ
ローマ細胞、ハイブリドーマ細胞に適してい
ます。さらに、BD Cell MAb培地はCHO
細胞株を使用したタンパク分泌に成功して
います。BD Cell MAb培地は、従来の培
地に比べて10倍以上の抗体産生が可能
であることがわかっています。培地の独自
な組成により、細胞は長期間生存すること
ができ、従来の培地に比べると培地交換
の手間が省けます。
BD Cell MAb培地は細胞融合に適してい
の血清濃度は、標準の血清濃度のおよそ
BD Cell MAbアニマルコンポーネントフリー
ることがわかっており、新しいクローンでの
2倍になります。この培地は、L-glutamine
培地は、血清添加を必要としない培地で
培地馴化プロセスを省くことができます。通
とフェノールレッドを含みます。アニマルコン
す。この培地は、アニマルコンポーネントを
常の融合過程でも、続けてBD Cell MAb
ポーネント、Pluronic acid、その他の界面
含んでいません。アニマルコンポーネントフ
培地へ置換して使用することができます。
活性剤は含まれていません。
リー培地は、L-glutamineを含んでおり、
3種類のBD Cell MAb培地は、研究、また
BD Cell MAb無血清培地は、血清添加を
は抗体産生に適しています。無血清培地、
必要としない培地です。この培地は、L-
アニマルコンポーネントフリー培地は、血清
glutamineとフェノールレッドを含んでおり、
や血清タンパクの存在による影響を嫌う際
合計タンパク濃度が1.1 mg/mLになります。
に、抗体産生用培地として使用されます。
タンパクの主な成分は、ウシ血清アルブミン
BD Cell MAb基礎培地は、血清を必要と
する基礎培地です。細胞培養チャンバー内
0.3% Select Soytone が含まれています。
フェノールレッド、Pluronic acid、その他の
界面活性剤は含まれていません。
です。Pluronic acidとその他の界面活性
剤は含まれていません。
マウス腹水とCELLineフラスコの比較
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CELLine フラスコ
BD Cell基礎培地
mg
90
139
129
mL
60
78
160
mg/mL
1.5
量
抗体産生量
回収量
CELLine フラスコ
IMDM 培地
1.78
0.81
培地使用量
mL
2060
8120
血清使用量
mL
12
24
CELLine フラスコ使用量
ea
1
1
Balb C マウス
ea
抗体濃度
2
マウス
内容
8
抗体生産を行うためのクイックガイド
BD Cell MAb培地への細胞の馴化
新しい培地と培養システムに順応する必要
があります。新しい培地にすぐに順応する
細胞もありますが、培地の変化に対し順応
が困難な細胞もあります。培地変更と同時
に培養システムも換えるのは、細胞の順応
を難しくするかもしれません。そこで、まず
培地へ順応させた後、新しい培養システム
に換えることをお勧めします。
BD Cell MAb培地は、酸素が供給できる
システム、例えばローラーボトル、スピナー、
CELLineフラスコなどで細胞増殖を行う場
合に、その性能が最も発揮されます。しか
し、馴化は静置システムでも行うことができ
ます。フラスコや小さいローラーボトルは操
作が簡単で、使用する培地は最小限です
みます。CO2の使用については、クローズド
(非通気性)
システムを用いる場合は任意
です。酸素供給が少ないシステムでは、抗
方法
1) 適切なBD Cell MAb培地中に播種す
る細胞は、増殖期にあって、80%以上が
生きているものを使用してください。基礎培
地
(カタログ番号: 220511)
は、血清とグル
注記: 細胞を馴化させている間でも、抗体
ンポーネントフリー培 地(カタログ 番 号:
これらの結果は、BD Cell MAb 培地を用い
220513)
は、グルタミンを添加するだけで完
て、CELLineフラスコで抗体産生を行ったパ
全な培地となります。
フォーマンスとは同様ではありませんので注
2) 馴化用培養容器に使用中培地50%と
意してください。
BD Cell MAb培地50%を混合して、細胞
5000
密度2.0×10 5/mLで播種します。例えば、
RPMI
BD CELL
RPMI/10% FBS/2% L-glutamineで培養
4000
した場合、小さなフラスコに10 mLのBD
Cell MAb培地と10 mLのRPMI/10%
FBS/2% L-glutamineを加えて順応させて
ください。
養してください。細胞の倍加時間が正常で
生存率が良好であれば、次の段階の混合
3000
2000
1000
培地に換えることができます。
0
4) BD Cell MAb培地75%と現在使用中
ルでは、L-glutamine を補充することをお
の培地25%からなる培地へ、細胞密度2-
勧めしています。培地に何らかの成長因子や
3×105/mLとなるように播種します。もし、週
脂質を加えた場合でも、使用する細胞が L-
末に細胞を播種する場合には、1×105/mL
glutamineを必要としているかもしれません。
の密度にするとよいでしょう。次の継代まで、
補充する期間と補充しない期間を設けて、様
少なくとも2日間細胞を馴化させます。
子を見ていただくことをお勧めします。
方法で凍結保存することも可能です。
産生をモニターする事ができます。しかし、
適な性能を示しません。
にともなって失活してしまいます。プロトコー
に細胞をCELLineフラスコに移してくださ
い。必要に応じて、順応した細胞を通常の
培地
(カタログ番号: 220509)
とアニマルコ
3 )この混合培地で、少なくとも2日間は培
含まれた状態で出荷されますが、時間の経過
数増殖期に達したならば、下記に示すよう
タミンを添加する必要があります。無血清
体産生において、BD Cell MAb培地が最
注記:BD Cell MAb培地は、L-glutamineが
6) 細胞が100%BD Cell MAb培地で対
抗体産生量 lgG(µg/mL)
CELLineシステムを使用するには、細胞が
0
5
10
15
20
培養期間
BD Cell MAb基礎培地と血清入りRPMIとの
抗体産生量の比較
細胞の倍加時間が遅くなり始める事があり
ますが、このような場合、細胞がこの混合
培地に馴化するまで待ちます。
5) 細胞が75/25%混合培地でよく増殖す
れば、100% BD Cell MAb培地に摂取す
ることができます。順応しやすいように、再
び細胞を高密度に保ちます。100% BD
Cell MAb培地で、少なくとも2∼3回継代
させた後、細胞を抗体産生システムへ移し
ます。
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3
CELLineフラスコの使用法
プロトコール概説
CELLineフラスコを用いた産生抗体の回
収法には2通りあります。期間中連続して回
収を行うには、7/21日回収法をお勧めしま
す
(7日間ごとに抗体回収/21日ごとに培地
供給チャンバーの大きいキャップを緩めてく
適切なBD Cell MAb培地を用いて細胞ペ
ださい。ピペットを使って細胞培養チャン
レットを懸濁し、再び播種する前に生細胞
バーから気泡を取り除いてください。終了し
をカウントしてください。細胞密度2∼5×
たら、細胞播種口の小さいキャップをしっか
106/mLでBD Cell MAb培地で懸濁して、
りと締めてください。
交換)
。50 mg以上の抗体が必要な場合
5. 100% BD Cell MAb培地栄養成分供
には、7/21日回収法を行ってください。
給チャンバーに加え、合計1000 mLにしま
1回だけの回収には14/14日回収法をお勧
めします
(14日目に抗体回収)
。細胞株の
す。終了したら、培地注入口の大きいキャッ
プをしっかりと締めてください。
再播種し、さらに7日間培養します。必要な
らば、ピペットを用いて細胞培養チャンバー
から気泡を取り除いてください。3回目の抗
体回収は、21日目になりますが、ご希望であ
れば、そのまま培養を継続することが可能
です。ただし、その時には培地栄養成分供
収率により異なりますが、14/14日回収法は
6. 細胞を播種したCELLineフラスコをCO2
給チャンバーの培地を交換する必要があり
1回のロットで20∼50 mgの抗体を得たい
インキュベーターに入れ、37℃で7∼14日間
ます。使用した栄養培地は捨ててください。
場合に有効です。
インキュベートします。産生されたすべての抗
上記の通りに、再び細胞を播種してください。
体は、小さいキャップの細 胞 培 養チャン
グルタミンを添加した新鮮なBD Cell MAb
プロトコール:
1. 順応プロトコールに従って、CELLineシ
ステムに順応するように細胞を準備します。
2. グルタミンを添加した1000 mLの100%
バーに集まります。
7. 抗体回収
a)7/21日回収法
BD Cell MAb基礎培地、無血清培地、ア
7日ごとに細胞培養チャンバーから細胞と抗
ニマルコンポーネントフリー培地を用意しま
体を含む培地を取り出します。小さいキャッ
す。この培地は、馴化させた細胞の懸濁
プの細胞培養チャンバーから細胞と培地
や培地栄養成分供給チャンバーを湿らせ
を回収する時は、大きいキャップが緩んで
るのに使用します。栄養培地はあらかじめ
いる事を確認してください。サンプルを遠心
37℃に温めて結露を防ぎ、インキュベーター
し、抗体を含む培地を回収します。確立さ
に入れたとき著しい温度変化が起きないよ
れた方法で抗体精製を行ってください。
培地を約1000 mL培地栄養成分供給チャ
ンバーに加えてください。充分な抗体が得ら
れるまで、この方法を繰り返してください。
b)14/14日回収法
14日目に細胞培養チャンバーからピペットで
細胞と培地を回収します。
サンプルを遠心し、
抗体を含む培地を回収します。確立された
方法で抗体精製を行ってください。栄養培
地1000 mL、細胞ペレット、およびCELLine
フラスコを廃棄します。
うにします。
重要:基礎培地
(カタログ番号: 220511)
は、
15 mL の培地中に 20 ∼ 40% の血清を含ま
せ、細胞培養チャンバーに細胞を播種するの
に使用します。細胞培養チャンバー内の血清
濃度は、通常使用している血清濃度の約 2 倍
にします。血清濃度は、培地栄養成分供給
チャンバーからの浸透圧による細胞培養チャ
ンバーへの培地流入を効率的に行います。培
地栄養成分供給チャンバーには血清を添加
する必要はありません。
3. 調整した100% BD Cell MAb培地25
mLで、前もって培地栄養成分供給チャン
バーを湿らせます。
4. 細胞数を計測し、2×10 6 /mLとなるよ
うに100%BD Cell MAb培地15 mLに懸
濁します。もし、基礎培地(カタログ番号:
220511)
を使用する場合は、ステップ2で血
清を加えることを忘れないでください。血清
以外に補充する必要はありません。ピペッ
トを用いて、細胞浮遊液を細胞培養チャン
バーに播種します。播種中は培地栄養成分
4
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CELLineの使用上重要事項
• 小さいキャップの細胞培養チャンバーへ
の培地添加または、除去前に、エアロック
を避ける為に培地栄養成分供給チャン
バーの大きいキャップを緩めてください。
• 細胞播種する前に、培地栄養成分供給
チャンバー
(大きいキャップ)へ25 mLの
培地を加えて、細胞培養チャンバーのメ
ンブレンを湿らせてください。この操作に
よって、メンブレンが柔軟になります。
• BD Falconピペットは細胞培養チャン
バー
(小さいキャップ)
での操作に適して
います。細胞培養チャンバーにアクセス
するためには黒いガスケットにピペットを
押し付けてください。ガスケットを、ピペッ
トの先端でふさぐと、ピペッティングが可
能になります。ピペットは、細胞培養チャ
ンバーのメンブレン底まで入れないように
してください。
• 培養中は、細胞培養チャンバー内には
気泡が入らないようにしておきます。気泡
は、セルラインフラスコを傾けるか、ガス
ケットにピペットを押し付けて気泡を吸引
します。
• 細胞を除去するためにフラスコを揺らさな
いでください。細胞培養チャンバー内の
メンブレンが破れる原因となります。
• 栄養培地(大きいキャップ)
を交換する場
合、容器の中の培地を静かに流してくだ
さい。この方法を用いますと細胞培養
チャンバーの上面にあるメンブレンを保
護します。
• CELLineフラスコをインキュベーターに入
れる以前に大きいキャップ、小さいキャッ
プ共にしっかりと締めてください。
• CELLineフラスコの容量は、下記の通り
です。
CL-1000
細胞培養
チャンバー
培養栄養成分
供給チャンバー
15 mL
1000 mL
CELLineでよく聞かれる質問と回答
細胞培養チャンバーから液を取り出
CELLineのネックの角度は、培地チャンバー
したり加えたりするのに時間がかかるのはな
内でエアロックが起きないような角度にしな
ぜですか。また、ピペットを取り出すと細胞培
ければなりません。CELLineから培地をデ
養チャンバーから液が細胞接種口(液を加え
カントで取り出すときは、手のひらでフラスコ
たり取り出したりするところ)から外へ出てく
の底を持つようにしてください。こうすれば
るのはなぜですか。
ネックの注ぎ角度が適切となり、取り出した
1
細胞培養チャンバーへ液を入れたり出した
りするときは、必ず大きいキャップをゆるめて
ください。大きいキャップがゆるんでいない
場合、細胞培養チャンバー内の容量が変
わることによって、培地栄養成分供給チャン
後にネックのへりに培 地が 残るのを防げ
ます。
5
8
細胞培養チャンバーへ推奨容量より
多く液を入れることはできますか。
プロトコールでは、作業容量15 mLを推奨
しています。この容量を守っていれば、浸
透圧により水分が細胞培養チャンバーへ流
入しても、細胞培養チャンバーの液量がメ
ンブレンの破壊限界を超えることはありませ
ん。メンブレンは破れやすいとはいえ、柔
インキュベーション後、CELLineの外
側が湿っていることに気付きました。これは
なぜですか。
軟性があり、湿っていればかなり膨張でき
ます。顧客のなかには、独自のプロトコール
を用いて、細胞培養チャンバーの指定容量
のほぼ2倍量でCELLineを使っている場合
バーに対して圧力がかかります。細胞培
養チャンバーへの操作が終了したら大きい
予め加温していないフラスコに培地を入れ
もあります。しかし、細胞培養チャンバーに
キャップをしっかり締めます。
た場合、CELLineの外側にかなりの結露
規定以上の液を入れることはプロトコール
ができます。CELLineには多量の培地が
からの逸脱であり、メンブレンの破損を起
入るため、この結露は著しいものになりかね
こしかねません。
2
倒立顕微鏡を使ってCELLineの細胞
を観察することができません。観察できるよ
ません。加湿したインキュベーター内では、
うにするにはどうすればいいのですか。
この結露は蒸発するのに時間がかかりま
細胞培養チャンバーの中が見えるように、
顕微鏡の対物レンズを移動させます。ス
テージがメカニカルステージであったり、ア
タッチメントがある場合は、それらを取り外
す必要があります。それができない場合、
す。白色紙で液を吸い取り、色を検査して
ください。着色しなければ、その液は結露
による水です。
6
半透膜の強度はどのくらいですか。
9
細胞培養チャンバーから細胞をすべ
て回収することは可能ですか。
細胞培養チャンバーからのマウス・ハイブリ
ドーマ細胞の回収は、ほぼ100%です。こ
のタイプの細胞は、細胞塊の形成が観察
されませんので、静かにピペッティングを行
上部の半透膜は、厚さわずか8 µm(乾燥
えば容易に分散します。ピペッティングの後
るめ、ステージ面より上へ移動させます。ま
状態)
です。メンブレンは弱そうに見えます
で細胞は容易に回収されます。必要に応
た、対物レンズとフラスコとの作動距離は十
が、通常の取り扱いには十分に耐えること
じて、減菌済の培地でさらに洗浄し、細胞
分とってください。殆どの場合10倍の対物
ができます。ただし、フラスコを振ったり、手
の回収をより完全で確実なものとしてくださ
レンズが適していますが、ときには20倍が
で叩いたりすると、細胞培養チャンバーの
い。このプロトコールでは、細胞培養チャン
適していることもあります。
なかに液が入っている場合、メンブレンが
バーの洗浄は必要とされていません。他の
破れる可能性があります。細胞培養チャン
タイプの細胞は、細胞塊を形成したり、細
バー内の液が急速に動いてメンブレンに強
胞培養チャンバーの底面に接着することが
い圧力がかかるためです。
あります。このような場合、細胞の回収には、
対物レンズを数回回してノーズピースからゆ
3
はじめにCELLineの細胞を観察した
時は、観察できたのですが、培養の数日後に
細胞を分離し回収を促進する解離剤を使
再び観察をしてみると、焦点が合いませんで
した。どうしてでしょうか。
CELLineをインキュベーターから出し、CELLine
7
細胞を細胞培養チャンバー内に入れ
わなければならないことがあります。
る前にメンブレンを湿らせることが、なぜ重
要なのですか。
のなかの空気の温度がわずかに下がると、
10
操作時のコンタミネーションを減らす
よい方法がありますか。
空気の収縮が起こり、細胞培養チャンバー
細胞接種前にメンブレンを湿らせて、メンブ
のメンブレンが浮き上がります。つまり、この
レンを柔軟にすることが重要です。湿った
培養操作で細胞や培地を添加したり取り除
収縮により底面のガス透過メンブレンが引
メンブレンは柔軟で、膨張しますが、乾い
いたりする時は、滅菌領域を一時的に侵す
き上げられて、焦点距離がずれるのです。
たメンブレンは体積変化による張力ストレス
ことになります。アルコールで表面を消毒す
大きいキャップをゆるめれば、圧力が同じ
を受けやすくなっています。従って、メンブレ
れば、コンタミネーションの危険を減らせます。
になりメンブレンが元の位置に戻ります。
ンが湿ってから細胞培養チャンバーに液を
コンタミネーションの危険性を減らすために、
加えて、細胞培養チャンバーに閉じ込めら
滅菌アルコール綿やアルコールスプレーが多
CELLine から培地を取り出すとき、
れた空気を出します。メンブレンが湿る前
くの研究室で日常的に使われています。こ
ときどきネックの外側に培地が少量残ります。
に、細胞培養チャンバーに液が直接加えら
れが容器本体または容器内の細胞の増殖
これをなくすためにはどうすればいいので
れると、乾いたメンブレンには大きな負担が
に悪影響をもたらした例はありません。
しょうか。
かかります。
4
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5
11
他の培地で行っているように、栄養培
地の色の変化を見て栄養培地を換えてもい
いのですか。
13
未開封のCELLine製品に特別な保管
条件は必要ですか。
容器は滅菌されたエアキャップ
(梱包材)
で
CHOやBHKのような、ある種の産生細胞
系は、浮遊液での増殖に切り換えることが
できるため、細胞培養チャンバーに入れる
と高密度に増殖します。HeLa細胞もまた、
お勧めしていません。細胞の増殖は、細胞
包装され、ホイル製防湿パウチに入ってい
培養チャンバーと培地栄養成分供給チャン
ます。細心の注意を払って、できる限り丈
バーに存在する拡散勾配により左右されま
夫なパッケージとしています。容器は、室温
す。勾配が大きいほど、細胞の代謝に利用
環境で保管しても性能の劣化が起きませ
できる可溶性代謝基質の流動が大きくなり
ん。容器を48℃より高い温度に曝すことの
ます。細胞培養チャンバーはインキュベー
ないよう注意してください。メンブレンの形
ター内の空気で直接pHの平衡を保つこと
状変化や過度の張力が起きないようにする
が できるた め 、培 地 の 色 の 変 化 が 、
ためです。容器は室温で保管することをお
細胞をマイクロキャリアに接着させ確実に
CELLineにおける栄養および代謝産物の
勧めします。
増殖させることが重要です。細胞は、ビー
従来のフラスコで使用済み培地が示すよう
な色になることはありません。BD Cell
MAb培地は、明るい黄色に変わります。し
かし、これは培地を換える必要のあること
を示すものではありません。
14
培地栄養成分供給チャンバーに栄養
培地をどれくらい入れることができますか。
CL-1000は、培地を最大1,000 mL入れる
ことができます。大きいキャップへ空気が通
りぬけなければならないベンテッドキャップ
デザインになっているため、これより多くは入
BD Cell MAb培地は、これまでとは全く異
れないでください。容器に培地を多く入れ
なる方法で細胞増殖および抗体産生が行
すぎると、培地栄養成分供給チャンバー内
える培地です。7∼14日間、培養操作をす
にエアーロックが生じます。
る必要がありません。この間に生存率の割
合は急激に低下しますが、それでもかなり
15
底面に均一に分散していないことがあります。
あるいはそれ以下にまで低下することがあ
均一に分散するように細胞培養チャンバー内
りますが、細胞密度は高いままです。培地
の細胞懸濁液を混ぜるべきでしょうか。
りの数の生細胞が存在し、驚くべき速度で
抗体を産生しています。
12
細胞培養チャンバーから培養液を回
収するとき、接種した液量よりいつも多くの
液量となっています。なぜ、このようなことが
起きるのですか。
上部の半透膜を隔てて浸透勾配により、メ
ンブレンを通して水分が移動します。培地
栄養成分供給チャンバーに血清が使われ
ていない場合などのように、半透膜を隔て
てタンパク成分の濃度勾配があると、水分
が細胞培養チャンバーに移動します。小さ
い溶質分子もメンブレンを通過しますが、こ
の液量の変化はコロイドタンパク質濃度に
影響を与えるだけです。栄養培地で血清
が使われないときは、細胞培養チャンバー
で使う血清を増やすように勧めるのは、この
ためです。血清を増やしておけば培養を続
けても細胞培養チャンバー内の血清濃度
が薄くなりすぎることはありません。
6
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合、細胞を接着させるための適切な基質
が必要です。マイクロキャリアを用いれば
CELLine内で接着細胞の培養を行うこと
ができます。
は、細胞とビーズを細胞培養チャンバーに
入れれば、細胞培養チャンバーで細胞を
接着させることが可能です。容器をまっす
ぐに立てると、細胞とビーズが確実に接触
するため、細胞のマイクロキャリアへの接着
が促進されます。30分ごとに静かに混ぜ、
細胞・ビーズ浮遊液の接触を再度行えば、
細胞の均一な接着が確実に行えます。接
種は、30分おきに分散させながら、2∼3時
間以上行ってください。細胞の接着性は、
ビーズに接着しないで浮遊液に残っている
時々、細胞が細胞培養チャンバーの
の数の細胞が残ります。生存率は20%、
が赤色から明るい黄色に変わっても、かな
接着依存性細胞をCELLineで培養する場
ズ上に広がってはいきません。CL-1000で
状態を正確に示すものではありません。栄
養培地は培養中に黄色が強くなりますが、
CELLineで高密度に増殖します。完全な
細 胞を数えて 調 べます。接 種 の 後 は、
CELLineを通常どおりに操作します。マイク
ロキャリアに接種した細胞は、ビーズの表
面全体で増殖するため、細胞培養チャン
その必要はありません。細胞培養チャン
バーでかなりの数の細胞を得ることができ
バーで細胞を再浮遊させる実験では、細胞
ます。
数や抗体の産生は増加しませんでした。し
かし、インキュベーターが水平面に置かれて
いないために、細胞がCELLineの一箇所
に蓄積しすぎた場合は分散させてください。
16
CELLineで接着細胞を培養すること
ができますか。
17
CELLineで長期に培養を行うと、ハイ
ブリドーマからの抗体産生はなくなりますか。
CELLineでの培養中に、分泌をしないク
ローンの淘汰が起きることを示すデータは
ありません。抗体の分泌が少ない細胞で
も、分泌をしない細胞の淘汰が起きること
現時点では、接着細胞の培養は試験的な
を示す証拠は何も見つかっていません。分
ものです。CELLineのシリコン製の底面で
泌の少ない細胞は、CELLineにより産生物
は、ポリスチレン処理容器での組織培養の
濃度が増加するため、多くの場合問題には
ように細胞の接着や進展が促進されませ
なりません。また、産生量が非常に少ない
ん。接着細胞系の多くは細胞培養チャン
細胞でも、多くの場合CELLineでの培養に
バーの底面には接着しませんが、ある種の
用いることができます。
細胞系は接着します。細胞培養チャンバー
の底面に単層が形成される場合、単層を
形成する細胞の数は底面積による制限が
あるため、CELLineで培養しても高い細胞
密度にはなりません。
18
CELLineで産生された抗体は静置培
23 CELLineは、7.5% CO2環境で機能し
養で産生された抗体と同等ですか。
ますか。
フローサイトメトリーによる解析では、CELLine
はい。CELLineでの培養は、静止フラスコ
で産生された抗体は、静置培養フラスコで
と同じCO 2 分圧のもとで行います。7.5%
培養されたコントロール抗体と比較した場合、
CO2環境で使用するように調製した培地を
1 mgあたりの結合は同等であることが示さ
使用する必要があります。
れています。
24 CELLineで、無血清培地を使えますか。
19
CELLineでどのくらいの数の細胞を
培養することができるのですか。
チャンバーに接種して、結果を評価すること
をお勧めします。細胞に、メンブレンを通し
て拡散するコンディショニング・ファクターが
必要な場合は、細胞数が増えるまで、培地
栄養成分供給チャンバーに少量添加して
培養を始める必要があるかもしれません。
細胞の増殖が安定したら、増え続けてい
る細胞集団のために、適切な栄養培地を
添加してください。
はい。多くの顧客が、無血清培地を使って
優れた結果を得たという報告をしています。
27
無血清MAb培地に順応した細胞を保
典型的なマウス・ハイブリドーマでは、CL-
無血清培地は大抵、半透膜の両サイドに
存するのに血清を用いずに凍結することは可
1 0 0 0 の 生 細 胞 収 量は、細 胞 数 4 5 0 ∼
入れます。分泌される抗体がCELLineか
能ですか?
6
600×10 です。CELLineの特長は、容器
ら高濃度で回収されるため、培養液の上
の細胞収量です。適切に栄養培地の交換
清を濃縮する必要はなくなりました。これに
を行えば、生細胞の数が最大容量以上に
より、精製中に、不要な血清タンパク除去
なっても、細胞は細胞培養チャンバー内で
のための面倒な操作をする必要がなくなり
増殖を続けます。このため、容器内の細胞
ました。mg/mL以上の抗体濃度で、細胞
総数は非常に大きな数となります。
培養チャンバーの上清を直接アフィニティー
カラムに適用できます。
20
メンブレンは使用すると目詰まりしま
25
すか。
CELLine容器は、培養していくにつれて性
CELLineに使えるメンブレンにはい
BD Cell MAb無血清培地、またはアニマ
ルコンポーネントフリー培地で細胞を凍結さ
せる場合は、血清は必要ありません。両培
地共に10% DMSOを凍結培地として使用
することができます。必要ならば、凍結培地
に血清を加えることも可能です。細胞を融
解する時には、ペレットダウンして凍結培地
を取り除いてください
(余分な血清が存在
している際も取り除いてください)
。
ろいろな種類がありますか。
能が悪くなるようなことはありません。つまり、
現在のところ、利用できるのは10,000 MWCO
培養中にメンブレンを通過する溶質が著し
メンブレンだけです。
く減少することはないということです。
従って、
著しくメンブレンが詰まったり塞がったりす
ることはありません。
21
CELLineの細胞コンパートメントの液
量が、接種した液量より少ないのですが、ど
うしてでしょうか。
26
プロトコールに従ったのですが、細胞
が増殖しません。何が悪いのでしょうか。
プロトコールどおり正確に操作したかどうか
確認してください。培養前の細胞の状態が
成否を決めます。細胞は対数増殖期のも
のを採取し、必要な細胞数を接種してくだ
CELLineを、加湿していないインキュベー
さい。接種に必要な最小限の細胞数が存
ターまたは暖かい部屋で使うと、細胞培養
在することを確認してください。ある条件の
チャンバーからの蒸発により液量が少なくな
もとではハイブリドーマ細胞が増殖しない
ります。CELLineは、標準加湿インキュ
ことがあります。増殖が悪いのはマイコプラ
ベーターで使用してください。必要なら、底
ズマ汚染に関係しています。マイコプラズマ
面のガスベントをきつくして蒸発量を減らし
は、細胞培養チャンバー内で増殖し、静置
た状態で評価してください。実験をして、蒸
培養フラスコでは見られない影響を与える
発によるロスと適切なガス交換のバランスを
ことがあります。細胞を処理してマイコプラ
決めてください。
ズマを根絶し、細胞が安定して増殖できる
ようにしてください。
22
CELLineで白血病細胞系を培養する
ことができますか。
細胞によっては、上部の半透膜を通して拡
散できる血清成分がない場合、増殖できな
リンパ芽球細胞は、CELLineで非常によく
いことがあります。栄養培地または細胞培
増殖します。ある種のリンパ芽球細胞の細
養チャンバーの血清濃度を上げる必要が
胞濃度は、ハイブリドーマ細胞で得られる
あるかどうかを検討し、決定してください。
細胞濃度のほぼ2倍に達します。一部の細
胞系は半透膜の両サイドで血清を使用し
なければならないことがありますが、これは
容易に調べることができます。
接種した細胞数が不十分な場合、細胞増
殖の前に著しい遅滞期があることがあり
ます。細胞数を増やして新たに細胞培養
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CELLine フラスコ
BD Cell MAb培地
TM
製品リスト
カタログ番号
品目
数量
メーカー希望小売価格
353137
CELLine CL-1000
フラスコ 3個
220511
BD Cell MAb基礎培地
1000 mL ボトル
8,800円
220509
BD Cell MAb無血清培地
1000 mL ボトル
11,000円
220513
BD Cell MAbアニマルコンポーネントフリー培地
1000 mL ボトル
11,000円
72,400円
BD、BDロゴは、Becton, Dickinson and Companyの商標です。
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