バスケットボールのメンタルトレーニングに関する一考察 ~フリースローに着目して~ 08132007 籠島大佳 指導教員 小川正行 Key word:バスケットボール メンタルトレーニング イメージトレーニング フリースロー 成功本数 Ⅰ.はじめに 有意な増加は認められなかった。その典型例を示したのが メンタルトレーニングの発展には、オリンピックでの成 図.1 のようになり成功本数が増加した被験者が 16 人中 14 果期待が歴史的背景にある。1976 年のモントリオール・オ 人と他の条件より多かったため④”のボールをリリースす リンピック前後からであり、日本をはじめ世界各国に広ま るまでの手の動きとボールの軌道のイメージすることが最 ったのは、1980 年代に入ってアメリカがロサンゼルス・オ も効果的と思われる。 10 リンピックでメンタルトレーニングを実施し、多大な成果 9 を上げたことから日本もそれに習いたいというものであっ 8 7 た。 6 1) 5 本研究は, 「スラムダンク勝利学」 を参考にし、バスケ ① 4 ットボールで必要だと考えられるメンタルを考察した。そ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1314 15 16被験者 のメンタルを鍛えるためのメンタルトレーニングを導きだ 図.1 「4 回目の条件①と④”の成功本数の推移」 し、その中からイメージトレーニングに着目した。そこで、 (2)心理的競技能力診断調査 DIPCA.3 バスケットボールにおけるシュートの中で相手と接触がな 忍耐力 く、メンタルな部分が大きく影響してくるフリースローを 実験前 20 協調性 闘争心 実験後 研究の第 1 段階とし、実験を行った。イメージトレーニン 15 判断力 自己実現意欲 グがどの程度影響を与えるのか、又どういったイメージの 10 5 仕方が最も効果的かを調査することが目的である。又、第 2 予測力 勝利意欲 0 段階としては、大場(2006)を参考にして競技場面で自己の 実力を発揮するのに大切な心理的能力の特徴を調べること 自己コントロー 決断力 ル能力 ができる心理的競技能力診断調査 DIPCA.3 を実験前・実験 自信 リラックス能力 後に行い、イメージトレーニングがもたらす影響も検討す 集中力 る。 図.2 男子の心理的競技能力診断調査(DIPCA.3)の尺度別得点 Ⅱ.調査方法 表 2 男子の心理的競技能力診断調査(DIPCA.3)の因子別得点 [被験者]群馬大バスケ部 男 11 名女 5 名 計 16 名 実験前 実験後 [実験場所]群馬大学第1体育館 [実験期間]11 月14 日(月)~1 月14 日(土)の間に5 回実施。 M S.D. M S.D. t-test [実験方法]2 人組でフリースローを以下の①~⑤の条件で 競技意欲 56.6 2.6 55.7 2 n.s. それぞれ 10 本ずつ連続で行う。2 人組にしたのは、試合中 精神の安定・集 40.7 2.4 45.5 2.2 ※ 審判からボールを渡される時と同じ状況にするためである。 自信 24.7 1.4 25 1.2 n.s. 中 実験の流れは以下の通りである。 作戦能力 22.6 1.2 23.7 1.3 n.s. 協調性 16.8 0.3 17.1 0.2 n.s. ① 普段自分が行っているタイミングで実施する。 ② ボールの軌道をイメージしてから実施する。 男子ではリラックス能力尺度及び集中力尺度、精神の安 ③ ボールをリリースするまでの手の動きをイメージして 定・集中因子に有意差が認められた。イメージトレーニン から実施する。 グの効果として、リラックス能力や集中力、精神の安定・ ④ ボールをリリースするまでの手の動きとボールの軌道 集中(自己コントロール能力・リラックス能力・集中力の合 をイメージしてから実施する。 計)について有意に向上したことが示唆された。女子では、 ⑤ 普段自分が行っているタイミングで実施する。 集中力や精神の安定・集中について有意に向上したことが [実験の流れ] 示唆された。 ①→②→③→④→②”→③”→④”→⑤ 詳 :②③④はそれぞれ試技毎に 1 回イメージしてから実施 Ⅳ.まとめ ○ 1回イメージするよりも2回イメージした方がよい結果 する。また、②”③”④”は試技毎に 2 回イメージしてか が出たため、繰り返してイメージすることで効果が期待で ら実施する。 Ⅲ.結果・考察 きることが確認できた。また、メンタルトレーニングによ (1)フリースローの成功本数の変化 って集中力や精神の安定・集中が向上したため、長期間続 ①の成功本数に比べて、4 回目の③”と 1 回目と 3 回目か けていけばさらに向上する可能性が増すと考えられる。 ら 5 回目の④”と 1 回目から 5 回目の⑤の条件では、成功 Ⅴ.引用・参考文献 本数が有意に増加した。それ以外の条件では、成功本数の 1)辻秀一(2000):「スラムダンク勝利学」集英社
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