「平成 27 年度全国学力・学習状況調査」 東温市の調査結果について 1 調査の概要 (1) 調査実施の目的等 「全国学力・学習状況調査」(以下「本調査」または「学力調査」という。)は、義務教 育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・ 分析し、教育施策の成果や課題を検証し、その改善を図るとともに、教育に関する継続的な 検証改善サイクルを確立することを目的に実施しています。 各学校においては、本調査結果から児童生徒の学力や学習状況を把握し、児童生徒への教 育指導や学習状況の改善等に役立てることができると考えています。 (2) 調査対象学年 ・小学校第6学年(北吉井小学校・南吉井小学校・拝志小学校・上林小学校・ 川上小学校・東谷小学校・西谷小学校) ・中学校第3学年(重信中学校・川内中学校) (3) 調査の内容 ① 教科に関する調査(国語,算数・数学,理科) ・主として「知識」に関する問題 ・主として「活用」に関する問題 ・国語A,算数・数学A:主として「知識」に関する問題を中心とした出題 ・国語B,算数・数学B:主として「活用」に関する問題を中心とした出題 ・理科:主として「知識」に関する問題と「活用」に関する問題を一体的に出題 ② 生活習慣や学習環境等に関する質問紙調査 ・児童生徒に対する調査 ・学校に対する調査 (4) 調査の方法 悉皆調査 (5) 調査日 平成27年4月21日(火) (6) 平成27年4月21日に調査を実施した学校・児童生徒数(公立学校) 【小学校調査】 東温市: 7校(318 人) 愛媛県: 285 校(12,001 人) 全 国:20,005 校(1,061,301 人) 2 【中学校調査】 2校(290 人) 132 校(11,841 人) 9,691 校(1,016,737 人) 調査結果の傾向と考察等 調査結果については、本調査の目的を達成するため、自らの教育及び教育施策の改善、各児童 生徒の全般的な学習状況の改善等につなげることが重要です。したがって、この調査結果の公表 が各学校の序列化につながったり、過度な競争につながったりすることのないように配慮したい と考えます。また、本調査により測定できるのは学力の特定の一部分であることや、学校におけ る教育活動の一側面に過ぎないことなどに留意して、調査結果を見ていくことが大切です。なお、 昨年度から保護者、地域住民の方に対する説明責任を果たすため、東温市の調査結果の一部につ いて愛媛県教育委員会のホームページにおいても公表することとしました。 (http://ehime-c.esnet.ed.jp/gimu/src/02shidou/01gakuryoku/zenkoku/zenkoku27.html) 1 (1) 東温市児童生徒の教科に関する調査結果の概要と分析 《小学校(全国の平均正答率との差)》 【国語】 国語A:関心・意欲・態度は出題さ れていない。 国語B:話す・聞く能力、言語の知 識・理解は出題されていない。 【算数】 算数A:問題解決の考え方 は出題されていない。 【理科】 2 《中学校(全国の平均正答率との差)》 【国語】 国語A:関心・意欲・ 態度、国語B:言語の 知識・理解は出題され ていない。 【数学】 算数A:問題解決の考え方 は出題されていない。 算数B:用語等の意味理解 は出題されていない。 【理科】 3 本調査で測定できた東温市内児童生徒の学力の概要は、以下のようになります。 ○ 小学校では、国語及び算数の基礎知識を問うA問題が全国平均とほぼ同じか、やや下回 っているが、国語、算数の知識の活用を見るB問題及び理科では全国平均を上回ってい る。総合的に見ると、全ての項目で全国平均とほぼ同じか上回っており、教科に関する調 査結果は良好で、昨年度よりも上昇している。 ○ 中学校では、国語、数学のA問題、B問題、理科ともに、全ての項目で全国平均を上回 っている。国語の「知識」、算数の「知識」「活用」が全国平均とほぼ同じか、やや上回 っていたが、国語の「活用」が全国平均をやや下回っていた昨年度よりも上昇している。 総合的に見て、教科に関する調査結果は良好である。 ○ 正答率に注目すると、全国や愛媛県同様、算数、数学の知識の活用を見るB問題の平均 正答率が50%を切っており、課題が残る。 《問題別の結果》 (本市の調査結果も総合的に全国と同様の傾向が見られました。) ◇・・・相当数の児童生徒ができている点 ◆・・・課題のある点 ( )内の記号は、A・・・知識A問題、B・・・活用B問題 〔 〕内の記号は、問題番号 国語(小学校) 【話すこと・聞くこと】 ◆(A) 話の内容に対する聞き方を工夫することに課題がある。〔3〕 【書くこと】 ◇(A) 説明する文書の書き方の工夫として、具体的な事例を挙げて書くことについては、 相当数の児童ができている。〔4〕 ◆(B) 目的や意図に応じ、取材した内容を整理しながら書くことに課題がある。〔1三〕 【読むこと】 ◆(A) コラムを読んで、文書全体の構成や表現の工夫を捉えることに課題がある。また、 引用することに、依然として課題がある。〔5一・二〕 【伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項】 ◇(A) 今回出題の漢字の読みは、相当数の児童ができている。〔1一〕 ◆(A) 文の中における主語を捉えることに課題がある。〔2一〕 算数(小学校) 【数と計算】 ◇(A) 整数、分数の計算をすることは、相当数の児童ができている。〔2(1),(4)〕 ◆(A) 小数点をそろえて位ごとに計算することに課題がある。〔2(2)〕 【量と測定】 ◇(A) 180°よりも大きい角のおよその大きさを、2直角、3直角を基に捉えることは、相 当数の児童ができている。〔4(1)〕 ◆(A) 分度器を用いて、180°よりも大きい角の大きさを求めることに課題がある。 〔4(2)〕 ◆(B) 条件を変更した場面に面積を2等分する考えを適用して、示された部分の面積を求 めることに課題がある。〔5(2)〕 【図形】 ◇(B) 平行四辺形を構成することができる辺の組み合わせを正しく判断することは、相当 数の児童ができている。〔1(1)〕 ◆(A) 示された三角形が二等辺三角形になる根拠を円の性質と関連付けて判断することに 課題がある。〔5(1)〕 ◆(B) 正三角形の性質を基に、示された周の長さから辺の長さが等しくなる位置を求める ことに課題がある。〔3(1)〕 【数量関係】 ◇(A) 式で表現された数量の関係を図と関連付けて理解することは、相当数の児童ができ 4 ている。〔8〕 ◆(B) 示された情報から基準量を求める場面と捉え、比較量と割合から基準量を求めるこ とに課題がある。〔2(2)〕 理科(小学校) 【物質】 ◇(*) 水蒸気は水が気体になったものであることの理解については、相当数の児童ができ ている。〔3(1)〕 ◆(*) 温度の変化に伴って変わる析出する量について、グラフを基に考察して分析するこ とに課題がある。〔3(6)〕 【エネルギー】 ◆(*) 電磁石と磁石の両極が退け合う性質を振り子が左右に等しく振れる仕組みに適用す ることに課題がある。〔1(4)〕 【生命】 ◆(*) 顕微鏡の適切な操作技能に関する知識の定着に課題がある。〔2(4)〕 ◆(*) 植物の適した栽培場所を判断する場合において、植物の成長の様子と日光の当たり 方を適用して考察することに課題がある。〔2(5)〕 【地球】 ◇(*) 打ち水の効果について、グラフを基に地面の様子と気温の変化を関連付けながら考 察して分析することについては、相当数の児童ができている。〔4(6)〕 ◆(*) 星座の動きを捉えるための適切な記録の技能に関する知識の定着に課題がある。 〔4(3)〕 国語(中学校) 【話すこと・聞くこと】 ◇(A) 相手の反応を踏まえて話すことは、相当数の生徒ができている。〔1一〕 【書くこと】 ◇(A) 書いた文章を読み返し、語句の選び方や使い方を工夫して書くことは、相当数の生 徒ができている。〔2二〕 ◆(B) 根拠を明確にして自分の考えを具体的に書くことに課題がある。〔3三〕 【読むこと】 ◇(A) 登場人物の心情や行動に注意して読んだり、登場人物の言動の意味を考えたりして 内容を理解することは、相当数の生徒ができている。〔3二・三〕 ◇(B) 表現の工夫について自分なりの考えをもつことは、相当数の生徒ができている。 〔3一・二〕 ◆(B) 複数の資料から適切な情報を得て、自分の考えをもつことに課題がある。〔2三〕 【伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項】 ◇(A) 毛筆を用いて楷書で文字を書くことは、相当数の生徒ができている。〔9五〕 ◆(A) 語句の意味を理解し、文脈の中で適切に使うことについては、一部に課題がある。 〔9三オ〕 数学(中学校) 【数と計算】 ◇(A) 加減乗除を含む正の数と負の数の計算、一次式の減法の計算は、相当数の生徒がで きている。〔1(4),2(1)〕 ◆(A) 数量の関係を文字式に表すことに課題があり、指導の充実が求められる。〔2(2)〕 ◆(B) 事柄が成り立つ理由を、構想を立てて説明することに課題がある。〔2(2)〕 【図形】 ◇(A) 面の回転によって回転体が構成されることは、相当数の生徒が理解している。 〔5(2)〕 ◇(A) 投影図から空間図形を読み取ることは、相当数の生徒ができている。〔5(3)〕 5 ◆(B) 平面図形と空間図形を関連付けて考察すること、図形の性質を用いて問題解決の方 法を数学的に説明することに課題がある。〔3(1),(2)〕 【関数】 ◇(A) グラフを具体的な事象と関連付けて解釈することは、相当数の生徒ができている。 〔12(2)〕 ◆(B) 与えられた情報から必要な情報を選択し、的確に処理すること、その結果を事象に 即して解釈すること、解釈した結果について数学的な表現を用いて理由を説明するこ とに課題がある。〔1(1),(2),(3)〕 ◆(B) 与えられた式を基に事象における2つの数量の関係を判断すること、数学的な表現 を用いて問題解決の方法を説明することに課題がある。〔6(1),(2)〕 【資料の活用】 ◆(B) 資料の傾向を的確に捉え、数学的な表現を用いて判断の理由を説明することに課題 がある。〔5(2)〕 理科(中学校) 【知識・技能に関すること】 ◆(*) 物質を化学式で表すことは良好であるが、特定の質量パーセント濃度における水溶 液の溶質の質量と水の質量を求めることに課題がある。〔1(1)化学式,(1)濃度〕 【知識・技能を活用すること】 ◆(*) 日常生活の場面において、気体の種類による特性や露点などの基礎的・基本的な知 識・技能を活用することに課題がある。〔3(1),6(1)〕 【分析して解釈すること】 ◆(*) 溶解度の知識と溶け残りの様子を関連付けて分析して解釈することに課題がある。 〔1(2)〕 ◆(*) 実験の結果を数値で表した表から、分析して解釈し規則性を見いだすことに課題が ある。〔4(1)〕 【実験を計画すること】 ◆(*) 「一定の時間に多くの雨が降る条件は何だろうか」、「音の高さはaとbのどちら に関係しているのだろうか」という課題を解決するために、予想や仮説を立ててそれ を検証する実験を計画することに課題がある。〔3(2),6(2)〕 【検討して改善すること】 ◆(*) 基礎的・基本的な知識・技能を活用し、グラフ・資料などに基づいて、自らの考え や他者の考えを検討して改善することに課題がある。〔2(3),4(2)〕 ◆(*) 「課題に正対した考察をする」という視点で、観察・実験の結果に基づいて、自ら の考えや他者の考えを検討して改善することに課題がある。〔8(3)〕 <参考>平成27年度 全国学力・学習状況調査 調査結果のポイント(国立教育政策研究所) (http://www.nier.go.jp/15chousakekkahoukoku/hilights.pdf) 《問題別課題(市と全国の平均正答率との差)》 △・・・-3ポイント以上 ▲・・・-5ポイント以上 ( )内の記号は、A・・・知識A問題、B・・・活用B問題 〔 〕内の記号は、問題番号 国語(小学校) 【話すこと・聞くこと】 該当なし 【書くこと】 該当なし 【読むこと】 該当なし 6 【伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項】 ▲(A) 学年別漢字配当表に示されている漢字を正しく読む〔1一3〕 △(A) 学年別漢字配当表に示されている漢字を正しく書く〔1二1〕 ▲(A) 文の中における主語を捉える〔2一〕 算数(小学校) 【数と計算】 △(A) 小数の減法について、計算の結果のおよその大きさを捉えることができる〔1(1)〕 △(A) 加法における計算の確かめの方法を理解している〔1(3)〕 ▲(A) 末尾の位のそろっていない小数の減法の計算をすることができる〔2(2)〕 △(A) 異分母の分数の減法の計算をすることができる〔2(3)〕 【量と測定】 該当なし 【図形】 ▲(B) 示された二組の道のりが等しくなる根拠として、図形を見いだし、その図形の性質 を記述できる〔1(3)〕 【数量関係】 該当なし 理科(小学校) 【物質】 該当なし 【エネルギー】 該当なし 【生命】 ▲(*) メダカの雌雄を見分ける方法を理解している。〔2(1)〕 【地球】 該当なし 国語(中学校) 【話すこと・聞くこと】 該当なし 【書くこと】 該当なし 【読むこと】 △(B) 目的に応じて文章を要約する〔2一〕 【伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項】 ▲(A) 語句の意味を理解し、文脈の中で適切に使う〔9三エ〕 数学(中学校) 【数と計算】 【関数】 該当なし 該当なし 【図形】 【資料の活用】 該当なし 該当なし 理科(中学校) 【知識・技能に関すること】 該当なし 【知識・技能を活用すること】 該当なし 【分析して解釈すること】 該当なし 【実験を計画すること】 該当なし 【検討して改善すること】 該当なし 7 (2) 東温市児童生徒の生活習慣等に関する質問紙結果の概要と分析 肯定的な回答について、全国の平均回答率との差は次のようになっています。 【小学校】 【中学校】 8 本調査による東温市内児童生徒の生活習慣等の概要は、以下のようになります。 ○ 朝食を毎日食べている割合は、小・中学校とも全国をやや上回っている。 ○ 小・中学校とも、「自分にはよいところがある」、「地域・社会の問題等に関心があ る」、「学校のきまりを守っている」と答えた児童生徒の割合が全国に比べて高く、良 好な状況である。 ○ 人の役に立つ人になりたいと思う割合は、小学校は全国を上回っており、中学校はや や下回っている。 ○ 将来の夢や目標を持っている割合は、小・中学校とも全国をやや上回っている。 ○ 小・中学校とも、平日にテレビやビデオ・DVDを視聴している時間やインターネッ ト等の使用時間は全国に比べて短い。 ○ 平日の読書時間は、小・中学校とも全国とほぼ同じ割合である。特に小学校の読書時 間が短かった昨年度に比べて、改善が見られる。 ○ 家で学校の宿題をしている割合は、小学校は全国とほぼ同じ割合で、中学生になると 全国を上回っている。 ○ 総合的に見て、小・中学校とも全国平均と同等以上の良好な生活状況である。 その他、市内の小・中学生が全国平均や愛媛県平均と比較して、肯定的な回答及び否定的な 回答が多かった項目は以下の通りです。 ※(小)は小学校、(中)は中学校の回答 肯定的な回答が多かった項目 ○ 毎日、同じくらいの時刻に寝て、同じくらいの時刻に起きる。(小) ○ ものごとを最後までやり遂げて、うれしかったことがある。(小・中) ○ 友達の前で自分の考えや意見を発表することが得意だ。(小・中) ○ 家で2時間以上又は1時間以上勉強する。(小・中) ○ 家で自分で計画を立てて勉強している。(小・中) ○ 家で学校の授業の予習をしている。(小・中) ○ 家で学校の授業の復習をしている。(小) ○ 学校に行くのは楽しい。(小・中) ○ 地域の行事に参加している。(小・中) ○ 地域や社会をよくするために何をすべきか考えることがある。(小) ○ テレビのニュース番組やインターネットのニュースを見る。(中) ○ 人の気持ちが分かる人になりたいと思う。(小・中) ○ いじめはどんな理由があってもいけないことだと思う。(小・中) ○ 授業では自分の考えを発表する機会があり、話し合う活動をよく行っており、自分の 考えを深めたり、広げたりすることができている。(小・中) ○ 学級やグループの中で自分たちで課題を立てて、その解決に向けて情報を集め、話し 合いながら整理して、発表するなどの学習活動に取り組んだ。(小) ○ 授業のはじめに目標が示されて、ノートには学習の目標とまとめを書いていた。 (小・中) ○ 読書は好きだ。(小・中) ○ 国語の勉強は好きで、大切だと思う。(小・中) ○ 算数の勉強は好きで、大切だと思う。(小) ○ 理科の勉強は好きで、大切だと思う。(中) ○ 先生は、自分のよいところを認めてくれていると思う。(小・中) ○ 今住んでいる地域の行事に参加している。(小) ○ いじめは、どんなことがあってもいけないことだと思う。(小) 9 否定的な回答が多かった項目 ● 毎日、同じくらいの時刻に寝て、同じくらいの時刻に起きる。(中) ● 本を読んだり借りたりするために、学校や地域の図書館によく行く。(小・中) ● 新聞を週に1回以上読んでいる。(小) ● テレビのニュース番組やインターネットのニュースを見る。(小) ● 学級やグループの中で自分たちで課題を立てて、その解決に向けて情報を集め、話し 合いながら整理して、発表するなどの学習活動に取り組んだ。(中) ● 授業の最後に学習内容を振り返る活動をよく行っていたと思う。(小) ● 理科の勉強は好きだ。(小) (3) 調査結果の考察 ○ 授業改善について 本調査で見られた課題は、調査対象学年のみならず、全学年を通じた系統的・継続的な指 導によって改善していくことが大切です。 各学校では、今までも本調査結果を受けて算数・数学の授業を中心に尐人数指導やT・T 指導に取り組み、個に応じた指導を行ってきました。また、単に板書をノートに写すだけで なく、筋道を立てて考えたり、解決した過程を振り返り、考えの説明や記述を見直したりす る授業づくりに努めてきました。今回の調査結果からも、学習目標がはっきりと提示された 授業が広がっていることが分かります。そして、話合い活動や小グループ学習等を取り入れ た学び合いの場が設定され、児童生徒の学習意欲の向上やコミュニケーション能力の育成、 思考力、判断力の育成や学習内容の理解に有効に働いていると考えられます。 今後は、今までの取組を継続するとともに、学習目標と学習のまとめの一体化を図り、学 習内容を振り返る活動を組み込んだ授業改善をさらに進めていくことが大切だと考えます。 また、国立教育政策研究所の「全国学力・学習状況調査の結果を踏まえた授業アイディア 例」等も活用して、学校全体で検証改善サイクルを確立して取り組んでいく必要があると考 えます。(http://www.nier.go.jp/jugyourei/index.htm) 東温市教育委員会では、平成 25 年度から全小学校4年生、中学校2年生で標準検査を実 施しています。この標準検査は、学力を全国標準に照らして客観的に把握できるとともに、 教科書の単元のまとまりでの集計結果や、一問ごとの回答を分析することで具体的な指導対 策に活用できるものとなっています。コンピューターで分析された個人票をもとに、学習相 談をいっそう充実していきたいと考えます。 ○ 家庭学習について 家庭学習の習慣化については、以前から市全体の課題と捉えてきました。そして、一昨年、 小・中学校義務教育9年間のスパンを見通して、家庭での理解と協力を得ながら発達段階に 応じた学びの力を子どもたちに身につけさせる一つの手立てとして、市内小・中学校の代表 教員が中心となって「東温市家庭学習の手引き」を作成しました。この「東温市家庭学習の 手引き」は、昨年度当初に市内全小・中学生に配布し、今年度当初には、市内の小学校1年 生に配布しました。また、各小・中学校には電子データを配布しており、学校で印刷して使 用することもできるようにしました。各学校においては、市内共通の「東温市家庭学習の手 引き」を基に自校の「学習の手引き」を見直すなどしながら、児童生徒の家庭学習の定着に 取り組んでいます。 今回の調査結果では、東温市内の児童生徒は、テレビを見たりインターネット等を利用し たりする時間は全国に比べれば短く、家庭学習をしている時間は全国に比べて長くなってい 10 ます。家で宿題をしている割合は小・中学校とも 95%を越えており、小学校では全国とほ ぼ同じで中学校では全国を上回る割合となっています。割合としては 50%程度ですが、予 習をして授業に臨む児童生徒の割合が全国よりも比較的高い傾向が見られています。 家庭学習の習慣化への取組を継続していく中で、今後は、宿題の出し方、宿題の内容の検 討、自ら学び続ける力の育成につながる自主的、主体的な家庭学習の推進などに重点を置い て、量(時間)をキープしながらも質(内容)を重視した家庭学習にしていきたいと考えて います。 ○ 読書活動について 読書活動については、以前から市全体の課題と捉えてきました。昨年度の調査結果では、 特に小学校の読書時間の不足が大きな課題となりました。学校における読書環境の整備に努 め、「東温市家庭学習の手引き」でも、小学校中学年からは、国語の授業で学習した内容に 関連する作品の読書を勧めています。教育委員会では毎年、学校図書購入費を確保し新書等 の購入にあたっています。また、市立図書館との連携を図り、市立図書館の運営に関する選 書会委員として東温市学校図書主任会から委員を任命し、児童・生徒にとって親しみやすい 市立図書館の運営や利用促進に努めています。市立図書館では、移動図書館「かぼちゃん 号」で市内7小学校それぞれに月2回赴き、児童が休み時間にも本に親しめる環境づくりを 継続しています。 今回の調査結果では、小・中学校ともに読書が好きという割合が全国よりも高くなってい ます。しかし、本を読んだり借りたりするために、学校や地域の図書館によく行くという割 合は低く、小学校の読書時間は昨年に比べて改善が見られましたが、平日の読書が 30 分以 上の割合は小学校で約 30%、中学校で約 38%となっており、全国とほぼ同じ割合ですが、 課題であることに変わりはないと捉えています。 児童・生徒の考える力を高めていくためには、書籍のみならず新聞を読む力を育てること も大切です。教育委員会では、学校図書館への新聞の配架を行っており、新聞に積極的に触 れさせることで、広い視野に立ったものの見方や考え方ができる力を育成し、子どもたちの 地域や社会に貢献しようとする意欲や態度を育みたいと考えます。 ○ 心の教育について 今回の調査結果でも、自分にはよいところがあると答えた児童生徒の割合が高く、自尊心 や自己有用感が育っていると考えます。さらに、学校のきまりを守る、人の気持ちが分かる 人になりたいと思う、いじめはどんな理由があってもいけないなどの割合も高くなっており、 規範意識や思いやりの心も育っていると考えます。 地域の行事に参加している割合は、小・中学校とも高くなっています。 小・中学校ともに地域や社会で起こっている問題や出来事に関心がある割合は高く、小学 校では、地域や社会をよくするために何をすべきか考えることがあると答えた割合も高くな っています。しかし、小学校では新聞を読んだりニュースを見たりする割合は全国よりも低 い状況です。関心、意欲はあるので、その気持ちを大切にしながら日々の社会の様々な出来 事に目を向けさせる働きかけをすることで、考えが深められたり広がったり、実践に結び付 けたりすることができるのではないかと考えます。 学校に行くのは楽しいと答えている割合が小・中学校ともに高いので、この良好な状況が さらに好循環となっていくように、一人一人を大切にした取組を継続していかなければなら ないと考えます。 11 3 おわりに 東温市教育委員会では愛媛県教育委員会の指導のもと、全国学力・学習状況調査及び愛媛県学 力診断調査等の結果等を分析することにより、東温市における学力の課題を明らかにするととも に効果的な学力向上に係る検証及び改善を行い、全市的な確かな学力の定着と向上を図るため、 平成 26 年3月に「東温市学校の教育力向上推進委員会」を設置しました。年3回開催予定のこ の会には市内小中学校の校長・教頭代表、各校代表者、学識経験者が集まり、授業力向上部会、 学習環境部会、学校評価部会の専門部会を設け、学力向上に向けた具体的な方針、施策、取組等 を立案し、実施、検討しています。 今年度の第2回推進委員会では、各学校ごとに行った全国学力・学習状況調査結果の分析を基 に課題と今後の取組等についての報告と、今年度の各部会の活動の柱の確認及び取組の途中経過 についての話し合いがなされました。今年度の各部会の活動の柱は、次のとおりです。 〔授業力向上部会〕 教師の授業改善、授業力の向上、教員研修の充実を図り、子どもの学びの質を向上させる □分析ツール………児童生徒の学習の実態把握及び教職員の共通理解 □授業評価シート…視点を明確にした授業改善 □家庭学習調査……家庭学習の実態把握と家庭学習の内容の充実 〔学習環境部会〕 子どもの生活状況や変容を把握し、子どもの安全、安心な学習環境を保障する □振り返りシート…視点を絞った見取りの実施による生活習慣の把握、改善 〔学校評価部会〕 学校の教育活動を多面的に見取り、学校、家庭、地域の連携を推進し、協力して子どもを守 り育てる □学校評価…………評価内容、形式等の見直し及び成果と課題の把握、活用 教育委員会ではよりよい学校生活と友達づくり事業として学級集団満足度アンケート調査(Q U調査)を全小・中学校の全児童生徒で行っていますが、よりよい学びの環境づくりが学力向上 につながると考え、今後も施策実施に努めていきます。 学校や東温市教育委員会では今後とも継続的に本調査を実施していきます。その際、「教育指 導の充実や学習状況の改善等に役立てる」という調査本来の目的を忘れ、結果だけに関心が向け られることがないようにするとともに、調査結果を教育相談や個別指導に活用し、児童生徒一人 一人の学習改善や学習意欲の向上につなげていきたいと考えます。 学校教育の最大の任務は「子どもたちに確かな学力を身に付けさせること」であり、学力を高 めるためには、学習を行おうとする基盤づくりが最も大切な要素です。学校や東温市教育委員会 は、保護者を含めた地域の力を得ながら、子どもたち一人一人の可能性を広げる教育の推進に努 めていきます。 12
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