電子図書館と著作権 電子図書館と著作権

卒論 99 板垣 高木ゼミ
卒業論文
1999 年度
電子図書館と著作権
板垣
康子
12096020
新潟国際情報大学
情報文化学部情報システム学科
高木ゼミ
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卒論 99 板垣 高木ゼミ
目次
1.序論
2.本論
2.1 調査・研究のやり方
2.2 図書館について
2.2.1 電子図書館の構想
(1)電子図書館の概要
(2)電子図書館の定義
(3)電子図書館の課題
2.2.2 図書館と電子図書館の相違
(1) 図書館について
(2) 図書館と電子図書館の違い
2.3 制度的課題について
2.3.1 著作権法の概要
2.3.2 著作権法の利用方法
2.3.3 電子図書館における著作権問題
2.3.4 電子図書館における料金の徴収
3.結論・考察
参考文献
資料
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卒論 99 板垣 高木ゼミ
1. 序論
最近のインターネットの目覚しい発展に伴い、情報の流通の形態に大きな変化
が見られ、図書館にも変化の兆しを見ることができる。
「電子図書館」という概
念が生まれつつあり図書館が大きく変化する可能性がある。ここでは従来の図
書館と将来の図書館像「電子図書館」を比較し、両者の内容の違いと今後の変
化について考察する。
私は幼いころから本が好きで図書館をよく利用している。長年利用している間
に図書館のサービスにさまざまな変化があった。たとえば、本を借りるとき図
書館のカードを使用するようになり、書籍にも個人用の図書カードにもバーコ
ードが利用されるようになった。また、私が主に利用する長岡市立図書館に最
近タッチ画面方式で図書の検索ができるコンピュータが置かれた。図書館内の
本の管理もずいぶん処理が早くなったに違いない。卒業論文のテーマを決める
にあたって、偶然電子図書館という概念があることを知った。図書館にとって
電子図書館はカードやバーコード利用のさらに先を行く変化である。電子図書
館の概念がどのようなものなのか大変興味を持ち、いろいろ調べていくうちに、
構想自体がとても大きいこと、実現するにあたって問題がたくさんあることが
わかった。その中でも構想のあらゆる所で著作権について触れられていたので、
電子図書館における著作権について特に興味を引かれ調べてみたいと思った。
電子図書館は、構想中であり、今はまだ実現されていない。国立国会図書館の構想にお
いて電子図書館は「図書館が通信ネットワークを介して行う一次情報(資料そのもの)お
よび二次情報(資料に関する情報)の電子的な提供とそのための基盤」と定義されている。
それに対し図書館は「情報・データを直接提供しない」ということが定義の一つとしてあげ
られる。つまり図書館では、本は提供するが、利用者からの質問に答えるとき、本の内容
について細かい答えを求められても直接的にはデータなどを提供しないということである
(ただし、この定義において情報・データを提供するということに本を貸し出しすることは
含まれない)。図書館と比べ、電子図書館は柔軟性のある情報提供が必要とされることにな
る。その他にも図書館と電子図書館には多くの違いがあり、電子図書館を実現するにあた
ってはさまざまな課題が存在する。中でも制度的課題は重要で、特に著作権の問題はそれ
に深くかかわっていると考えられる。
電子図書館について調べるにあたり、まずは「電子図書館の諸相(白地社、1998)」
、「電
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子図書館(けい草書房、1999)
」など電子図書館について書いてある本を探し数冊読んだ。
また雑誌検索により、「国立国会図書館「電子図書館構想」について(国立国会図書館、
1998)
」など、関連のある記事を選出して読んでみた。その結果興味を持った著作権にかか
わる部分についてさらに詳しく読み理解を深めるとともに著作権法に関する本を読み現状
や問題点を理解した。
図書館は本来無料原則であるが、電子図書館が存在するようになった時には「無料原則」
に変化をともなうことが予測される。たとえば、本などを今よりも簡単に読むことができ
るだけでなく複製などもたやすく行われるなどのことが予測されることで、ルールを作り
直さなければいけなくなると考えられた。また、電子図書館では著作権の及ぶ著作物が多
いと考えられ、その利用には今までの図書館ではあまり考えることのなかった著作権につ
いての権利処理が必要となる。当然著作権料のことも考慮に入れなければならないだろう。
以上の理由で、これからの著作権法の対応にもよるが、情報化社会における図書館におい
ては、全てにではないにしても、対価の徴収をせざるを得なくなる状況が出てこざるを得
ないという結論に達した。
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2.本論
2.本論
2.1 調査・研究のやり方
電子図書館、著作権に関する図書情報、雑誌情報は以下のように収集した。
まず図書情報は、インターネットの図書検索(NACSIS Webcat、和図書、books)で題
名またはキーワードに「電子図書館」という言葉を入れて本を検索した。その結果電子図
書館というキーワードに当てはまる本はいずれも 5 冊前後と少ないことがわかった。書名
を確認したが原著の入手はできなかった。
また、長岡市立図書館で題名に「電子図書館」という言葉が使われている本があるか検
索し、NACSIS 等の検索内容とあわせて検討した。その中から最近 5 年間に出版された「電
子図書館(岩波書店、1994)」
、「電子図書館が意味するもの(マルチメディア出版研究会(出
版研究センター)、1996)
」
、
「電子図書館の諸相(白地社、1998)
」
、
「電子図書館(けい草書
房、1999)
」、
「電子図書館が見えてきた(NEC クリエイティブ、1999)」を選出した。さら
に、国立国会図書館のホームページ上の「国立国会図書館電子図書館構想」
(国立国会図書
館、1998)を読んだ。
次に雑誌記事情報は、NICHIGAI/WEB サービスの雑誌記事検索で「電子」と「図書館」
というキーワードを使った検索の結果、59 件の雑誌記事が検索された。そのなかで図書館
の変化に関係すると思われた「国立国会図書館「電子図書館構想」について(国立国会図
書館、1998)
」
、
「特集:電子図書館と「紙」の世界(日本図書館協会、1998)」
、「電子図書
館と著作権処理(特集=著作権 Part4)(情報科学技術協会、1998)」を選び出し、原文の
コピーを入手した。
さらに目的を絞り、電子図書館においての制度的課題、著作権について理解を深めるた
め、長岡市立図書館で題名に「著作権」という言葉が使われている本を検索してみたとこ
ろ 70 件の図書が検索された。その中から、著作権は公布されてから現在まで何度か改正さ
れているため、10 年以内に出版されたもので著作権の概要が書いてある「著作権法入門(平
成 10 年度版)
(社団法人 著作権情報センター、1998)
」、
「著作権法ハンドブック(社団法
人 著作権情報センター、1998)」を選んだ。加えて著作権をわかりやすく理解するため「中
学生にもわかる著作権(騎虎書房、1998)
」を読んだ。
また、今まで読んだ図書、雑誌情報の中で登場した著作権法の条文を確認、参照した。
2.2 図書館について
2.2.1 電子図書館の構想
(1)電子図書館の概要
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国立国会図書館によると、電子図書館の基本概念は次のように紹介されている。図書館
では、従来からコンピュータを図書館業務の効率化の目的で使用してきたが、新たなデジ
タル技術を利用することにより、図書館の機能それ自体を大きく拡張強化することができ
る。これまでも図書館は、様々な媒体に記録された人間の精神的な営みの成果を収集し、
組織化し、保存し、求める人に対して提供してきた。電子図書館は新しい情報技術を使っ
た従来の図書館サービスの拡張であり、電子図書館によって、豊富な情報の入手、地域的
その他の情報格差の是正が可能となる。電子図書館は巨大な情報空間の案内役であり、そ
れによって「どこでも、いつでも、だれでも」情報にアクセスすることができるようにな
る(国立国会図書館、1998)
。
一方、電子図書館はインターネットそのものだと思う人がいる。これは電子図書館とい
う概念があいまいなゆえに起こる勘違いだと思われる。確かに、インターネット上では検
索エンジンなどにより検索をしたらサイトへのリンクにより自動的に探索し情報を与えて
くれるというように、さまざまな情報を簡単に入手できる。しかし、自分が知りたい内容
がどこにあってどうしたら使えるのかということがわかりにくくなっている。谷口によれ
ばカオスのようなインターネット情報空間に、星のように明滅するさまざまな Web サイト
を眺めて電子図書館をイメージするのは、丁度野原に山積みされた書籍をもって、図書館
というようなものである(谷口、1998)と表現されている。また、原田は電子図書館とは、
定められた目標をもって構築される統合的な資料群を有するものであり、次のような7つ
の要件を満たしていなければならないと述べている。
1. 電子図書館は、明確な目標・目的を持っていなければならない。
2. 電子図書館のコレクションは、一貫した方針のもとに構築されていなければならない。
3. 個々のドキュメントは、その電子図書館の目的に合致するように評価の加えられたも
のでなければならない。
4. 利用者が、自分の情報要求にあったドキュメントを簡単に見つけられるように、コレ
クションが組織化され、検索システムが整備されていなければならない。
5. 電子図書館は、すべての利用者に対して、公正な利用を保証するものでなければなら
ない。
6. 電子図書館では、新旧の資料および情報流通の仕組みを知悉した図書館員(または、
それに代わりうるもの)による支援がなければならない。
7. 印刷資料を有する図書館では、印刷資料とのシームレスな統合がなされていなければ
ならない。
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さらに、電子図書館は、さまざまなテーマ、現象、著者などに特化した比較的規模の小
さなものから、総合図書館、国立図書館のような大規模な図書館まで、多種多様な内容・
規模のものが存在しうる。しかし、それらが図書館であるためには、少なくとも上記の要
件を満たしていることが必要であると述べている(原田ら、1999)
。インターネット上には
情報があふれていて、さまざまな情報を簡単に入手できる。しかしその反面、知りたい内
容が入った情報を明確に手に入れることは難しく、無秩序である。電子図書館は図書館と
同様整理されていなければならないだろう。このようにインターネットは無秩序であり、
秩序を要求される電子図書館ではないということが理解できる。電子図書館を整理された
ものにするためには技術的な問題や、情報をどのように整理するかということなどから基
本的なルール作りも重要となるだろう。
(2)電子図書館の定義
国立国会図書館によると国立国会図書館にとって電子図書館とは、「図書館が通信ネッ
トワークを介して行う一次情報(資料そのもの)および二次情報(資料に関する情報)の
電子的な提供とそのための基盤」であり、資料を電子化するとともに、電子化された資料
および電子出版物を通信ネットワークを介して提供するものである(国立国会図書館、
1998)。また、宮井らは電子図書館を大別して以下の3つの視点から考察を行っている(宮
井ら、1999)
。
第一は図書館業務のオートメーション化である。図書館業務の機械化、情報化を進める
ことを中心としたアプローチ、電子目録作りや購入・貸出し業務の自動化、図書館相互の
オンライン情報交換などが含まれる。次はコンテンツのデジタル化である。書籍の内容を
デジタル・データに置き換えることを中心としたアプローチで、古典や学術書のテキスト
入力から始まって、美術品の画像入力まで広がっている。最後にインターネット・ライブ
ラリーはインターネット上の情報資産を体系的にリンクすることを中心としたアプローチ
であり、サイバー空間の中に存在する仮想的な図書館・博物館を設けようとしている(宮
井ら、1999)
。
このように電子図書館について出所が限定された定義や定義に対する考えなどは存在す
るが、電子図書館の明確な定義は見当たらなかった。電子図書館はまだ構想中であり、不
完全なものであるため、さまざまな定義を考えることが可能である。たとえば、考える人
がどんな人かによってなどでも意見に違いが出るだろう。電子図書館という概念がもっと
明確にならなければ、すべての人が認めるような定義を実際に定義することは難しいと思
われる。
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(3)電子図書館の課題
電子図書館の実現にはさまざまな問題が存在する。国立国会図書館「電子図書館構想」
では、主に三つの問題を挙げている(国立国会図書館、1998)
。
第一に著作権や課金の問題を含む制度的課題である。電子図書館が提供する情報の多く
は著作権が存在する著作物である。著作権法(昭和 45 年法律 48 号)においては、著作権
法第 31 条により図書館等は著作者の許諾を得ずに利用者の求めに応じ著作物の一部の著作
物を複製できるが、電子図書館実現のために必要な複製を著作権法第 31 条で対応すること
は困難である。電子図書館の実現のためには著作権問題の他、国の公共的な側面を考慮し
たルール作りを著作権者との間で行う必要がある。
第二に技術的課題であるが、電子図書館の基本的な機能を実現する技術はすでに存在し
ているものの、利用者にとっての使いやすさ、検索機能、電子化した資料及び電子出版物
の権利保護、その保存や標準化の観点からは、まだ多くの課題が残されている。これらの
技術課題の解決に当たっても積極的に取り組む必要がある。また、近年の情報処理技術の
進展や情報流通形態の変化に対応する必要がある。そのために、新たな情報システムとし
て電子図書館基盤システムを構築し、そのシステム基盤上に電子図書館を実現する。その
システムは、安全性、拡張性、柔軟性に優れ、システム自体がオープン化され、高速かつ
安全な通信基盤をもつものとする。
第三に財政的課題であるが、電子図書館の構想は規模が大きく、おそらくあらゆる場面
でこの課題が問われるだろう。当然上記の二つの問題を解決することに対しても大きく関
わってくることが予想される。
ここで述べた課題は電子図書館構想全体における大きな課題である。それ以外にも、今
回収集した本や雑誌記事に電子図書館の今後の課題となるものが記述されていた。収集し
た情報の中で今後の課題として重要だと思われるものを以下に示す。
(4)電子図書館に求められる機能
長尾によると図書館における情報の基本単位は、図書館においては一冊の冊子であると
述べている。ところが、電子図書館では、出し入れする情報の単位は雑誌の中のある論文
であり、本の中のある章などとなっていく。ハンドブック、データブックなどの場合には
その中にある個別の説明、個別のデータとなってしまう可能性もあるとも述べている。新
しい電子図書館において取り扱う情報については次のようなことを今後早急に検討しなけ
ればならない(長尾、1994)
。
第一に、電子図書館に収納される情報は図書、資料などのように一冊単位かもしれない
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が、利用のために取り出す情報の単位はさらに細かいものである。何がその最小基本単位
かは、対象とする図書や資料によっても異なり、うまく設定する必要がある。第二に収納
された情報が取り出されるためには、その情報へのアクセスパス(取り出し経路)がつけ
られねばならない。そのために情報の基本単位に対して何らかの取り出しを目的とした情
報(タグ)が付与されねばならない。第三にアクセスパスはできるかぎり複数個あること
が必要である。異なった観点から目的とする情報に行きつくことができねばならない。
また、電子図書館の持つべき機能として記述されていたものを表 1 に示す(長尾、1994)
。
表 1 電子図書館のもつべき機能
図書資料収集
図書資料データベース
管理
図書資料サービス
メディア変換サービス
電子読書機能
その他の機能
出版物、灰色文書、インターネットの所在情報
出版物の発注・納品等の管理
OCR 入力、イメージ入力、音声・音楽入力
SGML化
一次情報データベース(分野別、メディア別(図、絵画、音、
文字、…)
)
二次情報の抽出、リンク付け、それらのデータベース
三次情報データベース
参考図書データベース、所在情報データベース
情報検索機能、対話機能、翻訳機能、催物案内
翻訳機能、自動朗読機能、点字文字変換機能
辞書参照機能、翻訳機能、朗読サービス機能
情報探索機能、対話機能、しおり挿入・付箋機能
メモノート機能
ネットワーク接続、利用者管理、24 時間サービス
出典「電子図書館」
(長尾、1994)
次に宮井らにより理想の電子図書館のための課題としてあげられていたものを表 2 に示
す(宮井ら、1999)
。
表 2 理想の電子図書館のための課題
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1.資料収集の課題
2.データ入力の課題
3.書誌作りの課題
4.検索の課題
5.ネットワークの課題
6.サービスの課題
7.使い勝手の課題
それぞれが専門図書館となり、全体を網羅するために相互に
リンク(連携)し合うことがデジタル・メディアの特徴を活か
すことになる。だが、利用者が望む専門の範囲をどう絞り込む
か、どこからその専門図書を集めるかなどの課題が残る。
図書の中身をテキスト、図版、レイアウトまで含めてデジタ
ル化するデータ入力は、膨大な手間と経費がかかる。これを低
コストで省力化する方法が必要になる。また収蔵するのは「図
書」だけではない。ビデオや音声などを含めたマルチメディア・
データであり、これらを総合的に扱える技術も標準化される必
要がある。
図書目録というのは「情報に関する情報(メタ情報)
」である
が、情報の単位はもはや「本(冊子)
」ではない。含まれる情報
の内容ごとに検索できる目録=データベースが必要になる。
難解な検索式を使わなくても探し出せる方法が必要になる。
同時に、膨大に出てくるヒット・リストの中から目的に合致し
たものを的確に絞り込む方法も必要になる。片やソース(情報)
側に何らかの構造化を行ってタグを埋め込み、片やユーザー側
の検索意図に合った方式を見つけて、その両者を結びつける技
術が基本になる。
LAN からインターネットまでをシームレスに繋ぎ、様々なプ
ロトコル(通信手順)にも対応できるネットワーク技術が必要。
目ざましい技術革新の起きている分野なので、最新動向をキャ
ッチし、吸収する柔軟な開発姿勢が大切になる。
利用者の便宜を図るための検索支援や翻訳、メディア変換な
ど、負担にならない範囲での有償サービスで、メニューを充実
させる発想が必要である。
コンピュータになじみのない人でも情報の海に溺れないよう
にナビゲートする必要がある。主に人間工学的なヒューマン・
インタフェースの研究成果が生かされることになる。
出典「電子図書館が見えてきた」
(宮井ら、1999)
いずれも将来的に見て必要だと思われる課題が記されている。それぞれの課題は電子図
書館の確立のために解決されることが望まれる。ただ、前に記した定義と同じように課題
についても、電子図書館の内容が定まっていないため、さまざまな方向から考えることが
可能だろう。上記の課題はその一部である。課題も電子図書館構想がまとまってきたとき
には、もう少し的を絞ったものになるに違いない。電子図書館という概念は、各機関や集
団が個々で構築するのではなく、将来のことを考えて相互にネットワークを張り巡らせて
協力し合いながら構築することができたら、もっと具体的に内容が決まるのではないだろ
うか。
電子図書館が不確定なものであるためさまざまな問題が存在する中、国立国会図書館が
あげた三つの課題は全体的に考えて大きなものだと思われる。その中でも著作権がかかわ
る制度的課題は重要だと思われる。著作権はどのようなものなのか、どのようにかかわっ
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てくるのだろうか。栗山は著作物利用の基本的考え方として、著作物を利用するには、著
作権者から著作権の譲渡を受ける方法と著作権はそのままで利用許諾を受ける方法の 2 種
類があるなど、著作権処理について述べていた(栗山、1998)
。そのことも含め、制度的課
題における著作権の問題について以下考察を行う。
2.2.2 図書館と電子図書館の相違
ここでは、図書館の主な役割と、図書館と電子図書館の相違について触れる。
(1)図書館について
図書館とは何かという定義について、石川は、図書館は所属する機関の目的に照らし、
人類の知的資源としての情報源(主に出版物)を広く収集し、原則無償にて利用に供する
期間(組織)ということになると述べている(石川、1996)。この定義は世界共通であり、
また世界各国において共通の機能として持っているということである。
また、序論でも述べたが、図書館は「情報・データを直接提供しない」ということが定
義としてあげられる(石川、1996)
。この、
「情報・データを直接提供しない」というのは、
図書館では本は提供するが、たとえば利用者が質問をしてきたとしても情報やデータ、つ
まり本の中身を直接的に提供するわけではないということである。ただし、この定義にお
いて情報・データを提供するということに本を貸し出しすることは含まれない。
長尾によると図書館の主な仕事として、(1)図書、資料の収集活動、(2)図書、資料
の内容を表す二次情報を付与し、その保管、活用をする仕事、(3)利用者の要求に応じて
図書、資料を貸し出し、また返却させる仕事、(4)利用者の情報探索の相談にのる参考業
務、(5)図書館間での相互貸し出しを行い、利用者に便宜をはかる仕事、
(6)その他、
図書、資料の劣化の防止などの仕事をあげている(長尾、1994)
。これらの主な仕事は電子
図書館にも受け継がれていくだろうが、その際には大きな変化を伴うことが想定される。
(2)図書館と電子図書館の違い
図書館と電子図書館における問題のいくつかについて比較検討する。
まず、仕事についてであるが、図書館の主な仕事について長尾は、上記のような仕事は
いずれもが電子図書館の時代になっても必要な機能であると述べている。しかし、それぞ
れの仕事内容の重要度はおのずと変ってゆくことになるだろう(長尾、1994)とも述べて
いる。また、谷口はこう述べている。ネットワーク上での利用を前提にするために、これ
までの図書館利用でのさまざまな制約条件が減少する。時間的空間的な制約はほぼ解消す
るであろう。また、従来の利用者直接サービスの形態が、閲覧、貸出返却、予約、リクエ
スト、参考業務(レファレンス)の諸部門にわたって根底的に変化する。たとえば、閲覧
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は、利用者のターミナル上での電子読書に変わり、貸出返却は、現物図書の移動を伴わな
くなるといったものである(谷口、1998)
。このように、以前からある仕事を元にしている
が、その仕事の手段は多様な変化をすることだろう。
図書館は本や資料などを人々に提供し、また残すことを目的として収集している。長尾
は以下のように述べている。これまでの図書館が収集の対象としてきたものは図書、雑誌、
新聞、報告書類、地図を中心とする図面、楽譜、音楽レコード、音声テープ、ビデオテー
プ、CDなどである。これらのうち音楽、音声、ビデオ関係のものを別にすれば、要する
に紙の形態になったもの、それも主として冊子体のものが収集対象のほとんど全部を占め
る。ところが電子図書館時代になると紙に印刷された本という概念は成り立たなくなって
しまう。存在するのはある種の観点から収集される各個の情報であり、それを適当な集合
体として扱う場合もあるという程度の概念である。電子図書館時代になるとどのような範
囲の情報を電子図書館が担当すべきかを根本的に検討しなければならないだろう(長尾、
1994)。
情報が冊子体という形をとらなくなるのなら、利用の形態も変わるはずである。ネット
ワーク上で情報をみることができれば、図書館にわざわざ行かなくてもおおよそのことは
できるようになると考えられる。
また、電子図書館では現在以上に柔軟性のある情報提供が望まれるだろう。谷口は電子
図書館の情報提供に関し次のように述べている。これまでの図書館サービスの多くは、そ
の提供する内容が知識そのものではなく、物としての本や雑誌であった。また一般的に利
用者も図書館サービスとは、倉庫のような書庫から本を探してきてくれる、というような
場面意外ではそれほど期待していなかったふしもある。しかし、新たな図書館サービスと
は、求められたときには情報の内容にまで配慮したサービスを提供できるものでなければ
ならない。また図書館は学術のためだけではなく人々の生活に根ざした中で、生きていく
中で必要となる情報を、適切に手に入れることのできるようなサービスとなるべきであろ
う(谷口、1998)
。2.2.1 電子図書館の構想でも述べたが、電子図書館では、情報の基本単
位が冊子体からさらに細かくなるだろうと想定されていることから(長尾、1994)、情報の
基本単位の変化によっては利用者に対してのサービスにも変化が生じることになるだろう。
さらに、長尾は従来の図書館と電子図書館との違いは、情報の新しさ、情報が入手され
てから利用に供されるまでの時間の短さにあると述べている。そして、たとえば新聞のニ
ュースは一日一回か二回というのではなく、ニュースが記事になった瞬間にそれがネット
ワークを通じて読者に提供されるから、常時新しいニュースが見られることになると述べ
ている(長尾、1994)
。どのくらい新しい情報が手に入るようになるのかは実際にはわから
ないが、ネットワークでつながるのであれば、情報の新しさ、情報が入手されてから利用
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に供されるまでの時間の短さということを期待することができるように思う。
風間は次のように述べている。図書館時代は冊子の所有こそがアクセスを確保する基本
であった。しかし電子図書館時代では、所有とアクセスは別となる場合が生じる。むしろ
それこそが特色となるはずである(風間、1998)。実際電子図書館において、冊子体という
概念はなくなってしまうかもしれない。しかし次のようにも書かれている。図書館の重要
な使命の一つは、学術文化の継承である。その時代の学術文化の証である著作物を永久に
利用に供することがその役割である(風間、1998)
。電子図書館では冊子体という形態を取
らなくなっても、学術文化継承の使命により、その証である著作物自体も冊子体などの形
態のものは、出版されたときのままの形で後世まで受け継がれるだろう。したがって電子
図書館が確立しても、現在のような図書館はなくならないと思われる。そして本を利用す
るサービスもなくならないだろう。するとやはり電子図書館でのサービスではいろいろな
規則を作ることが要求されるに違いない。図書館と電子図書館が両方利用されるためには、
両者の違いを考慮した上での規則作りが必要となってくるだろう。
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2.3 制度的課題について
電子図書館で提供される情報の多くは著作権が存在する著作物であると推測される。そ
の著作物の利用について日本では著作権法(昭和 45 年法律 48 号)で規定されている。電
子図書館における制度的課題にはこの著作権法が大きく関わってくるので著作権法の概要
と電子図書館において生じると考えられる問題点についてふれる。
2.3.1 著作権法の概要
著作権の概要については「著作権法入門(平成 10 年度版)」
、
「著作権法ハンドブック(著
作権法令研究会、1998)
」を参考にすると以下のように整理することができる。
(1)目的
著作権法の目的は、「著作権並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作権の権
利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作
権等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする」
(第一条)こと
である。そして、第一条の条文の中で、一番大切なことは、
「著作権は個人の保護が第一で
ある」ということである(豊沢、1998)
。つまり、著作権の目的は著作者等個人の権利の保
護である。
(2)著作物
著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音
楽の範囲に属するもの」
(第二条一項一号)と定義されている。著作物の例としては、言語、
音楽、美術、地図、映画、写真、プログラムなどが挙げられる(第十条一項)
。
著作権法による保護を受ける著作物は、①日本国民の著作物(国籍主義)
、②最初に日本
国内において発行された著作物(発行地主義)
、③条約により我が国が保護の義務を負う著
作物のいずれかに該当するものである(第六条)
。ただし、 以上の著作物の例や定義に該
当する著作物ではあるが、①憲法その他の法令、②国又は地方公共団体の機関が発する告
示、訓令、通達など、③裁判所の判決、決定、命令など、④①から③の翻訳物及び編集物
で、国又は地方公共団体の機関が作成するもの(第十三条)は権利の目的とならない。
(3)著作者
著作者とは「著作物を創作する者」(第二条一項二号)である。一般には、小説家や画家
など創作活動を職業とする人だけが、著作者になれると考えられがちだが、創作活動を職
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業としなくても、小説を書いたり絵を描いたりすれば、それを創作した者が著作者となる。
(4)著作者の権利
著作者が持つ権利としては、大別して、人格的利益を保護する著作者人格権と財産的利
益を保護する著作権の二つがあるが、通常は著作者人格権と著作権(財産権)を合わせて
著作者の権利と呼ぶ。
著作権及び著作者人格権は、著作物を創作した時点で発生し、権利を得るための手続き
を必要としない(無方式主義、第十七条一項)。著作者人格権は著作者の人格的利益を保護
する権利で、著作者以外の第三者にこの権利を認めることは適切でないことから、著作者
人格権を譲渡したり、相続したりすることはできないとされている(第五十九条)
。また、
著作者人格権(第十八条から第二十条)の内容は、具体的には公表権(第十八条)、氏名表
示権(第十九条)
、同一性保持権(第二十条)である。
一方、財産的価値のある著作権は、物権や債権のように、その一部又は全部を譲渡した
り相続したりすることができる(第六十一条)。したがって、通常、権利が発生した時点で
は、著作者と著作権者は同一だが、著作権が譲渡されたり相続されたりすれば、著作者と
著作権者は異なることになる。また、著作権(第二十一条から第二十八条)に含まれる権
利の種類には、複製権(第二十一条)
、公衆送信権・伝達権(第二十三条)
、貸与権(第二
十六条の2)
、翻訳権、翻案権等(第二十七条)などがある。
(5)著作権の制限(第三十条∼第五十条)
著作権法では、一定の例外的な場合に著作権を制限して、著作権者に許諾を得ることな
く利用できることを定めている(第三十条∼第四十七条の2)。ただし、著作権が制限され
る場合でも、著作者人格権は制限されない(第五十条)。許諾なく利用できる例としては、
私的使用のための複製(第三十条)、図書館等における複製(第三十一条)
、引用(第三十
二条)、学校その他の教育機関における複製(第三十五条)
、試験問題としての複製(第三
十六条)などがあげられる。
(6)保護期間(第五十一条∼第五十八条)
著作権や著作隣接権などの著作権法上の権利には一定の存続期間が定められており、こ
の期間を保護期間という。表 3 に著作物とその保護期間を示す。
著作権の存続期間は著作物の創作の時に始まり、著作者の生存間及びその死後五十年を
原則とする(第五十一条)
。例外として、無名・変名、団体名義、映画の著作物は公表後五
十年(第五十二条∼第五十四条)が保護期間となる。また、保護期間の計算方法は、死亡、
15
卒論 99 板垣 高木ゼミ
公表、創作した年の翌年の一月一日から起算することになっている(第五十七条)
。
表 3 著作物と保護期間(写真、映画の部分を除く)
著作物の種類等
(1)実名の
著作物
一般の著作物︵写真、映画を除く︶
存続の要件
保護期間
著作者の死亡が昭和二十四
年以後又は公表が同三十六
年以後
著作者の死亡が昭和二十四
年以後
(イ)公表後三十八年間又
は死後五十年間のうちい
ずれか長い方の期間
(ロ)著作者の死後五十年
間
(ア)昭和四十五年までに公
表された著作物
公表が昭和二十四年以後
(イ)昭和四十五年までに公
表されなかった著作物
著作者が昭和二十三年以前
に死亡したと認められない
こと
(ア)昭和四十五年までに公
表された著作物
公表が昭和二十四年以後
(イ)昭和四十五年までに公
表されなかった著作物
創作が昭和二十四年以後
(イ)公表後三十八年間又
は(ロ)の保護期間のうち
いずれか長い方の期間
(ロ)公表五十年間又は死
亡したと認められる年か
ら五十年間のうちいずれ
か短い方の期間
(イ)公表後三十三年間又
は(ロ)の保護期間のうち
いずれか長い方の期間
(ロ)創作後五十年以内に
公表されれば公表後五十
年間、公表されなければ創
作後五十年間
(ハ)著作物の公表後五十
年間
(ア)昭和四十五年までに公
表された著作物
(イ)昭和四十五年までに公
表されなかった著作物
(2)無名又
は変名の著
作物
(3)団体名
義の著作物
大正十年から昭和二十三年
に創作された公表が創作後
五十年以内
注)上の表は平成 11 年の時点のものである。
出典「著作権法ハンドブック」
(著作権法令研究会、1998)
2.3.2
2.3.2 著作物の利用方法
前項をふまえて考えると、著作物を利用するにはまず次のことを確認する必要が生じる
(著作権法令研究会、1998)
。
第一に我が国で保護されているものかどうか、次に保護期間内のものであるかどうか、
そして許諾なく使える場合かどうか、以上の三つである(図1参照)
。他人の著作物は、著
作権が制限を受けている例外的な場合のほか、著作権者に無断で利用することはできない。
他人の著作物を利用する方法としては、以下の四つの方法がある。①著作権者から著作物
の利用について許諾を受ける(第六十三条)
。②出版権の設定を受ける(第七十九条∼第八
十八条)
。③著作権の譲渡を受ける(第六十一条)
。④文化庁長官の裁定を受ける(第六十
七条∼第六十九条)
。このように、著作物を利用するためには大変な手間と時間がかかるこ
16
卒論 99 板垣 高木ゼミ
とがわかる。
我が国で保護されているものかどうか
NO
① 日本国民の著作物
② 日本国内で最初に発行された著作物
③ 条約によって我が国が保護の義務を負う著作物
以上の三つの条件のいずれかに該当するものは保護される。
YES
NO
保護期間内のものであるかどうか
)
(保護期間の原則は著作者の死後50年間だが、例外に注意が必要である。
YES
YES
許諾なく使える場合かどうか
NO
著作権者を調べ、利用の許諾等を得る
)
(著作権者から許諾等を得るのが原則である。著作権管理団体から許諾を得られる場合がある。
利
用
出典「著作権法入門(平成 10 年度版)
」
図1 著作物を利用する場合の手順
(著作権法令研究会、1998)
2.3.3 電子図書館における著作権問題
国立国会図書館の「電子図書館構想」は、電子図書館は、国立国会図書館が収集した電
子出版物あるいは電子化した資料をサーバーに蓄積し、通信ネットワークを介して提供す
るものであるため、その実現にあたっては、著作権法に規定する複製権(第 21 条)及び公
衆送信権等(第 23 条)が関係すると述べている。一方、図書館等は、著作権法第 31 条に
より、その利用者の求めに応じて当該利用者の調査研究の用に供する場合、図書館の資料
の保存のため必要がある場合等に限り、著作権者の許諾を得ずに著作物を複製することが
できる。しかし、電子図書館の実現のために必要な複製を、著作権法第 31 条で対応するこ
とは困難である(国立国会図書館、1998)とも述べている。著作権が消滅したものや著作
権が及ばないものだけを電子化し、提供するということも可能だろうが、著作権が及ぶ著
作物が多い中、それでは電子図書館が備える内容として不十分であろう。また、新しい情
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卒論 99 板垣 高木ゼミ
報をできるだけ早く入手したいという利用者には対応できないことになる。そのようなこ
とから、電子図書館を構築するにあたり、やはり著作権法のことを考慮することになると
思われる。電子図書館において著作権に関する問題点は次のようなものが考えられる。
(1)資料の電子化
著作権の消滅した著作物についてはすべてを電子化し、提供することができるだろう。
吉田は次のように述べている。著作権の及ぶ著作物を電子化し、また蓄積するというこ
とは著作権法上では「複製」にあたる。著作権法第 31 条では「図書館等における複製」
について規定されているが、その適用範囲は限定的であり、資料の電子化一般にこの規
定を適用することは難しい。したがって、図書館は原則的には関係する著作権者等との
間で複製に関する権利処理を行うことが必要となってくる(原田ら、1999)
。著作権法で
は複製権(第 21 条)が規定されていることもあり、資料の電子化については著作物を利
用するのなら、基本的に著作物毎に複製権を得るための対応が必要である。
(2)利用者への提供方法
著作物等の複製物を提供するにあたって、著作権法第 31 条の適用を考える事ができる
が、その適用範囲を超える場合たとえば個々の著作物等の全部を複製することなどは著
作権者の許諾が必要になる。また、
「電子図書館による提供方法には、閲覧、プリントア
ウト、ダウンロード及びナビゲーションがある」とあるが(国立国会図書館、1998)
、た
とえば、著作物のすべてをプリントアウトするなど違法なことが行われる危険性がある。
そのような違法行為を避けるためにもサービスの範囲について制度的に明確にするとと
もに、それを実現する技術の開発が必要となってくる。
(3)ネットワークサービス
電子図書館ではネットワークサービスを通じて図書館に直接行かない利用者に対して
も図書館の資料を提供できるという点に特徴がある。このことも著作権に関わる問題が生
じる。
ネットワークで著作物を公衆に送信するということには「公衆送信権」(第 23 条)が関
係してくる。公衆送信権には、公衆に対して送信する行為そのものだけでなく、インター
ネットのホームページに著作物をアップロードすることなどを意味する「送信可能化」と
いう行為にも及ぶと考えられる(著作権法令研究会、1998)。
また、公衆送信権・送信可能化権については、複製権のように図書館を対象とした権利
制限規定は設けられていないから、営利・非営利、利用者の利用目的、著作権等の一部・
全部などの如何に関わらず、公衆送信権・送信可能化権の処理が必要となってくる(原田
ら、1999)
。
資料の電子化やネットワークサービスなど、主だった問題を例に挙げたが、谷口による
18
卒論 99 板垣 高木ゼミ
と電子図書館は従来の図書館と違い、「ネットワーク上での利用を前提にするために、これ
までの図書館利用でのさまざまな制約条件が減少する」と述べられている。さらに「時間
的空間的な制約はほぼ解消するであろう」(谷口、1998)と述べられているように、図書館
に比べ利用方法などが便利になると同時に著作権にかかわる問題が容易に生じると思われ
る。そういったことをふまえ、電子図書館での規則を慎重に作ることは重要だろう。図書
館での対応の仕方も現状から大きく変化することを考慮しなければならないであろう。
また、規則について、吉田は次のように述べている。電子図書館においても、現状の図
書館が行っている「貸出」
、すなわち利用者に情報そのものを期限付きで「貸出」、
「返却」
を受ける機能が必要となる。貸し出すデジタル情報に著作権がある場合には、著作権の保
護を考慮した運用管理機能が必要となる。この機能は、①適正な利用者に対する情報の提
供、②不正な利用者による情報の横流しの防止と不正利用の検出、③不正な利用者による
情報の盗聴・改竄の防止、を満たす必要がある(原田ら、1999)
。
著作権保護運用管理を実現するために具体的に必要と思われる機能を、以下の表 4 に示
す。
表 4 著作権保護運用管理機能
1. 検査機能
2. 認証機能
3. ログ取得機能
4. 暗 号 化 し て 送 付 す る
機能
5. 複合化機能
利用者の求める情報が著作権保護の対象となっているか否
かの検査機能
利用者(貸出要求者)の認証機能
貸し出す情報に付加情報(著作者/情報提供者に関する情報、
利用条件、借用者名、貸出日付等)の設定、「電子透かし」
の埋め込みと貸出情報のログ取得機能
貸し出す情報と付加情報を暗号化して送付する機能
暗号化された情報の複合化機能
6. 通知する機能
情報を受信したことを通知する機能
7. 課金する機能
貸し出した情報が課金対象ならば、課金する機能
8. 利用者による参照
利用者による参照
・付加情報を参照。必要に応じて著作者、あるいは情報提
供者とのコミュニケーションを支援する機能
・ 利用条件に対応した参照制御(例えば、複写処理や印刷
処理の抑止等)機能
・ 貸出期間外の参照抑止機能
利用者による返却支援機能
9. 返却支援機能
10. 更新機能
貸出情報のログの更新機能
出典「電子図書館」
(原田ら、1999)
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卒論 99 板垣 高木ゼミ
表 4 は電子図書館における「貸出」、
「返却」について著作権の保護を考慮に入れている
点で重要だと思われる。
「返却」ということを考慮する機能として、課金や参照抑止機能な
どを導き出している点で、電子図書館には必要だと思われる。
電子図書館が確立し、図書館の利用が今までと比べて便利で自由になると同時に、それ
に伴い著作権の問題が生じやすくなるので、著作権を考慮にいれた規則をなるべく早い段
階で作ることが望まれる。さらに、規則を実現させるため「著作権保護運用管理機能」の
ようなシステムも必要になると思われる。
また、大原によると、最近、図書館法の改正が検討されているようであり、その一部と
して「図書館利用の無料原則」をも再検討しようという動きもあると聞いている(大原、
1998)とある。さらに大原は、著作権料という新しい料金をどこでどういう形で負担する
のか(大原、1998)という課題をあげている。著作権料がどのくらいかかるのか、どのよ
うに関わってくるのかはわからないが、
「情報は無料ではない」
(大原、1998)とも述べら
れているように、電子図書館では、著作権にかかわる形で料金徴収について考える必要が
出てくるように思う。
2.3.4 電子図書館における料金の徴収
前にも述べたように、電子図書館で扱う情報は著作権が及ぶ著作物が多い。
著作権法の第 31 条では、図書館等における複製について規定されている。これは、2.3.1
の(5)でも述べたが、ある条件の下に著作権者に許諾を得ることなく著作物を利用できる
というもので、著作権法令研究会は次のように記している。著作物を利用するときは、い
かなる場合であっても、著作物を利用しようとするたびごとに、著作権者の許諾を受け、
必要であれば使用料を支払わなければならないとすると、文化的所産である著作物の公正
で円滑な利用が妨げられ、かえって文化の発展に寄与することを目的とする著作権制度の
趣旨に反することにもなりかねないためである。しかし、著作権者の利益を不当に害さな
いように、また、著作物の通常の利用が妨げられることのないよう、その条件は厳密に定
められている(著作権法令研究会、1998)
。今までの図書館では第 31 条の範囲内で行動し
ていた。しかし、電子図書館では限られた条件下である第 31 条では対応が難しい。これに
は大きく分けて2つの問題が関係する。
国立国会図書館の「電子図書館構想」では電子図書館の実現にあたっては著作権法の第
21 条(複製権)
、第 23 条(公衆送信権等)が関係するとある。その条文であるが、第 21
条は、
「著作者は、その著作物を複製する権利を専有する」とあり、第 23 条は「著作者は、
その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあっては送信可能化を含む)を行
20
卒論 99 板垣 高木ゼミ
う権利を専有する」とある。どちらも財産的利益を保護する著作権の一部である(著作権
法令研究会、1998)
。この権利は一部または全部を譲渡したり、相続したりすることができ
るが(第 61 条)
、通常著作権が及ぶ著作物を利用するには著作権者の許諾が必要となる。
この二つの条文をもとにして考えると、2.3.3 でも述べたが、まず複製に関しては適用範囲
が限定的な第 31 条では資料の電子化やその提供についても対応が不十分である。また、公
衆送信に関しては、吉田によると、複製権のように図書館を対象とした権利制限規定は設
けられていない(原田ら、1999)ということを考慮に入れると通信ネットワークを介して
情報を提供する電子図書館は公衆送信について権利処理を行う必要が生じる。
電子図書館においての複製権と公衆送信権等の二つの問題については著作権者との間で
権利処理が必要となってくる。そうなると当然著作権料が関わってくると思われる。普通
ならば著作権料を支払うのは利用者であるが、電子図書館を利用する際には利用者と著作
権者の間に電子図書館が介在するため、利用者が著作権者に直接著作権料を支払うことに
はならないだろう。しかし、電子図書館が著作権料をすべて支払うということになると、
その料金は膨大なものになると想定される。今までのような「無料原則」に比べ電子図書
館の負担は大きすぎるだろう。実際に著作物を利用するのは主に利用者だという点を忘れ
てはならない。したがって、電子図書館が著作権者の代わりに利用者から著作権料を徴収
するという代行のようなことを行うことが考えられる。それを実行するためには、電子図
書館と著作権者の間に著作権料に関する契約を結ぶことが必要となる。そして契約に基づ
いて電子図書館が直接情報を使用する利用者から著作権料を徴収することが将来通常の行
為となる可能性が高い。また、吉田による著作権保護運用管理機能(表 4)は電子図書館に
おける「貸出」
、
「返却」について考えたものであるが(原田ら、1999)
、もし従来のように
本を借りて返却をするのなら「無料原則」でもかまわないだろう。しかし、電子図書館で
は「返却」という概念に問題がある。電子的な情報は複製なども容易にできてしまうこと
が予想されるからである。情報を全文複製するということは一冊の本を手に入れることと
同等のことであり、それ相応の料金を支払うことも当然だろう。このような問題をふまえ
て、利用の仕方によっては料金の徴収をするといった規則を作るなどの対処も必要となる
だろう。そして規則を考えた上で、電子図書館と著作権者の間に著作権料についての契約
を結ぶことになると考えられ、規則の内容によっては利用者から料金徴収を行うこともや
むを得ないだろう。
今までの図書館は第 31 条による保護もあり、著作権の権利処理について考える必要がな
かったが、電子図書館では少なくとも著作権法第 21 条、第 23 条に関して権利処理を行わ
なければならない。また、実際電子図書館が確立し、情報提供を行うときには今まで述べ
たような問題のほかにも著作権に関わる問題が起こりうることは否定できない。そこで考
21
卒論 99 板垣 高木ゼミ
えられることについては規則を作るなどして対処することが必要となる。どの問題にして
も著作権に関わり権利処理が必要になれば、著作権料についても考慮することになる。電
子図書館を利用するにあたっては著作権の観点から、料金徴収に関する規則や著作権者と
の著作権料に関する契約などを考慮し、場合によっては対価の徴収をせざるを得なくなる
状況が出てこざるを得ないという結論に達した。
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卒論 99 板垣 高木ゼミ
3.結論
3.結論
電子図書館は大まかに言えば、現在の図書館のサービスを将来電子的に行うというもの
である。国立国会図書館による電子図書館の基本概念は、図書館、電子図書館の概要が凝
縮されている。基本概念として記された内容によると、図書館は「様々な媒体に記録され
た人間の精神的な営みの成果を収集し、組織化し、保存し、求める人に対して提供」して
いる機関であり、電子図書館は「新しい情報技術を使った従来の図書館サービスの拡張で
あり、電子図書館によって、豊富な情報の入手、地域的その他の情報格差の是正が可能と
なる」
(国立国会図書館、1998)とあった。つまり、電子図書館は図書館の内容を受け継ぎ、
さらには発展させる機関だといえる。電子図書館と図書館は、比較すると仕事の内容や情
報の扱い方・提供などの違いが出てくるが、電子図書館は新しい情報技術を使った従来の
図書館サービスの拡張であることから(国立国会図書館、1998)考えると、仕事やサービ
スの変化などにより違いが出ることは当然のことである。また、新しい情報技術を使うな
どの変化により、多くの課題が出現することも理解することができた。
電子図書館は構想中であり、不確定なため、さまざまな方向からの課題を考えることが
できる。そのような多くの課題の中でも著作権をはじめとする制度的課題は特に重要だと
思われた。
電子図書館では過去の資料はもちろんのこと、常に新しい情報を要求されることが予測
される。その場合、著作権の保護期間や著作権による保護対象から除外されているものだ
けを集めるというわけにはいかない。利用者は新しい情報、つまり著作権の保護期間が満
了しておらず、かつ保護対象内である著作物を利用する場合が多いと考えられた。利用者
のニーズに答えようとするなら著作権のある著作物について適切な権利処理を行わなけれ
ばならない。
2.2.1 の(4)でも記したが、電子図書館はいまだ不確定なものであるため、問題として
起こりうることがいくつも想定される。たとえば、情報を電子的に自分の家で手に入れら
れるという状況において、本を数ページコピーするのではなく、全文をフロッピーの中に
保存するということが可能になる。このような問題が起こりうるのでは、電子図書館での
著作物の利用は著作権法第 31 条だけでは対応できなくなる。つまり、電子図書館時代には
従来の図書館ではあまり考えることのなかった著作権についての権利処理が必要となるこ
とになる。そうなると、当然著作権料のことも考慮に入れなければならない。このような
将来の問題を想定していろいろな規制を行う必要が出てくるとともに著作権料を含めあら
23
卒論 99 板垣 高木ゼミ
ゆる場面で課金が必要とされることが予測された。以上のことを踏まえて考えると、著作
権の観点において、電子図書館において必要な料金徴収に関する規則等を考慮した上で対
価の徴収をせざるを得なくなる状況が出てこざるを得ないという結論に達した。
考察
電子図書館は構想自体が大きく、構想中の概念ということもあり、明確にはわからない
ことが多く、そういう点でまとめにくいものとなった。また、著作権について述べたが、
著作権法の内容をすべて把握することができているわけではないので多少不足していると
ころがあるだろう。もう少し著作権法の理解を深めてから検討したら良かったと思う。さ
らに、著作権だけでなく、ほかの方面からも電子図書館について調査・研究できればもっ
と中身の濃い内容になったのではないだろうか。
今後図書館から電子図書館へと変化しうるように著作権法もこれからの時代に変化に合
わせ、多様な変化を遂げるだろう。将来電子図書館が確立したとき、著作権法も含め、全
体的にどのようなものになっているのかが楽しみである。
24
卒論 99 板垣 高木ゼミ
参考文献
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マルチメディア出版研究会(出版研究センター)
、1996 年
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「紙」
の世界)
、現代の図書館、36(1)
、p15∼20、1998 年 3 月
・ 風間茂彦;
「資料保存」の根源的課題(試論)電子図書館時代をふまえて(特集:電子図
書館と「紙」の世界)
、現代の図書館 36(1)
、p27∼32、1998 年 3 月
・ 栗山正光;電子図書館と著作権処理(特集=著作権 Part4)
、情報の科学と技術 48(8)、
p435∼439、1998 年 8 月
・ 国立国会図書館;国立国会図書館電子図書館構想、国立国会図書館、1998 年、
[URL_ndl] http://www.ndl.go.jp/projects/dento/doc/kousou.html
・ 国立国会図書館;国立国会図書館「電子図書館構想」について(特集 電子図書館)、国
立国会図書館月報 450 p3∼10、1998 年 9 月
・ 谷口敏夫;電子図書館の諸相、白地社、1998 年
・著作権法令研究会;著作権法入門(平成 10 年度版)
社団法人 著作権情報センター、1998 年
・ 著作権法令研究会;著作権法ハンドブック
社団法人 著作権情報センター、1998 年
・豊沢豊雄;中学生にもわかる著作権、騎虎書房、1998 年
・ 長尾 真;電子図書館、岩波書店、1994 年
・ 原田 勝、田屋裕之編;電子図書館、けい草書房、1999 年
・ 宮井 均、市山俊治;電子図書館が見えてきた
NEC クリエイティブ、1999 年
25
卒論 99 板垣 高木ゼミ
資料)−
−著作権法−
著作権法− (平成九年六月十八日改正)
第1条
−目的
この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者
の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留
意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを
目的とする。
第2条
−定義
(第一項のみ)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるとこ
ろによる。
一、著作物
著作物
思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美
術又は音楽の範囲に属するものをいう。
二、著作者
著作者 著作物を創作する者をいう。
七、商業用レコード
商業用レコード 市販の目的をもって製作されるレコードの複製物をいう。
七の二、公衆送信
公衆送信
公衆によって直接受信されることを目的として無線通信又
は有線電気通信の送信(有線電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他
の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している
場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラ
ムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うことをいう。
十五、複製
複製
印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製
することをいい、次に掲げるものについては、それぞれ次に掲げる行為を含む
ものとする。
26
卒論 99 板垣 高木ゼミ
イ、脚本その他これに類する演劇用の著作物
当該著作物の上演、放送また
は有線放送を録音し、または録画すること。
ロ、建築の著作物
建築に関する図面に従って建築物を完成すること。
十九、頒布 有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡し、
又は貸与することをいい、映画の著作物又は映画の著作物において複製されて
いる著作物にあっては、これらの著作物を公衆に提示することを目的として当
該映画の著作物の複製物を譲渡し、又は貸与することを含むものとする。
第6条
−保護を受ける著作物
著作物は、次の各号のいずれかに該当するものに限り、この法律による保護
を受ける。
一、日本国民(わが国の法令に基づいて設立された法人及び国内に主たる事務
所を有する法人を含む。以下同じ。)の著作物
二、最初に国内において発行された著作物(最初にこの法律の施行地外におい
て発行されたが、その発行の日から三十日以内に国内において発行されたもの
を含む。)
三、前二号に掲げるもののほか、条約によりわが国が保護の義務を負う著作物
第 10 条
−著作物の例示
この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
一、小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
二、音楽の著作物
27
卒論 99 板垣 高木ゼミ
三、舞踊又は無言劇の著作物
四、絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
五、建築の著作物
六、地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
七、映画の著作物
八、写真の著作物
九、プログラムの著作物
2、事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物
に該当しない。
3、第一項第九号に掲げる著作物に対するこの法律による保護は、その著作物
を作成するために用いるプログラム言語、規約及び解法に及ばない。この場合
において、これらの用語の意義は、次の各号に定めるところによる。
一、プログラム言語
プログラムを表現する手段としての文字その他の記号及
びその体系をいう。
二、規約
特定のプログラムにおける前号のプログラム言語の用法についての
特別の約束をいう。
三、解法
プログラムにおける電子計算機に対する指令の組合せの方法をいう。
第 13 条
−権利の目的とならない著作物
次の各号のいずれかに該当する著作物は、この章の規定による権利の目的と
なることができない。
一、憲法その他の法令
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卒論 99 板垣 高木ゼミ
二、国又は地方公共団体の機関が発する告示、訓令、通達その他これらに類す
るもの
三、裁判所の判決、決定、命令及び審判並びに行政庁の裁決及び決定で裁判に
準ずる手続きにより行なわれるもの
四、前三号に掲げるものの翻訳物及び編集物で、国又は地方公共団体の機関が
作成するもの
第 17 条
−著作者の権利
著作者は、次条第一項、第十九条第一項及び第二十条第一項に規定する権利
(以下「著作者人格権」という。)並びに第二十一条から第二十八条までに規定
する権利(以下「著作権」という。)を享有する。
2、著作者人格権及び著作権の享有には、いかなる方式の履行をも要しない。
第 21 条
−複製権
著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。
第 23 条
−公衆送信権等
著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあっては
送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
2、著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権
利を専有する。
第 31 条
−図書館等における複製
図書、記録その他の資料を公衆の利用に供することを目的とする図書館その
29
卒論 99 板垣 高木ゼミ
他の施設で政令で定めるもの(以下この条において「図書館等」という。)にお
いては、次に掲げる場合には、その営利を目的としない事業として、図書館等
の図書、記録その他の資料(以下この条において「図書館資料」という。)を用
いて著作物を複製することができる。
一、図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、公表さ
れた著作物の一部分(発行後相当期間を経過した定期刊行物に掲載された
個々の著作物にあっては、その全部)の複製物を一人につき一部提供する場
合
二、図書館資料の保存のため必要がある場合
三、他の図書館等の求めに応じ、絶版その他これに準ずる理由により一般に入手
することが困難な図書館資料の複製物を提供する場合
第 51 条
−保護期間の原則
著作権の存続期間は、著作物の創作の時に始まる。
2、著作権は、この節に別段の定めがある場合を除き、著作者の死後(共同著
作物にあっては、最終に死亡した著作者の死後。次条第一項において同じ。)五
十年を経過するまでの間、存続する。
第61条
−著作権の譲渡
著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる。
2、著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権
利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者
に留保されたものと推定する。
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卒論 99 板垣 高木ゼミ
第63条
−著作物の利用の許諾
著作権者は、他人に対し、その著作物の利用を許諾することができる。
2、前項の許諾を得た者は、その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内におい
て、その許諾に係る著作物を利用することができる。
3、第一項の許諾に係る著作物を利用する権利は、著作権者の承諾を得ない限
り、譲渡することができない。
4、著作物の放送又は有線放送についての第一項の許諾は、契約に別段の定め
がない限り、当該著作物の録音又は録画の許諾を含まないものとする。
5、著作物の送信可能化について第一項の許諾を得た者が、その許諾に係る利
用方法及び条件(送信可能化の回数又は送信可能化に用いる自動公衆送信装置
に係るものを除く。)の範囲内において反復して又は他の自動公衆送信装置を用
いて行う当該著作物の送信可能化については、第二十三条第一項の規定は、適
用しない。
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