▼ 日本の国民一人ひとりが、自ら の「からだ」の「しくみ」を生 かすことで、日本を再生する 「老化」と「 死 」の 役割は、子 孫 に「い のち」を つなぐこと 人の一生をながめると、それは「生まれ・成 長し・次の世代を育て、生きぬき・老化し・死 にゆく」ことだと分かります。時間的な長さ は違いますが一年草の草花と基本的には同じ です。 「春に芽をだし・成長し、花を咲かせ・種を まき・秋に枯れて死にゆく」一年草の草花と 同じです。 お米の一粒が地に入り、芽を出し、苗にな ります。この苗が水と土と大気と太陽の光に より必要なものを取り入れ・吸収し不要なも のを排泄し、成長し、穂が出て何百粒という たくさんの実を結びます。一粒の生物の 「死」 が多くの実を結び、 「いのち」のつなぎがお こなわれているのです。 わたしたち有性生殖をおこなう生物は、オ スの遺伝子とメスの遺伝子が合わさることに より、父であるオスの精子と母であるメスの 卵子が合体するそのことにより、 その父とも、 その母とも異なった新しい生命が生まれま す。この他と違った個性を持つ生物として生 まれることが多様性を生み、環境の変化に適 応する能力を生むことになります。その 「種」 の「いのち」をつなぐ確立を高めることにな るのです。 わたしたちの「からだ」には、 億年の「い のち」をつないできた適応の結果である進化 ▲ 健康状態から要介護状態になるまで、一定の 中間の期間があります。この時期を欧米では (フレイルテイー)とよんでいます Fraility は 虚 弱 と い う 意 味 で す。 平 成 年 Fraility 5月日本老年医学会は「高齢者の多くは、フ なるので、フレイルの早期発見をして対処す レイルの段階(図2)を経て、要介護状態に がその「しくみ」をふまえずに医療にあたる ることが必要だ」と医療・介護関係者に呼び これらのことに対し、わたしの基本的な考 え方を述べてゆきます。 いうことです。 つまり、高齢者の病気の発症と介護の予防 をおこなうために未然に手をうちましょうと かけました。 ことは大きな解決できない問題をはらむこと になります。 病気と介護にいたるまでの 予防について 2025年問題を踏まえて医療関係者が真 摯にいろいろな提案をされています。 ②「 健 康 体 と 慢 性 疾 患 の 関 係 」( 図 3) に あ 例えば、井村裕夫 公益財団法人先端医療 ①「老化」と「死」は多細胞生物である人に とって正常なできごとであること。 振興財団 名誉理事長が「先制医療」(図1) らわされるように 「健康体」を起点にして次第に慢性疾患にい たる道筋・関係があり、逆方向にいたる道 筋・関係もあること。 ③そのうえ「健康体の特徴」である「上腹部 健康体と慢性疾患の関係 肝臓病・腎 臓病 等 じのことだとおもいます。 そ れ ら の こ と か ら、「 先 制 医 療 」 と「 フ レ イル」に対して提案させていただきます。 のち」をつなぐ大切な役割があることを自 覚するとともに ②「先制医療」の概念での「発症前期」と健 康と要支援・要介護状態の中間にある「フ レイル」の状態では、「からだ」全体の「は た ら き 」 が 低 下 し て い る た め、「 上 腹 部 の ③ そ の た め、「 発 症 前 期 」 と「 フ レ イ ル 」 の 柔軟性」は固くなっていること。 部 の 柔 軟 性 」 が や わ ら か く、「 か ら だ 」 全 に振れなかったりとい 試合にも臨んできまし です。本人はもちろん、 くなりました。頚を右 としてすえれば、病の発症・介護に至る手前 くことがむつかしかっ てきました。 で よ り 的 確 に 発 見 で き、「 上 腹 部 の 柔 軟 性 」 たり、バットを振って 空手部でもキャプテ に左に回すこともでき も、もう一つスムーズ ンとして大学生相手に ません。驚くべき変化 を回復させることによって「先制医療」が目 指す病気の発症予防が、「フレイル」が目指 ぎこちないということ れらの変化が現れたの また、高校時代は空 は、いつも感じていた は 紛 れ も な い 事 実 で 手をして拳をつき、蹴 のです。 す。 ばないのです。 ボールが伸びないので つになっていない。ど ただ、事実として妊 す。遠くへ勢いよく飛 うもいろいろな動作が 娠後、姿勢と動作にそ わたしにもどういうこ す介護予防ができることを提案させていただ うことが多かったので た。 しかし、なにかおか とが起こったのか理解 す。ボールをバットの きます。 それでは前回と同じく、「上腹部の柔軟性」 芯でとらえても打った し い。「 か ら だ 」 が 一 できませんでした。 という「新しい概念」にいたる道を述べてゆ きます。 それと同時に「上腹部の柔軟性」と「人体 力学」の関係を詳述し、その後、菊地臣一福 島県立医科大学学長・理事長出演・監修のNH Kスペシャル『「腰痛・治療革命」~見えてき りを入れても、もう一 もちろん、その当時 ど う し た ん だ ろ う。 た痛みのメカニズム』を題材にし、「からだ」 つキレがないと感じて はまさか内臓そのもの なぜこうなったんだろ いました。おかしいな、 の 動 き が 悪 い た め に う。あまりの変化に二 康体の特徴」である「上腹部の柔軟性」と「人 じていたのです。 なぜだろうといつも感 「 上 腹 部 の 柔 軟 性 」 が 人とも気が動転するば の「しくみ」がスムーズにはたらく状態=「健 体力学」の関係を核にすえ、「腑に落ちる」 ・ 「納 また、背中が少し丸 全体の重心が不安定に しかし、ある日一つ まっていたり、のどぼ な っ た た め、 腰・ 膝・ の明らかな変化に気づ など空中動作がどうも した。 ているのが分かったの なった状態です。みぞ ジャンピングシュート 知る由もありませんで 腹 部 が ぺ し ゃ ん こ に マ ッ ト 運 動・ 鉄 棒・ り、 ど う い う「 し く いうと、みぞおち部分 バスケットボールでの み」になっているかは が膨らみ固くなり、下 いました。 そ の 原 因 が な に で、 です。胸腹(むねばら) すでに頚が左に傾いて ど う い う 経 過 を た ど とはどういう状態かと た 記 念 写 真 を 見 る と、 ませんでした。 のランドセルを背負っ ているとは思いもより ねばらー図4)になっ ました。小学校入学時 動きのぎこちなさが出 かに俗にいう胸腹(む 関節が痛んだりしてい し、この「からだ」の ぞおち部分が、あきら 長距離を歩くと右の股 余分な力学的負担が増 妊娠前と比べ、妻のみ り、 O 脚 で あ っ た り、 る「からだ」の部分に 良 く 観 察 し て み る と、 と け が 前 に 出 て い た 頚 だ け で な く あ ら ゆ く く こ と に な り ま す。 固 く な り、 「 か ら だ 」 かりです。 得がいく」・「違和感のない」新しい概念の実 際を述べてゆきたいと思います。 《原始の単細胞の生命から 人体力学に至るまで》 【Ⅰ「入り出」の原動力=「体 液の移動」による「体腔圧の変 動」と人体の「正常機能・構造・ 形態」との関係】 前回までに大枠を説明させていただきまし た。 【Ⅱ「体腔圧の変動」状態が「上 腹部の柔軟性」の程度にあらわ れ、人類の姿・ ・形 形と ・な 動っ 作て とい 密る 接】 な関係がある】 れば早期発見できること。 ありません。 ようやく大きな解決 ンの影響がひとつの大 障害があったわけでも の糸口がつかまれるこ きな原因ですが、その す。妊娠によるホルモ しかし、その大きな おち部分が膨らんで固 苦手でした。 別に平衡感覚を司る 原因究明に至るキッカ く胸のようにせり出し 「か て い る よ う な 状 態 で 小 脳 に 異 常 が あ っ た ケが妻の妊娠による の「呼吸・循環・人体力学・自律神経・内臓全 般の動き」がととのうために病気の発症予 防と介護予防ができること。 しかも、痛みがあっ とになったのです。わ 確かな「しくみ」は未 て生活できないわけで たし自身の長年の疑問 だ分かっていません。 「 上 腹 部 の 柔 軟 性 」 観察 と「人体力学(姿勢と ③ 日 々 の 診 療 の 中 で はありません。普通に も氷解することになっ ただ、事実として妊 は生活できるし、高校 たのです。 娠―ホルモンの異常― す。 でないと歩けない、手 つまり、わたし自身の トップでテープを切っ ことになったのです。 頚が回らない、すり足 「からだ」と家族の日 が上がらないなどの姿 勢と動作の異常がある けです。 今回は、妊娠した妻 腹(むねばら)と姿勢 例えば、おぎゃーと の人体力学(姿勢と動 と動作の異常にいたる 泣いても何を求めて泣 作)に絞った話です。 「 し く み 」 は 分 か り ま また肘があたってしま て泣いているのか、お 階段を2段飛ばしで飛 過を述べてゆきたいと いているのか、その違 になり、背中が、腰が、 う変化が出てきたのか い通路でしたら、わた てもきちっと相手に届 4人の出産があり、子 また腕が上に挙がらな きます。 くるのです。幅のせま ですが、ボールを投げ てきます。6年の間に な ら な く な り ま し た。 いたる経過を述べてゆ いるつもりでも、まっ その後は野球部に入 いが段々と手に取るよ 膝がまがり、すり足で を 詳 し く お 話 し し て、 すぐ歩けずに片寄って りそこそこはできるの うに分かるようになっ ないと歩くこともまま その「しくみ」発見に 自身がまっすぐ歩いて た。 あったりすると、自分 し た 経 験 が あ り ま し かまってほしいから泣 いていたのが前かがみ 目にいたってはどうい しでもお腹に不快感が 走の練習で胃腸をこわ ているのか、寂しくて 伸ばしてさっそうと歩 二人目の子供から四人 も と も と 胃 腸 の 弱 うのです。 しっこ・うんちゃんで ん で 走 っ て い た 妻 が、 思います。ROB治療 かったわたしは元気な 振 り 返 っ て み る と、 気持ちが悪くて泣いて べた靴でないと歩けな でどういう変化が「か 時はいいのですが、少 中学1年の時に長距離 いるのか、暑くて泣い くなり、ピンと背筋を らだ」に出てきたのか、 ていただきます。 いているのかはじめの その妻が第一子を妊 せんでした。 大事なところなので しは壁にあたらないよ うちは分かりません。 娠すると姿勢・動作に 前回紹介したわたしの うに避けて歩いている しかし、慣れるにし 劇的な変化が現れまし 次回はその「しくみ」 体験を再度お話しさせ つ も り で も、 足 先 が、 たがってお腹を空かし た。ハイヒールをはき を発見するにいたる経 【Ⅳわたし自身の「からだ」の 気づきについて(特に人体力学 =姿勢と動作の観点から) 】 らだ」の実際の体験 変化を日々の診療の中 かかわってきました。 夢中で、振り返ってみ しかし、その時点で ② 日 常 生 活 に お け る で観察させていただい 子育ては最初のうち れば泣き笑いの連続で は、それらの関係は未 家族の行動・子育ての て見えてきたのです。 は分からないことだら した。 だ 不 確 か で し た。 胸 さんの生活と「からだ」 私は妻とともに4人 育てをしてきましたが という関係に気づくこ ては、 ① わ た し 自 身 の「 か の 状 態・「 こ こ ろ 」 の の子の出産・子育てに 特に3人目からは無我 とになったのです。 動 作 )」 の 関 係 に つ い を感じ取り、また患者 「上腹部の柔軟性」 【Ⅴ妻の妊娠による「か らだ」の と「人体力学(姿勢と 常の「からだ」の変化 変化が大きな発見につながる】 発想) ( 体 験 と 観 察 に 基 づ く のです。 あーあそうか、なる 胸腹(むねばら)―背 から、生まれてきたも 時代の体育祭では40 0メートル走で3年間 ほ ど と「 腑 に 落 ち る 」 中・ 腰・ 膝 の 曲 が り、 そ の た め、「 上 腹 部 の 柔 軟 性 」 を「 指 標 」 動 作 )」 に 的 を 絞 り ま の臨床的研究 ズに運ぶこと。 ⑤そして「老化」と「死」そのものがスムー 【Ⅲ人体力学発見に至る経緯に ついて】 前回までに大枠を説明させていただきまし ④その早期発見した時点で「上腹部の柔軟性」 た。 り、筋肉・骨・関節に らだ」の変化でした。 状態を「上腹部の柔軟性」を「指標」とす が固くなっていること。 ⑤つまり、「上腹部の柔軟性」がやわらかい 時は、「呼吸・循環・人体力学・自律神経・内 臓全般の動き」がととのっていること、「上 腹部の柔軟性」が固い時は、「呼吸・循環・ 人体力学・自律神経・内臓全般の動き」が低 下していること。 を回復していくと、その人の、その時点で 体の状態が悪いときは、「上腹部の柔軟性」 「からだ」全体の状態がよいときは、「上腹 が「 上 腹 部 の 柔 軟 性 」 に あ ら わ れ る こ と。 ④その時の、その人の「からだ」全体の状態 (表1)があること。 る・穏やかな死に至る」ことに密接な関係 きる・予防する・的確に治療する・ケアーす で あ り、「 上 腹 部 の 柔 軟 性 」 と「 元 気 で 生 神経・内臓全般の動き」が一心同体(表1) ①高齢者は、「老化」と「死」を通じて子孫に「い の柔軟性」と「呼吸・循環・人体力学・自律 その他 皮膚 第2ゾーン 生化学 免疫 手・足・顔の むくみ ガン・リウマチ・クロー 三大特徴 重心が不安 ン病・重症筋無力症 定になる アレルギー・アナフィ 不定愁訴 全身の浅黒 腰・膝が曲が 内臓機能低下 ラキーショック い状態 る・腰のだる 第1ゾーン 人体力学 さ、重さ・痛 健康体 第3ゾーン 数値異常・器質的変化・病気 難聴・耳鳴り・めまい・視 力低下・白内障 肺ガン・COPD・ 肺炎・ゼンソク・ 睡眠時無呼吸 早食い・大食・冷食・酒 円形脱毛症・アトピー・乾燥 肌・皮膚のただれ等 生活レベルの低下 腰椎ヘルニア・変形性膝関節症・ 股関節症・外反母趾・肩頚の痛 呼吸の深浅 足のひび割れ・ しもやけ・こむ らがえり・冷え・ いきぎれ のぼせ・顔から の汗 甲状腺機能低下・亢 進・生理不順・生理 痛・不妊 体液の循環 取り入れ・消化・吸収・排泄 自律神経 高血圧・脳卒中・心筋梗塞 脳卒中・認知症 慢性胃炎・胃腸病・腸閉 塞・便秘・下痢・痔 神経症・統合失調症・不 眠・キッチンドリンカー 26 以上5点については、本紙でくりかえし述 べてきましたのでもうみなさんすでにごぞん 図1 の痕跡が刻み込まれています。わたしたち一 を、大内尉義 日本老年医学会理事長は「フ レイル」(図2)という概念をそれぞれ提案 ■人間の体の自然な「しくみ」が生かされ ROB 治療で人生が統合される!! 人ひとりの「からだ」には、幾多の困難を乗 り越えてきた構造と機能と形態=「しくみ」 を備えています。 よりよく 「いのち」 をつなぐために 「からだ」 にプログラムされたその「しくみ」の一つが、 多細胞生物である人にとっての 「老化」 と 「死」 なのです。 「老化」と「死」は、父・母とは違 う個性と多様性をもつ次の世代が、よりよく 適応できる状態を後押ししてくれているので 多 細 胞 生 物 に よ る 有 性 生 殖 に よ っ て、 異 なった個性をもつ、多様性のある、環境変化 されておられます。 こなうものです。 延・防止を目的に診断・予測、治療的介入をお 「 先 制 医 療 」 で は 発 症 前 期( 図 1) の 段 階 す。その新たに生まれた子孫の適応力を生か すために父母の「老化」と「死」があります。 で、医科学的にその状態をとらえ、発症の遅 「老化」と「死」には生物が生きのびるた めの大きな役割があったのです。生物が「い ROB 治療で「上腹部の柔軟性」が正常化されると・・・ 「入り出」がととのい、深く長くここちよい呼気ができる のち」をつなぐために適応し、その結果でき ~人間の生死は「上腹部の柔軟性」が指標となる~ また「フレイル」とは、一般的に高齢者は ●生きる力がつく ⇒ 生き方が身につく ●総合的免疫力がつく ⇒ 予防ができる ●自然の治癒力がつく ⇒ 治療が的確に ●自然なバランス力がつく ⇒ 自然なケアー ●自然な死への流れができる ⇒穏やかな死 図4 石垣 邦彦 に対して適応力のある新たな生命が生まれま す。 たまご理論で病気のしくみを考える ・呼吸が深くなり ・循環が良くなり ・人体力学が安定し ・自律神経がととのい ・内臓全般の動きが活発になる た、すばらしい「しくみ」なのです。すばら しいプログラムされた役割なのです。生物が 生き残るための大事な「きまり」といってい いでしょう。 そのため、 生物としての人が、「老化」 と 「死」 を忌み、嫌うことは、多細胞生物として存在 する人の「きまり」に反するものです。 その「きまり」を、腑に落ちるまで納得せ ず、覚悟なしに、高齢者が、その家族が医療 にその「老化」と「死」にいたる道程を丸投 げするのは、 「いのち」をつなぐ自分自身の 役割を否定することになります。また、医師 人は楽しむために生まれてきた! 図3 ⑰ 〒 581-0061 大阪府八尾市春日町 1-4-4 電話 072 (991)3398 FAX 072 (991)4498 ホームページアドレス http://www.tamagobl.com/ たまごビル院長 40 ホルモン 「フレイル」 の位置づけ 図2 健康体を活かす医療 今後のあるべき医療 表1 平成28年6月15日(水曜日) 聞 新 内 河 第 1 2 5 2 号 (昭和56年10月19日・第 3 種郵便物認可) (3)
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