2013 年 10 月 3 日ロイヤリング講義 講師:弁護士 苗村 博子先生 議事録作成者:斎藤理沙 「企業法務について大事なこと」 導入 今回の講義は、民法や会社法の知識をつけるのではなく、ロイヤーがどんなことをして いるかを伝えるもの。 自己紹介 苗村博子先生。26 歳で弁護士に。もともとは、町の弁護士として、個人の抱える問題を 解決するために弁護士になるが、その後シカゴ大学で1年学び、企業法務の道に。 シカゴ大学は、法と経済の大学であり、(シカゴ学派)、経済的価値を法律にとりこんでい るような所。ニューヨークの司法試験の勉強は2か月ほどであり、合格する(当時、日本の 司法試験は世界で一番難しい試験であるといわれていたが、勉強は日本の司法試験より大 変であった)その後アメリカのローファームで研修し、日本に。英語や、アメリカ法の知識 を活かせる仕事がしたいという思いから、企業法務の道に進む。 普段の業務の中心はほぼ企業法務。ほぼ毎日アメリカの弁護士とメールなどでやりとり をしている。 1. 課題の検討 (ア) 法的観点 ① 香料メーカーに債務不履行責任を問えるか (本文読む) これは、法務部にいったときにはこういう書き方をするという例です。企業法務という のは、同じお客様に何度も接することが多い。ゆえに最初の相談はメールで始まったりす る。このメールが、今日の課題です。 弁護士は、企業の案件を扱うときには、なるべく企業は、その会社がどんなことをして いるか、普段から雑談も含めて、聞いているようにしています。私も、製薬メーカーだっ たり、部品のメーカーさんだったり、銀行さんだったりいろんなところとお付き合いして いるが、そこの部署がどんなことを担当しているのか、よく聞くようにしています。 ではまず、質問を理解するところからいきたいと思います。 共同開発という言葉がありますね。共同開発とはどんなことをさしていると思いますか? 学生:研究 そうですね。独特のうまみを引き出すためにまず研究からはじまる。ということは、一 緒に研究して、実際にものになるところまで開発するものが、共同開発といいます。その ためには、共同研究開発契約書なるものを作ったりいたします。 では、そこでできあがった香料のレシピはだれのものでしょう? 学生:二人の者 そうですね。 「共有」というふうにいいます。 この、レシピも財産になることがあります。共有という話がでたが、共同でやったのだか ら、二人のものだろうという考え方です。ものの場合だったら、半分を誰のもの、半分を 誰のもの、とできるが、ここでは物をつくりあげるところから始まるので、作ったひとた ちで共有するのが通常の形です。 では、ときにはレシピも財産になるといったが、では、どんな財産になる可能性がある でしょうか? 学生:知的財産 そうですね。知的財産という難しい言葉がでてきます。では、知的財産、目に見えない 「レシピ」がどうして財産になるのか? 学生:産業や社会の発展に寄与するものだから それだったら、誰かの財産にせずにみんなのものにした方がいいと思う人? みなさん独り占めがいいですか?このレシピは門外不出よ、というコカコーラ方式がいいで すか?コカコーラのレシピは門外不出だそうです。知的財産は、産業や社会の発展に寄与す るのに、それはひとりの財産として認めましょう、ということになっているのですね。 では、そのような財産を一人の財産として認めるべきなのか?これはみんなに考えてもら いましょう。 学生:そうしておいた方が、競合が少なくなるから そうですね。でも、競合が少なくなると、おいしいものを作ってくれなくなるかもしれ ません。 学生: (認めなければ)企業のインセンティブがなくなるから 大変よいお答えでした。 では、インセンティブとは、どんなインセンティブなんだろうか? 学生:企業が商品を使ってその期間企業は、利益が得られる。 そうですね。利益が得られるということは、大きなインセンティブになる。 では、なんのためのインセンティブになるでしょうか?こんな利益を得られるなら、頑張っ て、いいレシピを作ろうと思うでしょう。その間、しばらく自分だけが使えるのだから。 となると、研究からスタートする開発のインセンティブがわいてくるでしょう。それでも、 みんなが思いつくようなものではいけないので、発明とよばれるものに対して権利が与え られます。 では、発明に対してあたえられる権利はなんでしょう? 学生:特許権 そうですね特許権は 20 年のあいだ独占することができます。 では、どうしてもその競業者が発明を使いたかったらどうすればよいか? 学生:譲渡すればよい それも一つの方法ですね。では、譲渡してくれなかったらどうすればよいか? 学生:使わせてあげる そうです。実施の許諾といいます。英語では、ライセンス契約、そこで払ってもらうも のをロイヤルティといいます。 このようにして、貸してあげてみんなが使えるようにすれば、一人の人に独占させても、 全体が発展していくことができるでしょう。社会も発展する、開発の意欲もわく、という ことで、知的財産いうのは、目に見えないが、国が与え、国が財産として認めているもの です。 (本文へ戻る) 前年比という言葉がありました。前年比とはなんでしょうか? これは法律用語ではなく、 経済的な用語です。 学生:昨年の、同時期と比べた売上 その通り。 (この事例では、 )昨年は 200 億の売り上げがあったところ、前年比の 60%だから、120 億 円となります。 では、 (本件では)原料が底をつきたのは、いつごろでしょうか?3 月の上旬?中旬?下旬? この会社は、2 週間ぶんの在庫しか持たないようにしていたのはなぜでしょう? 学生:コストダウン、仕入れ値を減らし、管理コストを増やすため 今、二つのことを言ってくれました。この会社は、仕入れ、温度や湿度設定などの管理、 という二つに大金を払うことを、嫌ったわけですね。 では、そのような措置をどう思いますか? 学生:こんなことをあることも考えると、リスク管理の観点から、もうすこし増やして も良いのではないか、と思います。 なるほど。ビジネス感覚がとても良いですね。先ほど、コストを回避するといったが、 コストというのも一つのリスクですね。それを回避しようという考えもあるが、彼は、在 庫を持っておいた方がリスクが回避できるといいました。 では「こんなこと」とはなんでしょう? 彼が考えている、リスクとは? 私は、京都に住んでいるが、渡月橋が川の増水であのようになるとは思っていなかった。 天候や気候の変動で、材料のサプライチェーンが壊れてしまうことがあるということです。 このようなリスクもあります。そんなことがおこらないなら、在庫を持たずに、なるべく 購入代金などを下げたほうが、よい。だが、このようなことがおこるなら、在庫を多めに 持っておいたほうがよい、これは、非常にまっとうな経営感覚です。 コストを減らすために、在庫は少なく持つべきだという考えがあります。この在庫をも たないというやり方をはじめたのは、聞いた話ですが、トヨタだといわれています。 トヨタの看板方式という言葉を聞いたことがありますか。工場のなかで、看板に何がたり ないかを書くと、購買部門の人たちが、原材料のメーカーさんからその部品をとどけても らう。そうすることによってトヨタは、原材料をたくさん抱えておく必要がなくなり、結 果的に利益率がよくなった。これを看板方式といい、各社が直ちにこの方式を取り入れた そうです。 少し話が脱線しますが、98 年、バーツ、ウォンの価値が急激に下がったことに端を発す るアジア危機のなかで、世界的なコピーの三田工業が会社更生となってしまいました。現 在は京セラの傘下にはいっています。そこで、私は香港の工場を担当することになりまし た。ものがつくれないことがわかるとまずいので、なんとしてでも製造を続けろという命 令をボスからうけますか。そこで、香港で、部品はどれくらいありますか、とみなさんに 聞いたとき、どれくらいの在庫があったと思いますか。 学生:3 日 いい勘をしていますね。4 日です。実はたった 4 日分しかもっていなかったんです。 ものすごく大変でした。香港じゅうを歩き回って、お願いして回った。幸いなことにお盆 だったので、休みの日をいれて 9 日間のうちで全部の部品が整えば、生産が再開できる、 ということで、香港じゅうを回っていました。 ところが、2011 年 3 月の大震災で車のメーカーにどのようなことが起こったでしょうか? 精密部品を東北で作っている企業がけっこう多かったので、いきなり自動車やバイクが作 れなくなってしまいました。そして、翌年の 12 月には、車のメーカーを大きなリスクが襲 いました。なんだと思いますか? 学生:洪水 タイで大洪水がおこりました。タイのバンコクの近くのアユタヤがすっかり水につかっ てしまったんです。ということで、またサプライチェーンが寸断されてしまったんですね。 またまたものが作れないということは、当然、売り上げが下がってしまいますね。 平穏な時がずっと続くのであれば、在庫を限りなく少なくするべきです。しかし、今後、 何があるかわからないことを考えると、もうすこし、1 か月、2 か月、1 年、それは会社が 判断するが、どれくらいの期間で、何かあってもサプライチェーンをもとにもどせるかを 考える必要があります。 では、他に、サプライチェーンが寸断されるというリスクを防ぐ方法はなにがあるでし ょうか? 学生:複数の取引先をもつ そうですね。二者といわず、複数といいましたね。みなさんせっかくなので企業用語を 覚えましょう。 「複数購買」という考え方は 一社がだめになっても、他の地方に工場をも ち、対応できるようにすることです。 では、本件で、この会社にそんなことができるでしょうか? 学生:できない できないかもしれませんね。なぜでしょうか? 学生:香料のレシピは共有になっている そうですね。この香料は、共有になっているので、契約書では、その発明は共有になっ ているでしょう。この香料は、自分たちが使う分にはよいが、よそに使わせてはおいけな いとなっている可能性が高い。となると、ここから買うしかない。ということで、これは 複数購買が難しいのかもしれません。しかし場合によっては、あなたのところが作れない という事態を想定し、そのレシピを、その時には、他に開示することを認める、というよ うな契約をつくることもありうるかもしれません。これからはそのようなことを考えてお かないと、対応ができない可能性があります なので、もう一つの方法は、一年分もつことがあるのですが、この香料を作るのをやめま す、取引をやめます、ということがあるかもしれません。なので、場合によっては、そん なことがあれば、その発明を買い取るとか、第三者に使わせることを認めるとか、そんな ことを考えておくのもあると思います。 二つは、その発明を買い取ることができるようにしておくとか、他者につかわせるよう にしておく、ということです。 (本文に戻る) 当社は三月末決算なので、とあります。 「決算」とはなんでしょうか? 一年間の売り上げやかかった経費、資産状況の変化を一年後ごとに考えていこうという考 え方です。これが国の機関ですと、予算と決算がありまして、予算通りにかないとまずい ということがあります。しかし会社の場合ですと、予算通りにいかなくてもよいのです。 収益が増える方向であれば問題はありません。 財務諸表という言葉があります。重要な財務諸表のひとつに、貸借対照法というものが あります。貸しと借り、どちらが多いかを比べましょうというものです。照らし合わせる Debt から Profit をひいた値がマイナスになることを、債務超過になるといいますが、そん なことにならないように、会社は管理しておく必要があります。もう一つ、profit と loss のどちらが多いかを計算するのを、損益計算書といいます。 当社は3月末決算なので、3月で一度締めました。4 月からはじまるわけです。 ものがつくれなくなったのは、3 月からなので、まだ、このことが売り上げダウンにはそん なに影響していない、ということになります。 しかし、4 月はどんどん売り上げが下がってしまい、4 月から 6 月までをみると、60%に なってしまったので、収益の大幅な下方修正をしました、と書いてあります。 その手前で、四半期、と書いてあります 四半期、とはなんでしょうか?当社は 3 月末決算です。この会社の第一四半期はいつです か? 学生:1 月から 3 月 期間は 3 か月で正解です。この会社が 3 月末決算なので、いつから始まるか? 学生:4 月から そうですね。日本は、3 月末決算の会社が一番多いです。この会社は 4 月から 6 月を第一 四半期といいます。 12 か月を 4 で割った、3 か月ごとに、収支がどうかをチェックする、というふうに今の 会社はなっています。昔はもっと中長期的にみていましたが。 では、収益の下方修正とはどういうことでしょうか? 学生:予測より低い値段に修正すること おっしゃる通りです。会社は一応、収益の見込みをたてるんですね。結果それより低か ったので、数字をダウンします、下方修正しなければならない、と、その会社は発表しな ければならない。そして、それを開示しなければならない会社があります。 では、その数字を開示しなければならない会社とはなんでしょう?上場会社というのをき いたことがありませんか。株主が 50 人以上いる会社は、自分たちの数字を開示しなければ なりません。そしてその多くが、上場しています。では、どこに上場するのでしょうか? 学生:stock market 株式市場ですね。では、株式市場に株を売っていい会社を上場会社といいます。では、 上場している株式市場に出していいよ、というのを管理しているのはどこですか? 学生:東証とかマザーズとか そうです。東京証券取引所です。そのほかにもマザーズ、ジャスダックなどがあります。 そこに上場している会社は、自分たちが予測していたものより売り上げが下がるにしても 上がるにしても市場に報告しなければいけない、ということになっています。それは、な ぜでしょうか? 学生:もし下方修正を修正しなかったら、信頼保護に反するから そうですね。マーケットからストックを買う人が、正しい情報で判断できるように、な にかあったら即時開示を義務づけられます。それとはほかに、昔は半年で一度でよかった が今は四半期に一度、開示しなければなりません。 というのも、株主にまちがった情報を提供しないためです。 さあ、いよいよ質問が最後まできました。 株主総会では、大幅な下方修正をすることになりました。ちょっとでも早く開示するこ とを、適時開示、といいます。英語では timely discloser です。 いよいよ、みなさん弁護士さんです。あさっての午後までに、株主総会でどんな質問が でるか、想定しておきなさい、とボスに言われたとします。さあ、どんな質問をされると 心配したらよいでしょうか? 学生:どうして下方修正するんですか?ということ では、下方修正するということは、会社の人の最初の予測が間違っていたのでは、予測 が甘かったのではないか?といわれるんですね。では、この予想は甘かったのだろうか?と 言われたら、なんと答えますか? 学生:不測の事態である。 そうですね、これは不測の事態だと。日本で竜巻が起こるなんて誰が想ったでしょうか、 と言いたくなりますよね。そこまで要求するのかと。 では、不測の事態を法律用語に置き換えると?民法に一つだけ条文があります。 学生:? これは少し難しかったかな。不可抗力といいます。その条文だったら知っているという 人? では、不可抗力だったら、不測の事態だったら、どんなことが起こるのでしょうか? 民法で書いているのは唯一、金銭の債務については、不可抗力を理由として、遅延するこ とができない、ということです。 逆にいうと、金銭債務以外のもので、不可抗力によって債務を履行できなかったときはど うなるのでしょうか? 学生:債務履行責任を免責される そうですね。債務不履行にならないということです。免責と言ってもいいです。とにか く、債務を履行する責任を免れます。さあ、問題は、様々な事態があるが、それは本当に それは不可抗力なのか、という話です。これはまさに、場合によります。 原料メーカーがその工場一つしかもっていなかった場合、これは不可抗力だろうと、そ のメーカーは免責されるでしょう。だが、A社は株主に対して、これは仕方がなかったと いえるのでしょうか? 学生:原料メーカーが、保険に入っているのかどうかとか では、原因のところでは、株主はなんというでしょうか? 学生:取締役をやめろ、などというのではないか それもあるかもしれないですね。しかし、まず、株主としては、不可抗力ではないとい わないといけない。なぜ不可抗力ではないという理屈が立つのでしょうか。 学生:竜巻事態は予見可能性があるのではないか。 そうです、そんな事態も、ありえたのではないかと。我々は、阪神大震災、東日本大震 災、 ・・だれも考えもしなかった自然災害を経験しました。じゃあ、こんなことがいつおこ ってもおかしくないと、このようなリスクがあるとわかっていたでしょと、いわれる可能 性がありますね。 ② 二社、三社購買を取らなかったことについて、取締役に責任があるか。 では会社側としては、何といえるでしょうか?どのような対策が考えられますか。 学生:何社とも契約しておく そうですね。複数購買。株主さんは、どうして他社とも契約しなかったの、ときくでし ょう。それに対しては、なんと答えるか? その答えは、このレシピが共同開発で、他方の許可がなければ複数と契約することはでき なかった、ということですね。このいいかたが一つ、会社としてはできるでしょう。 では、もう一つ、どうしてもっとたくさんの香料をストックしておかなかったのか?一年 もあったら、代替物、もっといいものを作り上げることもできるのではないか。それによ って、売り上げを向上させることができたのではないか、といわれる可能性があります。 これに対して、会社側は、言い逃れできるでしょうか? 学生:安全とコストはトレードオフの関係になっていて、安全を重んじるならコストは 跳ね上がる。そんな経営でいいんですか、というような答弁ができるのではないか おっしゃるとおりです。ここでいう安全、とは、製品を作るのに支障のない、生産体制 を維持する、という安全です。この生産体制を、何があっても良いように作り続けられる 体制をもつ、それをとるのか、それをあきらめてもコストダウン、安くておいしいものを 追求するのか、どちらを重視するかを、ビジネスジャッジメント、経営判断といいますね。 なぜそのような言い方をするのか。裁判所は予算と決算で動いているお役所で、ビジネス パーソンではないですね。だから、どちらをとるかというのは、裁判官に判断することが できず、だからその判断は経営者に任そうという、考え方です。このような言い方が可能 かな、と思います。 二年前だったらそのようにいったが、二年のあいだにそのようにいろいろなことがあっ たことを考えると、もう少し、供給体制を整えるべきかな、といえるかもしれません。 2.課題の検討で見えてくるもの では、まとめに入ります。 会社がどんなふうに毎日の仕事をしているか、すこしでもわかってくださったらうれし いです。これが最後の質問です。会社って、みなさんにとって、どんな役割をしていると ころなのか、今日の話をきいて、考えてみてください。企業は、搾取するひとなのでしょ うか、それともそうでないんでしょうかという質問がかいてあると思います。会社の究極 の目的は利益を上げることなんです。その利益が還元されるその相手は誰だろう? 学生:日本の伝統的な考えだったら、社員。 実は、日本は、会社がだれのものかずっと考え続けてきた国なんです。昔は、ドイツ風 の考え方が強くて、会社は、ステークホルダー、とりまくみんなのものだという考えが非 常に強かったんです。しかし、90 年代から、アメリカでは、会社は株主のものだという感 覚が強くなり、株主の利益を最大限にするのが会社だという考え方が強くなってきたんで す。株主でも、長くもってくれる人ばかりとは限らず、会社は、わずかな期間で結果をだ さないと、いい会社と認めてもらえなくなったんです。 前は、長い目でものをみていたが、今の日本の会社は四半期ごとに結果を出さなければ ならないということをお話ししたと思います。会社は、非常に短期間で利益をあげなけれ ばならないというしんどい状況になっています。 しかし、ここへきて、アメリカでも、会社はだれのものなのか、問い直されています。 考え直されはじめている。従業員に目が向けられ始めているんです。日本でも、従業員を やめさせて、コストをカットしようという動きにたいして、色んな、考えをしようという 状況になっています。それでも、海外の安い労働力の手に入る国の人たちと、日本でもの をつくる人びとが競争ができないくらい、労働コストが上がってしまっているんです。 そんな中、今、日本の会社におこっている問題は、どんな問題でしょうか。それは、技 術の流出なんです。これを防ぐにはどうしたらいいか?この問題に対して、会社の人々は頭 を抱えています。そんな中で、アメリカでももう一度日本と同じように、会社とはだれの ものなのか、考えはじめています。会社対従業員の構図ではない、会社は社会のインフラ なんだ、とわかってきています。 様々な競争の中で、もう一度、会社はだれのためのものか、考えなおさねばならない時 期に来ている。私は日々、そんな会社とお仕事をして、いろいろ考えているのですが、も う一つのリスクに関してお話しする時間がなくなってしまいました。 このごろ、会社ということでよく耳にするのは、会社の不祥事、ということですね。それ に対して、会社自体が対処していかなければならなくなっています。その中で、会社はど うすべきなのか、ということを考えていくのが、法務部員、それから会社の企業法務を担 当する弁護士の役割ではないかな、と思っています。 会社とは人の集まりなので、人の心をしっかり考えながら、仕事をしていくのが企業法 務かなと思います。今日は皆さんからお答えをいただきながら授業をしましたが、会社と いうものがどのようなことをしているか、それにかかわる弁護士、法務部の人間がどのよ うな仕事をしているかの一端をお分かりいただけたかな、と思います。ご協力ありがとう ございました。 (注)資料訂正 枠内 9 行目 この度の→3 月上旬の 枠内 12 行目 震災→竜巻
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