国文法

国文法
日本語動詞の活用の種類
1.基本的品詞の一つ=動詞・名詞
動詞:①動作や変化
②存在や状態
2.動詞は主語、目的語などの項を伴って文を
形成する。
3.動詞は態、相、時制などによって形態が変
化する。
4.主語の性・数・人称等との一致を見せる。
多くの言語で辞書形の語尾が決まっており、
日本語ではウ段の文字で終わる。
動詞
「私は雨に降られた」などの言い方がある("迷
惑の受身"、"被害の受身")。「降る」は日本語
でも自動詞であるが、日本語では「雨が降っ
た」結果として「私」に影響(不利益)が及ん
だ場合にも、「私」を一種の非必須的な項ある
いは目的語と捉えていると考えることができる。
このような受身形にできるのは非能格動詞に限
られ、非対格動詞はできない(同じ自然現象で
も「*地震に起こられた」とは言えない)。同様
の違いは恩恵表現(「てもらう」「てくれ
る」)や使役に関しても現れる。なお「死ぬ」
は「親に死なれた」とできるから、非能格動詞
であり、英語のdieとは異なる。
動詞の分類
結合価による分類
動詞はそれがとる項の数によって分類される。
1.自動詞: 主語のみをとる動詞。日本語で
は「立つ(tat/u)」「落ちる(oti/ru)」など。
(1) 太郎が行く. (行く の結合価 = 1、自動詞)
(2) 太郎はボールを蹴った.
(蹴った の結合価 = 2、他動詞)
(3) 太郎は、花子に 本をあげた.
(あげた の結合価 = 3、二重他動詞)
2.他動詞: 主語および目的語をとる動詞。
「読む(yom/u)」「壊す(kowas/u)」など。
3.二重他動詞: 主語、直接目的語、間接
目的語の3つをとる動詞。「渡す(watas/u)」
「入れるire/ru)」など。
4.再帰動詞: 本来他動詞または二重他動詞
であるが、直接目的語または間接目的語が主
語と同じである場合、項が1つ減ることにな
る(意味的にも自動詞と考えられるものも多
い)。
(1)太郎と花子は、にらみ合った。
相互的動作を現す補助動詞的成分「あう」
(「投げあう」「罵りあう」など)がある。
(2)洋服(着物)を脱いだ。→自分の洋服
また形式的には特殊な点はないが、「着る」
「脱ぐ」のように自分のことについてのみ用
いる他動詞を再帰動詞と呼ぶこともある。
「顔を洗う」なども用法的にはこれに含めら
れる。→自分の顔
5.能格動詞:自動詞・他動詞いずれとして
も用いられる動詞で、他動詞として用いた場
合の目的語と、自動詞として用いた場合の主
語とが同じであるようなものをいう。自動
詞・他動詞のいずれにも、同じ形のまま使え
る動詞。日本語の「開く」、英語の open な
ど。The door opened.(ドアが開いた)とな
る。これでわかるように、日本語の「開く」
も能格動詞である。
英語では次のような動詞がある:
状態変化を示す – break, burst, melt, tear
料理に関する – bake, boil, cook, fry
移動を示す – move, shake, sweep, turn
乗り物に関する – drive, fly, reverse, sail
相(アスペクト)による分類
動作の持続する時間に基づいた継続動詞/瞬間
動詞、ある状態への変化を意味するかどうかに
基づいた目標動詞/非目標動詞などいくつかの
観点からの分類が可能である。ヴェンドラーに
よる次の4分類がよく知られている。
1.状態動詞 (state): 原形のまま状態を表し、進行形
をとらない。like,live,haveなど。
2.活動動詞 (action): 進行形で動作の継続を表し、
着点や結果や動作の限界点をもた
ない。runなど。
3.到達動詞 (achievement): ある状態が実現される
瞬間的な出来事を表す。動作の過程は表さない。
arriveなど。
4.達成動詞 (accomplishment): 継続的な動
作の結果、ある状態を実現することを表
す。makeなど。
日本語に関しては、同様の視点による金田一春彦の
4分類(状態動詞、継続動詞、瞬間動詞、第四種の
動詞)がある。金田一とヴェンドラーの違いは、
ヴェンドラーが進行形(V-ing)に基づいて分類して
いるのに対して、金田一は動詞を「~ている」に基
づいて分類している点である。なお、金田一の分類
はヴェンドラーに先駆けて提案されており、また、
ヴェンドラーと同様の分類はアリストテレスが行っ
ているという。
意志による分類
1.意志動詞 (volitional verb) - 人間などの意
志による動作を表す動詞。意志的な動作・
行為を表わす動詞。主語が意志的に制御で
きる希望・可能・命令・禁止などの形をと
れる。
例:偉い人になれるように勉強しています。
2.無意志動詞 (non-volitional verb) –- 人間な
どの意志的な動作・行為を表わさない動詞。
主語が意志的に制御できない。
例:野菜が大きくなるように水をたくさん
やります。
視点による分類
1.主体動作動詞 - 主体の動作をとらえてい
る動詞。書く・食べる…など。自動詞も
他動詞もある。「いる」をつけると動作
の進行を表す。
2.主体変化動詞 - 主体の変化をとらえてい
る動詞。立つ・結婚する・開く・壊れる
…など。ほとんどが自動詞である。「い
る」をつけると結果の持続を表す。
3.主体動作・客体変化動詞
私は、 オモチャを壊した。
主体 客体からは動作をとらえている動詞。すべ
て他動詞である。開ける・壊す…など。能動態と受
動態に対立があり、「いる」を能動態につけると動
作の進行を表し、受動態につけると、結果の残存を
表す。
「生きる」は自動詞で、主体動作客体変化動詞(主
語の行為によって、目的語の状態が変化することを
表す動詞)ではない。「壊れている」は「壊れる」
の状態変化後の状態を表し、今、壊れつつわけでは
ありません。「生きている」は今、生きている。だ
から、主体変化動詞でもない。「生きる」は主体動
作動詞である。
動詞の分類
1.形の上からの分類,
語尾が,-u,-eru,-iru でおわる動詞の分
類のこと=五段活用動詞,下一段活用動詞
上一段活用動詞のこと
2.働きの上からの分類,
自動詞・他動詞の別とか,継続動詞・瞬間
動詞の別などのこと
3.意味の上からの分類,
手でする動作の動詞― 持つ,つかむ,にぎる…
足でする動作の動詞― 歩く,走しる,ける…
他動詞=働きの上からの分類
「~を…する」=他動詞=「道を歩く」「門を出る」
の「歩く」「出る」を他動詞とするのはおかしい。経
過点,出発点を示す「-を」は、他動詞に用いた「-
を」とは別のもの。他動詞を定義したときに用いた
「-を」とは別のもの。
「道を歩く」「門を出る」の「道を」「門を」=「人
を殺す」「本をもらう」の「人を」「本を」と意味が
違うと考え,「歩く」・「出る」を自動詞とした。
「お湯をわかす」=「水」→「お湯」
加熱
「家を建てる」=「建材」組立
→「家」
ある動作の結果「加熱」「組立」で、「-を」の形に
動作をあらわす動詞と共に表現する言い方がある
「-を」+述語(動詞の対象で)
「-を」の意味の分析
他動詞が述語になっている文の中の「-を」
は,それぞれの動詞によって,
〈1〉はたらきかけをうける対象,
〈2〉つくりだす対象,
〈3〉やりとりする対象,
〈4〉心がむかっていく対象,
の四通りの意味のうちの一つをあらわすと
いう。
意志動詞と無意志動詞の定義
(鈴木重幸「日本語文法・形態論」
1.意志動詞:意志による動作を表す動詞。希望・可
能・命令・禁止などの形をとれる。
2.無意志動詞:意志によらない動作を表す動詞。
希望・可能・命令・禁止などの形態
をもたない。
1.意志動詞は,意志的動作の動詞に限られるが,
意志的動作を「意志で左右できる動作」と説明。
2.無意志動詞は,自然現象など非情物の動き・状
態の動詞(例:ながれる・ひかる,こおる,とける,
など)の他に人間の動作でも・生理的な現象(例:しび
れる・いたむ,むせる,など)、心理的な現象(例:あ
きる,このむ・こりる,など)の動詞や,可能動詞
(例:およげる,うかる,たすかる・など)が含まれる
意志動詞・無意志動詞のあらわれ方
―活用形の意味の上で―
「意志動詞」を「勧誘形と命令形を本来の意味でもつ
動詞」と定義。「勧誘形」は「-uの形」で,例えば
「行こう,見よう,食べよう」など。「命令形」は,
「行け,見ろ,食べろ」などのこと。「本来の意味」
とはそれぞれ「勧誘」 「命令」を意味。つまり「-u」
の形(五段動詞の終止形の 「-u 」を「-oo」 にかえて
つくる;一段動詞の終止形の「 -ru 」を「 -yoo」 に
かえてつくる)が勧誘をあらわし,命令形(五段動詞
の終止形の「 -u」 を「 -e 」にかえてつくる;一段動
詞の終止形の 「-u 」を「 -ro 」にかえてつくる)が
命令の動詞が意志動詞である。
無意志動詞の「-u」の形
命令形がどんな意味
無意志動詞の例
非情物の動き=「ながれる」 自然現象=「ひか
る」
人間の生理的な現象=「 むせる」人間の心理的な現
象=「 あきる」 可能動詞=「およげる」
「-u」の形は次のようになる。
これらの「-u」の (1)ながれよう, (2)ひかろう, (3)む
せよう, (4)あきよう, (5)およげよう。これらはすべ
て「ながれるだろう」「ひかるだろう」というよう
な推量の意味をもつ。(3)(4)では,推量の意味の
他に,本来の意味「さそいかけ」の意味もある。し
かしそれは演技としてのそれであり,自然な表現で
はない。そこで,一応,次のような公式がなりたつ。
無意志動詞の「-u」の形
意志動詞の「-u」形→さそいかけ
(1)非情物の動き(2)自然現象(5)可能動詞→推量
(3)人間の生理的な現象(4)人間の心理的な現象
→推量
演技としての勧誘形は,二つの意味「さそい
かけ,意志(決意)」にもちいられる。
無意志動詞では,勧誘形は,推量の意味でし
かもちいられない。
そんなことも あろう
あすは 雨が ふりましょう など。
無意志動詞の命令形
(1)ながれよ,(2)ひかれ,(3)むせろ,(4)あきろ,
(5)およげろ。
これらはすべて,相手に対する願望をあらわす。さら
に(3)(4)では,それぞれ「むせる」「あきる」という
ことを,演技として行なえという命令の意味をもあら
わす。いずれにしても・意志動詞の命令形とはち
がった意味をあらわす。
次のような公式がなりたつ。
意志動詞の命令形→命令
無意志動詞の命令形
(1)(2)(5)→願望
(3)(4)→願望
演技として行うことの命令
意志動詞と無意志動詞の別が問題とな
る第三の「-mai」の形を取りあげる。
五段動詞に「-mai」をつけ,一段動詞は「る」
をとって「まい」をつける。
意志動詞=例えば「たべる」は「たべまい」
となる。
「こんなまずいものは ぼくは もう たべまい」
の,話者の否定の意志をあらわす場合と,
「彼は そんなものは たべまい」(=たべな
いだろう)のように,第三者についての否定の
推量をあらわす場合とがある。
無意志動詞の「-mai」
無意志動詞の「-mai」の形は,後者しかあら
わし得ない。
「する」の「-mai」の形について,ゆれがあ
ると言われているが,否定の意思をあらわす
場合は「するまい」,否定の推量をあらわす
場合は「しまい」をつかうのではなかろうか。
「来る」については,「くるまい,こまい」
など,なお定説がない。
意志動詞・無意志動詞の別のあらわれ方
―前節以外の点において―
(1)動詞の現在形,(2)やりもらい動詞,(5)もく
ろみ動詞,の用法に関して
(1)意志動詞は,未来の動作に対する話し手(ま
たは相手)の現在の意志をあらわす。
一般に動作動詞の現在形は未来をあらわし,
状態動詞の現在形は現在をあらわす。
動作動詞の中の意志動詞は,話し手の現在の
意志をあらわす。
(2)やりもらい動詞は,意志動詞がつかわれる
のが原則。「もくろみ動詞」は,「~てみ
る」「~てみせる」「~ておく」のように,
なにかもくろみをもっておこなう動作をあら
わす動詞の形式のことを言う。これはもくろ
みということから当然意志動詞しかつかわれ
ないということはあきらかである。注意すべ
きことは,「~てみる」の形がもくろみ動詞と
してでなく用いられる場合もあるということ
である。こうなってみると,あのときああし
ておけばよかった。 などという場合の「なっ
てみる」はもくろみ動詞ではない。この場合
は無意志動詞も用いられる。
そのほかに,自分で気がついたいくつかのこ
とを次にあげる。充分な考察を加えないと説
得力ある説にはなり得ないとしても,文法研
究の発展のためのきっかけになり得たらと
思って,ここに記す。
(4)「~ようにする」という言い方
意志動詞・無意志動詞共に可能なのに,「~
ことにする」という言い方は意志動詞につい
てのみ可能である。
①行くようにする。…「行く」主体と「す
る」主体とが同じであり,「出来るだけ(な
るべく)行くように努力する」という意味を
あらわしている。②行くことにする。… 「行
く」主体と「する」主体とは同一である。
「する」主体にとって,いくつかすることが
あるうちで,「行くこと」を選択決定する,
ということである。
③流れるようにする。… 「流れる」主体と
「する」主体が別で,「流れる」という無意
志動作(あるいは,作用と言った方がいい)
が,生ずるように,「する」主体が処置する,
という意味をあらわしている。
④流れることにする。… 不可能な表現である。
④は両主体が別であって,「流れる」ことが,
「する」主体にとって選釈可能なことではな
いので,表現不可能ということになるのであ
る。
(5)「~ために」という言い方が「目的」と「原因」をあら
わすうちで,「~」の部分が意志動詞の現在形でか
つ後続の述語が意志動詞の場合のみ,「目的」をあ
らわし,他の場合は「原因」をあらわす。
窓をあけるために かぎをまわす。(目的)
意
志動詞
意志動詞
窓をあけるために 部
屋がさむくなる。(原因)
無意志動詞
窓をあけたために 風がはいってくる。
(原因)
過去形
前項動詞:
後項動詞:
両項動詞:
前項要素となる
<例>「打つ」
動詞
「押す」
後項要素となる
<例>「上げる」
動詞
「倒す」
どちらにもなれる
<例>「切る」
動詞
「取る」
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第(5)項の無意志動詞(第3節参照)「およげる,話せる」などは,「~ために」が目的をあらわすこともある。
およげるためには,練習しておかなければならない。 しかし,この例を含めて,一般に「~ために」で目的をあらわすこと
ができない場合は,「~ように」で目的をあらわす。「ために」の前につく動詞が否定形の場合はどうか?
負けないために 練習しておいた。 では,目的をあらわすが,これも「負けないように」と「~ように」でも言える。
(6)副詞には,無意志表現(したがって無意志動詞が用いられる)と呼応するものと,意志表現と呼応するものとがある。こ
れは「けっして」は否定形と呼応する,などということと同じ程度に重要なことであるにもかかわらずあまり言われていない
ことである。
「やがて」には無意志表現がつづく。「やがて父がかえるだろう。」のように他人について使えても,「ぼくはやがてもどる
よ。」と自分の意志的な動作については使えない。「やがてこの本を貸してやろうか?」とか「やがて行ってみるよ。」とか,
意志をあらわす文には使えない。但し,「やがて行くつもりだ。」と言えるのはどういうわけか?元来,「『やがて行く』ことに
なる」という意味だから?
「そこで」ということばには,意志表現がつづく。
石油がないのは不便だ。そこで,「売って下さい。」とたのみました。(意志表現)
とは言えるが,
石油がないのは不便だ。そこで売ってくれました。(他人の動作に関わることで無意志表現)
と言うのはおかしいことになる。
「ふと,なにげなく,思わず,つい,うっかり」には無意志表現がつづく。「ふと見ましょう。」とか「うっかり手伝ってあげる。」と
かとはふつう言わない。なお,同じような意味の「なにげなく」ということばは「なにげなく言ってあげた。」のように,演技とし
ての動作を表わすことができる。これらの副詞は意味の上から,無意志表現をとるのは当然ではないか,と言われるかも
しれないが,それでは次の例はどうであろうか。
「ひとりで」と「ひとりでに」とは,同じような意味でありながら,前者は意志表現と,後者は無意志表現といっしょに使われる。
私はひとりで行きました。 ひとりで行きたいと思います。 ひとりで行ってみようと思います。(意志)
レコードがひとりでにとまった。温度が上がるとひとりでにスイッチが切れるようになっている。棒がひとりでにざしきに上
がってくるなんておかしいじゃないか。(無意志)
この種の副詞の誤用例は,外国人による表現の中に少なからず見られると思う。それは,副詞の呼応として,否定表現が
つづく場合のことを強調しすぎて,意志・無意志に関してむとんじゃくだったことによるのではないかと思う。
•
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(7)二つ(以上)の動作を「て」で結ぶ場合,意志表現は意志表現と,無意志表現
は無意志表現と結はないと,ちぐはぐな文になる。
娘は外へ出て,パッとつるに変わりました。(「つるの恩がえし」についての学生の
感想文より)
この文で,「娘は外へ出」の部分を娘の意志としての動作であると考えると,「パッ
とつるに変わりました。」も娘の意志による変身を意味していると考えなけれはな
らなくなる。ところが,この物語の話のすじから,また「パッと」という副詞があるた
めに,この文の後半は無意志的動作の意味でなければならないのである。すると,
前半も無意志的動作なのか?とうたがってみるのだが,娘が外へ出たことは,娘
の意志によるものと考えた方が自然である。そして,それなら,「娘は外へ出ると,
パッとつるに変わりました。」と直した方がいいと思い至るのである。つまり,先に
あげた文の「娘は外へ出」の部分は意志表現「パッと」以下は無意志表現で, この
文は実はちぐはぐな結合をした文だったのである。上に直したように,「と」で結ぶ
場合は,前半と後半が意志表現の上で異なっていてもさしつかえない。(ついでな
がら,「て」で結ぶ場合,前半と後半とで,主語が同一であるのが原則であるが,
「と」で結ぶ場合は,主語は異なっていてもいい。)
•
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5.あとがき
本校には,主として東南アジア各地からの留学生がおり,日夜日本語と取りくん
でいる。彼らの表現する日本語をこまかく検討すると,日本語文法研究のための
この上もないヒントがかくれていることがある。 一般にある言語の研究は,その言
語体系だけをいじくりまわしても,研究がすすむとは思われない。まして,自国語
の場合は,ある閉じた空間内でのいろいろな操作をするのに似て,研究の発展と
いうことは望めない。ここに,どうしても,他の言語体系の目を通して,その研究
対象の言語を見る必要がある。本校の場合は,留学生による日本語の表現(そ
こには,母国語の影響があらわれる場合もある)によって,日本人にはおよそ気
のつかないような問題を提起してもらうことができるので,日本語の研究にはか
なり有利な立場にあるということができる。 しかし,留学生を研究の道具にばかり
使っているのではない。教育が第一である。たまたま彼らの作文,練習問題の答
などを検討しているとき,教師仲間で,議論の的になった文法的事項を取り上げ,
考察に移していくのである。(第4節(6)(7)はそのようにして得られたヒントであ
る。) 本稿は,はじめ論文の体裁で書き出したが,本「論集」の第一号であり,本校
の紹介の意味もあるので,あとがきでは,この“論文”がどうして成ったかを,裏ば
なし風にのべてみた。
日本語の動詞
分類
•
言語学では、日本語の動詞を形態により 3 種類に分ける。五段動詞、一段動詞、不規則動詞(「する」と
「来る」)である。五段動詞を、-u 動詞、グループ 1 動詞、子音動詞、強変化動詞とも呼ぶ。一段動詞を、
-ru 動詞、グループ 2 動詞、母音動詞、弱変化動詞とも呼ぶ。この呼び名は、語幹と語尾に基づいてい
る。
•
五段動詞
–
–
–
•
一段動詞
–
–
–
•
語幹が母音 (i, e) で終わる。原形は -ru で終わる。
mi-ru, mi-masu, mi-nai
tabe-ru, tabe-masu, tabe-nai
不規則動詞
–
–
–
•
•
語幹が子音で終わる。原形は -u で終わる。
kak-u, kak-imasu, kak-anai
hanas-u, hanas-imasu, hanas-anai
「する」と「来る」のみ。
s-uru, s-imasu, s-inai
k-uru, k-imasu, k-onai
[編集] 助動詞
「-て」に後続し、文法的機能を示す動詞を助動詞と呼ぶ。これを国文法(学校文法)では「補助動詞」と呼
ぶ。国文法でいう「助動詞」については助動詞 (国文法) を参照すること。
五段活用
行
基本形
活用形
語幹
未然
連用
書(か)く
書
か・こ
き・い
く
く
け
け
行(い)く
行
か・こ
き・っ
く
く
け
け
ガ行
泳(およ)ぐ
泳
が・ご
ぎ・い
ぐ
ぐ
げ
げ
サ行
探(さが)す
探
さ・そ
し・し
す
す
せ
せ
ザ行
-
タ行
勝(か)つ
勝
た・と
ち・っ
つ
つ
て
て
ダ行
-
ナ行
死(し)ぬ
死
な・の
に・ん
ぬ
ぬ
ね
ね
ハ行
-
バ行
遊(あそ)ぶ
遊
ば・ぼ
び・ん
ぶ
ぶ
べ
べ
マ行
読(よ)む
読
ま・も
み・ん
む
む
め
め
ヤ行
-
ラ行
切(き)る
切
ら・ろ
り・っ
る
る
れ
れ
笑(わら)う
笑
わ・お
い・っ
う
う
え
え
問(と)う
問
わ・お
い・う
う
う
え
え
ア行
カ行
ワ行
終止
連体
仮定
命令
-
子音語幹動詞と母音語幹動詞
日本語の動詞は子音語幹動詞と母音語幹動詞
に分けられる。五段動詞「書く」をローマ字
分析すれば、kak/anai・kak/imasu・kak
/u…のように変化していないのはkなどの子
音の部分までであることが分かる。この語の
変化していない部分は語幹と呼ばれ、附属し
ているものは語尾と呼ばれるが、五段動詞は
語幹が子音で終わるので子音語幹動詞である。
五段活用(ごだんかつよう)
1.日本語の口語文法「動詞」の活用のひとつ。
活用語尾(新仮名遣い)が五十音図の「アイウエ
オ」の五段全部で変化する。
2.旧仮名遣いの四段活用に相当し、未然形(ア
段)が意思・推量の語尾(あるいは助動詞)の
「う」に接続する場合にのみ「書こう」のよう
に「オ段」となり、それ以外では一つ目の未然
形を用いる。実質的に五つの段全部にわたって
活用することとなったものである。
言語学から言えば、五段活用をする動詞は、語幹
が子音で終わる子音語幹動詞である。
未然形の用法
未然とは「まだそうではない」という意味。文語の文法では、
意志・推量の「む」=書か+「む」
否定の「ず」=書か+「ず」
の接続から作られる語形を意識した名称。
現代口語の文法では、
意志・推量の「む」→「う」
否定の「ず」→「ない」に語形が変化
形態論
学校文法
-(a)na-
未然形
文法的意味
ない
-(a)n
-(r)are-
否定
れる/られる
未然形
-(s)ase
-(y)o:
否定
未然形
受身・尊敬・自発・可能
せる/させる
使役
う/よう
意志/勧誘
連用形の用法
連用とは「用言に連なる」という意味であり、
用言(動詞・形容詞・形容動詞)の前で現れる語形
「行く」+「た」「て」→行った、行って
「探す」+「た」「て」→探した、探して
「勝つ」+「た」「て」→勝った、勝って
「遊び」+「た」「て」→遊んだ、遊んで
「死ぬ」+「た」「て」→死んだ、死んで
過去・完了の
「た」接続の
「て」などに接
続する音便形
ワ行の中には「問う」「請う」のように「っ」にならない語
も存在する
ø
-(i)
複合語を作る / 先行条件
-(i)masます
丁寧
-(i)nagara 連用形 ながら
並行動作
-(i)ni
に
動詞修飾
-(i)taたい
希望
母音語幹動詞
「e」か「i」までが語幹である
一方、一段動詞や二段動詞は語幹が母音で終
わる母音語幹動詞である。ただし、文語にお
いて語幹母音は母音交替を起こして2通りの
語形をもっているが、現代口語においては母
音交替は起こらず語幹は一定である。例えば
「起きる」
oki/ nai、 oki/ masu、 oki/ ru、 oki/ reba…、
「食べる」
tabe/nai、tabe/masu、tabe/ru、tabe/reba
のようにeかiまでが語幹である。
文語
品詞
動詞
活用の種類
語形
活用の種類
例語
語形
書く
かか
-a
かか
-a
ラ行変格活用
あり
あら
-a
かこ
-o
ナ行変格活用
死ぬ
しな
-a
下一段活用
蹴る
け
-e
下二段活用
受く
うけ
-e
上一段活用
着る
き
-i
上二段活用
起く
おき
-i
カ行変格活用
来
こ
-o
ク活用
形容動
詞
例語
四段活用
サ行変格活用
形容詞
口語
す
せ
-i
なし
なから
シク活用
美し
うつくしか
ら
しから
ナリ活用
静かな
ら
しずかな
ら
なら
タリ活用
堂々た
り
どうどうた
ら
たら
五段活用
書く
下一段活用
受ける
うけ
-e
上一段活用
起きる
おき
-i
カ行変格活用
来る
こ
-o
し
-i
せ
-e
さ
-a
ない
なかろ
かろ
静かだ
しずかだろ
だろ
サ行変格活用
する
から
コピュラ
文の主語とその後に置かれる語を結ぶための補助的な品詞をいう。
日本語で繋辞(けいじ)、むすび、連辞とも呼ばれる。また、コプ
ラと呼ぶときもある。多くの言語で動詞のようにふるまい、特別な
動詞として品詞分類される。 X=Yの形式を作るのがコピュラであ
るが、Y=Xと交換可能であり、2つの要素が一致することを指定
(してい)、Y=Xとすることができず、YがXの属性を表すことを
措定(そてい)と呼ぶ。日本語では、例えば、「だ」「です」
「(で)ある」「(で)ない」「らしい」「ようだ」「ちがいな
い」「しれない」「そうだ」「になる」などがこれにあたり、一般
に行われている学校文法では「だ」「です」「らしい」「ようだ」
「そうだ」は助動詞 の一部として扱われている。方言では「や」
「じゃ」なども使われる。また名詞と名詞の関係を表す「の」のう
ち「である」で置き換えられ、同格を表すものをコピュラに入れる
場合もある。これらのうち、「です」「である」「になる」などは
存在を表す「ある」という語から派生してできたものである。
不規則動詞
ちなみにサ行変格活用やカ行変格活用とさ
れる「す(する)」「く(くる)」はこう
いった規則に合わない語形変化をするので
不規則動詞に分類される。
サ行変格活用
1.文語のサ変=「す」、「…+す」(複合動詞)
「おはす」。
「漢語+す」→
「形容詞連用形+す」→「重くす」「全くす」
=動作性の名詞+す
→昭和末期=「煙草する」今は「お茶する」
2.「和語+す」→「早起きする」(一単語)
「早起きをする」=三語
3. 「のんびりする」「ゆっくりする」「どきどき
する」= 状態の副詞が付いたサ変動詞
「風呂に入ってのんびりする」
「のんびりする」=サ変動詞(自動詞)
「読書をのんびりする」→ 「のんびり読書を
する」 に言い換えられ(二語に分けられ)
「のんびりする」= 「のんびり(と)する」
「のんびりと」(副詞)+「す」→主流
しゅ「のんびり」と(格助詞)+「す」
4.外来語+ 「す」= 「キャッチする」
ほとんどの場合、名詞・動詞両系である。
「キャッチする」などは、動詞部分(する)が重なっている
いわゆる重言(重複表現)になるが、そのことを非難される
ことはまずないと言っていい。
「論ずる」=濁音で活用=サ行変格活用
「論じる」=ザ行上一段活用
サ変動詞「感ずる」「信ずる」=文語の上
二段活用に似ている。
上二段活用→上一段活用になる傾向
(「感じる」・「信じる」など)にある。
サ変動詞「愛する」・「解する」
→五段活用(「愛す」・「解す」など)
になる傾向にあるものもある。
動詞