投資戦略テーマ 2015.07.29 シニア・ストラテジスト 山本 雅文 コモディティ:理想の相手を求めて <要約> 中国の景気減速懸念と米ドル高が相俟って、コモディティ価格の下落基調が続いており、為替相場も 大きな影響を受けている。足許は多くのコモディティが一様に動いているが、本来為替相場への影響 は異なる。そこで、金、銅、原油の主要 3 商品について為替相場との相関性を検証してみると、原油で あればカナダドル/円、銅であれば豪ドル/円あるいはカナダドル/円、金であれば米ドル/円と米ドル/ 南アランドなど、コモディティ毎に相関が高い通貨ペアが異なっているので、大きく変動しているコモデ ィティに合わせて通貨ペアを選ぶ必要がある。 原油:カナダドル/円 原油価格(北海ブレント、ドバイ、WTI の平均)と為替相場について、2010 年以降の週次変化率の相関 係数を算出してみると(図表 1、2)、やはり代表的な産油国の通貨であるカナダドルやロシアルーブル の順相関が強い。特に、ドル/円相場も原油価格と僅かながら順相関があるので、カナダドルは対米ド ルよりも対円相場の方が相関が若干強くなっており、原油相場との連動性で取引するならばカナダド ル/円が最適ということになる(図表 3)。なお、豪ドルやチリペソも連動性が比較的高いが、豪州は鉄鉱 石や石炭が、チリでは銅が主要な輸出品目となっており原油の相対的重要性が低く、相関が高くても 原油価格を睨んだ取引には適さないかもしれない。 (図表1)原油に対する相関(対円) 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 ‐0.1 ‐0.2 ‐0.3 (図表2)原油に対する相関(対ドル) 相関係数 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 ‐0.1 ‐0.2 ‐0.3 順相関 10年以降 14年以降 15年以降 (出所)Thomson Reutersのデータを基にマネックス証券作成 相関係数 順相関 10年以降 14年以降 15年以降 (出所)Thomson Reutersのデータを基にマネックス証券作成 逆に、ノルウェークローナは原油価格との逆相関がみられている(原油安の際にクローナ高)。これは、 ノルウェーが原油売却収入を年金基金として蓄積し、そこから対外投資を行っているため、原油価格の -1Copyright (C) 2015 Monex, Inc. All rights reserved. 投資戦略テーマ 上昇局面ではむしろ外貨買い(ドル以外の通貨も含む)が多くなり、クローナが上昇しにくいという事情 が背景にあるかもしれない。 (図表3)原油価格とカナダドル/円 (図表4)銅価格と豪ドル/円 ドル/バレル 円/カナダドル 110 100 110 130 105 120 80 70 100 95 90 90 80 85 70 60 原油高 カナダドル高 50 10年1月 11,000 銅高 豪ドル高 100 110 90 8,000 7,000 6,000 80 60 原油 50 75 40 70 10年1月 14年1月 (出所)Thomson Reutersのデータを基にマネックス証券作成 10,000 9,000 加ドル/円 12年1月 ドル/トン 円/豪ドル 140 豪ドル/円 銅 5,000 4,000 12年1月 14年1月 (出所)Thomson Reutersのデータを基にマネックス証券作成 銅:豪ドル/円とカナダドル/円 銅といえばチリ、チリといえば銅、というくらい、銅価格と為替の関連といえばまず、世界一の産銅国で あるチリの通貨ペソが頭に浮かび、実際順相関が非常に高い(図表 5、6)。もっとも、実はチリペソだけ でなく豪ドル、カナダドルの相関も同様に高い。豪州、カナダともに世界の銅生産ランキングで 10 位以 内に入っているほか、豪州の主要産品である鉄鉱石、あるいはカナダの主要産品である原油と銅の価 格がある程度連動していることも、背景にあるかもしれない。なお、米ドル/円も銅価格と僅かながら順 相関があることから、対ドル相場よりも対円相場の方が相関性が強いのも特徴だ。このため、銅価格と の連動性を睨んで取引する通貨ペアとしては、豪ドル/円とカナダドル/円が最適といえそうだ(図表 4)。 チリペソは特にアジア時間の流動性が低く取引がしにくいとみられるほか、NZ ドルも、産銅国ではない ため適さない。 (図表5)銅に対する相関(対円) 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 ‐0.1 ‐0.2 ‐0.3 (図表6)銅に対する相関(対ドル) 相関係数 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 ‐0.1 ‐0.2 ‐0.3 順相関 10年以降 14年以降 15年以降 (出所)Thomson Reutersのデータを基にマネックス証券作成 相関係数 順相関 10年以降 14年以降 15年以降 (出所)Thomson Reutersのデータを基にマネックス証券作成 金:米ドル/円と米ドル/ランド 金価格(ドル建て)についても同様に通貨ペアとの相関係数を算出すると(図表 7、8)、ドルの代替資産 -2– Copyright (C) 2015 Monex, Inc. All rights reserved. 投資戦略テーマ としての金の性格(ドル下落時に金が上昇)に加えて、安全資産としての金の性格が円と類似している こと(円と金が同時に上昇傾向)もあって、金価格とドル/円相場の逆相関が非常に強い(金価格が上 昇するとドル/円相場が下落、図表 9)。なお、金がドルの代替資産として取引される傾向を受けて対ド ル相場の相関は全般的に高いが、中では産金国南アフリカの通貨ランドの対ドル相場の順相関が安 定的に強い(図表 10)。 (図表7)金に対する相関(対円) 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 ‐0.1 ‐0.2 ‐0.3 ‐0.4 ‐0.5 ‐0.6 (図表8)金に対する相関(対ドル) 相関係数 0.6 順相関 相関係数 0.5 順相関 0.4 0.3 0.2 0.1 10年以降 14年以降 0.0 15年以降 10年以降 ‐0.1 (出所)Thomson Reutersのデータを基にマネックス証券作成 円/ドル 120 ドル/オンス (逆目盛) ドル/円 15年以降 (出所)Thomson Reutersのデータを基にマネックス証券作成 (図表9)金価格と米ドル/円 130 14年以降 金 (図表10)金価格と米ドル/南アランド ドル/オンス ランド/ドル 800 5 2,000 金安 ドル高 ランド安 6 1,000 7 110 1,200 100 1,400 90 80 70 10年1月 1,400 9 10 1,200 11 1,800 12 2,000 12年1月 1,600 8 1,600 金安 ドル高 円安 1,800 13 10年1月 14年1月 (出所)Thomson Reutersのデータを基にマネックス証券作成 ドル/ランド 1,000 金 800 12年1月 14年1月 (出所)Thomson Reutersのデータを基にマネックス証券作成 -3– Copyright (C) 2015 Monex, Inc. All rights reserved. 投資戦略テーマ 利益相反に関する開示事項 マネックス証券株式会社は、契約に基づき、オリジナルレポートの提供を継続的に行うことに対する対価を契約先 証券会社より包括的に得ておりますが、本レポートに対して個別に対価を得ているものではありません。レポート 対象企業の選定はマネックス証券が独自の判断に基づき行っているものであり、契約先証券会社を含む第三者 からの指定は一切受けておりません。レポート執筆者、並びにマネックス証券と本レポートの対象会社との間に は、利益相反の関係はありません。 ・当社は、本レポートの内容につき、その正確性や完全性について意見を表明し、また保証するものではございま せん。 ・記載した情報、予想および判断は有価証券の購入、売却、デリバティブ取引、その他の取引を推奨し、勧誘するも のではございません。 ・過去の実績や予想・意見は、将来の結果を保証するものではございません。 ・提供する情報等は作成時現在のものであり、今後予告なしに変更又は削除されることがございます。 ・当社は本レポートの内容に依拠してお客様が取った行動の結果に対し責任を負うものではございません。 ・投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようお願いいたします。 ・本レポートの内容に関する一切の権利は当社にありますので、当社の事前の書面による了解なしに転用・複製・ 配布することはできません。 マネックス証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第165号 加入協会:日本証券業協会、一般社団法人 金融先物取引業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会 -4– Copyright (C) 2015 Monex, Inc. All rights reserved.
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