第2部 環境の現況と対策 第2節 野生生物の保護と共生 1 野生生物の現況 う る お い の あ る 環 境 の 確 保 本県は、中央部を中国山地が走り、日本海、響 、瀬戸内海と変 化に富んだ海に開け、中国山地の周辺の緑豊かな森林、多数の島や 湾、砂浜や干潟など、多彩で豊かな自然に恵まれ、この自然環境の 中で、多くの野生生物が生息し、多様な生態系を形成している。 県内には、約2, 70 0種の植物をはじめ、約50 種のほ乳類、渡り鳥を 含めた約370 種の鳥類、約30 種の両生類・は虫類、約1 2 5種の淡水産 魚類、約6, 500 種以上の昆虫類の野生生物の生息が確認され、防府市 や豊浦町のエヒメアヤメ、美川町南桑のカジカガエルは天然記念物 に、また、熊毛町八代のナベヅルは特別天然記念物に指定されてい る。 このように県内には多種多様な野生生物が生息しているものの、 近年の都市化や各種開発が進展する中で、生息環境が破壊されたり、 乱獲による種の減少が進むなど、その生息に重大な影響を受けてい る。また、一方ではシカ、イノシシなど特定の野生鳥獣による農林 作物への被害が増大し、その予防対策が強く求められている。 このような状況のなか、野生生物の保護と共生をめざし、野生生 物の生息・生育実態の把握に務め、的確かつ効果的な保護・管理対 策を講じる必要がある。 自 然 と 人 と が 共 生 す る 豊 か で 2 野生生物の保護と管理 ⑴ 野生鳥獣の保護 野生鳥獣は、自然を構成する大切な要素として自然生態系の維持 に重要な役割を担っており、また、人間にとっても豊かな生活環境 を形成する重要な要素であることから、これら野生鳥獣の保護繁殖 を図るため、第8次鳥獣保護事業計画(9年4月1日から14年3月 31 日まで5年間)に基づき、鳥獣の保護繁殖上重要な地域について、 鳥獣保護区の設定や、同区域内における特別保護地区を指定すると ともに、狩猟鳥獣の保護繁殖を図るための休猟区の設定、あるいは、 銃猟をするのに適当でない場所を銃猟禁止区域に設定している。 1 1年度においては、森林鳥獣生息地としての鳥獣保護区を宇部市 霜降山地区をはじめ3か所(1, 565 ha)に設定(期間更新)し、同地 区内に特別保護地区を1か所(7 0ha)再設定した。 また、愛護地区としての鳥獣保護区を光市峨 山地区(47 ha)に 設定(期間更新)し、併せて同地区内に特別保護地区(47 ha)を再 設定した。 休猟区については、柳井市銭壷山地区をはじめ16 か所 (2 2 ,5 7 7 ha) 1 6 6 第3章 自然と人とが共生する豊かでうるおいのある環境の確保 を設定するとともに、銃猟禁止区域は、山口市・阿知須町山口市南 部・阿知須干拓地区(1 ,535 ha)を区域拡大し、再設定をした。 なお、鳥獣保護区等の設定状況及び区域は、第2−3−5表、第 2−3−9図のとおりである。 第2−3−5表 鳥獣保護区等の設定状況 1 2. 3 . 31 現在 区 域 箇所数 面 積 鳥獣保護区 76 特別 保 護 地 区 32 1 , 4 8 1 休 区 53 8 1 , 2 8 2 銃猟 禁 止 区 域 52 7 6 , 9 3 5 猟 第2−3−9図 5 2 , 3 1 6ha 鳥獣保護区等の区域図 う る お い の あ る 環 境 の 確 保 注)鳥獣保護区、特別保護地区及び休猟区は、設定(指定)位置を示すものである。 1 6 7 自 然 と 人 と が 共 生 す る 豊 か で 第2部 環境の現況と対策 ⑵ 特定獣類の保 護管理 う る お い の あ る 環 境 の 確 保 自 然 と 人 と が 共 生 す る 豊 か で 本県に生息するニホンジカ(以下 シカ という。)は、県北西部 に地域的に孤立・分布しており、本州最西端の地域個体群であるこ とから、これを保全することは、生物多様性の維持や学術的価値か ら重要であるとともに、一方では、シカによる農林業被害は、農林 家の生産意欲の減退にもつながる深刻な問題となっており、有害鳥 獣駆除及び防護栅の設置等の被害防除対策を実施しているが、依然 として被害が発生している。 このため、計画的な有害鳥獣駆除による捕獲調整を行うとともに、 本県の実態に即した総合的なシカ対策を推進するため 山口県シカ 対策検討会 (8年8月設置) において、シカ個体群管理の基本的な え方や方法などについて検討を重ね、人間とシカとの共存を目的 とする 山口県ニホンジカ保護管理計画 を、地元調整を図った上 で、1 1 年6月に策定した。 また、本県に生息するツキノワグマは、絶滅のおそれのある西中 国地域(島根県、広島県、山口県)の個体群の一部を構成している が、西中国地域のツキノワグマ個体群の生息頭数は、3 00∼40 0頭程 度と推定されており、その生息数は極めて少なく、また、他の地域 個体群から孤立している。 このため、9年2月に策定した 山口県ツキノワグマ保護管理計 画 (9年2月1 0日∼11 年10 月31 日)に基づき、生息環境等の把握、 被害予防対策、普及啓発活動など、具体的な保護管理対策を展開し てきた。 1 1年度においては、 山口県ツキノワグマ保護管理計画 期間満了 に伴い、 山口県ツキノワグマ保護管理検討会 (8 年8 月設置)にお いて、1 1年9月に計画期間(1 1年1 1月1日∼16 年1 0月3 1日)の更新 を行い、また今後の保護管理対策は、10・11 年度に島根県、広島県 と共同で実施した生息調査結果による生息動向等の科学的なデータ 等に基づき、改めて検討していくこととした。 3 貴重な野生生物の保護 野生動植物は、生態系の重要な構成要素であるだけでなく、自然 環境の重要な一部として人類の豊かな生活に欠かすことのできない ものである。このため、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存 を図り、多様な生態系を維持することにより、良好な自然環境を保 全する必要がある。 本県においては、近年、都市化が進み、各種開発行為による野生 動植物の生息環境が破壊される中、絶滅の危機に している種が存 在する可能性が十分 えられるところである。 これまで、6年7月に山口県野生生物保全対策検討委員会を設置 1 6 8 第3章 自然と人とが共生する豊かでうるおいのある環境の確保 し、複雑多岐にわたる野生動植物のうちから、調査対象種を選定し 山口県の貴重な野生生物 として編集したところであり、さらに、 絶滅のおそれのある種を選定し、それらの分布状況や生息状況を明 らかにした 山口県版レッドデータブック を12年度目途に作成し、 的確かつ効果的な野生動植物の保護対策を講じることとしている。 1 1年度には山口県野生生物保全対策検討委員会に設置されている 7つの分科会(ほ乳類、鳥類、両生・は虫類、淡水産魚類、陸・淡 水・汽水産貝類・甲 類、昆虫・クモ類、植物)において、 山口県 版レッドデータブック の作成に向け、県版野生生物分布目録を作 成した。 第3節 身近な緑の保全と 造 1 県土緑化推進運動の展開 緑は、安らぎやうるおいのある快適な環境づくりに欠かせないも のであり、緑に対する県民のニーズも高まっている。 このため、21世紀を展望し、新しい県づくりの指針である や まぐち未来デザイン21 に基づき、各市町村及び関係団体等との 緊密な連携の下、県土緑化推進運動を進めており、 緑の募金 をは じめ、植樹活動やコンクール等を積極的に展開している。 1 1年度は、和木町蜂ヶ峯総合公園において緑化意識の高揚を図る ために 豊かな森林づくり県民のつどい を開催したほか、県下7 地域における 地域緑化活動への支援 等を実施した。 また、都市緑化祭(下関市)や花いっぱい運動の共催、25ヶ所の 公共・公益施設や学校への緑化木の提供等により生活環境緑化推進 に努めた。 さらに、緑の少年隊について、7 7隊の設立・育成を行ったほか、 みどりの日 の記念行事として、4組の新婚カップルに記念樹を 贈呈した。 1 2年度においても、徳地町重源の郷において 豊かな森林づくり 県民のつどい を開催するほか、緑の少年隊の育成、学校関係緑化 コンクールの実施、 みどりの日 記念行事を引き続き実施すること としている。 2 まちの緑地の整備 ⑴ 都市公園等の 整備 都市化が進展する中、安全で快適かつ機能的な都市生活を確保す るため、都市の緑を提供する場として、またスポーツやレクリェー ション、文化活動さらには、災害時の避難などの多様なオープンス 1 6 9 う る お い の あ る 環 境 の 確 保 自 然 と 人 と が 共 生 す る 豊 か で 第2部 環境の現況と対策 ペースとして、都市公園を長期的、計画的に整備することが、緊急 な課題となっている。 国においては、47年度から第一次都市公園等整備5か年計画を策 定し、現在8年度を初年度とする第6次都市公園等整備7か年計画 が策定され、この計画では、7年度末における全国の都市計画区域 内住民1人あたりの公園敷地面積7 .1㎡を14年度末には9.5 ㎡とする ことを目標としている。 本県においても、上記の整備計画に基づき、計画的進 を図って きたことにより、都市計画区域内住民1人あたりの公園敷地面積は、 46 年度末では、3. 0㎡であったが1 1年度末には、10. 4㎡と飛躍的に増 大してきている。都市公園の整備状況は、第2−3−6∼8表のと おりである。 今後、これを22 年度末には1 3. 0㎡とすることを目標として、鋭意 整備を進めているところである。 第2−3−6表 都市公園の整備状況 う る お い の あ る 環 境 の 確 保 自 然 と 人 と が 共 生 す る 豊 か で 区分 年度 A( ) 開設面積 都市計画区域内人口 B( 千人) 県民1人当たり面積 ( ㎡/ 人) ( ㎡/ 人) 整 備 率A/B 元 2 3 4 5 6 7 8 9 1 0 11 1 , 0 3 7 1 , 3 9 4 7 . 4 ( 5 . 6 ) 1 , 0 6 0 1 , 3 9 2 7 . 6 ( 5 . 8 ) 1 , 0 8 0 1 , 3 8 0 7 . 8 ( 6 . 1 ) 1 , 0 9 1 1 , 3 9 3 7 . 8 ( 6 . 1 ) 1 , 1 1 7 1 , 3 9 3 8 . 0 ( 6 . 7 ) 1 , 1 5 2 1 , 4 0 1 8 . 2 ( 6 . 9 ) 1 , 2 1 3 1 , 4 0 0 8 . 7 ( 7 . 1 ) 1 , 2 9 0 1 , 4 0 1 9 . 2 ( 7 . 3 ) 1 , 3 1 2 1 , 3 8 5 9 . 5 ( 7 . 5 ) 1 , 3 6 9 1 , 3 7 6 1 0 . 0 ( 7 . 7 ) 1 , 4 3 6 1 , 3 8 1 1 0 . 4 ( −) 注)1 ( ) 内は、全国平 である。 2 都市公園は、11 年度までに14市及び13 町(東和、和木、玖珂、周東、大和、田布施、平生、熊毛、小郡、阿知須、山陽、豊浦、 秋芳)で開設されている。 第2−3−7表 公 県立都市公園整備事業の状況 園 内 江 汐 公 園 火 の 山 公 園 亀 山 公 園 維 新 百 年 記 念 公 園 片 添 ヶ 浜 海 浜 公 園 萩ウェルネスパーク 柳井ウェルネ ス パ ー ク 種 別 場 広 広 統 広 広 広 広 域 域 合 域 域 域 域 小野田市 下 関 市 山 口 市 山 口 市 東 和 町 萩 市 柳 井 市 所 計画面積( )開設面積( ) 1 3 5 . 6 1 2 9 . 0 1 1 . 7 6 7 . 0 3 3 . 0 1 8 . 6 2 0 . 4 5 0 . 6 1 2 2 . 5 7 . 9 4 3 . 5 7 . 9 5 . 2 0 . 0 第2−3−8表 平成1 2 年度都市公園整備予定箇所数 区分 街 区 市町村 下 関 市 宇 部 市 山 口 市 1 岩 国 市 1 萩 市 徳 山 市 防 府 市 小野田市 光 市 長 門 市 柳 井 市 新南陽市 和 木 町 東 和 町 大 和 町 玖 珂 町 計 2 近 隣 地 区 統 合 1 1 1 1 1 運 動 広 域 特 殊 1 1 1 1 1 1 2 1 1 1 1 1 1 1 1 1 3 1 7 0 1 1 1 2 5 0 計 3 1 4 2 2 1 2 1 1 1 1 1 1 1 1 1 2 4
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