冠名包帯法とホワイトテープ固定法の技術の均等化と教材作成

冠名包帯法とホワイトテープ固定法の技術の均等化と教材作成
学校法人山野学苑
山野医療専門学校
岩本義之、米山博之、矢島淳、上田栄、鈴木忠慶
要旨
【 は じ め に 】: 認 定 実 技 審 査 等 を 初 め と す る 実 技 実 習 指 導 で は 、 学 生 に 対 し
教員個人による差異のみられることが予想される。
【 目 的 】: 教 員 間 で の 均 等 化 さ れ て い る 授 業 内 容 か ら 学 生 が 確 実 に 習 得 し て
い る 学 習 効 果 と 、均 等 化 さ れ て い な い 学 習 内 容 の 要 素 に つ い て 明 ら か に す る
ことは、教育実践にとって意義がある。
本 研 究 は デ ゾ ー 包 帯 法 と ホ ワ イ ト テ ー プ 固 定 法( 以 下;実 技 固 定 法 )に つ
いての動画資料作製を教員間で行い実技実習指導法の均等化からの学習効
果について明らかにすることを目的とする。
【 方 法 】: 山 野 医 療 専 門 学 校 教 員 5 名 に よ る 実 技 固 定 法 に つ い て 教 員 個 別 ビ
デオ教材から均等に指導されている学習内容と均等化されていない学習内
容 を 抽 出 し 検 討 を 行 っ た 。 測 定 機 材 と し て SONY ム ー ビ ー カ メ ラ
HDRCX430VTC(SSS)を 使 用 し 、 5 分 間 の 個 別 資 料 ビ デ オ お よ び 検 討 後 に 再 度
均等化された実習資料ビデオを作製した。
【 結 果 】 :実 技 固 定 法 に つ い て 、 教 員 ら で 均 等 化 さ れ た 指 導 概 要 で は 教 科 書
通 り の 指 導 内 容 に つ い て 差 異 は 見 ら れ な か っ た 。均 等 化 さ れ て い な か っ た 項
目 に つ い て は 、患 者 個 別 の 年 齢 や 施 術 者 の 経 験 、外 傷 程 度 な ど の 想 定 さ れ る
差によって個別での意見がみられた。
【 考 察 】: 均 等 化 さ れ た 指 導 内 容 は 、 教 科 書 等 明 確 に 示 さ れ た 引 用 文 献 に よ
る 内 容 が 多 く 、教 員 個 別 の 指 導 に あ っ て も 、純 度 の 高 い 実 技 実 習 の 均 等 化 が
み ら れ た と 思 わ れ る 。ま た 均 等 化 さ れ な い 指 導 内 容 は 、施 術 を 行 う 上 で の 患
者 の 想 定 に よ る 差 異 が 多 く み ら れ 、指 導 内 容 に つ い て 誤 差 が 生 じ や す く な る
ものと推察される。
【 結 論 】: 実 技 固 定 法 に つ い て 均 等 化 さ れ た 動 画 教 材 に よ る 授 業 学 習 指 導
案 で は 、実 技 の 内 容 に つ い て 明 ら か に し た こ と に よ り 、学 生 に 提 供 す る う え
で教員個別での実習指導の向上につながった。
キーワード: 冠 名 包 帯 法
動画教材
背景
認 定 実 技 審 査 等 を 初 め と す る 実 技 実 習 指 導 で は 、学 生 に 対 し 柔 道 整 復 理 論
編 に よ る 基 本 的 な 柔 道 整 復 技 術 の 習 得 の ほ か 、付 加 価 値 と し て 教 員 個 々 の 経
験・技 術 等 に つ い て 触 れ る 機 会 が 多 く み ら れ る 。し か し 付 加 価 値 的 な 授 業 内
容 に つ い て 、教 員 個 人 に よ る 差 異 が み ら れ る こ と か ら 十 分 な 授 業 効 果 が 得 ら
れていないことが予想される。
今 回 、実 技 実 習 指 導 の 題 材 と し て 冠 名 包 帯 法 に お け る デ ゾ ー 包 帯 法 お よ び
足 関 節 捻 挫 に お け る ホ ワ イ ト テ ー プ 固 定 法 を 用 い て 、教 員 の 実 技 授 業 に 指 導
内容の均等化について検討した。
目的
教員間での均等化されている授業内容から学生が確実に習得している学
習 効 果 を 明 ら か に す る と と も に 、均 等 化 さ れ て い な い 学 習 内 容 の 要 素 に つ い
て 抽 出 し 、今 後 の 学 習 指 導 に お け る「 授 業 構 築 上 の チ ェ ッ ク ポ イ ン ト 」と し
て広く教育実践に役立てることは有用であり、かつ大変意義がある。
そ こ で 、本 研 究 は デ ゾ ー 包 帯 法 お よ び ホ ワ イ ト テ ー プ 固 定 法 に お け る 授 業
案 の か ら 、教 員 個 別 の 技 術 を 均 等 化 し 、学 習 効 果 の 向 上 と 学 習 指 導 案 と し て
の動画資料の作製し検討することを目的とする。
方法
山野医療専門学校教員 5 名によるデゾー包帯法及びホワイトテープ固定
法(以下;実技固定法)については以下に示した。
Ⅰ .授 業 内 容 の 抽 出
1.抽 出 項 目 と し て 包 帯 の 走 行 、固 定 理 論 の 根 拠 、指 導 中 の ポ イ ン ト 、施 術
方 法 、実 技 学 習 資 料( 以 下:個 別 ビ デ オ 教 材 )等 に つ い て の 比 較 検 討 を
行った。
2.学 習 内 容 に つ い て 、均 等 化 さ れ た 学 習 内 容 と 均 等 化 さ れ て い な い 学 習 内
容を抽出し検討を行った。
3.検 討 を 行 っ た の ち 、妥 当 と 思 わ れ る 授 業 内 容 の み を 収 録 し た ビ デ オ 教 材
(均等化されたビデオ教材)を作成した。
Ⅱ .学 習 教 材 の 作 製 と 比 較 :
1.均 等 化 さ れ た ビ デ オ 教 材 を 視 聴 し 教 材 の 検 討 を し た 。
2.ビ デ オ 教 材 の 収 録 時 間 は 認 定 実 技 試 験 の 実 施 要 領 を 参 考 に 5 分 と し た 。
3.教 科 書 の 使 用 制 限 、 資 料 の 使 用 制 限 等
4.測 定 機 材
1) ビ デ オ 撮 影 に は SONY ム ー ビ ー カ メ ラ HDRCX430VTC(SSS)を 使 用 し た 。
2)ビ デ オ 加 工 に は Video Studio PROX6 を 使 用 し た 。
結果
Ⅰ .授 業 の 均 等 化 の 検 討 結 果
抽出項目として包帯の走行、固定理論の根拠、指導中のポイント、実技
学習資料等について 5 名の教員にて①デゾー包帯、②ホワイトテープ固
定について、資料映像を用いて比較検討を行った。均等化するにあたり
焦点となった項目は以下のものがあげられる。
1.デ ゾ ー 包 帯 に つ い て
1- 1)均 等 化 さ れ て い た 項 目
① 第 3 帯および第 4 帯の走行と目的について一致していた。
1- 2)均 等 化 さ れ て い な か っ た 項 目
1- 2)- (1) 第 1 帯 で 腋 窩 枕 子 を 入 れ る タ イ ミ ン グ に つ い て 3 項 目 の 選
択がされていた。
① 胸部腋窩で水平に環行し同時に枕子を固定する
② 健側肩部へ 8 字帯をかける直前で固定する。
③ 8 字帯終了後固定する。
1- 2)- (2) 2 帯 で 上 腕 を 固 定 す る と き 、 下 降 す る か 上 行 す る か 。
① 枕 子 の 固 定 後 体 幹 を 降 り て い く の で 、そ の 続 き で 上 肢 を 固
定 し つ つ 上 向 す る 方 包 帯 を 無 駄 に 使 わ ず 、き れ い に 巻 け る 。
②上腕を下降した方が槓桿作用を期待できる。
1- 2)- (3) 第 3 帯 の 途 中 に 包 帯 を 巻 き 切 り 途 切 れ る こ と が 予 想 さ れ る
場合の対処について
①切れたところで継ぎ足す。
②安定が悪い場合は肩など固定しやすい場所で固定する。
(場合により距離を調整)
④ 第 2 帯で使い切ってから第 3 帯に入る。
1- 2) - (4) 実 技 の 終 了 の タ イ ミ ン グ と し て 包 帯 の 終 わ り 方 は 、 固 定 の
完了まで指導すべきか。
①包帯をきちんと止めて包帯実技の終了とすべきである。
②毎回実技実習用の包帯を切るのは現実的でない。
1 - 2) - (4) 右 肩 部 を 損 傷 し た 想 定 か ら 包 帯 は 逆 巻 き の 方 が 胸 郭 拡 大 の
効果が期待できるのではないか。
① 胸郭の拡大が第一目的であれば、8 字帯や鎖骨整復台を
使えばよいので、順巻でよいのではないか。
② 臨 床 で 、包 帯 の ま き 直 し は 何 回 も で き る わ け で は な い の で 、
逆巻も習得すべきである。
2.ホ ワ イ ト テ ー プ 固 定 に つ い て
2- 1)均 等 化 さ れ て い た 項 目
アンカー・ロック・スターアップ・ホースシューについては問題に
なるような違いはなかった。
2- 2)均 等 等 化 さ れ て い な か っ た 項 目
(1)ヒ ー ル ロ ッ ク ど の よ う な ケ ー ス で 有 効 な の か 。ま た 不 要 な の か 。
(2) 想 定 さ れ る 状 況 に よ り ヒ ー ル ロ ッ ク が 不 要 な 場 合 も あ る の で
はないか。
Ⅱ .デ ゾ ー 包 帯 に つ い て 教 員 ら で 均 等 化 さ れ た 指 導 概 要
均等化されていなかった項目についての検討
1- 2)- (1) 8 字 帯 は 腋 窩 枕 子 を 上 内 方 に 固 定 す る た め に 行 う た め の も の
である。
1- 2)- (2) 包 帯 の 走 行 に お い て 下 降 に よ る ほ う が 効 果 が あ る 。
1- 2)- (3) 患 者 個 人 の 体 格 に よ り 包 帯 の 長 さ に 差 異 が 生 じ る こ と か ら 、
包 帯 の 走 行 で な く 、患 者 ご と に よ り 残 り の 包 帯 の 長 さ に て 判
断する。
1- 2)- (4) 練 習 の た び に 複 数 回 に わ た り 包 帯 を 切 断 し て い て は 、包 帯 の
消 費 に つ い て 懸 念 さ れ る こ と か ら 、一 度 示 す も の と す る 。本
来は固定を終了させることが望ましい。
1- 2)- (5) 臨 床 的 に は 逆 巻 き の 方 が 良 い と い う 意 見 が 多 か っ た が 、教 科
書 の 資 料 お よ び 認 定 実 技 を 考 慮 し 授 業 で は 順 巻 き と す る 。た
だし、ビデオ教材としては両方の用意をする。
Ⅲ .ホ ワ イ ト テ ー プ 固 定 に つ い て 、 教 員 ら で 均 等 化 さ れ た 指 導 概 要
2- 2)均 等 化 さ れ て い な か っ た 項 目 に つ い て の 検 討
2- 2) - (1) 外 傷 の 治 療 の た め 強 固 な 固 定 が 必 要 な と き は 、 ヒ ー ル ロ ッ
ク は 有 効 で あ る 。( 底 屈 背 屈 ・ 回 内 回 外 と も に 固 定 さ れ る 。)
2 - 2) - (2) ヒ ー ル ロ ッ ク は 競 技 時 の 外 傷 予 防 に は 強 固 す ぎ て 影 響 が 大
き い の で 、 フ ィ ギ ャ エ イ ト ま で で 良 い 。( 回 内 回 外 は 固 定 さ
れ る が 、 底 屈 背 屈 は 自 由 度 が 高 い 。)
考察
均等化されていた項目としてデゾー包帯の第 3 帯および第 4 帯の走行
と 目 的 お よ び 、ホ ワ イ ト テ ー プ 固 定 に お い て も 走 行 と 目 的 に つ い て ほ ぼ
同 一 で あ っ た 。以 上 の こ と か ら 均 等 化 さ れ た 指 導 内 容 は 、教 科 書 等 明 確
に 示 さ れ た 引 用 文 献 に よ る 内 容 の も の が 多 く 、教 員 個 別 の 指 導 に あ っ て
も 認 定 実 技 試 験 等 の 指 導 要 領 が 明 示 さ れ て い る も の は 、純 度 の 高 い 実 技
実習の均等化がみられたと思われる。
均等化されない指導内容としてデゾー包帯第1帯で腋窩枕子を入れ
る タ イ ミ ン グ に つ い て 、2 帯 で 上 腕 を 固 定 す る と き 下 降 す る か 上 行 す る
か お よ び 、第 3 帯 の 途 中 に 包 帯 を 巻 き 切 り 途 切 れ る こ と が 予 想 さ れ る 場
合 の 対 処 に つ い て な ど 、臨 床 的 な 側 面 で の 差 異 が 多 く み ら れ た 。ホ ワ イ
ト テ ー プ 固 定 に お い て も 、ヒ ー ル ロ ッ ク お よ び フ ィ ギ ャ エ イ ト の 使 用 に
つ い て 差 異 が み ら れ た 。い ず れ に お い て も 施 術 を 行 う 上 で の 患 者 の 想 定
の 違 い に よ る 差 異 が 多 く み ら れ 、教 員 ご と の 臨 床 経 験 に よ り 指 導 内 容 に
ついて誤差が生じやすくなるものと推察される。
以 上 の こ と か ら 、教 員 の 指 導 要 領 の 統 一 が 必 要 で あ り 、臨 床 的 な 実 習
指 導 を 行 う 際 は 、様 々 な 患 者 を 想 定 し つ つ 固 定 法 、後 療 法 に つ い て 特 化
せ ず 、多 く の 患 者 に 適 応 で き る 指 導 内 容 を 一 義 と す る こ と が 、均 等 化 さ
れた実技実習指導を行う上で重要であると思われる。
結論
今 回 、デ ゾ ー 包 帯 法 と ホ ワ イ ト テ ー プ 固 定 法 に つ い て 、実 技 実 習 の 均 等 化
に よ る 授 業 学 習 指 導 案 に つ い て 検 討 し た 。そ の 結 果 、実 技 の 内 容 に つ い て 標
準 化 し た 基 準 を 設 け る こ と に よ り 、教 員 個 別 で の 実 習 指 導 の 向 上 に つ な が っ
た。
参考文献
1)全 国 柔 道 整 復 学 校 協 会 監 修・全 国 柔 道 整 復 学 校 協 会 教 科 書 委 員 編『 柔
道 整 復 学 理 論 編 』 第 5 版 ,南 江 堂 .2010
2)岩 本 幸 英 編『 神 中 整 形 外 科 学 』下 巻( 部 位 別 疾 患 )改 訂 23 版 ,南 山 堂 .
2013
3)神 野 哲 也 監 修 , 相 澤 純 也 ,中 丸 宏 二 編 集 『 ビ ジ ュ ア ル 実 践 リ ハ
整形
外 科 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 』 羊 土 社 .2013
謝辞
本研究を遂行するに当たり研究機会を頂きました、山野正義総長、山野愛子
ジェーン理事長、山野一美ティナ校長のご指導、ご鞭撻を賜りましたことに、
心より感謝申し上げます。
また、終始御指導を賜りました杉崎哲朗先生に、心より感謝申し上げます。
英文抄録
Standardization of Techniques in Eponym Bandaging and White Tape
Fixing, and Preparation of Teaching Materials
YAMAMO Gakuen - Yamamo Medical College
Yoshiyuki Iwamoto, Hiroyuki Yoneyama, Atsushi Yajima, Sakae Ueda,
Tadayoshi Suzuki
BACKGROUND
It is assumed that there are some differences in instructors to supervise
practical skills for their students to pass certified p ractical examination.
OBJECTIVE
It is significant in field of education to disclose the learning effect for
students to acquire in standardized course contents by instructors and the
learning contents not to equalize.
This study is intended to clarify a l earning effect in standardized
practical skill training instruction that is supervised by instructors to make
image materials about Desault’s bandage and white tape fixing methods.
METHOD
We listed and considered the learning contents that were standardiz ed
and not standardized in individual video tapes making about fixing methods
in practical by five instructors in Yamano Medical College. The five minutes
individual video tapes were made by SONY movie camera HDRCX430VTC
(SSS), and standardized practical s killed video materials were made after
consideration.
RESULTS
There were no differences in instruction contents for fixing methods in
practice that were standardized by the instructors and followed textbooks.
There were some differences in items that not had been standardized due to
age of individual patients, experiences of practice, and degree of injury.
DISCUSSION
There are many standardized instruction contents from references in
textbooks, and individual instructors highly followed the instruction and
supervised it for their students. The instruction contents that were not
standardized often had differences. It was depended on experiences of
instructors how to assess their patients. We considered that it was easy to
mistake.
CONCLUSION
It is true that there were some improvements for students to understand
materials that were standardized by instructors comparing with individual
instructors making by themselves.