斜視の原因遺伝子(座)

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研究実施計画書
斜視の原因遺伝子(座)を解明する基礎研究
研究実施体制
本研究は以下の体制で実施する。
【研究責任者】
研究機関の名称
所属:岡山大学大学院医歯薬
学総合研究科・眼科学分野
岡山大学
職名:准教授
氏名:松尾
俊彦
【本学における研究分担者】
所属
職名
岡山大学資源植物科学研究所
教授
佐藤
和広
岡山大学病院 眼科
助教
濱崎
一郎
岡山大学大学院医歯薬学総合
研究科・眼科学分野
大学院生
岡山大学大学院医歯薬学総合
研究科・眼科学分野
大学院生
明(岡山大学病院 医療情報部
劉 詩卉
Liu Shihui
部長)
個人情報管理分担者:塩出雄亮(岡山大学病院 眼科 助教/外来医長)
作成日 2015 年 10 月 12 日
計画書案 第 1.1 版作成
張 青々
Zhang Jingjing
【個人情報の管理責任者及び分担者】
個人情報管理責任者:合地
氏名
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1.研究の目的及び意義
(1)研究の意義
斜視(眼振を含む)は小児に多くみられ,遺伝的要因及び環境要因が関与する多因子疾患
である 1,2)。家系,家族歴があり,一卵性双生児で表現型一致率が高いことから遺伝が関与
すると考えられている 3,4)。しかし,その原因遺伝子は明らかにされていない。
申請者は,本研究と同一課題名「斜視の原因遺伝子(座)を解明する基礎研究」として
2000 年 9 月 20 日(受付番号 48),2012 年 12 月 18 日(ゲノム 215),倫理委員会に承認さ
れて以来,岡山大学病院を受診した斜視患者の同意を得て末梢血 10cc からゲノム DNA を抽
出し保存して遺伝解析に使用してきた。一方,「斜視手術時に切除した外眼筋での遺伝子発
現についての基礎研究」として 2000 年 9 月 20 日(受付番号 49),「斜視患者に対する治療
として外眼筋切除術(斜視手術 K-242 前転法)を行った際に処分する外眼筋組織を活用して
斜視の原因を解明する研究(倫理 1565)」として 2012 年 12 月 18 日,承認を受け,外眼筋
を保存し研究に使用してきた。これらの研究の成果として斜視遺伝座を同定した 5,6)。
本研究では,斜視や眼振を伴う疾患の原因を解明する目的で,患者の同意を得て末梢血
10cc を採血しゲノム DNA を抽出して保存し,遺伝子解析の研究に使用する。また,斜視手術
時に切除し廃棄する筋組織を保存し DNA および RNA を抽出して解析する。具体的には,候補
遺伝子の PCR 増幅,SNP 解析 7-9) ,exome sequencing を行う。また,切除筋組織から DNA や
RNA を抽出して解析する 10,11)。
(2)予想される医学上の貢献
研究成果により将来の医療の進歩に貢献できる可能性がある。
2.研究の科学的合理性の根拠
斜視原因遺伝子は不明であるが,これまでの私たちの研究によって斜視関連遺伝子座が同
定された 5,6)。次世代シークエンサ等の新技術を活用することによって斜視遺伝子を同定でき
る可能性がある。研究体制としては,植物(大麦)ゲノム専門家である佐藤和広教授と共同
研究をすでに開始している。即ち 2015 年 3 月,岡山大学資源植物科学研究所との共同研究
(共同利用・共同研究拠点の事業)「植物ゲノム多様性解析手法のヒト疾患(斜視)多型解
析への応用」(課題番号 2743)として採択されている。
3.研究の方法及び期間
(1)研究のデザイン
患者から末梢血 10cc を採血し,白血球を密度勾配遠心分離し,ゲノム DNA を抽出して保
存する。候補遺伝子の PCR による増幅,塩基配列決定,染色体全体のマイクロサテライト解
析や SNP 解析,exome sequencing を行う。過去に行ったマイクロサテライト解析で発見した
斜視関連遺伝子座の中を,SNP解析やエクソーム解析(exome sequencing)によって候補
遺伝子を絞ってゆく。切除外眼筋から抽出した DNA および RNA を使って同様に解析する。
(2)研究対象者の選定方針
眼振,内斜視,外斜視,上下斜視,先天性(特発性)上斜筋麻痺などの治療目的で,岡山
大学病院で治療を受ける外来患者および入院患者である。
1)選択基準
① 自由意思による研究参加の同意を本人から文書で取得可能な患者
② 同意取得時の年齢が 80 歳未満の患者
③ 未成年の場合は代諾者の承諾が得られた患者
2)除外基準
①同意を得られなかった患者
3
②同意を撤回した患者
③80 歳以上の患者
(3)予定する研究対象者数
採血 150 人(3 年間)
切除外眼筋保存 45 人(3 年間)(両群に重複がある場合もある)
(4)対象者数の設定根拠
本研究は日常診療下で行われる研究であり,研究期間内での実施可能数として設定した。
(5)観察および検査項目(用いる試料・情報)とその実施方法
以下の項目について,観察および検査を実施し,また,そのデータを本研究に利用する。
採血を除きすべて日常診療で実施される項目であり,その頻度も日常診療と同等である。
用いる試料・情報は以下のとおりである。
1)患者基本情報:年齢,性別,診断名,斜視家族歴の有無
2)採血 10cc
3)斜視手術時に切除する外眼筋組織
(6)研究の変更,停止・中止,終了
1)研究の変更
本研究の研究実施計画書や同意説明文書等の変更または改訂を行う場合は,あらかじめ研
究倫理審査専門委員会(以下,委員会)の承認を必要とする。
2)研究の停止・中止
研究責任者は,以下の事項に該当する場合は,研究実施継続の可否を検討する。
委員会により,研究実施計画等の変更の指示があり,これを受入れることが困難と
判断されたとき。
研究責任者は,委員会により停止又は中止の勧告あるいは指示があった場合は,研
究を中止する。
また,研究の停止または中止を決定した時は,遅滞なく病院長及び研究科長にその理由と
ともに文書で報告する。
3)研究の終了
研究の終了時には,研究責任者は遅滞なく研究終了報告書を病院長及び研究科長に提出す
る。
(7)研究実施期間
平成 24 年 12 月開催研究倫理審査専門委員会承認後~平成 30 年 12 月 31 日
(8)他機関への試料・情報の提供
提供予定なし。
4.インフォームド・コンセントを受ける手続き
(1)手続き方法
文書を用いて説明・同意を取得する。
(2)同意取得の具体的方法
説明および同意に関する書類に基づく。
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5.個人情報等の取扱いと匿名化の方法
(1)個人情報の取扱い
本研究に係わるすべての研究者は,「ヘルシンキ宣言」および「ヒトゲノム・遺伝子解析
研究に関する倫理指針」を遵守して実施する。
研究実施に係る試料・情報を取扱う際は,研究対象者の個人情報とは無関係の番号を付し
て管理し,研究対象者の秘密保護に十分配慮する。
また,研究結果を公表する際は,研究対象者を特定できる情報を含まないようにする。研
究の目的以外に,研究で得られた研究対象者の試料・情報を使用しない。
(2)匿名化の方法
研究期間中は連結可能匿名化とする。研究終了後も将来の研究に試料を使用する可能性が
あるため,研究対象者から拒否の申し出に対応できるように連結可能匿名化を維持する。
6.研究対象者に生じる負担並びに予測されるリスク及び利益,これらの総
合的評価並びに当該負担及びリスクを最小化する対策
(1)研究対象者に生じる負担
手術時に採血する場合を除き,採血のための時間を要する。また,採血の苦痛はある。手
術時の切除組織の採取については,廃棄する組織を利用するため新たな負担は生じない。
(2)予測されるリスク
採血 10mL は研究目的で実施する。しかし,これらは研究対象者の症状や治療経過に影響を
与えないものと考えられる。採血には血管迷走神経反射のリスクがあるが,頻度は低い。ま
た,手術時に採取される切除筋は本来は廃棄するものなのでリスクはない。
(3)予測される利益
本研究は日常診療による研究であり,研究対象者に直接の利益は生じない。
(4)総合的評価並びに当該負担及びリスクを最小化する対策
研究対象者への負担・リスクは採血時のみである。採血時には,研究対象者の体調をよく
確認し,不調であれば,採血を中止する。また,過去に血管迷走神経反射を起こしたことが
ある研究対象者は,臥位で採血する。研究対象者が小児である場合には,斜視手術を受ける
場合にのみ採血を依頼し,採血も全身麻酔導入後に行う。
7.試料・情報等の保管方法及び廃棄の方法
(1)本研究で得られた試料・情報
本研究で収集した試料・情報は,研究の中止または研究終了後 10 年が経過した日までの間
施錠可能な場所(眼科学分野冷凍庫およびロッカー)で保存し,その後は個人情報に十分注
意して廃棄する。廃棄方法としては,紙媒体はシュレッダーにて細断し,電子データは消去
する。保管する資料・情報からは個人情報を削除する。研究終了後も将来の研究に試料を使
用する可能性があるため,研究対象者から拒否の申し出に対応できるように連結可能匿名化
を維持する。すなわち対照表を施錠下に管理する。
保管が必要な理由:研究終了後も論文作成やデータ確認を行う事が想定されるため。
(2)研究に用いられる情報に係る資料
研究責任者は,研究等の実施に係わる重要な文書(申請書類の控え,病院長・研究科長か
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らの通知文書,各種申請書・報告書の控,同意書,その他,データ修正履歴,実験ノートな
ど研究に用いられる情報の裏付けとなる資料または記録等)を,研究の中止または研究終了
後 10 年が経過した日までの間施錠可能な場所で保存し,その後は個人情報に十分注意して廃
棄する。
8.研究機関の長への報告内容及び方法
研究責任者は以下について文書により研究機関の長に報告する。なお,①については,年
1 回の報告を行い,②以降の項目は,適宜報告するものとする。
① 研究の進捗状況及び研究の実施に伴う有害事象の発生状況
② 研究の倫理的妥当性若しくは科学的合理性を損なう事実若しくは情報又は損なうおそ
れのある情報であって研究の継続に影響を与えると考えられるものを得た場合
③ 研究の実施の適正性若しくは研究結果の信頼を損なう事実若しくは情報又は損なうお
それのある情報を得た場合
④ 研究が終了(停止・中止)した場合
⑤ 研究に関連する情報の漏えい等,研究対象者等の人権を尊重する観点又は研究の実施
上の観点から重大な懸念が生じた場合
9.研究の資金源等,研究機関の研究に係る利益相反及び個人の収益等, 研
究者等の研究に係る利益相反に関する状況
本研究は,研究責任者自身の寄附金または科学研究費など公的研究費で実施する。利益相
反はない。また,本研究の研究担当者は,「岡山大学医療系臨床研究における利益相反マネ
ジメント委員会内規」の規定に従って,医療系利益相反マネジメント委員会に必要事項を申
告し,その審査と承認を得るものとする。
10.公的データベースへの登録
介入研究ではないため登録していない。
11.研究結果の発表・公開
論文発表・学会発表・インターネット掲載などで公開する。
12.研究対象者等及びその関係者からの相談等への対応方法
研究責任者のメールアドレスを公開して,随時電子メールでの相談を受付ける。
13.代諾者等からインフォームド・コンセントを受ける場合の手順
(1)代諾者による同意が必要な研究対象者とその理由
未成年者が代諾者による同意が必要な研究対象者である。研究対象者に正しく研究内容を
説明し,研究対象者が合理的な判断を行うことは難しいと考えられる。
(2)代諾者等の選定方針
研究対象者が未成年者である場合は親権者。
具体的には,研究対象者の父母,祖父母である。
(3)代諾者等への説明事項
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研究対象者への説明文書と同じ。
(4)当該者を研究対象者とすることが必要な理由
小児に好発する疾患に関する研究であるため,未成年者を研究対象とする事が必須である。
14.インフォームド・アセントを受ける場合の手順
中学校等の課程を未修了であり,且つ 16 歳未満の未成年者を研究対象とする場合には,イン
フォームド・アセントを得るように努める。インフォームド・アセントが必要となると予想
されるので,研究対象者への説明事項を記載したアセント文書を作成しそれに基づいて説明
し同意を得る。
15.緊急かつ明白な生命の危機が生じている状況での研究に関する要件の
全てを満たしていることを確認するための手順
該当なし
16.研究対象者等に経済的負担又は謝礼
本研究で実施するゲノム解析にかかる費用は研究者が所属する診療科の研究費で賄う。
それ以外は,通常の保険診療内で行われるため,研究に参加することによる患者の費用負担
は発生しない。本研究に参加することによる謝礼はない。
17.重篤な有害事象が発生した際の対応
該当なし
18.健康被害に対する補償の有無及びその内容
本研究は観察研究であり,日常診療を行って研究対象者の試料・情報を利用するものであ
る。その際,試料の採取に軽微な侵襲性を有するため,研究対象者に健康被害が発生する可
能性がある。その際は,研究責任者は誠意を持って対処し,適切な医療を提供する。その費
用は研究対象者の保険診療で行い,本研究による特別の補償は行わない。以上の点をあらか
じめ研究対象者に説明し,同意を得ることとする。
19.研究対象者への研究実施後における医療の提供に関する対応
研究対象者への研究実施後においては,通常の保険診療を実施する。
20.研究実施に伴う重要な知見が得られる場合に関する取扱い
該当なし
21.委託業務内容及び委託先の監督方法
該当なし
22.本研究で得られた試料・情報を将来の研究に用いる可能性
本研究で得られた試料・情報を将来の研究に使用する可能性がある。
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その場合にはポスター・インターネット掲載により情報公開を行い、拒否機会を設ける。
23.モニタリング及び監査の実施体制及び実施手順
該当なし
24.遺伝情報の取扱いと遺伝カウンセリング
遺伝情報は開示しない。斜視には斜視手術などの治療法があるので,遺伝カウンセリングは
実施しない。
25.遺伝情報の安全管理の方法
遺伝情報の管理方法は、個人情報管理者及び個人情報分担管理者の下『指針』に則り遺伝子情報の厳密
な管理を行う。ゲノム試料および切除筋組織はコード番号化し連結可能匿名化して施錠した冷凍庫に保
管する。コード番号と患者IDの対応表は施錠できる引き出し及びロックがかかったコンピュータに保
管する。
26.参考資料・文献リスト
1. 松尾俊彦.斜視の病因論について教えてください. 「専門医のための眼科診療クオリファイ
22 弱視・斜視診療のスタンダード」 中山書店 2014;95-98.
2. Matsuo T, Matsuo C. The prevalence of strabismus and amblyopia in Japanese elementary school
children. Ophthalmic Epidemiology 2005;12: 31-36.
3. Matsuo T, et al. Heredity versus abnormalities in pregnancy and delivery as risk factors for different
types of comitant strabismus. Journal of Pediatric Ophthalmology and Strabismus 2001;38: 78-82.
4. Matsuo T, et al. Concordance of strabismic phenotypes in monozygotic versus multizygotic twins
and other multiple births. Japanese Journal of Ophthalmology 2002;46: 59-64.
5. Shaaban S, Matsuo T, et al. Chromosomes 4q28.3 and 7q31.2 as new susceptibility loci for comitant
strabismus. Investigative Ophthalmology & Visual Science 2009;50:654-661.
6. Shaaban S, Matsuo T, et al. Investigation of parent-of-origin effects in comitant strabismus using
MOD-score analysis. Molecular Vision 2009;15:1351-1358.
7. Jiang Y, Matsuo T, et al: ARIX gene polymorphisms in patients with congenital superior oblique
muscle palsy. British Journal of Ophthalmology 2004;88: 263-267.
8. Uchiyama E, Matsuo T, et al: Paretic side/normal side ratios of cross-sectional areas of the superior
oblique muscle vary largely in idiopathic superior oblique palsy. American Journal of
Ophthalmology 2010;149: 508-512.
9. Ohkubo SI, Matsuo T, et al: Phenotype-phenotype and genotype-phenotype correlations in patients
with idiopathic superior oblique muscle palsy. Journal of Human Genetics 2012;57: 122-129.
10. 松尾俊彦.「改訂第5版
羊土社 2010; 75-79.
新遺伝子工学ハンドブック」Suppression subtractive hybridization.
11. Kitada M, Matsuo T, et al. Different levels of TIMPs and MMPs in human lateral and medial rectus
muscle tissue excised from strabismic patients. Strabismus. 2003;11:145-55.