血液の流れ - 東北大学 流体科学研究所

講演内容
血液の流れ
1.はじめに
2.血流のシミュレーション
平成26年度 基礎ゼミ 第1回
3.血流の計測
2016年4月14日
4.おわりに
東北大学
流体科学研究所
早 瀬 敏 幸
Institute of Fluid Science, Tohoku University
1
2
Institute of Fluid Science, Tohoku University
流れとは?
行く川の流れは絶えずして、
しかももとの水に非ず。
1.はじめに
つながり
動き
鴨長明「方丈記」
広瀬川
Institute of Fluid Science, Tohoku University
流れはどれ?
3
Institute of Fluid Science, Tohoku University
「液体」と「流体」はちがう
様々な流れの例
流れの大きさ
10,000 km
本州
1,000 km
100 km
つながり
10 km
泉が岳
+
1 km
100 m
動き
ヒト
10 m
1m
10 cm
1 cm
蚊
1 mm
100 m
10 m
赤血球
1 m
100 nm
Institute of Fluid Science, Tohoku University
4
5
原子
10 nm
流れの例
マグマの流れ
海流
ジェット気流
台風
河川
火山爆発
新幹線周りの流れ
ロケット
ジェット旅客機
発電機のタービン
水泳
半導体プロセスのプラズマ流
血管内の血流
メダカ
泳動型マイクロマシン
毛細血管内の血流
赤血球
血液中のマイクロバブル
ナノバブル
ナノマシン
Institute of Fluid Science, Tohoku University
6
1
大動脈(タンク,管路)
直径3cm
長さ30cm
平均速度30cm/秒
血 液
量
血液重量:体重の約8%
(体重65kgなら5kg)
血液の体積:約5リットル
(比重は1.06)
心臓(ポンプ)
最大・最小容積160ml,80ml
脈拍65回/分
拍出量5リットル/分
組成
有形成分(45%体積)
無形成分(55%体積)
毛細血管(抵抗)
直径5ミクロン
長さ1mm
平均速度1mm/秒
7
Transdisciplinary Fluid Integration Research Center, Institute of Fluid Science, Tohoku University
血液循環のイメージ
1.2
-4
1.0
4.0x10
0.8
-4
0.6
-4
2.0x10
0.4
u'
3
流量
3.0x10
q [m /s]
この部分の圧力が血圧
心臓は血液のポンプ
-4
5.0x10
最高120mm水銀 = 1.6m水柱
最低 90mm水銀 = 1.2m水柱
8
Institute of Fluid Science, Tohoku University
-4
1.0x10
0.2
0.0
0.0
-0.2
-4
-1.0x10
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
最高120mm水銀 = 1.6m水柱
最低 90mm水銀 = 1.2m水柱
1.0
t [s]
時間
動脈(膨らんだゴム風船)
肺
動脈
左心房
毛細血管
(細い管は
流れにくい)
心臓(ポンプ)
静脈(血液のタンク)
動脈瘤
心臓
右心房
右心室
最高10 mm水銀
最低 5 mm水銀
9
Institute of Fluid Science, Tohoku University
循環器系の疾患
左心室
肺
静脈
Institute of Fluid Science, Tohoku University
10
最高120mm水銀 = 1.6m水柱
最低 90mm水銀 = 1.2m水柱
動脈硬化
動脈
2.血流のシミュレーション
血栓
肺
心臓
静脈
Institute of Fluid Science, Tohoku University
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Institute of Fluid Science, Tohoku University
12
2
コンピュータの発展
シミュレーション手法の発展
1946年 世界初のデジタル計算機ENIACが完成
Electronic Numerical Integrator and Computer
1666年 微積分学(ニュートン)
ペンシルベニア大学(米国)
18000本の真空管
毎秒5000回の加算、14回の10桁乗算
ペンシルベニア大学HP
(当時、最新の機械式リレーコンピュータでは、毎秒50回の加算が可能)
1845年 ナビエ・ストークス方程式(流れの基礎方程式)
2002年 世界最速の地球シミュレータが完成(56年後)
1900年頃 ルンゲ・クッタ法(常微分方程式の数値解法)
地球シミュレータセンター(日本)
3000億個のトランジスター(CPUのみ) (1500万倍)
毎秒40兆回の乗算 (3兆倍)
1960年頃 有限要素法(構造解析)
2011年 京速コンピュータ「京」が世界最速に
理化学研究所(日本)
672筐体(CPU数68,544個)
毎秒8,162兆回の乗算 (583兆倍) ENIACで1800万年
Institute of Fluid Science, Tohoku University
1965年 MAC法(差分法による流体解析)
1972年 SIMPLE法(有限体積法による流体解析)
理化学研究所HP
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人体のモデリング
14
Institute of Fluid Science, Tohoku University
循環系シミュレーションモデル
バーチャルハート
国立循環器病センター,東京大学医学部
バーチャルハートを実現するためには、神経の興奮か
ら始まる電位場解析、sarcomere(筋節)の収縮モデル、
流体・構造連成解析、などを組み合わせた大きなシステ
ムを構築する必要がある。今後、心臓全体、システム全
体のモデル化を進める。各種心臓疾患の治療薬・治療
法開発、手術計画、遺伝子治療へのブレークスルーを
与えることを目指した計算科学の真価が問われる研究
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15
16
Institute of Fluid Science, Tohoku University
循環器系のシミュレーション
脳動脈の血流シミュレーション
ルンゲクッタ法によるシミュレーション
流体科学研究所と医学部との共同研究
Pulmonary
Arterial Valve
Qi
E
h
n
dV *
dP
hE

(Qin  Qout 
)
dt
dt 2r 4
R
P  P2
)
Q  C( 1
R
2r 4
P
*
(V
V )
r
V  VO 
R
Qout
hE
ERV
PRV
Right
Ventricle
V*RVO
VRV
rrv
Right
Atrium
rra
Pulmonary
Artery
hpa
QRA-RV
RRA-RV
PRA VRA
EPA
PPA VPA
rpa
hrv
Tricuspid
Valve
QPA-PV
RPA-PV
QRV-PA
RRV-PA
Peripheral
Vessels
PPV VPV
r pv
hpv
ERA
hra
QVC-RA
RVC-RA
QPV-LA
RPV-LA
EVC
Vena
PLA VLA
PVC VVC
Cava
r vc
ELA
r la
hvc
Mitral
Valve
Q AO-VC
RAO-VC
Peripheral
Vessels
P
PLV
V*LVO
VLV
r lv
PAO VAO
r ao
hao
EAO
QLV-AO
RLV-AO
Aortic
Valve
hla
QLA-LV
RLA-LV
Left
Atrium
ELV
(ELVH,ELVL)
hlv
Left
Ventricle
Supporting Device
Aorta
弾性球殻モデル
常微分方程式
血圧の変化
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Institute of Fluid Science, Tohoku University
循環系全体のモデル
血流量の変化
18
3
脈波伝播のシミュレーション
8)肺の毛細血管内の白血球の流動
流体科学研究所とMITの共同研究
偏微分方程式をx方向に差分化した後、ルンゲクッタ法でシミュレーション
20
10
Ps
Pc
50
A Q

0
t x
0
0
5
カフ圧と血圧
10
15
5
0
25
20
t [s]
P [mmHg]
150
 A
2 y
A
T 2  Pe  P      
t
x
 A0 
[kPa]
15
100
20
15
100
[kPa]
u 
P 1
 u
S
u   
  ft u u  
x 
x 2
 t
 A

Pc, Ps [mmHg]
150
10
50
0
5
0
5
10
15
20
0
25
t [s]
血圧測定における
コロトコフ音の発生機構
圧閉部の血圧
×10
5
1
0.5
0
2
0
-0.5
-0.5
2
コロトコフ音
カフ圧力
6
[kPa/s ]
2
d P/dt [mmHg/s ]
×10
1
0.5
2
-1
-1
0
5
コロトコフ音
10
15
20
25
t [s]
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Institute of Fluid Science, Tohoku University
20
例:左心房に発生する心房細動のシミュレーション
7)磁気マイクロマシン
心房細動による血栓形成メカニズムの解明
電気通信研究所と流体科学研究所の共同研究
注射器で血管に注入
胴体に磁石
外部磁界で回転
ブレードで推進
血栓除去
放射線のターゲット
抗がん剤注入
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22
血流流入制御法の開発
ステントによる脳動脈瘤内への血流流入制御法の開発
脳動脈瘤用ステントに高機能付加をするための要素技術(ステント実形状を用いた血流解析)
3.血流の計測
Speed w/o stent
Speed with stent
VISC(virtural Intracranial Stent Challengeシミュレーションによるステントの
国際解析競技) での標準方式に採用された
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4
MRI
医用画像診断装置
体内構造物に体外からエネルギーを与え、構造物との作用から生じる物理量を検
出し画像化する装置
与えるエネ
ルギー
構造物との作 長所
用
短所
X線診断装
置
X線
X線減衰
空間・時間分解能が
高い
X線被曝
CT
X線
X線減衰
機動性に優れる
X線被曝
MRI
高周波磁場 スピン緩和
コントラストが高い
空間分解
能が低い
超音波診断
装置
パルス超音 反射、ドプラ
波
効果
局所、リアルタイム、
非侵襲
コントラスト
が低い
核医学診断
装置
放射性同位 局在化
元素
機能診断
被曝
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CT
超音波計測
GE Healthcare Japan HP
GE Healthcare Japan HP
東京女子医科大学HP
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血流
シミュレーション + 計測
4.おわりに
Institute of Fluid Science, Tohoku University
⇒ 計測融合シミュレーション(次回)
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