論述式試験I - 慶應義塾大学 法科大学院

平 成 26 年 度
慶應義塾大学大学院入学試験問題
法 務 研 究 科
法律科目試験(論述式Ⅰ)
注 意
1.
指示があるまで開かないこと。
2.
この問題冊子は 8 頁ある。試験開始後ただちに落丁,乱丁等の有無を確認し,異常があ
る場合にはただちに監督者に申し出ること。
3.
受験番号( 2 箇所)と氏名は,解答用紙(表)上のそれぞれ指定された箇所に必ず記入
すること。
4.
解答用紙の※を記した空欄内には何も書いてはいけない。
5.
解答 は 科目ごとに指定された解答用紙 に書くこと。誤った解答用紙 に解答した場合でも,
解答用紙の交換や再交付には応じない。
6.
答案 は 横書 きとし,解答用紙(表) の 左上 から,順次,実線内 に 一行 ずつ 書 き 進 める
こと。
7.
答案は,黒インクの万年筆またはボールペンで書くこと。
8.
この問題冊子の 5 , 7 , 8 頁は白紙である。下書きの必要があれば,この部分を利用し,
解答用紙を下書きに用いてはならない。
9.
注意に従わずに書かれた答案,乱雑に書かれた答案,解答者の特定が可能な答案はこれ
を無効とすることがある。
─1─
憲 法
〔問 題〕
A は,身 の 代金目的略取・殺人等 により 高等裁判所 で 死刑判決 を 受 けて 上告中 であり( なお, 1 審 でも
死刑判決 を 受 けていた ),B 拘置所 に 収容 されている。A は, この 収容中 に,死刑制度 は 廃止 すべきとの
考 えを 持 つに 至 り,以前 から 親交 のあった C 週刊誌 の 編集者 X の 取材 を 希望 していた。死刑制度 に 関 する
自分の考えを世に知らしめたいと考えたのである。
X は,A の 要請 に 応 えるべく,C 誌 の 誌面 で「死刑,是 か 非 か!― 拘置所 からのメッセージ 」 と 題 す
る特集を組むことを決意し,B 拘置所長である D に対し,取材を目的に,A との接見(面会)を申し出た。
これに対して D は,刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律に基づき,この接見を不許可とした。
なお,上記接見予定日 には,X からの 接見 の 申出 に 先立 ち,A はその 家族 との 接見 を 許可 されていた( そ
して,実際に家族との面会が行われた)
。
D による 接見 の 不許可 の 背景 には,本件 の 3 年前 に,E 拘置所 で 起 きた 以下 のような 事件 がある。 すな
わち,雑誌記者 である F が,E 拘置所 に 収容 されていた G( 1 審 で 死刑判決 を 受 け,控訴中 であった ) と
接見したものの,後に,G の期待に反し,G に関する名誉毀損的な記事(「懲りない G ,本誌記者にも悪態」
と 題 する 記事) を 公表 し, この 記事 を 知 った G が,精神的 に 動揺 して,同拘置所 の 職員 を 殴 るなどした
事件である。
編集者 X は,E 拘置所 で 過去 にこのような 事件 があったとはいえ,D による 本件不許可処分 に 納得 でき
ず,同処分 の 取消 しを 求 める 訴訟 を 提起 しようと 考 えている。 あなたが X の 訴訟代理人 であるとすれば,
どのような 憲法上 の 主張 を 行 うべきか。被告側 の 反論 を 想定 しつつ 解答 せよ。 なお,行政事件訴訟法上 の
問題について論じる必要はない。
─2─
〔資 料〕
刑事訴訟法
第80条 勾留されている被告人は,第 39 条第 1 項に規定する者〔※ 弁護人等〕以外の者と,法令の範囲
内で,接見し,又は書類若しくは物の授受をすることができる。勾引状により刑事施設に留置され
ている被告人も,同様である。
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律
(面会の相手方)
第115条 刑事施設 の 長 は,未決拘禁者…… に 対 し,他 の 者 から 面会 の 申出 があったときは,…… これを
許 すものとする。 ただし,刑事訴訟法 の 定 めるところにより 面会 が 許 されない 場合 は, この 限 り
でない。
(面会に関する制限)
第118条 未決拘禁者 の 弁護人等 との 面会 の 日及 び 時間帯 は,日曜日 その 他政令 で 定 める 日以外 の 日 の 刑
事施設の執務時間内とする。
2 前項の面会の相手方の人数は, 3 人以内とする。
3 刑事施設の長は,弁護人等から前 2 項の定めによらない面会の申出がある場合においても,刑事施設
の管理運営上支障があるときを除き,これを許すものとする。
4 刑事施設の長は,第 1 項の面会に関し,法務省令で定めるところにより,面会の場所について,刑事
施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上必要な制限をすることができる。
5 第 114 条の規定〔※下記〕は,未決拘禁者と弁護人等以外の者との面会について準用する。この場合
において,同条第 2 項中「 1 月につき 2 回」とあるのは,
「 1 日につき 1 回」と読み替えるものとする。
第114条 刑事施設 の 長 は,受刑者 の 面会 に 関 し,……面会 の 相手方 の 人数,面会 の 場所,日及 び 時間
帯,面会 の 時間及 び 回数 その 他面会 の 態様 について,刑事施設 の 規律及 び 秩序 の 維持 その 他管理
運営上必要な制限をすることができる。
2 前項の規定により面会の回数について制限をするときは,その回数は, 1 月につき 2 回を下回っては
ならない。
─3─
民 法
〔問 題〕
以下の事実を読んで,下記の問いに答えなさい。各問いはそれぞれ独立した問いとして考えなさい。
【事実】
A は,その所有の工事用クレーン 1 台(以下,「本件クレーン」という。)を B に賃貸して,これを B に
引 き 渡 した。 その 後,事業資金 に 窮 した B は,本件 クレーンを,事業縮小 のため 不要 になった 機械 を 処分
したいといって C に 売却 してしまった。 その 際,B は C に,本件 クレーンは 購入 したものであり 代金 は 完
済 されている 旨 を 説明 し,C はこの 説明 に 基 づき B 所有 のものと 考 えて 本件 クレーンを 購入 した。C は 本
件クレーンの引渡しを受けて使用しているが,BC 間の売買契約では,代金については引渡しから 1 週間以
内 に 一括 して 支払 うこととし,代金 の 完済 まで 所有権 は B に 留保 する 旨 の 合意 がなされている。 その 後,
引渡しから 1 週間を経過したが,C は代金を支払っていない。
【問い】
1 ) B はその後に事実上倒産した。そこで,A は,本件クレーンを回収しようとして B の機械等の置場
を 訪 ねたが,本件 クレーンが 見当 たらないため B に 確 かめた。 その 結果,本件 クレーンは,C に 売却
され 引渡 しがなされているが,代金 は 支払 われていない 事実 が 判明 した。A は C に 対 してどのような
法的主張をすることができるか検討しなさい。
2 ) C は, そ の 後 に 本件 ク レ ー ン の 代金 を 支払 わ な い ま ま 事実上倒産 し,工事現場 の 土地上 に 本件
クレーンを 放置 した。工事現場 の 土地所有者 D は,誰 にどのような 法的主張 をすることができるか 検
討しなさい。
─4─
─5─
刑 法
〔問 題〕
以下の事実関係に基づき,甲の罪責を論じなさい(特別法違反の点は除く)。
甲 は, ある 平日 の 昼間,都内 の 私鉄 S 駅 の 高架 ホーム 上 にある 売店 でスポーツ 新聞 を 購入 しようとした
ところ,店員が席を外していたことから,代金を支払わずに新聞を取得することにした。そこで周囲を見渡
すと店員らしき人影は見えず,付近にはほかの乗客もいなかったので,当初は購入するつもりがなかったも
のも含めて新聞 3 紙を手に取り,それらを手に持ったまま早足でホーム上を売店から遠ざかるように歩いて
いった。
大学生 A は,S 駅 のホーム 上 から 何 とはなしに 向 かいのホームを 見 ていると,挙動不審 のサラリーマン
風 の 男(甲) が 売店 から 新聞 を 持 ち 去 るのが 目 に 入 った。正義感 の 強 い A は,事情 を 問 いただそうと 階段
を昇降して隣のホームまで行き,甲を追いかけた。
ホームの端で甲に追いついた A は,「ちょっとすみません 」と甲に声をかけた。見知らぬ学生に急に話し
かけられて 驚 いた 甲 は 犯行 を 目撃 されたことを 直感 し,A の 脇 をすり 抜 けて 慌 てて 走 り 出 した。 その 様子
を見て甲が代金を支払わなかったことを確信した A は全速で甲を追いかけた。
そのままだと 追 いつかれるのも 時間 の 問題 だと 考 えた 甲 は,手 にしていた 新聞 を 後方 に 投 げて A の 注意
を 引 き, その 間 に 逃 げることにした。 ホームから 階段 を 降 り 始 める 際 に,甲 は 後 ろを 振 り 返 らないまま,
すぐ 近 くに 迫 っているように聞 こえる A の 足音 を 頼 りに A に 向 けて 新聞全 てを 投 げた。 すると,俊敏 な A
はとっさに体勢を変えてそれをよけたものの,バランスを崩してホームから線路上に転落した。
転落直後 に 列車 が 進入 してきたので,A は 慌 てて 隣 の 線路上 に 逃 げた。 しかし, そこに 反対方向 から 別
の 列車 が 進入 してきて,A はそれに 轢 かれて 即死 した。 ホーム 下 には 退避 スペースがあり, そこに 避難 し
ていれば A は死亡することはなかった。
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