2011/11/12 •主な画像処理解析技術 放射線治療計画の線量分布計算 放射線治療で最大の効果を上げるためには,正常組織への 線量投与を極力減らす一方で,腫瘍には治癒可能な線量を 溝口明日実,有村秀孝 投与することである. 九州大学大学院医学研究院 保健学部門 医用量子線科学分野 ICRUReport24 勧告 計算機支援診断治療研究室 線量投与の全不確定度:5% 線量計算の精度:4.3%以下 中心軸線量分布の計算精度:2.3%以下 1 光子の補正 線量計算に用いる基礎データ 水,または水と等価な均質ファントム中での測定データ 一次線 ・・・ すべて水との相互作用と仮定 対象:人体 = 不均質な媒体 密度の違いによる吸収線量の差を考慮する必要がある 電子の補正 一回 多重 軸方向 横方向 境界 散乱線 散乱線 平衡 平衡 領域 第1世代 実効減弱法 TAR比法 ○ 第2世代 拡張Batho法 ○ ○ 第3世代 convolution法 ○ ○ 第3+世代 convolution/ superposition法 ○ 第4世代 Monte Carlo法 ○ 誤差 10-15% ○ ○ 5-10% ○ ○ ○ 3-5% ○ ○ ○ ○ 2-3% ○ ○ ○ ○ ○ 粒子数依存 ※ ○:考慮済み 光子の補正 一次線 第1世代 実効減弱法 TAR比法 ○ 第2世代 拡張Batho法 ○ 電子の補正 光子の補正 一回 多重 軸方向 横方向 境界 散乱線 散乱線 平衡 平衡 領域 誤差 一次線 電子の補正 一回 多重 軸方向 横方向 境界 散乱線 散乱線 平衡 平衡 領域 10-15% 第1世代 実効減弱法 TAR比法 ○ ○ 5-10% 第2世代 拡張Batho法 ○ convolution法 第3世代 CT装置がなかった時代の単純な線量計算手法 ○ ○ ○ ○ ○ 3-5% 第3世代 • convolution/ 一次光子線上の密度変化のみ考慮 第3+世代 • 散乱線を考慮しないため精度が悪い ○ ○ ○ superposition法 ○ ○ 2-3% convolution/ 第3+世代 • CT装置の出現により,体内の不均質密度情報を利用 ○ ○ ○ ○ ○ superposition法 第4世代 ○ Monte Carlo法 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 粒子数依存 ※ ○:考慮済み convolution法 ○ 実測ベース線量計算法 誤差 10-15% ○ ○ • 3次元の線量分布計算 一次散乱線を考慮 Carlo法 第4世代 • Monte ○ ○ ○ ○ ○ ○ 5-10% ○ ○ 3-5% ○ ○ 2-3% ○ 粒子数依存 ※ ○:考慮済み 1 2011/11/12 光子の補正 一次線 理論ベース線量計算法 第1世代 第2世代 第3世代 • • 電子の補正 光子の補正 一回 多重 軸方向 横方向 境界 散乱線 散乱線 平衡 平衡 領域 実効減弱法 ○ TAR比法 光子や二次電子の挙動や吸収を物理モデルとして関数化 多重散乱まで考慮 拡張Batho法 ○ ○ ○ ○ 誤差 一次線 10-15% 第1世代 ○ 第2世代 • 光子,電子の輸送理論をMonte Carlo計算でシミュレーション • 光子,電子の振る舞いを含め,原則的にすべての条件を満たす方法 3-5% 第3世代 convolution法 ○ ○ ○ ○ ○ • 最も精度が高い • 計算時間が膨大 convolution/ ○ ○ ○ ○ 3-5% ○ ○ ○ ○ ○ 2-3% 第3+世代 第4世代 ○ ○ ○ ○ ○ 粒子数依存 第4世代 ○ 拡張Batho法 10-15% 5-10% ○ Monte Carlo法 ○ superposition法 Monte Carlo法 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 5-10% 2-3% ○ ※ ○:考慮済み 光子の補正 一次線 誤差 理論ベース線量計算法 convolution/ 第3+世代 superposition法 convolution法 実効減弱法 TAR比法 電子の補正 一回 多重 軸方向 横方向 境界 散乱線 散乱線 平衡 平衡 領域 粒子数依存 ※ ○:考慮済み 電子の補正 一回 多重 軸方向 横方向 境界 散乱線 散乱線 平衡 平衡 領域 誤差 convolution法のアルゴリズム 第1世代 実効減弱法 TAR比法 ○ 第2世代 拡張Batho法 ○ ○ 第3世代 convolution法 ○ ○ 第3+世代 convolution/ superposition法 ○ 第4世代 Monte Carlo法 ○ 10-15% ○ ○ 5-10% ○ ○ ○ 3-5% ○ ○ ○ ○ 2-3% ○ ○ ○ ○ convolution/superposition法のアルゴリズム ○ 粒子数依存 ※ ○:考慮済み X線光子 一次線 線量:一次線と散乱線の線量で決定される 散乱線 一次線の減弱を計算 dosedepositionkernel を掛け合わせる (散乱線による線量付与の計算) 一次線 散乱線 2 2011/11/12 ・・・ ・・・ 一次線の減弱を計算 dosedepositionkernel を掛け合わせる 一次線 (散乱線による線量付与の計算) T:TERMA K:dosedepositionkernel dosedepositionkernel を掛け合わせる 線量分布が 推定される (散乱線による線量付与の計算) KERMA TERMA (Kinetic energy released per unit mass) (Total energy released per unit mass) 定義 非荷電粒子により放出される 全荷電粒子の初期運動 エネルギーの総和 定義 光子の相互作用により 単位質量あたりに放出される 総エネルギー 物質中の荷電粒子にのみ付 与されたエネルギー KERMA+ コンプトン散乱で 生じた二次光子のエネルギー ⇒ 光子が相互作用で失った 全エネルギー D:dose 相互作用点における放出総エネルギー Ψ:エネルギーフルエンス μ/ρ:質量減弱係数 [単位:Gy] 物質依存の関数 線量計算に利用するデータ ⇒ 水 or 水等価物質 一次線の減弱を計算 散乱線 水中における実効長に変換する手法 Mass-densityscalingmethod 水との相対物質密度により各物質の実効長を算出 採用機種:Pinnacle,Helax-TMS ρ:massdensity l:actual range 全ての物質を水と仮定し変換 electron-densityscalingmethod 水との相対電子密度により各物質の実効長を算出 採用機種:Eclipse,XiO eEPL:(water)equivalentpathlength(実効長) r: 相互作用点 r0: 入射面上の点 ρe:electrondensity l:actual range 3 2011/11/12 治療計画CT 相互作用点で放出された総エネルギーの 平均的な3次元の線量空間配分 CT値を相対電子密度へ変換 水中での相互作用と仮定 Monte Carlo法で計算 eEPLの算出 相互 作用点 TERMAの算出 TERMAとdose deposition kernelの convolutionによる3次元線量の計算 Relative electron density CT to ED 変換テーブル(CT装置ごとに測定する) 4 3.5 3 2.5 2 1.5 1 0.5 0 convolution法のアルゴリズム convolution/superposition法のアルゴリズム -2000 -1000 0 1000 2000 3000 4000 5000 CT value (HU) Med.Phys.v35(5),pp1932-1941 convolution法と基本的には同じ 基準kernel(convolution法と同じ) 水中での相互作用と仮定 Monte Carlo法で計算 相互 作用点 T:TERMA K:dosedepositionkernel D:dose 4 2011/11/12 convolution法 convolution/superposition法 convolution法 convolution/superposition法 基準kernel(水) を一様に使用 周辺の電子密度により変形 基準kernel(水) を一様に使用 周辺の電子密度により変形 電子密度スケーリング法 (eEPL) 電子密度1 電子密度1 電子密度1 電子密度0.3 電子密度1 電子密度0.3 電子密度0.3 電子密度0.3 により部分的に拡大・縮小 相互作用点 ・・・ ・・・ ・・・ 線量付与点 convolution法 convolution/superposition法 基準kernel(水) を一様に使用 周辺の電子密度により変形 電子密度スケーリング法 (eEPL) により部分的に拡大・縮小 電子密度1 電子密度1 電子密度0.3 電子密度0.3 ・・・ ・・・ 不均質補正:一次線方向のみ 計算の高速化 不均質補正:全方向 不均質領域での計算精度向上 各アルゴリズムによる中心軸線量分布 (肺モデル) (CMSMonaco Training Guideより) 放射線治療計画における 線量計算精度 計算アルゴリズム convolution法 計算時間 均質領域 不均質領域 不均質領域境界 高い 低い 低い 評価指標の基礎 高速 馬込大貴,有村秀孝 九州大学大学院医学研究院 convolution/superposition法 高い 高い 低い 速い Monte Carlo法 高い 非常に高い 高い 遅い* 保健学部門 医用量子線科学分野 計算機支援診断治療研究室 * 仮想水等価ファントムに対し1門入射 (ヒストリー1億個) ⇒ convolution/superposition法の200~300倍 5 2011/11/12 放射線治療の流れ 診察 放射線治療計画 治療計画 治療 1〜数日 1回10分程度 経過観察 腫瘍に対して必要な線量を集中し, 周囲の正常組織への線量を可能な限り少なくする. 放射線治療計画装置を 用いて,照射を行う範囲, 治療するビームの方向等を 決定する. 3次元の線量分布では, どちらが良い治療計画なのか判断が難しい. Dose Volume Histogram (DVH) 定義された領域内の線量と体積の関係を表すヒストグラム Dose Volume Histogram (DVH) 定義された領域内の線量と体積の関係を表すヒストグラム 線量の高い方から累積する. Volume (%) Volume (cm3) 放射線治療領域では,通常,累積ヒストグラムのことを指す. Dose (%) DVHの比較前立腺癌回転照射vs IMRT* Dose (%) DVHの比較前立腺癌■回転照射vs ▲IMRT 3D-CRTvs IMRT PTV IMRT 回転照射 理想を書く IMRTの方が良い治療計画! 回転照射 Rectum IMRT *IMRT: Intensity Modulated Radiation Therapy 6 2011/11/12 DVHの比較前立腺癌4門照射vs回転照射 DVHの比較前立腺癌▲4門照射vs■回転照射 PTV 4門照射 回転照射 どちらの治療計画が良い? 4門照射 Rectum 臓器によって重要な指標が異なる 回転照射 腫瘍(PTV)に対する主な線量評価指標 腫瘍 D95 一般的には,腫瘍全体に均一に線量が付与されるべき 直列臓器(脊髄,腸など) 95%以上の体積に照射されている線量 (Gy) Homogeneity Index (HI) 一部分でも高線量が照射されると障害に繋がる PTV内の最大線量 / PTV内の最低線量 並列臓器(肺,肝臓など) Conformity Index (CI) 小体積であれば高線量が照射されても障害が起こらない? PTV内の最低線量で囲まれる体積 / PTVの体積 曖昧でない「数値」として治療計画を評価する必要性 他にも様々な指標が考案されている. 肺に対する主な線量評価指標 D95 95% 平均線量 V20 20 Gy以上照射される肺の体積 (%) V5 5 Gy以上照射される肺の体積 (%) 障害(放射線肺炎)が起こるかどうか,予測出来る指標が重要 D95 7 2011/11/12 V20 V20と放射線肺炎の関係 Cumulative incidence(%) 40% <V20 V20で分けた障害発生の予後のグラフ 32% <V20 < 40% 22% <V20 < 31% V20 < 22% V20 20 Gy Graham MV, et al. RedJ 1999;45:323-329. V5と放射線肺炎の関係 Vxの問題点 V5 ≦ 42% V20で分けた障害発生の予後のグラフ V5>42% DVHのある点の値だけで,予後を予測するのは困難 Wang S, et al. RedJ 2006;66:1399-1407. Kong FM, et al. SeminRadiatOncol 2007;17:108-120. TCPとNTCP 臨床的に,重要なのは, TCPとNTCPの関係 TCP 腫瘍が根治するのか? 障害が起こるのか? NTCP Tumor control probability (TCP) Normal tissue complication probability (NTCP) 線量分布に基づき,腫瘍制御確率, 正常組織障害発生確率を数式で近似する. Dose 8 2011/11/12 TCPとNTCPの関係 TCP NTCP Dose 9
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