福岡大学 今泉ゼミB - 第55回全九州学生商経ゼミナール福岡大学大会

アフリカと環境問題
福岡大学
今泉ゼミB
分科会番号 9 環境経済論
坪井
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藤井
公博
南
藤田
賢人
木本
智明
治邦
上原
由香
千怜
本竹
八尋
沙亜耶
亜沙美
目次
P3~4
はじめに
P4~6
第1章
アフリカの温暖化の現状
P6~9
第2章
アフリカの温暖化の影響
P9~12
第3章
アフリカの温暖化対策
5
10
P12~13
P14
終わりに
参考文献
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はじめに
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今日、私達の暮らしは以前に比べてかなりより良いものとなり住みやすい社会となっ
た。しかし、そういった生活を実現するために森林伐採や温室効果ガスの排出などで環境
を破壊してしまい地球温暖化を引き起こしてしまった。この地球温暖化は世界各国で大き
な問題とされ、それぞれの国ごとにいろいろな対策がなされている。
しかし、それでもなお地球温暖化は進む一方である。各国が対策を行っているにも関わら
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ずなぜ温暖化は進む一方なのか、それは一人一人、温暖化がどれほど進んでいるのか、ま
た、どんな影響を与えているのかを十分に理解していないからだと思う。
気象庁の気候変動監視レポート 2010 によると、
世界の年平均気温は 100 年あたり 0.68℃
(統計期間:1891~2010 年)の割合で上昇している。また、気候変動に関する政府間パネ
ル(IPCC)第 4 次評価報告書では、20 世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇の
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ほとんどは、人為起源の温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性が非常に高いと
している。
温室効果ガスの中で、地球温暖化に最も影響を及ぼすのが二酸化炭素である。この二酸
化炭素の大半が先進国の国々から排出されている。しかし、一方でその被害を受けている
のが発展途上国の国々である。
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2009 年 9 月、イギリスの Maplecroft がまとめた「CCVI(気候変動に対するぜい弱性
指標)
」によると、気候変動の影響を受けやすいと判断された 28 か国中 22 か国がアフリ
カ諸国であった。
また、今年の 11 月に COP17(第 17 回気候変動枠組条約国会議)が南アフリカで開催
される。その会議で、2012 年末で期限が切れる京都議定書の単純延長の問題などが話し合
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われる予定である。
これらの情報により、私達はアフリカという地域に関心を持った。
そして、地球温暖化という環境問題に対する見方を、先進国の一つである日本が途上国
の国々に対して行っている支援・対策や途上国の国々が行っている対策を知ることにより、
先進国からの目線ではなく、途上国、特にアフリカ諸国からの目線で考えていきたいと思
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った。
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このアフリカで起こっている状態を知ることにより、地球温暖化への対策への問題、温
暖化への理解をより一層知ることが出来ると考えた。
次章からアフリカの地球温暖化の現状、それによる温暖化の影響。そして、地球温暖化
に対する先進国や世界から途上国に行っている対策、支援について詳しく述べていこうと
5
思う。
第 1 章アフリカの温暖化の現状
この章では世界中の地球温暖化の現状を述べたうえで砂漠化などの問題を抱えるアフリ
カの温暖化の現状を述べたいと思う。
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地球温暖化の影響の一つに平均気温の上昇が挙げられる。1990 年代前半まで地球の歴史
上平均気温は安定していた、しかし、90 年代後半から現在にかけて尐しずつ上昇しており
このままだと約 100 年後には最大で 5.8 度平均気温は上昇してしまう。
これはどういうことなのだろうか。
過去 1000 年で平均気温は上がったり下がったりの繰り返しでその値はいずれも 0 度か
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ら 0.05 度の間である。
こうして考えると、100 年で 5.8 度平均気温が上昇することの重大さが分かると思う。
この平均気温の上昇によって南極やパタゴニア、グリーンランドなどの氷が融けて海面
が上昇する。これが地球温暖化の影響の一つとされる海面上昇である。
これによって海抜の低い地域では水没してしまうといった危機に瀕している。
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この海面上昇の影響を受けている最も有名な国にツバルが挙げられる。このツバルとい
う国は海面上昇によって国が尐しずつ水没しているこのまま海面上昇が続けばツバルは完
全に水没してしまうと言われている。そのため現在、ツバルで暮らす人々は主にニュージ
ーランドに移住している。このように環境問題によって生じる難民を「環境難民」と呼ぶ。
水没してしまう国もあれば干ばつなどで水がなくなってしまう国もある。代表的なのが
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オーストラリアだ。
自然豊かで広大な台地を持つオーストラリアでは、数年前から続く大規模な干ばつが深
刻な問題にいる。太平洋上でユーラシア大陸とアメリカ大陸の間に位置しているため、エ
ルニーニョやラニーニャ、地球温暖化やオゾンホールなど様々な異常気象の影響を受けや
すい地域ともいえる。
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特に赤道に近い北オーストラリアでは乾燥が進み、山火事の発生率が高くなる。夏にな
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ると気温も 40 度に達する事もあり、乾いた森林では自然発火する場合もある。特に乾燥
している地域では、農作物の収量にも大きな影響があるため広大な農地での散布システム
の整備は欠かせない。また、干ばつの影響で数多く存在する世界遺産が尐しずつ失われて
いる。人気の観光スポットでもあるグレートバリアリーフの珊瑚礁にも大きな影響が出て
5
いる。
我が国日本でも影響は出ている。
環境省によると、地球温暖化によって海水温度上昇し、南方系魚類が増加している。そ
れにより、海藻類への食害が生じ、衰退する恐れがある。
他にも、サンマの回遊ルートが変化し、漁業へ影響を与えている。
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人の健康へも影響として、熱中症や熱ストレスが挙げられる。
先進国の都市部では、気温が郊外よりも高くなるヒートアイランド現象が深刻化してお
り、日本でも関東地域において、30℃を超える時間帯の平均が 1980~1984 年では約 200
時間だったが、2000~2004 年では 400 時間を超える地域もある。
2007 年の熱中症の患者数が多くの都市で過去最高を記録し、東京 23 区では患者数が、
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前年(2006 年)の 2 倍にも及んだ。
日最高気温と死亡率は関係性があり、2081~2100 年には、熱ストレスによる死亡倍率
が、現在の 2~5 倍にも上昇する可能性があるとしている。
ヒートアイランド現象は他にも、局地的な集中豪雨を起こしている。2008 年の東海豪雨
では、愛知県で観測史上最高の一時間の雨量 146.5 ミリを観測し、それに伴う洪水により
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死者 5 人、床上浸水が 2000 世帯、床下浸水が 11000 世帯以上の被害を出した。
また、今年も台風の影響により関西地方が同じような被害を受けていたり、関東では、
集中豪雨の被害が出ている。
このようなことが世界各国で起こっていて、年々その被害は数が増え、被害状況も大き
くなっている。これらの根本にあるのが、地球温暖化である。
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ならば、アフリカはどのような現状にあり、どんな被害を受けているのだろうか。
アフリカは,気候変化に対して脆弱性が高い。特に水資源はアフリカの主な脆弱な分野
の一つである。しかし,地球温暖化によって起こる気候変化に伴い、気温、降雨、日射、
風の空間・時間的なパターンの変化によって砂漠化が進行し、食料や水の安全保障を危う
くしている。
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環境省が 2009 年に発表した地球温暖化の影響・適応 情報資料集によると、将来予測
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される温暖化の影響で、アフリカは 2020 年までに、7500 万人~2 億 5000 万人の人々が
水ストレスの増加にさらされ、いくつかの国では、天水農業における収穫が最大 50%減尐
すると述べており、水不足や食料不足がさらに進むと考えられている。
温暖化がもたらす気候変化による問題は、砂漠化のような直接的なものだけではなく、
5
間接的なものもある。
それが、感染症である。感染症とは、ウイルスや細菌などの病原体の微生物が、野生動
物や家畜等から蚊やダニ等の媒介動物によって、飲料水や食べ物あるいは人から感染して
起こる病気の総称である。
この感染症は、気象や気候の変化に敏感であるため、地域によっては影響が大きく異な
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るという特徴がある。ここでは、大まかに感染症による健康への影響の特徴を述べたい。
まず、温暖化による気温の上昇によって、感染症の媒介動物の生息域が拡大する。また、
アフリカのような途上国が多い地域では、衛生がまだまだ不十分であり、そのような場所
では、干ばつや洪水により頻度が増加する。
標高の高い地域の気温が上昇すると、南アフリカではマラリアにかかる危険性の高い人
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の数が 2020 年までに 4 倍になるとも言われる。
WHO は 2001 年に発表した報告で、2000 年には温暖化の影響による死者がすでに 15
万人に達したと報告した。
今後、
途上国の農村部や大都市のスラム街の調査などが進めば、
影響を受ける人数はさらに増える可能性が高いと言われている。
他にもアフリカ東部の珊瑚礁では、海水温の上昇や日照量の増加が原因とみられる大規
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模な白化現象が発生しており、1998 年には全体の 75〜77%が死滅したこともあった。今
後 50 年のうちにこうした現象が当たり前になると危惧する専門家もいる。
このように、アフリカでも地球温暖化の影響が起きており、砂漠化、その砂漠化に伴う
水不足や食糧不足、気温の上昇におけるマラリアとリフトバレー熱病の発生等の問題を抱
え、さらに、これらによってアフリカで生活している人々は栄養失調や感染症発症リスク
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の増加の危機にたたされている。
こういったことが今アフリカで起きている地球温暖化の現状である。
第 2 章 アフリカの温暖化の影響
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第 1 章でも述べたように、アフリカでは、温暖化により砂漠化の進行、感染症の増加や
干ばつや洪水などの異常気象の発生など様々なことが起きている。
この第 2 章では、それらの影響をさらに詳しく述べていきたい。
まず、異常気象についてである。近年、世界各国の様々なところでも異常気象は起こっ
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ているが、アフリカも例外ではない。
アフリカでの異常気象で、2000 年にモザンビークで起きた大洪水は過去 50 年で最悪と
言われ、死者が約数千人、被災者が約 100 万人も出た。南アフリカにあるクワズールー=
ナタール大学の水文学者、ローランド・シュルツ教授は、米国がハリケーン『カトリーナ』
の痛手から立ち直るのには 1〜2 年あれば十分かもしれないが、モザンビークが 2000 年の
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大洪水による壊滅的な被害から立ち直るには 10 年かかると言っている。
他にも、今年は東アフリカの「アフリカの角」で過去 60 年最悪の干ばつが起きている。
これにより深刻な食糧不足に陥り、穀物の価格が過去 5 年の平均の最大 80%ほどにも高騰
している。
また、南アフリカ西部の半乾燥地域の気候がさらに暑く、乾燥したものになれば、主要
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作物であるトウモロコシの生産量が最大で 20%減尐するとも言われている。
干ばつに関した避難民、つまり、環境難民の数も増加している。ソマリアでは、干ばつ
をきっかけに今年に入って月平均約 1 万 5000 人がケニアやエチオピア等に避難している。
しかし、
避難先のエチオピア等でも干ばつの影響を受けており、難民の流入はこれらの国々
の食料不足を悪化させかねない。
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気候がますます不安定になる中で、すでに多くのアフリカの地域住民たちは、生計を脅
かすような干ばつや洪水、土壌の浸食等の自然災害に襲われて、十分な復興を遂げる時間
もないうちに、次の自然災害に襲われるという状態に追い込まれている。今後、長期にわ
たって異常気象が続けば、アフリカの人々が暮らす環境や、生活の拠り所としている土地
の生産能力が根本的に変わってしまうことにもなるであろう。
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そんなアフリカの人々を脅かすのは、異常気象だけではない。
次に、感染症の増加について考えてみる。
ケニア西部のケリチョという地域は、以前は涼しい場所でマラリアの原因となる蚊は
生息できなかったが、気温が上がり、感染症の媒介生物の生息域が広がりによって、1980
年代後半から蚊が現れはじめ、今ではマラリアによる死者も出ている。
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また,主にアフリカに見られるウイルス感染症にリフトバレー熱病があり、近年頻繁に
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発生している。このリフトバレー熱病も蚊が大きく影響している。降雨が増加すると、蚊
が増加することにより、感染した蚊や動物が増加し、それにより人への感染も増加するの
である。
感染症の中でも、今年コンゴ共和国のコンゴ川流域では、コレラ菌が大流行している。
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3~4 週間で流行に勢いが増し、2011 年 7 月 20 日時点で、約 4000 人の感染患者が報告
されており、そのうち死亡者は 265 人で死亡率は 7%になっている。コンゴ川に沿って流
行がしたが、多くの人々が不衛生な水を使用しているため、新たに流行する地域が拡大し
たと言われている。
地球温暖化は、人以外にも影響を与えている。それは、自然に対する影響である。
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アフリカの多くの国にとっては観光もまた国の発展の重要な原動力だが、観光業が拠り
所としているものはアフリカの自然にほかならない。
もちろん、異常気象の影響や砂漠化も自然に対する影響に該当するが、今、世界中で問
題とされているのが、アフリカ最高峰のキリマンジャロである。
キリマンジャロの山頂の氷河が、太陽の日射量の変化、植生変化、人間の干渉など複数
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の要因も重なって年々融けている。この山頂氷河は約 1 万 1000 年前の湿潤期に形成され
たが、近年は急速に後退をつづけている。氷河の観測記録は 1912 年まで遡れるが、70 年
代にはいって空中写真や衛星写真なども含めて頻繁に観測されるようになった。それらの
記録からみると、氷河の縮小面積は 1912~53 年に 45%、53~76 年に 21%、76~2000
年に 12%。この 88 年間に 8 割近くも縮小したことになる。
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米国オハイオ州立大のロニー・トンプソン教授らの 2000 年 2 月の調査では、氷河の面
積は 2.2 平方キロしかなかった。2005 年 3 月には、気候変動に取り組む英国の NGO が、
さらに雪冠が縮小して、
見る角度によってほとんど見えなくなっていると報告した。特に、
山頂の平坦な場所ではなく、周辺の傾斜の強い場所から雪が消えている。
生き物への影響ももちろん出ている。
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先ほど述べたキリマンジャロの山頂の氷河の面積が縮小することによりこの一帯では、
1800 種の顕花植物と 35 種の哺乳動物がいるが、それらも大きな影響を受けている。
また、
ウィットウォーターズランド大学のノーマン・オーウェン=スミス教授によると、
有名なクルーガー国立公園では、すでに一部の種の動物は姿を消しつつあるという。
数が減って特に危険な状態にあるのは、セーブルアンテロープ、ササビー、エランド、
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ローンアンテロープで、自然界におけるこれらレイヨウの仲間の生息区域はどんどん狭ま
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っている。気温が上昇し雨が降らなくなると、こうした動物たちは湿気の多い東側の海岸
に移動しようとするのだが、国立公園のフェンスがそれを阻んでいる。
アフリカ南部の多くの国はすでに、トランスフロンティア・パーク(国境をまたぐ保護
区)のために国境を開放することに合意している。
5
アフリカにはたくさんの植物や生き物が生息しているため今後もそれらに対する影響が
さらに広がるのではないかと懸念されている。
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第 3 章 アフリカの温暖化対策
さて、第 1 章、第 2 章では、地球温暖化の現状やそれが与えている影響について述べて
きた。
この第 3 章では、アフリカの地球温暖化の影響に対して日本や世界が行っている対策、
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またアフリカが行っていくべき行動について述べる。
自己開発資金の乏しいアフリカでは温暖化に対する対策として、まず初めに、援助と民
間投資による経済成長が必要とされている。
そこで、最初に日本が行っているアフリカの温暖化対策について述べる。
日本が、2005 年に行ったサブサハラ・アフリカに対する政府開発援助(ODA)は 11 億
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3,734 万ドル、アフリカ全体では 11 億 245 万ドルであり、2008 年には、サブサハラ・ア
フリカに対して約 14 億 9,561 万ドル、アフリカ全体では約 13 億 9,570 万ドルである。
日本のアフリカ地域に対する政府開発援助(ODA)の基本方針は、アフリカの自助努
力(オーナーシップ)と国際社会の協力(パートナーシップ)、アジア・アフリカ協力、人
間の安全保障、アフリカの多様性の尊重を基本理念とする TICAD プロセスを基軸として
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おり、アフリカによる開発課題への取り組みに対する協力を積極的に実施している。
アフリカ開発会議(TICAD)は、日本が主導するアフリカ開発をテーマとする国際会議
であり、国連等との共催で 1993 年以降 5 年ごとに開催している。TICAD に関連する様々
な会議、取り組み等を総称して「TICA プロセス」と呼ぶ。現在は、
「平和の定着(開発の
前提となる持続的な平和のための支援)」
、
「経済成長を通じた貧困削減(貿易・投資の促進
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や農業・農村開発を通じた経済成長のための支援)
」「人間中心の開発(保健医療や教育、
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食糧支援など、人々の直接的な助けとなる支援)
」の三本柱を中心に、アフリカの自立を支
えるため、アフリカが必要とするものを支援するとの方針でアフリカ支援を行っている。
最近では、
セネガルの首都ダカールで 2011 年 5 月 1 日からアフリカ開発会議
(TICAD)
官僚級フォローアップ会合が開催された。会合では、アフリカでの地球温暖化防止と持続
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可能な開発・成長の両立を目指す中長期的な戦略を 2012 年中に日本とアフリカ各国が策
定することで合意し、日本の官民が連携してアフリカの温暖化対策に取り組む方針を示し
ている。
また第 2 章で述べた「アフリカの角」での干ばつによる食糧危機には、これまでに日本
政府は国際機関と協力して約 9,500 万ドルの支援を実施しているほか、NGO は同地域に
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おける 8,000 万円相当の活動支援と 9,000 万円相当の緊急援助物資の供与を実施している。
9 月 15 日には、独立行政法人国際協力機構(JICA)の支援物資である家族用テント 460
張を「アフリカの角」地域で食糧危機に直面している人々に向けて空輸した。JICA は今
年 6 月、国連人道支援物資備蓄庫の参加団体として正式加入し、今回の空輸は加入以来、
同備蓄庫が JICA に提供する初めてのサービスであった。
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次に世界的に行われている対策について述べる。
国際的な気候変動対策を話し合うための最も公式かつ中心なのが、国連の UNFCCC
(気候変動枠組条約)と京都議定書の会議である。
現在、京都議定書の 2008 年~2012 年の期間が終わろうとしており、2013 年以降の時
期枠組のあり方を早急に決める必要があるが、なかなか合意までは至っていない。
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そこに、アメリカや新興国にも削減目標を約束させたい先進国と、先進国の大幅な削減
を求める途上国の溝がある。
南アフリカのマルチナス・バン・スキャリキャク環境大臣は、
『京都議定書』を支持して
いない米国をはじめとする国に対し、議定書への調印を強く求めた。京都議定書は、35 の
先進工業国に対し、
2012 年までに二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を 5.2%削減し、
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1990 年を下回るレベルにするよう求めている。
また、国連世界食糧計画(WFP)は現在、「アフリカの角」地域での干ばつと食料不足
の発生を受け、同地域での支援活動を拡大している。WFP に対し、オーストラリア、カ
ナダ、欧州委員会、フランス、ドイツ、アイルランド、日本、サウジアラビア、ルクセン
ブルグ、モナコ、スウェーデン、イギリス、国連中央緊急対応基金、そしてアメリカから
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計 2 億 5 千万ドルを越える拠出表明があった。そして、WFP は今年 7 月初旬から「アフ
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リカの角」地域の住民約 800 万人に対して食糧支援を展開してきた。企業や個人からの募
金も増加しており、日本の民間部門からは 110 万ドルの寄付が寄せられた。
アフリカは、二酸化炭素を多く排出している先進国によってもたらされた地球温暖化の
影響を多く受けている。そしてアフリカは自国だけで対策していくには資金が乏しいので
5
世界の国々から様々な援助を受けている。
先進国によってもたらされた温暖化によって途上国が被害を受けているので、先進国は
これからも援助を続けていく必要があるだろうし、加えてこれ以上温暖化を促進しないよ
うな環境対策をとっていく必要があるだろう。
では、アフリカは自国で問題となっている温暖化の影響に対してどういった行動を取っ
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ていくべきであろうか。
2 章でも述べたが、モザンビークで大洪水が起こった。それを受けて、モザンビーク政
府は避難民を避難先に定着させようと計画を進めている。しかし、住民の多くは川岸の肥
沃な土地を失いたくないため、避難先への定住には抵抗している。そこで政府が始めたの
が「食糧・復興交換計画」である。これは、避難民収容所でいまだに暮らしている 3 万人
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の避難民を対象として、水道管敷設などのインフラ整備や住宅建設に協力した者に食糧を
与えるというものである。
また、サハラ以南の地域での食糧不足はとても深刻である。なぜこの地域で食糧不足が
こんなにも深刻になってしまったのか。実際にこの地域は、技術援助や資金援助を受けて
いる。それにもかかわらずなぜ農業が発達しないのか。それにはこの国々の政府に問題が
20
あるからである。
一つは、道路整備がなされていなかったり、政府が援助金を他のことに使ってしまった
ために先進国から受けた援助が隅々まで行き渡らないという問題である。
二つ目に、政府が嗜好品単一耕作を行ってきたということが挙げられる。単一耕作は商
品の値段の変化が激しくとてもリスクのある政策であった。一つの作物しか生産しなかっ
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たため、他の主食となる穀物を生産することが尐なくなり発達が遅れてしまった。
三つ目は、政府が都市市民への支援を重視する傾向にあるために、農村部の農業に対す
る投資が十分に行われていないということである。政府は農業、また食糧不足を軽視して
いるのではないか。
政府や都市部の人々は先進国からの食糧援助である程度まかなえてしまうため、政府が
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その援助に依存し続けてしまっている。そのため、政府は食糧不足を軽視しており農村部
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の貧しい人のことを考慮した政策を行っていない。その結果、現地の生産意欲の低下を引
き起こし、食糧自給率を低下させている。
このように、アフリカは資金が乏しいので、温暖化に対する対策は政府の活動が重要に
なってくる。アフリカはモザンビークの例のように資金を使わずにできる対策を政府が率
5
先して行っていくべきであろう。そして、先進国からの援助に頼らないようにしなければ
ならない。政府や都市部の人々だけが支援を受けることがないよう全体に目を向けて、国
を発展させ自立していくべきであろう。
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おわりに
私達日本や中国,アメリカといった先進国が日頃の生活で排出する多くの温室効果ガス
が地球温暖化促進に拍車をかけている。そして、私達自身にも影響を与えている。
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しかし、私達はアフリカのように水不足,食糧不足に困るわけでもなく感染症にかかる
リスクが増加しているわけでもない。他の先進国にも同じことが言える。
つまり,私達先進国が排出する温室効果ガスそれによって促進する地球温暖化の影響を
一番に受けるのは他でもないアフリカなどの発展途上国である。
さらに、影響は人間だけでなく、自然、生き物等、命のあるすべてのものに与えており、
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その影響の大きさに私達は気付いていない。
もし、今日先進国の国々が地球を汚すのをやめたとしても、今表れている影響は今後数
十年残るだろうと、研究者達は述べ、アフリカ開発銀行は、アフリカから貧困をなくすた
めには、長期的に見ると地球温暖化が最大の脅威になりうるとの認識を示している。
こういった事実を先進国の人達は全員が理解しておかなければならない。
25
私達に出来ることは、今、世界が地球温暖化によってどのような影響を受けているのか
その現状を一人一人、特に先進国の人たちはしっかり理解し、アフリカ等の発展途上国が
被害を受けないように、努めていくことが大切である。
そこで、本当に適切な支援とは何なのか考えたい。第 3 章でも述べたように、日本や世
界から様々な支援や対策が行われている。
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しかし、それらが途上国のニーズに合っていない場合や反対に環境問題や温暖化を助長
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させているという一面もある。
これを解決するには、先進国の人々、途上国の人々、両方がこれに気づかなければなら
ない。
片方の人々だけに任せていては、アフリカや途上国の経済発展や環境問題は中々解決の
5
方向へ進まない。途上国の国々は、経済発展と共に環境への技術開発、発展が求められて
いる。現在起こっている途上国への環境問題に対して先進国が解決、対策と行いながら、
途上国自身は発展していかなければならないのである。
途上国、アフリカの地球温暖化を受けやすい地域に対して、先進国と途上国が足並み揃
えた対策と発展が必要なのである。
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そして、災害が起こる前の早い段階で警報を出すシステムや災害対策計画を確立する必
要もある。さらには新たな水源を開発するとともに、栽培する穀物の種類や漁業権の割り
当て方法についても最善策を考え、決断を下す必要に迫られている。
私達は今回の事をきっかけに途上国で起きている現実や影響を始めて知り、驚愕した。
温暖化の影響が各地で起こっているのは知っていたが、詳しく現状を知っているのは、
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いつも先進国で起こっていることやニュース、新聞で目にするものだけである。
途上国での食料不足や水不足等の問題は、私達にも原因があるとは思わなかった。
これからは、もっといろいろな視点のいろいろな立場から環境問題を考えていきたいと
思う。
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参考資料
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・産経ニュース 2011 年 5 月 4 日
・http://www.maff.go.jp
・WFP 国連世界食糧計画
・外務省 参考資料:アフリカの現状と日本の対アフリカ政策
5
・IPCC 地球温暖化第三次レポート
気象庁・環境省・経済産業省監修
・地球環境報告
・http://www.wwf.or.jp/activities/climate/witness/cat1480/
・アフリカの目撃者
・ツバル―地球温暖化に沈む国 神保哲生
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・http://www.eic.or.jp/library/ecolife/knowledge/earth02b.html
・地球温暖化の現状
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