放 射 線 VOl.25,No.3(1999) 筑 波大 学 陽子 線 医 学利 用研 究 セ ンタ ー にお け る放 射 線 測 定 筑 波 大 学 ・陽 子 線 医 学 利 用 研 究 セ ン タ ー 納 冨 昭 弘 , 榮 武 二 A Brief Summary of Radiation Detectors at PMRC A.Nohtomi and T,Sak ae Proton Medical Research Center(PM RC),University of Tsukuba, Ten― nohda1 1-1-1,Tsukuba 305-8575,Jap an The present article briefly reports radiation detectors which have been used for the proton therapy at Proton Medical Research Center (PMRC), Universi ty of Tsukuba. 1. BDEt: 筑 波 大 学 陽子 線 医 学利 用研 究 セ ンタ ー ( P M R C ) で は 、 1 9 8 3 年 以 来 高 エ ネル ギ ー加 速 器 研 究 機 構 ( 1 日高 エ ネ ル ギ ー 物 理 学研 究 所 ) の 5 0 0 M e V ブ ー ス タ ー シ ン ク ロ トロ ンか ら供 給 さ れ る 陽 子 線 を 利 用 して 、 癌 治 療 の 臨 床 研 究 を行 つ て き て い る。 世 界 で 初 め て 垂 直 ビ ー ム ライ ン の 実 用 化 に成 功 し、 こ れ まで に 日 本 人 に多 い 深 部 臓 器 癌 を 中心 に した 治 療 で 優 れ た 成 績 が 得 ら れ た 。 また 、 患 者 の 呼 吸 に 伴 う臓 器 の 移 動 に 同 期 した 照 射 法 な どの 治 療 技 術 の 開 発 を行 つ て き た 。 こ の 結 果 、 従 来 の 放 射 線 で は 難 治 性 で あ つ た 癌 の 治 療 率 を 陽 子 線 に よ り大 幅 に 向 上 し う る こ と が 示 され 、 本 治 療 法 の 継 続 ・普 及 お よ び 陽 子 線 治 療 専 用 施 設 の 開 発 の 必 要 性 と妥 当性 が 示 さ れ た 。 以 上 の 様 な 実 績 に基 づ き 、 現 在 、筑 波 大 学 病 院 に 隣 接 し て 、 陽 子 線 治 療 専 用 施 設 が 建 設 中 で あ る。 本 稿 で は 、現 在 本 セ ン タ ー で 行 わ れ て い る 陽 子 線 治 療 を支 え て い る 放 射 線 測 定 技 術 に つ い て 簡 単 に 説 明 す る 。 また 、 最 近 調 べ ら れ た 医 療 用 陽 子 線 に 対 す る イ メ ー ジ ン グ プ レー トの 応 答 特 性 に つ い て も述 べ る 。 な お 、 陽 子 線 C T 等 の 診 断 目 的 の 測 定 装 置 や 一 部 の 開 発 中 の 測 定 器 に つ い て は 割 愛 す る。 2.陽 子 線 の性 質 と 医 学 利 用 従 来 か ら 癌 治 療 に 用 い ら れ て き た 光 子 線 ( X 線 、γ 線 ) と比 較 した 場 合 の 陽 子 線 の 利 点 は 、 そ の 基 本 的 な 線 量 分 布 の よ さ に あ る。 光 子 線 で体 内 の 腫 瘍 に所 定 の 線 量 を 照 射 す る場 合 、 そ の 手 前 側 及 び 奥 側 の 正 常 組 織 部 分 の 被 曝 は原 理 的 に 避 け られ な い 。 腫 瘍 へ の 付 与 線 量 を 大 き く設 定 す る と 、 正 常 組 織 の 被 曝 も そ れ に 比 例 して 増 加 し、 副 作 用 の 原 因 と な る。 一 方 、 陽 子 線 の 深 部 線 量 分 布 は プ ラ ッグ ピ ー ク を示 す の で 、 飛 程 を 調 整 す る こ と に よ り 付 与 線 量 が 最 大 の 領 域 を ち -3- ょ う ど 病 巣 部 に 一 致 させ る ことがで きる。 癌 の 形状 にあ わせ て線 量 分布 を上 手 い 具 合 に デザ イ ンで き る可 能 性 もでて くる 。 い く ら線 量分布 が ピー クを なす と言 っ て も、 病 巣 の 手 前部 分 の 線 量 を零 にす る こ とは 出来 な い が 、光 子線 の 場合 は常 に体 表 面 の 線 量 が 最 大 と な るの で 、 状 況 は 大 き く 異 な って い る。 また 、 患 部奥側 へ の付 与線 量 は ほ ぼ 完 全 ヒ零 で あ立 、 この ことが 、 お そ ら く陽 子 線 を用 い る最 大 の メ リ ッ トで あ ろ う と 考 え る。 特 に 、 腫 瘍 の 周 辺 に 放 射 線 感 受 性 の 高 い重 要 臓 器 ( c r i t i c a l o r g a n ) が 存 在 す る 場 合 、 そ れ らの 被 曝 を避 け て 照 射 方 向 を 選 択 す る 自 由 度 が 大 幅 に増 す か らで あ る 。 もち ろ ん 、 光 子 線 の 場 合 で も極 め て 多 方 向 か ら の 分 割 照 射 を実 行 す る こ と に よ り 、 腫 瘍 部 へ 線 量 を集 中 させ 周 辺 部 の 被 曝 を実 効 的 に 低 く抑 え る と い う こ と は 可 能 で あ り、 最 近 この 分 野 の 進 歩 に は め ざ ま しい もの が あ る。 しか し 、 複 雑 な 線 量 分 布 を 実 現 し よ う と す る と 、 治 療 計 画 や 治 療 そ の もの に か か る時 間 が 増 え る こ と に な る 。 陽 子 線 治 療 の 場 合 は 、 比 較 的 少 な い 現 実 的 な 門 数 ( 照射 方 向 数 ) で、 か な り理 想 的 な 線 量 分 布 を実 現 で き る こ とが 可 能 と な る こ と に 注 目す べ き で あ る。 3.医 学 利 用 に 関 連 した 放 射 線 測 定 装 置 3-1.ビ ー ム 輸 送 系 の ビー ム モ ニ タ ー 高 エ ネル ギ ー加 速 器研 究 機 構 の 5 0 0 M e V ブ ー ス タ ー シ ン ク ロ トロ ン は1 2 G e V 陽 子 シ ン ク ロ トロ ン ( 主 リ ン グ) の 入 射 器 と して 建 設 され た も の で あ り、 速 い 取 り出 しの シ ン ク ロ ト ロ ン で あ る。 2 0 H z の 頻 度 で 半 値 幅 が5 0 n s の パ ル ス 状 の ビ ー ム が 得 ら れ る。 主 リ ング の 運 転 周 期 ( 数秒 ) に応 じて 先 頭 の 9 パ ル ス が 主 リ ング ヘ 送 られ る が 、 残 りのパ ル ス は 中 性 子 中 間 子 実 験 施 設 ( 1 日 ブ ー ス タ ー 利 用 施 設 ) に供 給 され 、物 理 実 験 お よ び 医 学 利 用 に 供 す る。 PMRCに 届 い た ビ ー ム は 、 照 射 室 まで 輸 送 さ れ る 間 に 、 医 学 利 用 に 適 した ピ ー ム に 調 整 され い う エ ネ ル ギ ー は 、 癌 治 療 に は 高 す ぎ る の で 、炭 素 を 用 い た エ ネ ル ギ ー デ ィ グ レ ー ダ を 通 して 約 2 5 0 M e V に ま で 減 衰 さ せ る。 そ の 結 果 、 エ ネ ル ギ ー の 広 が り が 大 き く な る。 5 0 0 M e V と る の で 、 ビ ー ム ラ イ ン 中 の 運 動 量 分 析 シス テ ム で 所 定 の 運 動 量 の 陽 子 の み を 選 択 す る。 ま た 、 ビ ー ム コ リメ ー タ を用 い て エ ミ ッタ ンス を制 限 す る。 こ の 結 果 、 照 射 室 ま で 届 く割 合 は 数 百 分 の 一 と な る( プ ー ス タ ー の 調 子 に よ るが 、 通 常 、 1 0 9 p r o t o n s / p u l s e の オ ー ダ ー で あ る ) 。 以 上 の ビ ー ム 輸 送 系 に は 、 そ の 場 所 で の ビー ム の 状 況 を把 握 す る た め に 数 力 所 に ビ ー ム モ ニ タ ー が 配 置 され て い る。 ビ ー ム モ ニ タ ー に は 、ビ ー ム 強 度 モ ニ タ ー と ビ ー ム 形 状 モ ニ タ ー が あ る. ビ ー ム 強 度 モ ニ タ ー に は 高 周 波 特 性 の 優 れ た セ ンパ ー マ ッ ク ス コ ア を用 い た カ レ ン ト ト ラ ンス を 採 用 して お り、 ビ ー ム を 1 次 巻 き 線 と考 え 、2 次 巻 き 線 に 誘 起 さ れ る2 次 電 流 を 捕 らえ る 。 この 電 流 を前 置 増 幅 器 で 増 幅 して か ら転 送 し、 積 分 型 増 幅 器 で そ の 全 電 荷 量 を測 り、 ビ ー ム 強 度 を 算 出 し て い る。 ビ ー ム 形 状 モ ニ タ ー と し て は 、 幅 3 m m 、 厚 さ3 0 μ m の タ ン グ ス テ ンス ト リ ッ プ を 二 次 電 子 放 出 体 と した セ カ ン ダ リ ー 。エ ミ ッ シ ョ ン ・チ ェ ン バ ー ( S E C ) を使 用 して い る。 この ス トリ ッ プ を 5 m m 間 隔 で 配 置 し、 高圧 電 極 との 間 に 電 圧 を 印 加 し て ス トリ ッ プ か ら 放 出 され る 2 次 電 子 を 吸 収 させ 、 残 さ れ る 正 の 電 荷 を 電 荷 増 幅 器 で 電 圧 レ ベ ル に 変 換 す る 。 こ の 結 果 、 一 台 の ビー ム 形 状 モ ニ タ ー あ た り ( 縦方 向 、 横 方 向 あ わ せ て ) 6 0 チ ャ ン ネ ル の 信 号 が 得 られ る の で 、 こ れ ら を ア ナ ロ グ ・マ ル チ プ レク サ で 2 0 0 μ s 毎 の 時 系 列 デ ー タ に 変 換 して 、 -4- デ ィ ジ タ ル オ シ ロ ス コ ー プ 上 で ビ ー ム の プ ロ フ ァイ ル を観 測 す る。 3-2.線 量 測 定 に 用 い られ る装 置 照 射 室 に 導 か れ た ピ ー ム は 、 真 空 か ら大 気 中 に放 出 さ れ 、 照 射 野 形 成 装 置 を 通 過 した 後 、 患 者 に 照 射 さ れ る。 治 療 時 の 典 型 的 な 機 器 の 配 置 を 、 関 連 す る 放 射 線 測 定 機 器 と併 せ て 図 1 に 示 す。 陽 子 線 治 療 を行 う場 合 、 X t t C T 画像 情 報 を も とに 治 療 計 画 が 行 わ れ る 。 治 療 計 画 の 目的 は 、 決 定 し、 周 辺 の 正 常 組 織 部 分 の 線 量 を 極 力低 く抑 え つ つ 、 対 象 とす る 病 巣 体 積 全 体 に で き るだ け 一 様 な 線 量 分 布 を形 成 で き るよ う な 、 照 射 方 向 や 照 射 条 件 を 病巣体 積 (target volume)を 見 い だ す こ とで あ る。 治 療 計 画 の 結 果 、 各 患 者 毎 の 照 射 野 形 成 装 置 の 設 定 条 件 等 が 割 り 出 され る。 図 1 ( a ) の ビ ー ム の 進 行 方 向 に 沿 つ て 、 照 射 野 形 成 装 置 の 各 要 素 に つ い て 簡 単 に 説 明 し よ う。 大 気 中 に放 出 され た 細 い 陽 子 線 は 、 鉛 の 散 乱 体 で 角 度 分 布 が 与 え られ 、 患 者 位 置 で の 横 方 向 へ の 線 量 分 布 が 充 分 に 一 様 に な る よ う に 調 整 され る。 エ ネ ル ギ ー ・フ ァ イ ンデ ィ グ レー ダ は 、 ア ク リ ル 楔 の 重 な り部 分 の 厚 み を 変 え て 、 陽 子 線 の 飛 程 の 微 調 整 を す る もの で あ る 。 リ ッ ジ フ ィル タ ー は 、 飛 程 を シ フ トさせ た 複 数 の プ ラ ッグ カ ー プ を重 ね 合 わ せ る こ と に よ り、 病 巣 部 奥 形成 す る 行 き 幅 の 最 大 値 に 対 応 した 線 量 が 一 様 な 領 域 ( s p r e a d o―u t B r a g g p e a k : S O B P ) を 役 割 を担 う。 異 な る S O B P 幅 を 持 つ た 数 種 類 の リ ッ ジ フ ィ ル タ ー が 用 意 さ れ て い る 。 治 療 用 ビ ー ム モ ニ タ ー に つ い て は 後 述 す る。 プ ロ ッ ク コ リ メ ー タ は 、 最 終 コ リ メ ー タ に 先 立 ち 不 要 な 陽 子 線 を 遮 蔽 す る 為 の 粗 コ リ メ ー タ で あ る 。 ボ ー ラ スは 、 陽 子 線 の 最 大 到 達 深 度 を 病 巣 部 の 形 状 と 一 致 させ る た め の 飛 程 調 整 機 器 で あ る。 また 、 最 終 コ リメ ー タ は 、 マ ル チ リ ー フ型 の コ リ メ ー タ で 、 病 巣 部 の 横 方 向 の 形 状 に あ わ せ て 組 み 立 て られ る。 ボ ー ラ ス 及 び 最 終 コ リ メ ー タ は 患 者 固 有 の 機 器 で あ り、 各 患 者 毎 に作 り な お され る 。 こ う し て 作 られ た 照 射 野 に 、所 定 の 線 量 ( 医 師 が 処 方 した 線 量 ) を正 確 に 付 与 す る こ とが 、 以 下 に 述 べ る 一 連 の 線 量 計 測 作 業 の 目的 で あ る 。 まず 、 全 て の 照 射 条 件 を 治 療 時 と 同様 にセ ッ トして 患 者 の 代 わ り に 水 フ ァ ン トム [ t h e r a d o s 社 RFA-3]を 置 き 、 そ の 中 で S i ―d i o d e 検 出 器 (field detector)を 走 査 す る こ と に よ り、 治 療 計 画 どお りの ( 相対 的 な ) 線量 分 布 が 実 現 さ れ て い る こ と を確 認 す る [ 図 1 ( b ) ] 。患 者 の 体 が 水 等価 で あ る と見 な す わ け で あ る。 そ の 際 、 3 次 元 にわ た る全 て の 情 報 を取 得 す る こ と は 時 間 的 に 困 難 な の で 、 治 療 上 重 要 とな る い くつ か の 断 面 を選 ん で プ ロ フ ァ ィ ル を測 定 して い る 。 加 速 器 か ら 供 給 され る ビ ー ム 強 度 の ふ ら つ き が 測 定 され る分 布 に 影 響 を 与 え な い よ う に 、 位 置 が 固 定 され た r e f e r e n c e d e t e c t o r と の 比 を 計 測 す る 方 式 に な っ て い る。 S i ―d i o d e は 電 離 箱 に 比 べ て 感 度 が 高 く、 有 感 体 積 が 小 さ いた め 位 置 の 分 解 能 が よ い ( 本検 出 器 の 場 合 2 x 2 x O . 0 5 m m 3 ) と い う 利 点 が あ る の で 、 r e l a t i v e d o s i m e t r y に は広 く用 い られ て い る 。 し か し、 プ ラ ッ グ ピ ー ク付 近 の 領 域 で 、電 離 箱 に よ っ て 測 定 され る 線 量 分 布 との 不 一 致 が 見 られ る と い う例 が 古 く か ら報 告 され て お り、 昨 年 発 行 され た I C R U R e p o r t 5 9 ( 2 ) ( 陽 子 線 線 量 測 定 に 関 す る 特 集 を 含 ん で い る) で もそ の こ と につ い て 注 意 を 促 して い る 。 この 不 一 致 は 、 H i g h L E T の 領 域 で 、 はプ ラッ S i ―d i o d e の 信 号 の 方 が 見 か け 上 大 き く な る( 例え ば 、I C R U R e p o r t 5 9 の F i g . 6 . 6 で グ ピ ー ク の 所 で 7 . 5 % 程 度 ) と い う もの で あ り、 通 常 半 導 体 検 出 器 の 重 イ オ ン測 定 で 問 題 と な る 波 高 欠 損 の 影 響 と は 逆 の 方 向 で あ る。 ま た 、 S i と 空 気 の 阻 止 能 の 違 い を考 慮 に い れ て 補 正 を 行 -5- (a) A TypicalTreatment Setupat the Vertical BeamLine 1 250MeV Protons rZ\ EnergyFine Degrader <---+ i RidseFilter N[[[[NU[ I i ri- BeamMonitor { :=3!= \ | i { rir ,.lonizationChamber(lC) --- SecondaryEmission I chamber ( sEC) Blockcollimator rlr ___-_41ri Botus FinalCollimator n;V7777tVzl (b) Relative Dose Distribution Measurement reference Si― diode ″ OBP 木 field WaterPhantom (c) Monitor(lC,SEC) Calibration JARP 図 l PMRCの 垂 直 ビー ム ライ ンにお け る治 療時 の典型 的な機 器配 置 と関連す る放 射線 測定 機器 -6- う と、 この 不 一 致 は 更 に 大 き くな っ て しま う。 医 療 関 係 の 線 量 測 定 の 分 野 で は 、 空 気 電 離 箱 を 用 い た 線 量 測 定 法 が 確 立 さ れ て お り、 事 実 上 標 準 と な っ て い る 。 従 つ て 、 こ の 場 合 は S i ― d l o d e 検 出 器 の 応 答 が 何 か お か しい と い う こ と に な る。 この 奇 妙 な 現 象 の 説 明 は ま だ な さ れ て いな い 。 当 セ ン タ ー で は 、 電 離 箱 と S i ―d i o d e の 測 定 を 様 々 な 条 件 で 比 較 し た 結 果 、 有 為 な 差 は 無 い と の 結 論 に 達 し、 S i ―d l o d e を r e l a t i v e d o s i m e t r y に 使 用 して い る 。 こ の 現 象 が 顕 著 に あ らわ れ る か 否 か は 、 使 用 す る S i ―d i o d e の種 類 や 陽 子 線 ビ ー ム の 質 に 依 存 し て い る よ う で あ る。 線 量 の 絶 対 値 の 測 定 ( a b s O l u t e d o s i m e t r y ) に は 、 コバ ル ト標 準 場 で 較 正 され た 指 頭 型 電 離 箱 ( t h i m b l e i o n i z a t , o n c h a m b e r ) [ J A R P O . 2 c c ] を用 い る。 当セ ン タ ー のJ A R P 電離 箱 に よ る線 量 評価 プ ロ ト コ ル の 詳 細 に つ い て は 、 文 献 ( 3 ) を参 照 して 欲 しい 。 指 頭 型 電 離 箱 の 測 定 結 果 は 、 陽 子 線 の 水 に対 す る 付 与 線 量 ( p r o t o n d O s e t o w a t e r ) として 評 価 され る 。 治 療 中 に 患 者 の 体 内 に 線 量 計 を挿 入 す る わ け に は いか な い の で 、 図 1 ( c ) に 示 す よ う に 、 電 離 箱 の 有 感 部 が S O B P の 真 ん 中 付 近 に 来 る よ う にM i x ―D P ( 医 療 用 に 開 発 され た 生 体 組 織 類 似 物 質 ) を 置 い て 治 療 時 の 状 況 を 模 擬 す る。 この 時 、 病 巣 部 に 付 与 され る 陽 子 線 線 量 と治 療 用 ビ ー ム モ ニ タ ー の 指 示 値 の 比 を測 定 して お く ( つ ま り、 ビー ム モ ニ タ ー を較 正 し て お く) 。 この 結 果 を も と に 、 必 要 な 線 量 を照 射 す る 為 の 治 療 用 ビ ー ム モ ニ タ ー の 指 示 値 を 計 算 し、 照 射 の 際 に プ リセ ッ ト値 と し て 用 い る 。 ビ ー ム モ ニ タ ー と して は 、応 用 技 研 製 の セ カ ン ダ リー エ ミ ッ シ ョ ン チ ェ ンパ ー ( S E C ) と 空 気 電 離 箱 ( I C ) の二 種 類 を並 列 し て 用 い て い る。 当セ ン タ ー の 場 合 、 ビー ム が パ ル ス と して 供 給 され る の で 、 電 離 箱 で は 電 荷 の 収 集 過 程 にお け る電 子 と イ オ ン の 再 結 合 の 効 果 を 補 正 し な く て は な ら な い 。 再 結 合 の 割 合 は ビ ー ム 強 度 に 依 存 す る 。 そ の 点 、 S E C で あ れ ば この 補 正 は 必 要 無 い 。 しか し、 s E C の 信 号 電 荷 量 は 微 弱 で あ り( 通 常 の 治 療 で 数 百 ∼ 数 n C ) 、 電 離 箱 に 比 べ て 約 二 桁 低 い の で 測 定 の 精 度 が 問 題 と な る 場 合 が あ る。 一 方 、 電 離 箱 の 場 合 は 感 度 が 高 く測 定 は 比 較 的 容 易 で は あ るが 、 何 らか の 理 由 で 治 療 中 の 短 時 間 に ビー ム 強 度 が 急 激 に 変 化 した 場 合 に 、 あ らか じめ 算 出 して お い た プ リセ ッ ト値 が 意 味 を為 さ な くな る 危 険 性 が あ る 。 以 上 の 理 由 に よ り、 現 在 の 治 療 で は 、 S E C を 主 モ ニ タ ー と して 用 い 、 I C を そ の パ ッ ク ア ッ プ と す る こ と に よ り、 線 量 測 定 の 信 頼 性 を高 め て い る 。 4.微 小 電 荷 測 定 の 為 の処 理 回 路 方式 当 セ ン タ ー で は 、 パ ル ス ピ ー ム に よ り付 与 さ れ る微 小 電 荷 量 を 測 定 す る必 要 が あ り、こ の 目 的 の た め に い く つ か の 回 路 方 式 が 採 用 され て い る。 治 療 用 線 量 モ ニ タ ー に 使 わ れ て い る そ れ ら の 特 徴 を ま とめ 、 最 近 行 っ た 改 良 の 結 果 に つ い て 述 べ る。 4-1.使 用 して い る 回 路 方 式 直 流 の ビ ー ム 電 流 を モ ニ タ ー し、時 間 積 分 を行 う場 合 は 、 一 般 的 に 、 積 分 時 定 数 の 長 い 微 小 電 流 計 と、 そ の 出 力 を時 間 積 分 す る 回 路 ( V F 変 換 等 ) が 使 用 され る( A 方 式 ) 。 これ に対 し、 短 パ ル ス ピ ー ム に 対 して 同 様 の モ ニ タ ー を行 う 場 合 は 、A 方 式 で も可 能 で あ る が 、 直 接 ア ナ ロ グ積 -7- 分 回 路 で 積 分 す る ( B 方 式 ) か 、 パ ル ス波 高 変 換 後 波高 値 を 積 算 す る ( C 方 式 ) 方法 が時 間 応答 特 性 上 有 利 とな る 。 陽子 線 セ ンタ ー で 使用 して い る電 流 モ ニ タ ー 回路 は 、現 在 3 つ の タイ プが あ り、 S E C 用 と してA 方 式 が 、電 離 箱 用 と して B 方 式 が 、分 割 電 極 を持 つ 電 離 箱 で あ る 平 坦 度 モ ニ タ ー ( ピ ー ムの 横 方 向 の 平 坦度 を 高 い精 度 で モ ニ タ ー す る 装 置) 用 と してC 方 式 が使 わ れ て い る。特 徴 は、 1)SEC用 ( A 方 式) 。 前 置 増 幅 器 で電 圧 に 変換 す る た め 、耐雑 音性 が 良好 。 微 小電 流 を長 時 間 積 分す る場 合 に適 して い る 。ビ ー ム 、 オ ン ・オ フに 対 して 応 答 が遅 い ( 従来 1 秒 だ った) 2)電 離箱 用 ( B 方式) ・ パ ル ス ピー ム で も 、直流 ピー ム で も測 定 可能 。応答が 速 い 。 前 置回 路 を使 わ な い た め長 い ケ ー プル の リー ク、容 量 の 影 響 が 有 る 。 回 路 的 に ダイ ナ ミ ック レンジ が広 げ難 い ( 長時 間積 分 には不 向 き) 坦 度 モ ニ タ ー 用 ( C 方 式) 。 パ ル ス ピー ム にの み対応 3)平 。 応 答 を 速 くで き る ( 積算 方 法 に 依 存 ) ・ 入 カイ ン ピー ダ ン ス を下 げた 前 置増 幅器 を使用 す る と、 耐 雑 音 性 が 良好 。 直 流 、 高 計 数 率 に 対 応 で きな い であ る 。 A 方 式 につ い て 、応 答 速度 を 速 くす る と、信 号雑 音 比 の 劣化 が起 こ り、 パ ル ス ピー ム に対 し て 前 置 増 幅 器 出 力 での飽 和 の 問題 が 起 こる。 治 療 照射時 間 に対 して 十 分 短 く 、か つ飽 和 の 問 題 が起 こ らな い 程 度 の 応 答 時 間 が理 想 的 で あ る 。 以下 、改 造 を行 っ た 回路 ( n A レ ンジ で0 . 1 秒 ) で の 飽 和 特 性 につ い て 調 べ る。 4-2.飽 和 特 性 の 回路 理 論 4-2-1.直 流 的飽 和 とパ ル ス ピー ク の 飽 和 単 位 時 間 あた りのパ ル ス 数 をn 、 測 定 回路 の 飽和 電 流 を I m a x とす る と、 直 流 的 な飽 和 が起 こ るパ ル スあ た りの 電 荷 量 Q m a x , d c は、 Qmax,dc= Imax/n (1) とな る。 n = 2 0 、 l m a x = 1 . 3 n A の場 合 、 Q m a x , d c は6 5 p C と な る。 パ ル ス ピ ー ク の 飽 和 を考 え る た め 、電 流 入 カ パ ル ス 幅 は 、次 のパ ル スが 来 る ま での 時 間 T に 比 べ 十 分 短 い とす る ( デル タ関 数応 答 ) 。 図 2 に 示 す よ うに 、帰 還 抵 抗 を R f 、帰 還 容 量 をC f 、パ ル ス あ た りの 電 荷 量 を 一Q と 、 す る と 、単 パ ル ス の 出 力波 形 f O ( t ) は f 。( t ) = e x p ( ―t / R f C f ) Q / C f (2) パ イ ル ア ップ の 影 響 を入 れ た 出 力 の 最 大 値f m a x は f max=Q/[{1-ex p(-1/nRfCf)}Cf] り とな り、飽 和 が起 こるパ ル ス あた りの電 荷 量 Q m a x , p は、I m a x R f = f m a x よ -8- 1-exp(-1/nRfCf)} Qmax,p=Imax Rf Cf〔 (3) とな る 。n = 2 0 、 I m a x = 1 . 3 n A 、R f = 1 0 1 0 Ω、C f - 1 0 p F の 場合 、 Q m a x , p は5 1 p C と な る 。 Cd茅 図 2 微 小 電流 計の等 価 回路 4-2-2.飽 図 3 飽 和 初期 条件 の 等 価 回路 和 によ る電荷 の 損 失 量 こ こ で 、 回路 飽 和時 の 電 流 は フィ ー ドバ ック にの み流 れ る と仮 定 す る。 微 小電 流 計 に 対 して 外 部 回路 の 容 量 をC d と す る、δ 関 数 的電 流 入 力 によ り、 瞬 時 に出 力電 圧 が 飽 和 ( V s ) した とす る ( 図3 ) . 回 路 に 残 って い る電 荷 と流入 電 荷 の合 計 ―Q e f f は C d と C f に分 け られ る。 瞬 間 的 な 流 入のため、飽和初期状態での電荷の損失は起 こらないとする。C d に発生する電圧をv d とする と、 Vd=― (Qeff Vs Cf)/(Cd+Cf) (4) C d に 残 っ て い る電 荷 量 は 、V s = I m a x R f より qd=(Qeff Imax Rf Cf)Cd/(CdttCf) (5) とな る 。 前 述 のパ イ ル ア ップ の 効 果 よ り、 Q eff=Q/〔1-ex p(-1/nRfCf)} (6) 飽和 し て い る 回路 で の 電 流 の 損 失 を求 め るた め、飽 和 して い る 状態 の 回路 を図4 で 近 似 す る。 電 流 の パ ラ ンス の 式 か ら、 vd(t)=Vs+(Vd一 V s ) e x p { ―t / R f ( C d + C f ) } (7) v d ( t ) がゼ ロ にな っ た時 点 で 回路 の 飽 和 は解 消 され る 。飽 和 時 の 回路 の 時 定 数 がR f C f で はなく R f ( C d + C f ) に な っ て いる 。飽 和 が解 消 さ れ る時 間t O は次 式 とな る。 t 6 - R 1 ( C 6+ C r ) l n { ( V r - v d ) / V . } (8) 回路 の 出 力電 圧 は この 間V s に 保 たれ て い る。 t 。の 幅 の 影 響 が 小 さ い と して 、 出 力 電 圧 を 時 間 で 積 分 した 量 V T を 求 め る と、 VT=Vst。 +Vs Rf Cf とな り、 飽 和 が 起 こ らなか っ た 場 合 の Q e f f R f と 比較 し、電 荷 の 損 失 △Q は 、 △ Q =Qeff― =Qeff― VT/Rf Vs[(Cdtt Cf)in〔 (Vs ― Vd)/Vs}+Cf] とな る 。V s に 対 してV d が 小 さ い と して近 似す る と、 -9- (9) ln{(Vs ― Vd)/Vs}}≒ ―Vd/Vs ― (Vd/Vs)2/2 △Q = Q e f f ― C f V s 十 ( C d + C f ) V d 十 (Cd tt Cf)Vd2/(2V:) ( 4 ) 式よ り △ Q≒ (Q eff Vs Cf)2/{2(Cd tt Cf)Vs〕 (10) 飽 和 曲 線 は 、飽 和 電 荷 量 に 対 す る 超 過 ( Q e f f ―V s C f ) の2 次 関 数 とな る 。 つ ま り前 述 の 条 件 で 、 電 荷 量 の 測 定 値 は 5 1 p c / p u l s e を 超 え た と ころ か ら( 6 ) 式、 ( 1 0 ) 式 よ り、 2 次 関 数 的 変 化 を す る飽 和 曲 線 とな る 。 この 飽 和 曲線 は ( 1 ) 式で 示 す 直 流 的 飽 和 電 荷 の 値 を 超 え る と 一 定 値 とな る 。 100 0 8 0 6 0 4 0 2 0〇一 コa\On︶ ︵ ■oLコのCO〓 0 0 20 40 60 80 100 input Charge (pO/pulse) 図 4 飽 和 状 態 の 等価 回路 4-3.飽 図 5 測 定 結 果 と予 測 関 数 の 比 較 和 特 性 の 測 定 と の比 較 秒 か ら0 . 1 秒 に 変 更 した回路 につ い て飽 和特 性 の 測 定 を行 った 。 図5 は 実 験 時 定 数 ( R f C f )1を 結 果 ( 黒丸 ) と 上 記 予 測 関数 ( 実線 ) で あ る。 5 1 p C / p u l s e を 超 え て か らの 飽 和 の 影 響 は 小 さ く、 直 流 的 飽 和 電 荷 ( 6 5 p C / p u l s e ) の影 響 だ けが顕 著 に現 われ て い る。 実験 値 と予 測 の 一 致 は 良 い 。 計算 に 使 用 した 値 は、 R f = 1 0 1 0 Ω, C f = 1 0 p F , n = 2 0 , V s = 1 3 V , C d = 1 0 0 p F で ある 。 ( 1 0 ) 式で 示 され た 、 パ ル ス 電流 の 飽和 の 項 は 、検 出 器側 の 容 量 C d に 依 存 す る 。 こ の 値 が 小 さ い 場 合 は 、飽 和 曲線 の 2 次 関数成 分が 無視 で きな い と予測 で き る 。 ここで 取 り扱 つた 回路 に つ い て は、 直 流 的 飽 和 の 条 件 が起 こ るまで パ ル ス ピー ク の 飽和 の 影 響 は無 視 で き る。 実 際 の 治 療 に お け るS E C モニ タ ー か ら の 信号 は2 0 p c / p u l s e 以 下 で あ り、 飽 和 の 影 響 はな い と結 論 で き る。 5 . イ メ ー ジ ング プ レ ー ト( I P ) によ る 線 量 測定 イ メ ー ジ ング プ レー ト( I P ) は、 も とも とX 線 フ ィ ル ム の 代 替 品 と して 、 医 療 用X 線 画 像 診 断 シ ス テ ム と して 富 士 フ ィル ム に よ り開 発 され た も ので あ り、医 療 関 係 者 の 間 で は 、 F C R (Fuji Computed Radiography)と して 知 られ て い る。X 線 に対 す る感 度 が 高 い こ とを 生 か して 診 断 に 関連 す る患 者 の 被 曝 を低 減す る こと に貢 献 して い る。 ま た 、 得 られ た画 像 が デ ジ タ -10- ル 処 理 さ れ る た め 、 X 線 フ ィ ル ム に比 べ て C T や M R I な ど の 他 の モ ダ リテ ィ と の な じ み も よ い 。 この I P を 陽 子 線 の 線 量 測 定 に応 用 す る と、 ど の 様 な 利 点 が あ る の か 。 実 は 、 イ メ ー ジ ン グ プ レ ー トを 用 いれ ば 、 線 量 の 二 次 元 分 布 に 関 連 した 情 報 を簡 便 に る こ とが 出 得 来 る 可 能 性 が 示 され て い る ( 4 ) 。こ れ は 、 X 線 フ ィ ル ム で は無 理 で あ る。 X 線 フ ィル ム に 陽子 線 を 照 射 して も、 や は り黒 化 す るが 、 そ の 黒 化 度 は 、 陽 子 線 の フル エ ンス に ほ ぼ 比 例 して い る 。 同 じプ ラ ッグ ピ ー ク を X 線 フ ィル ム と 電 離 箱 で 測 定 した 例 を 図 6 に 示 す 。 この 様 に 、X 線 フ ィ ル ム で は 深 部 線 量 分 布 を測 る こ とが 出 来 な い 。 エ ネ ル ギ ー が 一 定 で あ れ ば 、 また は エ ネ ル ギ ー 分 布 が 既 知 で あれ ば 、 フル エ ン ス 分 布 を線 量 分 布 に 変 換 す る こ と は 可 能 で あ る 。 しか し、 そ うで な い 場 合 、 か な り面 倒 な こ と にな っ て し ま う。 これ ま で 、 医 療 用 陽 子 線 に対 す る イ メ ー ジ ン グ プ レー トの応 答 特 性 を 、 電 離 箱 で 測 定 され る 陽 子 線 線 量 と 比 較 して 詳 細 に調 べ た 例 は報 告 さ れ て い な い の で 、 測 定 を 行 っ た ( 5 ) . 測 定 に 使 用 した I P は 富 士 フ ィル ム のB A S I I 1 2 0 2 5読、み 出 し装 置 は富 士 フ ィル ム の B A S 2 0 0 0 - I I で あ る 。 読 み 出 しパ ラ メ ー タ は特 に 断 らな い 限 りL a t i t u d e = 4 、 S e n s i t i v i t y = 4 0 0 、R e s o l u t i o n = 2 0 0 μ m で あ っ た 。 こ の 設 定 で の 読 み 出 し可 能 な P S L 強 度 の 最 大 値 は 1 0 5 P s L / m m 2 で ぁ り、 B A S 2 0 0 0 - I I で は こ れ 以 上 の P S L 強 度 の 読 み 出 しは 出来 な い ( 6 ) . 沖 匡 PEton Dos to Watar Upp.a llmlt of lh. rc{nncr X 飲 欧 4 “ “ │ やEEコリしか露景嘔〓メК 。 8 ・ コ¨ ヨ 0●﹃ r5F● TaF cユ● m ] FIトト 0■ヨ g,こ ﹄ ■o3 o■800 c,2● 匿 proton BAS4田 2Ю25 :P Croup‐ B ドーー、 100 150 200 25℃ D『:md:●」on 90 min.a“ 250 0.00 300 Dopth in Water(mm) 図 6 フ ィ ル ム で 測 定 した プ ラ ッ グ カ ー プ 5-l PSL強 0.1 0.16 2 ● P r o t o n D to o“ W a t e r l G Y l 図 7 陽 子 線線 量 に対 す るP S L 強 度 の 線 形 性 度 と 陽子 線 線 量 の比例 性 ま ず 、 陽 子 線 線 量 と P S L 強度 との 比 例 性 を調 べ た と こ ろ 、 照 射 後 に室 温 で 9 0 分 放 置 し た 後 読 み 出 した 場 合 に 、 約 0 . 1 5 G y の 線 量 まで の 比例 性 が 確 認 さ れ た ( 図 7 ) . 0 。 2 G y を 超 え る辺 り か ら 、 読 み 出 し 装 置 の 上 限 に 達 し た 。 一 回 の 治 療 で 患 者 に 照 射 す る線 量 は 数 G y の レ ベ ル な の で 、 治 療 で 照 射 され る 総 線 量 を測 定 す る に は I P の感 度 は 約 1 桁 以 上 高 す ぎ る と い う こ と に な る 。 また 、こ の 結 果 を 見 る 限 り 、 この 飽 和 はI P 自 身 の 特 性 で は な く、 読 み 出 し 装 置 の 上 限 に よ っ て 制 限 さ れ て い る よ うで あ る。 - 1 1 - 5-2 Fading特 1生 0 . 1 3 2 G y の 線 量 を 付 与 した 場合 の f a d i n g 160 200 C C C 24 22 , ”y■ ︲︲ G G G 120 螂 瑯 町 鯉 一C 80 ・口▼ 40 t(min) ︲︲ + 0.7 5exp((-ln2)t/3400) ■ C C G ﹂GGG■ ︲ ︲ 8 0 ・ π π 震 “ 0 . , , , 。 y y y ︲ ︲ ¨ ¨ ¨ ¨ ¨ 0 0 ▲ △ + 0.2 5exp((-ln2)t/15.5) 4・ 0 1/1。= xtノ15.5) 【 in2ぅ 1′34oO) p← 6・ 0 で表 さ れ る ことが わ か った。 in2 卜●.25 eXpf・ l +0.75e】 8・ 0 特 性 を 調 べ た ( 図8 ) 。 2 0 0 分 ま で に 得 られ た 曲線 は全 て 以 下 の 一 本 の f a d i n g c u r v e ・ ‖:2025 1 c一コのユ ︵■ ヽ一︺ヽ〓“rO” 約 2 2 ∼ 2 6 ℃ の 温 度 範 囲 で 、0 . 0 1 0 8 - Tlme after ttradiation t(min。 ) この 関 数 を 用 い 、 良 い 精 度 で f a d i n g の 補 正 が 可 能 で あ る。 図8 Fading黎 「 性 5 - 3 応 答 のエ ネル ギ ー 依 存 性 イ メ ー ジ ング プ レー トで 荷 電粒 子 を測 定 す る 場 合 、他 の シ ンチ レ ー シ ョン検 出器 等 と 同様 、 応 答 の エ ネル ギ ー 依 存 性 が ある こと が知 られ て い る。 こ の 現 象 は 、 プ ラ ッグ ピー ク を測 定 した 場合 に は 飛程 終 端 付 近 の 応 答 信 号 の 低下 と して 現 れ るは ず で あ る。 陽 子線 の エ ネル ギ ー が減 少 す るに つ れ て 、 単 位 飛 跡 あた りのエ ネル ギ ー 付 与 ( L E T ) が 増加 し、P S L 強 度 が そ の 場 所 に 付 与 され た 全 エ ネ ル ギ ー に比 例 しな くな るか らで あ る。 この 影 響 が どの 程 度 あ る の か を調 べ た のが 図 9 で あ る。 I P で測 定 した プ ラ ック カ ー プ を 指頭 型 電 離 箱 ( T I C ) で 測 定 した もの と比 較 して あ ー ー ー る。 プ ラ ッグカ プの プ ラ ト 部 分 で正 規化 した 場合 、ピ ク の 位 置 で比較 す る と、電 離 箱 で 測定 した 線 量 分 布 に比 べ て 1 割 弱 の 応答 の 低 下 が見 られ る 。I P の P S L m a t e r i a l と 空 気 と の 阻止 能 比 のエ ネ ル ギ ー 依 存 性 を考 慮 す れ ばそ の 差 は幾 分 小 さ くな る が 、それ だ けで は こ の 不 一 致 を 説 明 で き な い 。 不 一 致 の 残 りの成 分 は 、 主 にL E T が 増 大す る こ とに よ るI P の応 答 の 劣 化 に起 因 す る と想 像 され る。 しか し、 プ ラ ッグ ピ ー ク付 近 で は、 同 じ 位 置 に異 な るエ ネル ギ ー の 陽子 が 混 在 してお り、 ち ょ うどI P 中で停 止 す る陽子 も存 在 す るの で 、 読 み 出 しの効 率 と も関 連 して 、P S L 層の どの 深 さにエ ネル ギ ー が付 与 され るか も 問題 と な って くる。 従 って 、 図 9 の 測 定結 果 を定 量 的 に 説 明す る こ とは簡単 で はな い 。 と もあれ 、図9 は 当 セ ンタ ー の 水 平 ビー ム ラ イ ン の プ ラッ グ ピー クをI P で測 定 した 場 合 に ( 上 に述 べ た広 い意 味 で の 諸 々の エ ネ ル ギ ー 依 存 性 が寄 与 した 結果 と して ) 、結 果 が実 際 の 線 量 分 布 か ら どの 程 度 歪 ん で しま うか を示 して いる こ とは確 か で あ る。 実 際 の 治 療 で は、 この プ ラ ッ グ ピー ク を重 ね あわせ る こ とに よ り線 量 分布 を 形 成 す る の で 、個 々 の プ ラ ッ グ ピー ク の 歪 み 具 合 さえ 分 か っ て い れ ば、で きあが った 照 射野 を I P で測定 した 場合 に どの様 な 分 布 が 得 られ るか は予測 で きる。 予 測 され た 分布 と実 際 の 測 定 結 果 が 一 致 す れ ば、 治 療 計画 が 上 手 く行 わ れ て い る こ と を 聞接 的 に確 認す る こと が で き る。 図 1 0 に 示 す 様 に、 設 計情 報 が 既 知 の リッ ジ フ ィ ル タ ー を 用 い て 形成 したS o B P の 線 量 分 布 をI P で測定 した結 果 は 予 測値 と良 い 一 致 を示 した。 以 上 述 べ た こと は、 I P の表 面 にほ ぼ垂 直 に 陽子 線 が入射 した 場 合 につ い て の 結果 で あ る。 と ころ が 、I P に 陽子 を斜 め入 射 させ た場合 の応 答 は ま た別 の もの とな る。傾 けたI P は別 の 特 性 を持 っ た 放 射検 出 器 と して 振 る舞 うよ う で あ る。 この 現 象 につ い て は、 現 在 調査 中で あ る。 -12- n O O r P ip Group‐ B BAS・ 1:12025 ▼ PSL:nten3ityノ 50 100 Do30 by■ c 150 ■冨一 ■Or ︼ 〇 コ●■ヽ、口000 げく ↓一 . ,3 3 . .o 1 0 5・ ヨ豊 器 島 ・ o 冒o﹁ 0 ︲ b ,p ム 。‘ ︶o 1 5・ o二 5。 冒鐵 ¨ ■E﹄ 0〓0” 〓一JO■ ﹄0 0Шり ヽ0一 F一 0日0 ヽ、 卜 、コ ●000 80 rnin.a■er lradlation 200 Shiner Thickness(mm) Range・・ 図 9 1Pと 指 頭 型 電 離箱 で 測 定 した ブ ラ ッグカ ー プの 比較 lrOtOn l い ■,こく 一 0 1 5 。 oc ,■ ■cコ∽ 今コこ お一 ¬ ↓│ 11器 : 50 er離 70 m m :ぶ i:}5 100 SOBP rm e。 t t an wa h h p Nonnai12ed at t 1 150 200 250 Depth in Water(mm) ー 図 1 0 1 P と 指 頭 型 電 離 箱 で 測 定 した 拡 大 プ ラ ッ ク ピ ク と予 測 値 との 比 較 -13- 5 - 4 照 射 損 傷 に よ る 応 答 の劣 化 のり返 し利 用 につ 富 士 フ ィル ム は 、 汎 用 I P ( 保護 層 を 有 す る B A S ― I I I S , B A S I I I , B A S U R )繰 いて 、 「普 通 の 利 用 回数 は 1 0 0 0 回 程 度 で あ るが 、 機 械 的 損傷 が な く検 出 層 の 変 化 が な い 状 態 で正 し く 使 用 す る な ら理 論 上 は無 限 に 何 回 も繰 り返 し利 用 で き る。 」 と して い る ( 7 ) 。通 常 の 使 用 で はX 線 や 低 エ ネル ギ ー の β線 を 検 出す る 場 合 を 想 定 し て い る と思 わ れ るが 、 陽 子 線 な ど の 粒 子 線 を照 射 す る場合 、 核 反 応 等 に よ りI P が損 傷 を受 けて特 性 が変 化 す る可 能性 が あ る。 図 1 1 は そ の プ ロ フ ァ イ ル が 二 次 元 の ガ ウ ス 分 布 で記 述 され る 陽 子 線 ビ ー ム を未 使 用 の I P に 大 量 に 照 射 し、そ の 結果 と して 発 生す る 感 度 の 変化 ( 低下) を陽子 フル エ ン ス の 関 数 と して 評 価 した もの で あ る ( 8 ) 。照 射 か ら1 0 日 後 、 自 己放 射 化 が測 定 に 影 響 を 及 ぼ さ な い レベ ル まで 減 衰 して い る こ とを確 認 して か ら、 小線 量 の 陽子 線 を 一 様 に 照射 し感 度 の 測 定 を行 っ た。 損 傷 を 与 え る 為 に 照 射 し た 総 陽 子 数 お よび フル エ ンス 分 布 を 評価 し た 軸 の 方 向 に 応 じて 、4 本 の 曲線 が 得 ら れ た。 この 結 果 か ら、約 5 x 1 0 1 2 p r O t O n s / c m 2 ( 水 に対 す る陽子 線 線 量 で 約 3 0 0 0 G y ) を 超 え る辺 りか ら感 度 の 低 下 が 始 ま って い る ことが 分 か る。 と ころが 、照 射 後 約 8 ケ 月 経 過 し て か ら、再度 感 度 の 測 定 を行 った と ころ、 感 度 が 有 意 に 回 復 して いる こ と が 判 明 し た。 そ の 8 ヶ 月間 、I P は室 温 で保 管 さ れ て いた 。 そ こで 、数 日間5 0 ∼ 7 0 ℃ に 保 温 して 更 に回 復 す るか調 べ た が 、 ご くわ ず か な 回 復 が見 られ た もの の 、 あ る レ ベ ル で 回復 が停 止 して しまった 。 この 回 復 につ いて は、現 象 の 再確 認 も含 め て 現 在 調査 を続 行 中 で あ る。 5-5 1Pの 利 用 5 - 3 で 調 べ た 様 に 、 I P で 測 定 した 陽 子 線 ヽ Spot 1 : Horlzr"nLix 1000 線 量分 布 は 実 際 の 線 量分 布 か らは多 少 歪 ん で い るの で 、適 切 な補 正 を しな い と 正 ど厳 密 な評 価 が 必 要 な い 場 合 に は 、 そ の ま まで も近 似 分布 を 簡 便 に測 定 す る 方 法 と して 利 用 可 能 で あ る。 これ は 、実 用 上 か な り魅 力 的 で あ る 。 ま た、 医 療 施 設 の ●∝ か〓Ocg ●¨コ∽ L o,コ●一 し い 分 布 は 得 られ な い 。 しか し 、 そ れ ほ よ うに 、 ビ ー ム状 況 が 日 々 変 化 しな い こ spot l:vertl( 罐:x100 ヽ Sp01 2:Hor12 Dntal X 10 ヽ Spot 2 : Verdr口 ヽ │ と が重 要 な 場 所 で は 、 標 準的 な 照射 条 件 1 ‐ で 得 られ る 線 量 分 布 が 一 定 で あ る こ と を 、 0.1 101° 良 い精 度 で 確 認 す る 手段 と して 手軽 に使 250 MoV PrOtOn3 BAS:::2025 10'` 1018 101● F:uenCo I ProtOnarcmal 用 す る ことが で き る。 図H 陽 -14- 子 線 の 過 大 な 照 射 に よ るI P の 応 答 の 劣 化 3 - 2 で は 、c o n v e n t i o n a l な 照 射 形 成 方 法 に も とづ く 現 在 の 治 療 の 流 れ に つ い て 説 明 した が 、 陽 子 線 治 療 の 現 場 で は 、 ス キ ャ ンニ ング 法 等 を 用 い た新 しい照 射 野 形 成 法 の 開 発 や 治 療 計 画 の 高 精 度 化 に 伴 い 、 よ り精 密 な 線 量 分 布 測 定 法 へ の 要 望 が 高 ま っ て い る 。 I P は 、 こ れ に 答 え る 測 定 器 に な る可 能 性 を持 っ て い る。 6.ま とめ 筑 波 大 学 陽 子 線 医 学 利 用 研 究 セ ン タ ー を例 に して 、 陽 子 線 治 療 の 現 場 で ど の 様 な 放 射 線 測 定 が 行 わ れ て い る か を 、 簡 単 に説 明 し た 。 また 、 新 しい 測 定 法 の 開 発 の 試 み と して 、 陽 子 線 に 対 す る イ メ ー ジ ン グ プ レー トの 応 答 特 性 に つ いて も述 べ た . こ れ ら の 放 射 線 測 定 は 、 治 療 の 効 果 ・信 頼 性 に 直 結 す る重 要 な 技 術 で あ る 。 現 在 、 陽 子 線 治 療 は これ ま で の 臨 床 研 究 段 階 か ら普 及 段 階 へ の 過 渡 期 に あ り、日 本 国 内 で も い くつ か の 陽 子 線 治 療 専 用 施 設 が 新 た に 建 設 さ れ よ う と して い る。 そ れ らの 施 設 で 良 好 な 治 療 結 果 を あ げ られ る か ど うか の か な り の 部 分 が 、こ の 様 な 基 礎 的 な 放 射 線 測 定 技 術 に 依 存 し て い る こ と は 間 違 い な い 。 今 後 、 省 力 化 。高 精 度 化 ・高 信 頼 化 を キ ー ワ ー ド と した 更 な る 開 発 研 究 が 必 要 で あ る。 参考 文 献 (1)例 え ば 、粒 子 線 医 科 学 セ ンタ ー 1 0 年 の あ ゆみ( 1 9 9 0 ) (2) ICRU REPORT 59, Clinical Proton Dosimetry.Part I : Beam Production, Beam Delivery and Measurement of Absorbed Dose(1998). (3)早 川 吉 則 ,放 射線 医学物 理 Vol.18,Sup p.,57(1998)pp.178. (4) Y. Hayakawa et al.,Nucl.Ins tr. and Meth.A378(1996)pp.627. (5)A.Nohtomi et al.,Nucl.Ins tr.and Meth.A424(1999)pp.569. (6)BAS Technical lnformation No.1(富 士 フ ィル ム ) (7)BAS Technical lnformation No.8(富 士 フ ィル ム ) (8)納 冨 他 、 日本 原 子 力 学 会 1 9 9 9 年 春の 年会 要 旨集 D53 -15-
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