3D モデリングの基本

3D モデリングの基本
コンピュータ内に 3 次元の形状を立体モデル(3D モデル)と
して構築することを 3D モデリングまたは単にモデリングと
いう.代表的な 3D モデルの種類には次の 3 つがある.
①ワイヤーフレームモデル
形状を稜線と頂点だけで表現した針金細工のような
ものである.線によるデータしか持たないため,物体の
表裏や内外がなく,面処理はできない.但し,データ量
図 5-1
サーフェスモデル的表示
図 5-2
ソリッドモデル的表示
が小さいために高速処理が可能である.
②サーフェスモデル
ワイヤーフレームモデルに面のデータを加えてもつもので,針金
の上に紙を張ったもの(紙細工)と考えればよい.す
なわち,面の表裏データを持つが面を組み合わせた物体
を構築した場合,内外のデータは持たないため物体の中
は空洞である.建物の視覚要素は面であるので,一般
に建築モデルを構築する場合はこのモデルによる.比較的
高速な処理が可能である.
5.1
③ソリッドモデル
3D モデルの作成
例題 5.1
ソリッドモデルは,コンピュータの内部に 3 次元形状を数学モデ
図のような,3D モデル(積み木の家)を作
成せよ.
ルとして構築するものである.いわば,粘土細工のよう
なもので,内部は詰まっているイメージで表現される.集
合演算などで細かなモデリングが可能であるが,データ量が
大きく演算処理に時間がかかる.
初期の CAD では,ワイヤーフレームモデルしか作成できなか
ったが,最近ではパソコン上でもソリッドモデルが扱えるよう
になってきた.しかし,見かけ上はどのモデルかを必ず
しも判別しにくく,ワイヤーフレームモデルでも陰線・陰面処理
AutoCAD2012 のバージョンでは,ワークスペースとして「3D
をしてサーフェスモデルやソリッドモデルのように表現される.そ
モデリング」モードが使えるようになっているが,初学者に
して,視点が異なっている場合でも同じ形(ワイヤーフレーム)
はやや煩雑であることおよび前期までの知識を活かす
となる場合もある(図 5-1,図 5-2 参照.中央のワイヤーフ
ために,以下ではしばらくの間「AutoCAD クラシック」モー
レームに対して左右の図の視点はそれぞれ下方および上
ドでモデリングする方法を解説する.なお,ダイナミック入力
方にある).
[DYN]はオフにしておけば混乱が少ない.
また,これら 3 つのモデルの融合表現を可能とするよ
解
うにソリッドモデルを拡張したものとして非多様態モデルが
①新規画面作成
研究開発されている.この非多様態モデルは,設計初期
コマンド: SAVEAS{3D-MODEL}
ではワイヤーフレームモデルやサーフェスモデルの情報で対応し,設計が
適宜作業中に「上書き保存」を行うことによって、
進むにつれてソリッド情報として完成していくことがで
PC がフリーズした場合に直近のファイルを使うことがで
きるもので,次世代の技術として注目されている.
きるので、被害を最小限に抑えることができる.
1
②初期設定
コマンド: VPOINT{R,310,35}← 視点を角度で設定す
コマンド: UNITS{精度を「0.000」(少数点以下 3 桁)とす
る.XY 平面の X 軸からの角度を 310 度,XY 平面
る}
からの Z 方向の角度 を 35 度として回転した位置から
コマンド: LIMITS{(0,0),(2,2)}←
2×2 の図面範囲
眺めた画面が得られる.
コマンド: ZOOM{0.5X}
を設定.
コマンド: ZOOM{A}←
コマンド: HIDE
図面全体を表示.
←
陰線処理された立方体が得られる.
コマンド: GRID{0.125}←0 を省いて .125 でもよい(以
下同じ).
コマンド: SNAP{0.125}
③立方体の描画
コマンド: BOX{座標(0,0)を指示,座標(1,1)を指示,高
さとして 1 を入力,[Enter]}
④文字の描画
コマンド: DDSTYLE{[文字スタイル管理]でビッグフォントを参照し,
適用しておく}
←
日本語入力の準備.
コマンド: TEXT{座標(1.500,0.000)を指示, 0.25,[Enter],
「底面」という全角文字を入力}
⑥画面のタイル分割
コマンド: VPORTS{2 分割:縦}←
画面を左右に 2 分割
する.画面分割した場合には編集できる画面は任意の
1つに限られる.下図の場合は右側の画面枠が太くな
っており、右側が編集可能であることを示している.
この状態をアクティブと言う.また、アクティブな画面では通
常のグラフィックカーソルが現れるが,非アクティブ画面に移動させ
ると矢印のマウスポインタになる.アクティブにするためには、
画面の任意の部分をマウスで指示し,クリックすればよい.
⑤立体視
[表示]→[3D ビュー(3)]→[北東等角図]
←
北東
45°上空より眺めた画面(アイソメ)が得られる.
コマンド: ZOOM{0.5X}
←
図面を 1/2 に縮小する.
2
⑦UCS(ユーザ座標系)
コマンド: PLINE{(-0.375,1.000)を指示,(1.375,1.000)
コマンド: UCS{3,座標(0,1)を指示【マウスのホイールを使って
を指示,(0.500,1.375)を指示,c,[Enter]}
かなり大きくズームアップし OSNAP の「端点」を利用する】,
座標 (1,1)を指示【ズームアウトし「端点」を利用】,立方
体の上角付近(0,1,1)を指示【「端点」を利用】} ←
屋
根を描くための基準面(XY 平面)を立方体の裏面とし、
その原点を左下隅としている.
⑧3D から 2D(平面図)への切り替え
⑩色(特性値)の変更
コマンド: PROPERTIES{描いた屋根の輪郭線をマウスで指示,
[Enter],ダイアログ゙ックスの[色]をクリック,RED を選択}
←
屋根の輪郭が赤色になる.
[Esc]を押すとオブジェクト(屋根の輪郭線)の選択モード
が解除になる.
コマンド: PLAN{[Enter]}←
ダイアログボックスの[×]をクリックして,閉じておく.
平面図へ切り替える.こ
のとき,現在の UCS の XY 平面(つまり立面)と
コマンド: VPOINT{R,310,35}← 視点を角度で設定す
WCS の XY 平面(つまり底面)が選択可能で、後者は
る.XY 平面の X 軸からの角度を 310 度,XY 平面
VPOINT{(0,0,1)}と同等である.
からの Z 方向の角度 を 35 度として回転した位置から
コマンド: ZOOM{0.5X}
眺めた画面が得られる.
⑨屋根の描画
コマンド: DDOSNAP{[すべてクリア],[OK]}←
O スナップ
を解除.
コマンド: ELEV{0,1}←
⑪ドアの描画
高度を 0,厚さを 1 とする(高
左画面をアクティブにする(左画面の任意の部分をマウス
度は基準面からの間隔,厚さはモデルの背丈を意味する).
で指示し,クリックする).
3
コマンド: UCS{3,家の正面の左下隅を指示,右下隅を
で正方形を描いて,陰線処理(HIDE)をしたものであ
指示,左上隅を指示【それぞれ OSNAP の「端点」を利
る.違いがわかるであろう.このような基本的な立体
用する】}
形状はプリミティブと呼ばれ,BOX(長方体)のほか、
現在の UCS の XY 平面(つ
コマンド: PLAN{[Enter]}←
CYLINDER(円柱)、CONE(円錐),SPHERE(球)などの
まり正面の立面図)へ切り替える
コマンドがある.
コマンド: ZOOM{0.5X}
問 5.1 下図を参照して,右側面に窓を描いてみよ.
コマンド: UCSICON{OF}←
UCS アイコンを非表示にする.
問 5.2 同じく,犬小屋(「ボブの家」と表示)を描い
O スナップ
てみよ(屋根は,緑色にしてみよ).また,家のドアの
コマンド: DDOSNAP{[すべてクリア],[OK]}←
上に,表札(学籍番号と氏名)を記入せよ.
を解除.
コマンド: ELEV{0,0}←
高度および厚さを 0 とする.
コマンド: PLINE{ドアの左下隅を指示,左上隅を指示,右
上隅を指示,右下隅を指示,[Enter]}
問 5.3 家や小屋の周囲に樹木などの物体として,BOX
以外のプリミティブ(ソリッドモデル)を用いて描いてみよ.
なお、上図左で[表示]→[表示スタイル]→[リアリスティック]また
は[コンセプト]等を選択するとモデルが着色され、より立体
補足説明
的に表現される.
この例題でもわかるように,BOX コマンドで立体を作る
と,閉じた多面体(ソリッドモデル)が得られる.PLINE コマ
ンドや LINE コマンドでは側面が形成されるだけで,上下の
ファイル提出:[common]→[arch]→[report]へ drag&drop
面は空いた状態(サーフェスモデル)となる.次図は,前述し
ファイル名の例:「cg1010920875kinkihanako0918.dwg」
た手順の③のときに ELEV{0,1}とし,PLINE コマンド
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