第5学年2組 国語科学習指導案 3校時 指導者 1. 単元名 2. 単元について 5年2組 教諭 舟山 教室 雄樹 一枚の地図から (1)教材について 本単元は一枚の絵から想像をふくらませ物語を作るという単元である。児童によって差 があるが、すでに多くの物語を読んだり、簡単なお話作りを体験したりしている。本単元 では、それらの体験や実生活の体験を加味しながら、想像をふくらませ自由に発想させる 活動を大切にしたい。そのため、教科書の絵に限定せず、教師が選んだ写真なども掲示し たい。また、物語のジャンルや絵(写真)の使い方は制限せず、楽しみながら想像・発想 し創作活動に没頭させたい。 しかし、これだけでは困惑し、抵抗を感じる児童が出ることが予想される。また、物語 とはそもそも一定の秩序があって存在するものであるので、物語の構成や表現の工夫など 掲示し、意識させながら本単元に取り組みたい。 この単元の学習を通し、自由に想像した物語を文章に書く力と、自分が想像した物語を 読み手に効果的に伝えるための文章表現力を伸ばしたい。 (2)児童の実態 男子18名、女子15名、計33名の学級である。 国 語 の 学 習 に 対 す る 児 童 の 実 態 に つ い て い く つ か 述 べ る 。ま ず 、 「 読 む こ と 」は 好 き な 児 童が多い。授業中、積極的に音読する姿や、休み時間、読書に熱中している姿が目立つ。 「 話 す こ と 」は「 は ず か し い 」 「 間 違 い た く な い 」と い う 理 由 か ら 、抵 抗 を 感 じ る 児 童 が 女子を中心に多いようだ。しかし、全員が発表する場面や、グループで発表するような場 面では、楽しみながら話している様子がある。また、段階的に書く手立てを示しながら書 き 進 め た 作 品 に つ い て は 、 ほ と ん ど の 児 童 が 一 人 で も 自 信 を も っ て 発 表 す る 。「 聞 く こ と 」 については抵抗がなく、友達の話や教師の話を楽しみながら聞くことができる。しかし、 話し手の目的や意図を考えたり、整理しながら聞くという聞き方が身についている児童は 少ない。 「書くこと」については、国語科における初発・読後の感想や一行詩、生活作文など書 く活動を年度当初から少しずつ行なっている。 「運動会」 「花山合宿」 「 学 習 発 表 会 」の 作 文 では、タイトルや書き出しの工夫、比喩の活用など、表現の工夫が少しずつ見受けられる よ う に な っ た 。ま た 、総 合 的 な 学 習 の 時 間 で 取 り 組 ん で い る「 米 作 り 」の 観 察 カ ー ド で は 、 抵 抗 な く 観 察 文 や 「 今 日 の 一 句 ( 5 ・ 7 ・ 5 )」 書 い て い る 。 経験してきた「書く活動」や詩・俳句のような文量の少ない創作的な「書く活動」につ いては抵抗なく取り組む傾向がある。 書く活動の学習として、5年生になってから「伝え合おう5年生でがんばりたいこと」 「質問の手紙を書こう」 「 相 手 や 目 的 を 考 え て 」な ど の 書 く 学 習 を し た 。段 階 的 に 書 く 手 立 てや見本をあたえることで、だいたいの児童が、目的や意図に応じて自分なりの考えを文 章にまとめることができていた。課題としては、テーマの選定ができなかったり、書くこ とが浮かばなかったりと、入口でつまずく児童への対応である。これらの児童には個別に 助言しながら指導している。 <実態調査の結果と考察> 調査日:10月2日(月) 対象:33名 ○ 国語科の学習について 16 14 12 10 8 6 4 2 0 好き やや好き やや嫌い 嫌い 書くこと 読むこと 聞くこと 話すこと → 「 話 す こ と 」「 書 く こ と 」 に 対 す る 抵 抗 を 感 じ て い る 児 童 が 多 い 。 ○ 書くことについて 20 15 好き やや好き やや嫌い 嫌い 10 5 0 学習時の書く 創作文 感想文 観察文 →感想文のように書き方に制限がある文章に対して苦手意識がある。創作文や観察文では 7 割 を 超 え る 児 童 が「 好 き 」 「 や や 好 き 」と 答 え て い る 。分 量 が 少 な く 慣 れ て い る も の に つ いては抵抗なく取り組むことができる児童が多い。 ○ 「 読 書 」「 物 語 作 り 」 に つ い て 14 12 10 好き やや好き やや嫌い 嫌い 8 6 4 2 0 読書は好き? 物語作りは好き? →読書が好きで語彙力・表現力が豊かな児童は、物語作りに対しても前向きな回答をして いる。これらの児童は当然ストーリーも豊富にもっている。 物 語 作 り に 着 目 す る と 、約 3 分 の 1 の 児 童 が「 や や 嫌 い 」 「 嫌 い 」と 答 え た 。こ れ ら の 児 童 の 中 で 読 書 に つ い て も 「 や や 嫌 い 」「 嫌 い 」 と 答 え た 児 童 は 半 数 だ っ た 。 物語についての「好き・嫌い」の主なる理由は以下のようである。嫌いな児童も好きの 理由としてあがっているような感触を一つでももつことができれば意欲が高まると予想さ れる。物語のイメージをふくらませる手立てが必要である。 ☆「物語作り」が好きな理由 ・現実にないものを何でも作ることができる。 ・ 想像(空想)ふくらませて書くのが面白い。 ・ 空想・想像を形にできる。 ・ 自分で書いていてわくわくする。 ・ 場面設定が自由にできる。 ・ 完成した物語を読むことが楽しい。 ・ 少し考えただけでたくさんのアイデアが浮かんでくる。 ・ ストーリーがすぐ思いつきすらすら書ける。 ・ み ん な を 楽 し ま せ た い ( 将 来 本 を 書 く 人 に な り た い )。 ☆「物語作り」が嫌いな理由 ・つまらない。 ・ めんどうくさい。 ・ ストーリーを考えることがむずかしい。 ・ イメージが浮かばない。浮かんでも書けない。 ・ 人に見られるのがいやだ。 ・ だんだん変なストーリーになる。 ・ 自分で作るのは大変。 ま と め : こ の 実 態 調 査 と 担 任 が 把 握 し て い る 児 童 個 人 の 状 況 か ら 言 え る こ と は 、書 く 材 料 や考える材料(語彙力・表現力・ストーリー)もっているかどうかが今回の授業のかぎに なるということである。不足している児童には、児童が消化できる範囲で材料を与え、物 語 作 り を 達 成 さ せ た い 。「 つ ま ら な い 」「 め ん ど う く さ い 」 な ど 物 語 作 り に 楽 し さ を 感 じ る ことができない児童については、本人が興味をもっていることがらから想像がふくらませ ることができるよう支援して、意欲的に取り組ませたい。 (3)指導にあたって 物語作りに対する意欲の個人差、読書量の個人差、段階をふめば自信をもって活動する などの児童の実態をふまえ、本単元の目標を達成するためには、以下の3点の手立てが必 要であると考えた。 A:意欲を引き出す指導の工夫 ① 教 師 が 児 童 の 意 欲 を 引 き 出 す よ う な 物 語 を 意 図 的 に 紹 介 す る 。( 本 ・ 映 像 ) ② 教科書に出ている絵以外にも、児童のそれぞれの興味・関心・実態を考慮して写真 を準備する。 ③ 既習の物語の「書き出し」確認し、物語のイメージを広げる。 ④ 既習の物語の「終わり」を確認し、物語のイメージを広げる。 ⑤ 「 性 格 集 め 」 し て 、 登 場 人 物 の 性 格 の イ メ ー ジ を 広 げ る 。( → キャラクター博 物 館 ) ⑥ 児 童 一 人 ひ と り の 実 態 に 合 わ せ た 指 導 計 画 を 立 て る 。(「 書 く こ と カ ル テ 」 の 活 用 ) 場面設定・あらすじの展開でつまずく児童への対応 ・ 想像をふくらませやすい写真を掲示する。 ・ 趣味や好きなことを物語に生かすよう助言する。 ・ 「 キャラクター博 物 館 」 の プ リ ン ト か ら 主 人 公 の 性 格 を 選 ぶ よ う 助 言 す る 。 ・ 既知の物語の流用を進める。 ・ 既習の物語の流用を進める。 ・ 教師が実際に写真から作った物語を紹介する。 ・ 構 成 表 の 中 で 、物 語 の 展 開 で 中 心 的 な 役 割 を 果 た す「 ア イ テ ム 」 「しかけ」 「そう ち 」 の 設 定 を 促 す 。( → 「 し か け 屋 敷 」) 語彙が少なく言葉が出ない児童への対応 ・ 「連想マップ」の活用を促す。 ・ 友達の構成表などを参考にさせる。 ・ 教師が実際に写真から作った物語を紹介する。 書くことが整理できない児童への対応 ・ 構成表の段階で助言し、短冊を利用しながらしっかりした構成表を作成させる。 表現の工夫ができない児童への対応 ・ 読 み 手 を 意 識 さ せ 、既 習 の 書 く 活 動 に お け る「 表 現 の 工 夫 」も 有 効 性 に つ い て 助 言し、確認させる。 ⑦ 構成表作りから実際に物語を書くまでに間をあける。 ・ 構成表作りのスピードには個人差があるため。 ・ 構成表ができた児童も、新しい工夫が生まれると思われるため。 B:書く活動の基礎的な力を伸ばす指導の工夫 ① 連想マップ(見えるもの・聞こえる音・におい・肌で感じること・見えないもの) を使い、写真から想像をふくらませる方法を教える。 ② 場面設定やあらすじを考える物語の「構成表」を用意する。 ③ 既習の書く活動における「表現の工夫」について、掲示等を利用し確認する。 C:伝え合いを大切にする指導の工夫 ① 作文を読み合い、ストーリーや表現の工夫に着目させながら交流する。 ② 文集にまとめ、保護者も交流の輪に入れる。 ③ 教師が児童の作品の良いところを中心に細かく評価し、児童を認める。 3. 単元の目標 絵(写真)をもとに、情景や心情、会話などを想像して物語を書く。 4. 単元の評価規準 <関心・意欲・態度> ○ 物語を書くことに興味をもち、絵(写真)を見て、想像をふくらませようとしている。 <書くこと> ○物語全体を見通して、絵(写真)を見て想像したことを書いている。 ○想像したことが読み手に伝わるように、表現を工夫して物語を書いている。 5 . 単 元 の 学 習 計 画 ( 全 6 時 間 ・ 本 時 3 /6 ) 区分 学習内容 時間 ○ 絵や写真を見て、想像したことを物語に書くという流れをつ かむ。 第一次 ○ 一枚の写真から想像できることを学級全員で発表しあい、ど 1時間 のような物語ができそうか話し合う。 ○ 絵や写真を選び「連想マップ」にメモしながら物語のイメー ジを広げる。 第二次 ○ 構 成 表 に 沿 っ て 場 面 設 定 ・ あ ら す じ を 書 く 。( 本 時 ) ○ 各自、構成表をもとに、具体的な情景や人物の会話、心情な 4時間 ( 本 時 2 /4 ) どが読み手に伝わるように物語を書く。 ○ 書いた文章を読み返し、物語を完成させる。 第三次 ○ 完成した物語を友達と交換して読み合い、感想を交流する。 1時間 6 . 本 時 の 指 導 ( 3 /6 ) (1)主題名:構成表 (2)本時のねらい 想像を広げ、構成表に沿って物語の場面設定・あらすじを書く。 ( 3 ) 準 備 物 :「 構 成 表 」「 連 想 マ ッ プ 」「 キャラクター博 物 館 」「 登 場 人 物 ・ 世 界 の デ パ ー ト 」 「 ス ト ー リ ー 集 め ! 」「 あ ら す じ 屋 さ ん 」「 し か け 屋 敷 」「 絵 ・ 写 真 」 (4)本時の学習過程 導入5分 学習活動・児童の反応 教師の支援 評 価 規 準( 評 価 の 方 法 ) 1.本時のめあてを知る。 想像を広げ構成表に沿って物語の場面を設定しあらすじを書く。 ・前 時 ま で の 流 れ を 確 認 す る 。 「構成表って何だっけ?」 ・世界に一つだけの物語を作 ・本時のめあてがわか 「構成表って大事なんだ」 るうえで、構成表が欠かせ る 。( 挙 手 ・ 構 成 表 ) ないことを伝える。 展開①5分 2.物語の内容例、展開例 を確認する。 「あ、この展開いいなあ」 ・既習の物語の内容例や展開 ・自分の物語を意識し 例をプリントで確認させイ ながら、説明を聞い メージをふくらませる。 たりプリントを参照 したりしている。 (構 「やっぱり、悲しい話にし 成表) ようかな」 展開②30分 3 .構 成 表 の 書 き 方 を 知 る 。 ・ 拡 大 掲 示 を 使 い 説 明 す る 。 「短冊の何枚使っていい の」 ・短冊は10枚以下になるよ ・構成表の書き方がわ か る 。( 構 成 表 ) うに伝える。 ・短冊を使い場面の変化を意 識づける。 4.構成表を書く。 「メモじゃなきゃだめなの ですか?」 ・あらすじなので分量はメモ ・想像をふくらませな 程度がよいが、実態に応じ がら、物語の場面設 て長文になってもよいこと 定、あらすじを書い を伝える。 て い る 。( 連 想 マ ッ ・構 成 表 を 作 る 際 、 「連想マッ プ・構成表) プ」 「 キャラクター博 物 館 」を 活 用 するよう促す。 ・主人公の個人情報(属性・ 性格・年齢・社会的身分) などが物語に大きな影響を まとめ5分 与えることを知らせる。 5.あらすじを発表する。 友達のあらすじを聞く。 ・友達の物語がどんな場面設 ・自分の物語のあらす 定で、どんなあらすじだっ じを発表している。 たかを意識させながら発表 (発表) を聞かせる。 ・場面設定やあらすじ に着目しながら友達 の発表を聞き、友達 の物語の面白い点を 見つけている。 (発表) (5)評価 めあて 評価規準 想像を広げ、構成表に沿って物語の場面設定・あ A:読者を意識しながら想像を広げ、物語の場面 らすじを書く。 を設定しあらすじを工夫して書いている。 B:想像を広げ、構成表に沿って物語の場面を設 定しあらすじを書いている。 (6)板所計画 一まいの地図から 「構成表」拡大図 想像を広げ、構成表に沿って 物語の場面を設定しあらすじを書く。 「 キャラクター博 物 館 」 拡 大 図 (9)座席表支援計画→省略 (8)資料 目的 活用方法 作成にいたるまで 使用上の注意 五感を意識的に 書き出したもの 各自が選んだ絵や写 絵や写真から直接出 活用し、絵や写 を取捨選択し場 真の縮小版を中心に てくるものから、さ 真から想像を広 面設定や物語の 貼ることで、イメージ らに枝分かれさせて げる。あらすじ 展開に役立て を広げやすくなり意 マップを広げる。広 作りに役立て る。 欲的に活動できると げる時は思いついた 考えた。 ものをどんどん書か 資料名 ①連想マップ る。 せ、最後に取捨選択 させる。 ②構成表 場面設定や展開 物語を書く際、 場面設定や展開を考 場面設定では、出て を整理させ、見 自信をもって書 える際、児童の実態に いる項目以外にも、 通しをもちなが き進めることが 応じて自由に活用で 必要があればメモさ らあらすじを考 できるようにす きるよう項目を最低 せる。特別な事情が えさせる。 る。 限にした。展開を意識 ない限り、構成表を 的に工夫させるため もとに書き進めさせ 短冊にした。 る。 ③﹁書くこと﹂ カルテ 教師が個別支援 児童がつまずい 好きなジャンルを知 をするための個 たときに、児童 るために、既習の物語 別支援計画を立 の興味や関心が 教材を例示した。興味 てる材料にす ある物語のジャ のある絵や写真を提 る。 ンルや展開を薦 示するため、どんな主 める。 人公の物語を作りた いかを項目に入れた。 ④ キャラクター 博物館 ⑤ 登 場人 物・ストー リー 集 め・あら す じ 屋 さ ん 登場人物の性格 物語を展開させ 道徳の時間、人間には 事件をきっかけに主 を意識的に形成 られない児童に どのような性格があ 人公の性格が大きく させ、展開の工 主人公の性格を るか、自分の性格はど 変化することがある 夫に役立てる。 意識させ、どの のような性格かを考 ので、性格は展開に ような言動をと えさせた。その時の児 よって変化してよい るか考えさせ 童の意見をもとに作 ことを伝える。 る。 成している。 いろいろな場面 物語のイメージ 児童の読書量・読書経 場面設定・展開に注 設定・展開があ がふくらまない 験に大きな差がある 目させながら、資料 ることを児童に 児童に既習の物 ので、全員がしっかり を参照させる。 意識させ、自分 語の場面設定や と読み取ってきた既 の物語作りに役 展開うぃ提示 習の物語教材をもと 立たせる。 し、自分の物語 に資料を作った。 作りに生かすよ う助言する。 ⑥しかけ屋敷 物語には登場人 場面設定が決定 ファンタジーに は 必 ず 入 自分の物語の中で 物以外にも欠か しても、展開が 口・出口があることは は、何にあたるかを せないアイテム 思い浮かばない 知っていた。それ以外 考えさせる。必要性 やしかけがある 児童に参照さ のジャンルもよく見 を感じていない児童 ことを意識さ せ、展開の工夫 てみると、何らかのア については活用を無 せ、場面設定や に役立てるよう イテムやしかけ、装置 理強いしない。 展開を工夫させ 助言する。 が物語の展開や場面 設定に欠かせない役 る。 割を果たしているこ とに気がついたので まとめた。 ⑥ 書き出し・ ラスト集め 既習の物語教材 書き出しや終わ 既習の物語を読んで 確認しながらタイプ の書き出し・終 り方でつまずく みると、情景描写や台 を分類してみる。分 わり方を確認 児童に「こんな 詞など様々な書き出 類したものの中にな し、自分の物語 書き出しどうか しや終わり方があっ いものでも、自信を 作りに役立たせ な?」と薦めて た。役に立ちそうだっ 持って物語を進めて る。 みる。 たのでまとめてみた。 よいことを助言す る。 ⑧書く管理マニュアル 作文が苦手な児 「書き出し」や 作文嫌い児童に対し、 イメージの広がって 童には、 「書けそ 「 終 わ り 方 」、 抵 抗 感 を 和 ら げ る 作 いる児童には活用を うだ」という意 「一文を短く」 文指導の手引きがほ 無理強いしない。1 欲を、作文の得 など物語作りに しいと思った。いろい つの作文の中に「書 意な児童には 活用できそうな ろな文献にあたり、こ く 管 理 マニュアル」に 出 て 「さらに工夫し 部分を参照する れさえあれば、ストー いる工夫をすべて入 よう」という意 よう助言する。 リーのある生活作文 れなくてよいことを が書けるというもの 助言する。 欲を持たせる。 をまとめた。 ⑨教師作成物語見本 物語の分量,イ 物語作りに入る 教師自身が実際に作 教師の作品がすべて メージを児童に 前に読み聞か って見ることで,どの でないことを伝え, 理解させる。 せ,児童の意欲 ようなところで児童 参考として提示す を高めたり,児 がつまずいたり,悩ん る。合わせて,プロ 童に物語の分量 だりするのかを把握 の作った作品も紹介 を伝えたりす したかったので作成 した。 る。 した。 ●想像マップの使い方 ① 写真から﹁見えるもの・動き・色﹂を書き出す。 ② 写真から﹁聞こえる音・声﹂を書き出す。 ③ 写真から感じる﹁におい﹂を書き出す。 ④ 写真から﹁想像できるもの﹂を書き出す。 ⑤①∼④それぞれから想像できるものを書いていく。 名前 5年国語 名前︵ ○どこでの話 ﹁物語の構成表﹂ ①物語の 場面設定 を考えよ う 。 主人公の名前とその性格 物語の設定 ○ いつの話 ○ 登場人物 ○アイテム・そうち・しかけ ︶ ②主人公や登場人物を動かしながら、思いつく出来事をどんどんカードに書 いていこう。 ③思いついた出来事の中から、﹁選んだり﹂﹁つなげたり﹂﹁順番を変えたり﹂ しながら想像をふくらませて、物語の︻あらすじ︼を考えよう。 始まり 終わり 「書くこと」カルテ 名前 1.物語(お話作り)に関するアンケート 1 物語文(お話作り)は好きですか 好き やや好き やや嫌い きらい やや好き やや嫌い きらい 好き やや好き やや嫌い きらい 好き やや好き やや嫌い きらい 好き やや好き やや嫌い きらい 好き やや好き やや嫌い きらい 好き やや好き やや嫌い きらい 好き やや好き やや嫌い きらい 好き やや好き やや嫌い きらい 好き やや好き やや嫌い きらい 11 はらはらどきどきする話。冒険もの。 好き やや好き やや嫌い きらい 12 不思議な話。ミステリーなど。 好き やや好き やや嫌い きらい 好き やや好き やや嫌い きらい 好き やや好き やや嫌い きらい 好き やや好き やや嫌い きらい 「物語文(お話作り)は好きですか」に対する答えの理由を教えて下さい。 2.読書に関するアンケート 2 読書は好きですか 好き 「読書は好きですか」に対する答えの理由を教えて下さい。 ○読書のジャンルに関するアンケート 学校や家、公園など、みんなの身のまわりで 3 おくることを題材にした物語。 「ごんぎつね」のような、いたずらを後悔し 4 てつぐないをするごん、つぐないに気がつか ない兵十のかなしい物語。 「かさこじぞう」のような貧しくても心は美 5 しいじいさまとばあさまの心温まる物語。 「手紙をください」のような、ぼくとかえる 6 の思いがすれ違う、ちょっと切ない物語。 7 SF(空想科学)の話。未来の話。 「サーカスのライオン」のような人間の子ど 8 もと心を通わせたライオンが、火事で子ども を助ける感動物語。 9 歴史上の人物などを登場させた歴史や伝記。 10 「ハリーポッター」や童話などメルヘン・フ ァンタジーの話。 ノンフィクション・実際にあった話を物語に したもの。 「桃太郎」のような悪いものがよいものにこ 14 らしめられる、昔話風の話。 13 15 宮澤賢治の作品 3.あなたの好きな物語を教えて下さい。 4.今現在、あなたが「興味をもっていること(もの)」「好きなこと(もの)」「楽しいこと(もの)」などを 教えて下さい。 性格︵=キャラクター︶ 博物館 生き物にはそれぞれ性格がある。 複数の性格が複雑にからみあって 一人の人間や生き物を形作っている。 ︻性格集め∼みんなで集めたよ!︼ ︵ぼう︶食いしん坊・けちん坊・暴れん坊・甘えん坊 忘れん坊・あわてん坊 ︵お店︶さみしがり屋・てれ屋・こわがり屋・がんばり屋・ 暑がり屋・寒がり屋・お天気や・知りたがり屋・ ︵虫︶ よわ虫、泣き虫・自己中︵虫︶・ ︵その他︶ 内気・つよがり・いじっぱり・せこい・よくばり・ マイペース・おっちょこちょい・おてんば・わがまま・ こわがり・きざ・ぶりっこ・おしゃべり・いじわる・ いじめっ子・かっこつけ・どじ・暗い・後向き・いやらしい・ のんき・しきりや・きちょうめん・おこりっぽい・ めんどうくさがりや・シャイ・強情・二重人格・けち・ 冷たい・飽きっぽい・うそつき・おせっかい・ずぼら・ 陽気・お気楽・冷静・おだやか・元気・やさしい・明るい・ 前向き・男らしい・女らしい・おしゃれさん・ ひっこみじあん・正直者・まじめ・りちぎ・人情深い・ 誠実・冒険好き・気前がいい・おおらか・クール・ ナルシスト・みえっぱり・いじきたない・くどい・太っ腹 ∼物語の展開を工夫しよう∼﹁あらすじ屋さん﹂ ①始まり↓事件↓解決↓結び ②事件↓変化↓出来事↓元通り ③始め ↓中↓終わり ④ 現 在 ↓ 過去 ↓ 現 在 ⑤ 現 在 ↓ 過去 ︵ ﹁大造じいさんとガン﹂ ︶ ⑥起↓承↓転↓結 ⑦転校生がくる↓事件↓転校していく ↓元通り ⑧ふだんとちがうことをする↓事件↓ドタバタ↓解決 ⑨久しぶりに知り合いと出会う ↓事件↓解決 ★耳より情報 ﹁大造じいさんとガン﹂の作者・椋鳩十さんは、地元の狩人に話を聞き、それを元に物語を作りま した。例をあげればきりがありませんが、プロの作家だって全部自分で考えた話ばかり作っている訳 ではありません。 今まで、国語で習った物語や本で知った物語、映画やテレビで見た物語など、自分の知っている話 を参考に作ることも一つのテクニックです。 しかけ屋敷 多くの物語には、登場人物以外に大切な﹁アイテム﹂や﹁しかけ﹂があるんだよ。上手にしかけると、 読み手をドキドキわくわくさせたり、感動させたり、楽しくさせたりすることができるんだよ。みんな はどんな﹁しかけ﹂をするのかな? ︵これまで教科書で習ってきた物語︶ ﹁大きなかぶ﹂ ・・・・・・・・大勢でなければぬけない大きなお化けかぶ。 ﹁サラダでげんき﹂ ・・・・・・お母さんへのサラダ。 ﹁ゆきのひのゆうびんやさん﹂・おばあちゃんのあんだえりまき。 ﹁手紙をください﹂ ・・・・・・ぼくとカエルをつなぐポスト。 ﹁ニャーゴ﹂・・・・・・・・・先生の話を聞いていないねずみ。ニャーゴの意味を間違えている。 ﹁名前を見てちょうだい﹂・・・お母さんにもらった大切な赤いぼうし。 ﹁かさこじぞう﹂・・・・・・・売れなかったかさとじさまの手ぬぐい。 ﹁すいせんのラッパ﹂・・・・・すいせんをラッパにたとえて、春の幕開けにしていること。 ﹁テウギのとんち話﹂ ・・・・・うそで見る夢。とんち。 ﹁サーカスのライオン﹂ ・・・・男の子との約束。火の輪。 ﹁ぼくはねこのバーニーが大好きだった﹂バーニーの十個のよいところ。庭仕事中のお父さんとの会話。 ﹁とっときのとっかえっこ﹂ ・カート↓事故↓車椅子。 ﹁あ・し・あ・と﹂ ・・・・・かくれんぼのふり﹁まあだだよ﹂↓﹁もういいよ﹂。 ﹁ごんぎつね﹂ ・・・・・・・いたずら︵うなぎ︶↓つぐない︵くり︶ ﹁世界一美しいぼくの村﹂・・世界一のパグマンのさくらんぼ。 ﹁だいじょうぶだいじょうぶ﹂立場︵心配する側とされる側︶が変わる。 ﹁マザーテレサ﹂・・・・・・神の声を聞く。 ﹁ちかい﹂ ・・・・・・・・・母をハンターによって失ってしまう小ゾウ。 ﹁ハンターになりたい﹂↓﹁ハンターにならない﹂ ﹁注文の多い料理店﹂・・・・注文の書いてある戸。タイトル。﹁風がどうとふいてきました。∼﹂ ︵教科書以外︶ ﹁虔十公園林﹂ ・・・・・・・杉の苗木四百本。 ﹁どんぐりと山猫﹂ ・・・・・山猫からの手紙。 ﹁よだかの星﹂ ・・・・・・・たかと似た名前。 ﹁桃太郎﹂ ・・・・・・・・・大きな桃。黍団子。 ﹁となりのトトロ﹂ ・・・・・植物でできた洞くつ。トトロは大人になると見えない。 ﹁ドラえもん﹂ ・・・・・・・のび太の机の引き出し。ドラえもんの四次元ポケット。 ﹁ドラゴンボール﹂ ・・・・・七つ集めると願い事ができるドラゴンポール。 ﹁ウルトラマン﹂・・・・・・三分間しか地球上にいることができない︵胸のランプ︶。 ﹁アンパンマン﹂・・・・・・顔を分けてあげることができる。バイキンマンの悪事。 登場人物・世界のデパート みんなが 習ってき た物語にはいろいろな人間以外にも登 場人物︵動物?︶が 出てき ましたね。また、 物語の世界も現実の世界だ ったり、現実では考えられ ないような世界だったりしたね。みんなの物語は、どんな登場人物が出てきて、 ﹁ テ ウ ギ の と ん ち 話 ﹂﹁ と っ と き の と っ か え っ こ ﹂ ﹁世界一美しいぼくの村﹂﹁だいじょうぶだいじょ うぶ﹂ ﹁マザーテレサ﹂ ﹁虔十公園林﹂ 現実世界 その他 ﹁とっときのとっかえっこ﹂﹁ぼくはねこのバーニ かさこじぞう んのラッパ﹂ ﹁よだかの星﹂ 動物と植物 ﹁ゆきの日のゆうびんやさん﹂ ﹁ニャーゴ﹂ ﹁すいせ つね﹂ ﹁ちかい﹂ ﹁サーカスのライオン﹂ ﹁あ・し・あ・と﹂ ﹁ごんぎ 人 間 と 動 物 ﹁大きなかぶ﹂ ﹁サラダでげんき﹂ ﹁手紙をください﹂ 人間のみ どんな世界のお話なのだろう?楽しみだなあ! 登場人物 物語の世界 ーが大好きだった﹂ ﹁テウギのとんち話﹂ ﹁世界一美 しいぼくの村﹂ ﹁だいじょうぶだいじょうぶ﹂ ﹁マザ ーテレサ﹂ ﹁ちかい﹂ ﹁虔十公園林﹂ 非現実世界 ﹁大きなかぶ﹂ ﹁サラダでげんき﹂ ﹁ゆきの日のゆう びんやさん﹂﹁手紙をください﹂﹁ニャーゴ﹂﹁名前 を見てちょうだい﹂ ﹁かさこじぞう﹂ ﹁すいせんのラ ッパ﹂ ﹁サーカスのライオン﹂ ﹁あ・し・あ・と﹂ ﹁ご んぎつね﹂ ﹁どんぐりと山猫﹂ ﹁なめとこ山の熊﹂ ストーリー集め 今 ま で 習 っ て き た お 話 は す ご く 簡 単 に 書く と 、 右 の よ う に な り ま す 。 み ん な は 国 語 で い ろ い ろ な タ イ プ の 物 語 を 勉 強 し て き た ん だ ね ! 先 生が 小学 生 の とき に 習 っ た 物 語 も ま だ ま だ 残 っ て い て な ん だ か う れ しく な り ま し た 。 先 生 は ﹁ 名 前 を 見 て ち ょ う だ い ﹂ が 大 好 き で し た 。 み ん な は ど ん な お 話 が 好 き で す か ?そ して、みんなの物語はどんなストーリーになるだろう? ﹁大きなかぶ﹂大きなかぶを引きぬく情景やリズムを楽しむ物語。 ﹁サラダでげんき﹂様々な出会いを通じて、病気のお母さんにサラダを作ってあげる心温まる物語。 ﹁ゆきのひのゆうびんやさん﹂病気のうさぎさんに代わり配達の仕事をする三匹のネズミの冒険物語。 ﹁手紙をください﹂ぼくと手紙がほしいかえるの思いがすれ違う、ちょっと切ない物語。 ﹁ニャーゴ﹂3匹の陽気なネズミのかん違いから、ネコの心が少し変化する心温まる物語。 ﹁名前を見てちょうだい﹂大切なぼうしをさがしにいく心の強い少女の物語。 ﹁かさこじぞう﹂貧しくても心は美しいじいさまとばあさまの心温まる物語。 ﹁すいせんのラッパ﹂動物や植物を主人公に、自然界の春の様子を伝えるさわやかな物語。 ﹁テウギのとんち話﹂まじめな弟子にこわい先生を負かす朝鮮半島の民話。 ﹁サーカスのライオン﹂人間の子どもと心を通わせたライオンが、火事で子どもを助ける感動物語。 ﹁ぼくはねこのバーニーが大好きだった﹂ねこの死に直面した少年が家族との関わり合いを通して成長 する物語。 ﹁とっときのとっかえっこ﹂時間の流れの中で立場が逆転し、役割が変わっていく人の一生を描く物語。 ﹁あ・し・あ・と﹂少年と恐竜が関わりを通して友情を深めながら成長していく物語。 ﹁ごんぎつね﹂いたずらを後悔してつぐないをするごん、つぐないに気がつかない兵十のかなしい物語。 ﹁世界一美しいぼくの村﹂戦争の犠牲をしょってもなお、強く生きる人々を描く物語。 ﹁だいじょうぶだいじょうぶ﹂自分を成長させてくれたおじいちゃんに恩返しを決意する成長物語。 ﹁マザーテレサ﹂貧しい人のために自分の生涯を捧げた一人の女性の物語。 ﹁ちかい﹂ゾウと一晩の旅に出て﹁ハンターにはならない﹂と決意する少女の成長物語。 五年国語「一まいの地図から」 物語作り「書き出し・ラスト集め!」 今までみんなが国語で習ってきた物語は、名作中の名作です。すばらしい「書き出し」「ラスト」の宝庫です。そちらも参考にしてみてください。 書き出し ラスト 大きなかぶ おじいさんが、たねをまきました。 「あまいあまいかぶになれ。おおきなおおきなかぶになれ。」 「うんとこしょ、どっこいしょ」 やっと、かぶは ぬけました。 「サラダでげんき」 りっちゃんは、お母さんが病気なので、何かいいことをしてあげたいと思いました。 りっちゃんのお母さんは、サラダを食べて、たちまち元気になりました。 「ゆきの日のゆうびんやさん」 外は、雪。三匹のねずみが温かい部屋の中で遊んでいました。 「郵便です。はっ、はっくし その夜、三匹のねずみは、おばあちゃんにお礼の手紙を書きました。外はまだ、雪でした。 ょん」 「手紙をください」 ぼくのうちのいちじくの木には、赤い郵便箱がかかっている。ぼくとパパが作った、ぼく だれか、あのかえるの住所を知っていたら、ぼくに手紙をください。 の郵便箱だ。 「ニャーゴ」 「いいですか、これがねこです。この顔を見たら、すぐに逃げなさい。つかまったら最後、 ねこは、ももを大事そうにかかえたまま、ニャーゴと小さな声でこたえました。 あっという間に食べられてしまいますよ。」 「名前を見てちょうだい」 えっちゃんは、お母さんに赤い素敵なぼうしをもらいました。 「うらを見てごらん」そう言 それからえっちゃんはあっこちゃんのうちに遊びに行きました。 われて、ぼうしのうらを見ると、青い糸で名前がししゅうしてあります。 「う、め、だ、え、 つ、こ。うふっ。ありがとう。」 「かさじぞう」 むかしむかし、あるところに、じいさまとばあさまがありましたと。たいそう貧乏で、そ じいさまとばあさまは、よい正月をむかえることができました。 の日その日をやっとくらしておりました。 「すいせんのラッパ」 春のまん中のお話です。池のそばのすいせんが、金色のラッパをブル・ブル・ブーとふい まだ、ねむっているかえるはいませんか? て、よい音が出るかどうか確かめていました。 「テウギのとんち話」 とんと昔、まだ学校なんてなかったころ、朝鮮のあちこちに、ソダンという、子どものた やがて先生は、コホンとせきばらいを一つすると、また、学問の続きを始めたと。 めの学問道場がありました。 「サーカスのライオン」 町外れの広場に、サーカスがやってきた。ライオンやとらもいれば、お化けやしきもある。 ライオンのじんざがどうして帰ってこなかったかをみんな知っていたので。 「ぼくはねこのバーニーが大好きだった」 ぼくの大好きなねこのバーニー、金曜日に死んじゃった。ぼく、とっても悲しかった。 「もう一つあるんだよ。バーニーは、土の中で、花をさかせる手伝いをしているんだ。ち っちゃなねこにしては、なかなかたいしたことなんだよ。」 「とっときのとっかえっこ」 バーソロミューおじいさんは、ネリーのおとなりさん。ネリーが赤ちゃんだったころ、毎 ネリーはにんじんをぽりぽりかじった。バーソロミューはハーモニカをふいた。その目に 日ネリーをカートに乗せて1ブロック先のプリングルさんの菜園まで散歩につれてってく なつかしいほほえみがもどってきたのが、ネリーには見えた。 れた。 「あ・し・あ・と」 あっという間に夏は行ってしまった。風のにおいがやさしい。ぼくは、せたけほどもある 「もういいかい」 「もういいよ」ふり返ると、夕焼けを背中に、やさしい山が、一つ、ふる 草をかき分けながら、「わいわい山に」にかけ登った。 さとに、たたずんでいた。 「ごんぎつね」 これは、私が小さいときに、村の茂平というおじいさんから聞いたお話です。 兵十は火縄銃をばたりと、取り落としました。青いけむりが、まだ、つつ口から細く出て いました。 「世界一美しいぼくの村」 アジアの真ん中にアフガニスタンという国があります。 「だいじょうぶ その年の冬、村は戦争ではかいされ、今はもうありません。 だいじょうぶ」 ぼくが前よりずっと赤ちゃんに近く、おじいちゃんが今よりずっと元気だったころ、ぼく だから、今度はぼくの番です。おじいちゃんの手をにぎり、何度でも何度でもくり返しま とおじいちゃんは毎日のように、お散歩を楽しんでいました。 す。「だいじょうぶ、だいじょうぶだよおじいしゃん。」 「ちかい」 ある朝早く、ヤミーナはおじいちゃんといっしょにはちみつを取りに出かけた。 「あたし、ハンターにならない」ヤミーナはそっと、自分自身にちかった。 「マザー・テレサ」 マザー・テレサがインドにやってきたのは1929年、18歳のときでした。 テレサの心は、今も人々の中に生きている。 ﹁作文の 書き方∼ 書く 管理マニュ アル﹂ ﹁作文苦手だな。 ﹂ ﹁何書いていいかわからないや﹂ と思っている人多いのではないでしょうか? 作文には書き方があります。今日はその極意を教えます。みんなは作文が苦手なのではなく、書き 方を知らないだけです。書くことがないのではなく書くべきことを知らないだけです。今日からみ んなは、原稿用紙何枚でも、ラクラク書くこと・楽しい作文を書くことができるようになります。 マニュアルその① ﹁ストーリー性をもたせる。 ﹂ ﹁結果を最後に書く。 ﹂ 新聞・ニュース と マンガ・映画・物語・小説 どちらが面白いですか?おそらく後者ではないでし ょうか?なぜかというと、ストーリー︵物語︶があるからです。新聞・ニュースは事実を﹁早く﹂ ﹁正確に﹂伝えるためのものなので、結果から書かれています。作文は逆です。最後まで読まない と結果がわからないからこそ、ハラハラドキドキしながら読むことができるのです。﹁名探偵コナ ン﹂だって犯人が先に紹介されてから話が始まったら、絶対につまらないでしょう。 ポイント ・ 作文は自分の経験した事を書くところです。自分の経験したことは、自 分しかわかりません。読む人はわからないと言う事です。省略しないで、 ありのままをありのままに書きましょう。これが ストーリーです。 ・ 最後まで読まないと、結果がわからない作文は面白い。 ・ 読む人は、ハラハラドキドキしながら読むことができます。 ︻悪い例︼ 今年の誕生日プレゼントはプーさんのぬいぐるみだった。 ︻良い例︼ 目の前には十二本のろうそくがのっかったケーキ。手にはかわいい包装 紙で包まれた誕生日プレゼント。今日は五月三日。私の誕生日だ。歌が終 わり、ろうそくをひと息で﹁ふうっ﹂と消した。﹁プレゼント開けていい わよ。﹂と親せきのおばさん。まちにまった瞬間。まずは丁寧に赤いリボ ンをはずす。かたくてなかなかほどけなかった。手が震える。店員さんき つくしめすぎ。やっととれた。次の敵はかわいいワニさんがたくさんいる 包装紙。セロテープをはがす。 ﹁ピリ。 ﹂それにしても今年のプレゼントは 大きい。いったいなんなのだろう。包装紙を一回めくった。まだ何も見え ない。もう一回めくった。まだワニの包装紙だ。三回目、めくった。﹁わ お。﹂つい声が出てしまった。この鼻は私の大好きなアレしかない。一気 に包装紙をはずすと、中から大きなかわいいかわいいぬいぐるみのプーさ んが笑顔で出てきた。私はプーさんを抱いて飛び上がっていた。 どうでしょう?悪い例では一行。良い例では十二行にもなりました。こ のようにストーリーをもたせ、結果を最後まで残しておくと、素晴らしい 作文をたくさん、しかもらくらく書けるようになっていきます。 マニュアルその② ﹁タイトルは入口。想像がふくらむようなタイトルを﹂ タイトルを読んで、作文の中身がすべてわかってしまってはつまらない。 また、タイトルがつまらないと、中身がいかにすばらしい内容でも、読ん でもらえないことがある。タイトルは中身と同じくらい重要だ。 ﹁8﹂ ﹁人生最大の危機﹂ ﹁3秒間の奇跡﹂ ﹁三度目の掃除機﹂ マニュアルその③ ﹁書き出しをセリフから始める。 ﹂ 書き 出しを会話から始めることで読 者を作文 の世界へ一気に連れてく ることができます。よけいな説明がないぶん、だらだらとした作文ではな く、切れ味するどいかっこいい作文になります。 ポイント ・ 会話のとちゅうのセリフがいい。 ・ 読む人がどういう状況の話なのか想像をふくらませます。 ︵例︶ ﹁ちょっとあんたそれどういうこと?﹂ ﹁いまだ 。いけ!﹂ ﹁今日は奈良時代の歴史について勉強します。 ﹂ ﹁おきなさあい。﹂ ﹁おじいちゃん、どうぞこの席に座って下さい。 ﹂ ﹁おまえ達、それでもくやしくないのか。﹂ ﹁あちらに見えるのが、日本一の山富士山です。 ﹂ ﹁昼休みジャングルジム鬼ごっこしよう。﹂ ﹁今日は私たちどこのそうじだっけ?﹂ ↓ み なさ ん も こ の 会 話 文 を 読 ん で 想 像 を ふく ら ま し た の で は 内 で し ょ う か?文頭に会話文をもってくることのよい点 はここにあります。 ︵物語、書き出しの工夫︶ 物語の書き出しは、 ﹁何だ?﹂ ﹁おもしろそう﹂と思ってもらいたいです ね。話し言葉やクライマックスから書き始めると、読む人は﹁何をしてい るところだろう﹂﹁この先どうなるのだろ﹂ととても興味を持ちます。作 文の書き始めに興味を持ってもらえれば、最後まで文を読んでもらえます。 こんな書き始めはどうでしょう。参考にしてください。 ・ 場 面 :誰もいない運動場。タケシの影だけがうつっていた :見わたすかぎりの青空を、浮かない顔で見上げていた アゲハチョウがいた。 :残雪は6時間目の国語がいつもの5倍くらい長く感じた。 ・ぐ ち : ﹁あーもう一回やるのかー﹂∼は思わず言ってしまった。 ・ 動 詞 :白い息がはずんでいる。手足は凍りそうに冷たい。 ・ セリフ : ﹁ちょっとあんたそれどういうこと?﹂∼はいった。 ﹁おじいちゃん、どうぞこの席に座って下さい。 ﹂ ・ もしも : ﹁もし私がお母さんだったら、何と言っただろう﹂ ・きっと :きっと死んでいたにちがいない。 ・ いばって : ﹁吾輩は猫である。名前はまだない。﹂ ・ つぶやき : ﹁どうせ、オイラなんか⋮﹂ ・ 歌うように :﹁うれしなったら、うれしいな∼♪﹂ マニュアルその④ ﹁一文を短く﹂ だらだらと続く文章は、何を言いたいのかわからない。一文が一つの 意味になるように 一文一義 、テンポよく書こう。 ( ) × 今日はぼくの誕生日だ。みんなが歌を歌ってくれたあと、お母さんがマ ッチでろうそくをつけてくれて、ぼくがろうそくをひと息で﹁ふうっ﹂ と消したら、 ﹁プレゼント開けていいわよ。﹂と親せきのおばさんが言っ たので、丁寧に赤いリボンをはずした。 ・・・ ← ○ 今日はぼくの誕生日。歌が終わり、ろうそくをひと息で﹁ふうっ﹂と消 した。 ﹁プレゼント開けていいわよ。 ﹂と親せきのおばさん。まちにまっ た瞬間。まずは丁寧に赤いリボンをはずす。・・・ マニュアルその⑤ ﹁最後の一文をかっこよく﹂ ポイント ・ 最後の一文をかっこいい表現にすることで、 作文全体がしまり ます。また、よいんを残したりすることもできます。ぜひ挑戦 ・ してみよう。 例えば、万里の長城を見て素晴らしかったという作文の場合。 ← ×ぜひともまた来たい。 ︵終わり︶ ◎ ぜひともまた来たい。最後にもう一度振り返って、ぼくは電車に乗り込 んだ。 ︵終わり︶ ・ ぼくは晴れわたった空を見上げた。 ・ 私はAさんの話を聞いて、国語でならった﹁朝のリレー﹂という詩を思 いだした。 ・ いつも通っている道が、とても大きく感じられた。 ・ 窓の外に目を向けると、ブナの木にきれいなちょうがとまっていた。 ・ いつもより、たくさんの汗をかいているような気がした。 ・ 今日決めた最後の三ポイントシュートは、ぼくのバスケット人生のスタ ートライン。 ・ うさぎさん、いつもより三倍くらいかわいく見えた。 ・ 給食がいつもよりおいしく感じた。 ・ 桜の花びらが、そよ風にさそわれて、ひらひらと散っていた。 ︵物語、ラストの工夫︶ 物 語 のラ ス ト で 困 っ た こ と はあ り ま せん か? 読ん だあ とに 余 韻︵ よ い ん︶が残るような終わり方を工夫したいですね。 問 :﹁わしの苦労は、いったい何だったのだ?﹂ 場 面 :あとには海鳴りの音だけが聞こえていた どこからともなく﹁ふるさと﹂が聞こえてきた。 質 問 :﹁どうぞ、誰か教えて下さい﹂ 疑 セリフ :﹁みんなぁ、どうもありがとう!﹂ ため息 :﹁あー、やってられないよ﹂ まとめ :﹁続きは皆さんが考えてください。﹂ 突然終わる : ひっくり返し :﹁というのは、全部ウソだよ。 ﹂ 気がつくと、そこは家のベットのうえだった。 マニュアルその⑥ ﹁短い時間の事実を時間の経過とともに、できるだ け細かく細かく書き、最後に少しだけ感情・気持 ちを書く。 ﹂ ﹁最後の感情・感想は人間の動作で表現する。 ﹂ ポイント ・ 様子の変化・動作の変化を時間の経過に合わせ細かく書いていく。 ︵↓プーさん の作文やほかの作文参照︶ ・ 感情・気持ち・感想を表すときは、楽しかった・面白かった・つらかっ た・こわかったなどの言葉はできるだけ使わない。 ・ ︵例︶ とても悲しかった。 ← 涙が止まらなかった。拳をにぎりしめ、歯をくいしばり、壁に何度も何 度も頭をぶつけて泣いた。 安心した。 ← ずっとこらえていた涙があふれ出した。 腹がたった。 ← 思いっきりドアを閉めた。 拳でドアを何度も たたいた。 うれしかった。 ← となりの友達と手を握りあって飛びはねた。 これらのマニュアルをふまえ、いくつかの作文を読んでみ よう。 自分の生活の中から作文の種をさがそう。 そして、世界に一つだけのみんなの作品を書いてみよう 。 ﹁十歳のサクラ﹂ 舟山 雄樹 作 ぼくはふつうだ。勉強もふつう。スポーツもふつう。とうちゃんだってふつうのサラリーマンで、だからぼくもふつうだ。 ふつうのぼくが、一度だけふつうじゃない体験をした。ふつうじゃないことは、ふつうのぼくにとって宝物。大切だからしまってお くべきものかもしれない。でも、彼もそろそろだれかと話したいと思っているだろうから聞いてほしい。できれば特別な時期にある君 あるモノ にあった。そのころぼくは小学五年生。六年生の卒業式まで十日という時期だっ に 聞 いて ほ し い 。 き っと 、 冬 の 桜 の 木 が 好 き に な る か ら 。 数 年 前 の 晴 れ た 日 の 放 課 後 、 ぼく は た。 ﹁アリが葉っぱはこぶの、見てたでしょ﹂ ふり向くと、そこには、まるい顔らしきモノがあった。﹁ヒッ﹂思わず声息をのむ。もう一度よくみてみる。ひょうきんな顔を中心 に、手と足がいたずらしたようについている。たとえるなら、ゆで卵に顔をかいて、つまようじを手足としてつけたモノ。そして、な は じ め て 会 っ た 気 が しな か っ た た ん に 親 し み や す い顔 な の だ 。 ぜ か 笑 顔 。 ﹁ こ 、こ んに ち は ﹂ 今 考 え る と ま ぬ け だ が 、 ぼ く は す ご く 変 な モノ に ふ つ う の あ い さ つ を し て い た 。 そ の 理 由を あ え て さ が すなら、 その日、ぼくたちは桜の木の下で話をした。といっても、はじめのうち、ぼくはぜんぜん話せなかった。緊張したからではなく、頭 の中が﹁?﹂でうめつくされ、それを処理するのに必死だったからだ。結局、この状態を解消する﹁総合かぜ薬﹂のような質問は見つ か ら な い 。だ か ら ふ つ う の 話 を し た 。 自 分 が い か に ふ つ う で あ る か と い う 話 。 学 校 の こ と 、 つ り に 行 っ た こ と な ど 。 そ の あ る モ ノ は と いえば、﹁へぇ﹂とか﹁ほぉ﹂と言いながら話を聞いて、少し話した。ひょうきんな顔さえ見なければ、友達とふつうに話しているの と か わ らな い 。 あ る モ ノ に つ いて わ か っ た こ と が あ っ た 。あ る モ ノ は 、︻ 四 十 年 ぶ り に 人 と 話 を し て いる と い う こ と ︼ だ 。 ぼく に 声 を かけ た の は ﹁アリみたいな役にたたないものをじっと見ていたから﹂だそうで、くちぐせのように﹁意味がないもの・役に立たないものを大切に す る お ま え は 偉 い ﹂と 言 って い た 。 その日から、ぼくたちは毎日話をした。ふつうの話だ。友達はみんな塾通いだし、たいした用事のないぼくだから、時間はある。 ﹁ な ぜ お ま え は 塾 に い か な い ん だ ﹂ そ ん な こ と も 聞 か れ た 。 ぼ く は 、 ﹁ 理 由 も 意 味 も な い ﹂ と 答 え たが 、 そ の 答 え を 彼 は え ら く 気 に 入 っていた。ぼくは六年生になってもプラモデルを作ったり、虫取りをしていたりする。それについても﹁意味のないことばっかりして いるのは、前に話したやつににてる﹂といいながら、すごくうれしそうだった。 ぼくも彼と話をするのが楽しかった。みため以外はぼくといっしょ。すごくふつうなんだ。でも、ひょうきんな彼が一度だけ悲しい 顔をしたことがある。﹁サクラは好きか﹂と聞かれ、ぼくは﹁きれいだから好き﹂と答えた。すると﹁冬のサクラは好きか﹂と。ぼく は﹁冬は木の見分けがつかない﹂と答えたんだけど、彼の顔が何となくさみしげだった。﹁冬にじっとがまんして力をためているか ら、春にぱっときれいに咲くんだ﹂といったことを覚えている。今思うと、それが彼に会った最後だった。そして、ぼくの特別な時期 が 終わ っ た。 次 の 日 、 大 好 き だ っ た ば ー ち ゃ ん が し んだ 。 歳 を 考え た ら 覚 悟 は し て い な け れ ば な ら な か っ た のだ ろ う が 、 想 像 し た こ と が な か っ た。数日間、ショックで何も考えられなくなった。 ばーちゃんのことが一通りすんだ日、彼を思い出した。思い出すとどうじに、くつをはいていた。ばーちゃんのことを報告しよう。 葉 が す っ か り 落 ち た サ ク ラ の 木 の 下 。 い つ も の 場 所 に 彼は い な か っ た 。 そ の 時 は ﹁ 明 日 ま た く れ ば 会 え る ﹂ と 思 っ て 帰 っ た 。 し か し 、 そ の 後 、 彼と 会 う こ と は で き な か っ た 。 ぼ く の 生 活 は ふ つ う の 日 々 に も ど っ た 。 一年がたつというころ、赤川先生をたずねた。ちょうど五十歳の先生で、一年生担当の先生だ。そのクラスではアミをもって虫取り 妖怪 先生 と呼ばれている。妖怪や不思議な話が好きで、その筋の話ならいろいろな話を知っているら ばかりしている。﹁勉強で虫取りができるなんてすてきな先生だ。﹂一度も話したことのない赤川先生に対するぼくの評価だ。さらに 先生は、ぼくらのあいだで しい。しかも、一度妖怪に会ったことがあるといううわさまで流れている。訪ねた理由は、あるモノ︵彼︶の話を聞きたかったから。 話すと先生は、﹁それは、サクラ小僧だな。妖怪だ﹂とあっさり言った。何の悪さをするわけでもなく、ただサクラの咲く季節にサ クラのそばに出るという。先生によると、人間はある特別な時期だけ妖怪をみることができるらしい。さらに先生は続けた。﹁妖怪は 人間が作ったモノ。だから、人間が妖怪のことを考えれば存在し、忘れれば存在しない。ふつうの妖怪は意味とセットになっている。 サ ク ラ 小 僧 は ﹁ ∼ をす る 妖 怪 ﹂ み た い に 意 味が セ ッ ト さ れ る こ と な く 生 み 出 さ れ て し ま っ た 。 だ か ら 、 出 番 が 少 な い 。 忘 れ ら れ る 。 ﹂ ぼ く は 、 彼 に 会 え な く な っ た 理 由も 彼 が 無 意 味 な こ と を 好 ん だ 理 由も わ か っ た 。 ぼくは先生にすごく感謝している。ふつうのぼくに、ふつうじゃない時間をくれたから。だから、ぼくも彼のことを想う。 ﹁ そ ん な こ と に ど んな 意 味 が あ る の か っ て ? ﹂ 意味なんていらないよ。意味がないことが好きなんだから。 サクラの木の下で、先生の最後の言葉を思い出した。 ﹁ あ い つは 元 気だ っ たか ﹂ ﹁変身﹂ ﹁うっ﹂何やら身体が重い。 舟山 雄樹 季節は秋。秋は私にとって﹁読書の秋﹂でも﹁スポーツの秋﹂でもなく、﹁食欲の秋﹂につきる。昨 日も、夕飯をふつうに食べた上で、季節限定のジュースを3本、カップラーメン︵1・5倍のやつ︶、 友達が作って持ってきてくれたシフォンケーキを食べた。そして、ただ寝た。 こんな感じなので、身体が重いのは無理もないのかも知れないが、これは、何も秋に限ったことでは ない。秋は﹁食欲の秋﹂にかこつけて言い訳しやすいというだけで、私は一年中食べている。 今日の身体の重さは、じんじょうではないのだ。あえてたとえるとしたら、汗だくのお相撲さんに抱 きつかれている感じ。身体のほとんどの部分がおなかになった感じ。 そして、私はベットの中で少しずつ覚醒した。すると、異変は身体が重いというあいまいなものでな いことがわかってきた。まず、立てない。この世のあらゆる悪魔が立つことを必死で押さえ込んでいる としか思えない違和感。そして、やたら、においがする。一発で昨日食べたものをはっきりと思い出し た。そして、なにやら目に見えるものがいつもより多い。視界がやたらめったら広いのだ。頭の後ろに ある枕にプリントされたおじゃる丸まで見えるではないか。﹁あい変らずかわいいね﹂って言ってる場 合ではない。よく見ると肌の色が白い。白いぞ。肌の色くらいはまあよしとしよう。指のつめが2本し かない。これは、まずいでしょ、さすがに。冷や汗がたらり。﹁ゴクリ﹂とのどが鳴る。腕がやたら短 い。何かの間違いだというあせりを抑えながら、足を見る。なんだね、チミは?昨日までの四分の一く らいしかないではないか!﹁責任者を呼んで来い!﹂と言ってはみたものの、自分の身体。自分が責任 者であることに気がついて落ち着く。 二十八年も生きていれば、一日くらいこういう日があるのかも知れない。実はみんなあるけど、言わ ないだけなのだ。そう無理やり前向きに解釈して重い身体を起こす。おそるおそる鏡の前に立つ。知っ ている。見たことある。なあんだ、ブタじゃないか。どおりでいつもとちがうわけだ。かくして私は人 間からブタになった。 ブタになってしまった。しまったというと失敗した感じが出てしまう。私はブタになった。この方が 前向きで私らしい。自分の中でブタになった事実を消化すると、別の疑問がわいてきた。この部屋にい る間は何とかなるが、ママにあったらなんて言われるだろうか。この事実が広まったら、妹はいじめら れるのではないか。何より、家族が私であるとわかってくれるのだろうか・・・。気がつかなかったが、 最悪な状態ではある。役場の人が来て、麻酔銃で撃たれ、養豚場に送られ、一週間後には、戻ってくる ことはできたが、皿の上なんてことだってないわけでもないだろう。くっそう!ようやく自分のおかれ ている状況が把握できてきた。こんな形でブタの気持ちがわかるなんて。何とも思わず食べていた自分 がうらめしい。 とその時﹁おはよう﹂ママの声だ。やばいと思い。ベットに急いで退却。すると、﹁早く起きなさー い﹂声を出しても良いものだろうか。 ﹁ほら、早くー﹂という声と同時に扉が開けられた。 ﹁だいじょう ぶ?﹂ ﹁ああ、うーん﹂ ﹁ひどい声ねどうしたの﹂ ﹁ああ、うう﹂ ﹁わかったわ、もう少し寝てなさい。布 団かけすぎじゃないの﹂ ﹁ああ、うーん﹂ばたん。危なかった。やっと出ていた。 今度はトイレに行きたくなった。扉を開けようとしたら、あけられない。つめがツルツルすべる。両 手でもだめだ。だんだん危なくなってきた。やばい。とそのときすっとあいた。押すだけでよかったの だ。廊下に出て、ダッシュ!ああ、やばい。 キュ。ツル。つめで滑った。その先の階段へ真っ逆さま。 ﹁キャー﹂ 朝日が差し込んできた。身体が少し重い。でも、起きられる。こんな夢はもう見たくない。
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