コンクリート構造物の環境劣化(2)- 鉄筋の腐食速度(1)

腐食センターニュース
No. 040
2006 年 12 月 1 日
-コンクリート構造物の環境劣化(2)- 鉄筋の腐食速度(1)
コンクリート構造物の中では,鉄筋から溶出した鉄が形成する腐食生成物が周囲のセメントペース
トとの間に蓄積してゆく.これによって形成される膨張応力により,鉄筋の周囲のセメントペーストに
割れを誘起する.従って,コンクリート構造物の寿命に関連して評価すべき物理量は,割れを誘起す
る限界腐食生成物量(平均的な腐食量ではなく,割れを発生する位置における腐食量)とこの腐食
生成物の形成速度(鉄筋の腐食速度)である.これにかかわる鉄筋の腐食形態は,セメントペースト
の中性化による全面腐食と Cl-イオンによる孔食である. 「鉄筋の腐食速度(1)」(本号)は,コンクリー
ト構造物中における鉄筋の全面腐食(general corrosion)の腐食速度について,コンクリート環境にお
けるFeの不動態―活性態転移とコンクリートのかぶり厚に割れを発生する限界腐食量の評価法とと
もに,また,「鉄筋の腐食速度(2)」(次号)において,Cl- イオンに起因する局部腐食(孔食,pitting
corrosion)について,Cl-イオンのコンクリート内部への拡散と孔食発生限界量とともに,それぞれ述
べることとする.
Q:鉄筋の全面腐食速度
コンクリート構造物中の鉄筋の腐食速度は鉄筋表面に水膜が形成されている場合は O2 拡散限界
電流に相当する.図 11)に表示されている通り Cl-イオンが存在せず,かつ中性化していない正常な
コンクリート構造物中の鉄筋の腐食速度は最大 0.2 (μm/year) 程度であるが,この値は O2 拡散限界
電流に相当する活性溶解量とも不動態保持電流としての溶出量ともいずれでも解釈が可能である
(Short Note 1).中性化したコンクリートの場合においても腐食速度は O2 拡散限界電流(カソード
反応電流)に対応する.従って,
中性化によって O2 拡散量が
増加しないと鉄筋の腐食量
は増加しないはずである.
しかし、中性化はモルタル
の緊密度を増加し,O2 の透
過量を減少させるので,図 1
の中性化(Carbonated)した
コンクリート中の腐食速度の
増加は O2 拡散限界電流の
増加を意味しない.
図1において注目すべき
は,中性化後の腐食速度が
高湿潤状態で高いことである.
この結果は,大気環境にお
図1 コンクリート構造物の状態に対応した腐食速度の概念図
かれた Fe の腐食速度と水膜
厚さの関係と同様で,鉄筋表面の水膜厚さの増加が腐食増加に対応している.ところで,コンクリート
の中性化速度と O2 拡散定数は表面が湿潤状態では乾燥状態に比べて極めて小さく(Short Note
1),従って,図 1 の中性化後の大きな腐食速度は定常的ではないことに留意すべきである.中性化
の進行速度を総括すれば,通常,十分なかぶり厚が確保されている場合,後に述べるように中性化
に起因する鉄筋の腐食がコンクリート構造物の劣化(壁面の剥離等)を誘導することはない(このこと
1
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2006 年 12 月 1 日
が前号で述べた中性化によるコンクリート構造物の劣化速度の地域差に関連している).
(骨材に porous lime stone を使用し,かぶり厚が薄い場合には短期間で中性化による鉄筋の腐食発
生を誘導した例はある 2)).
Q:コンクリートのかぶり厚に割れを発生する限界腐食量
鉄筋の腐食によりコンクリート構造物の機能低下(割れの発生によるコンクリートの剥離や鉄筋の
破断による崩壊)が発生する機構をモデル化して限界腐食量や寿命を定量的に評価する方法は少
なく,評価法として提起されているモデルに以下の二つの方法がある.
第 1 の方法 3)は,環境に対応した鉄筋の腐食速度とコンクリートに剥離,割れが発生する限界腐食
量を測定データに基づいて統計的に定式化し,両式を等置して限界時間を算出する方法である.
第 2 の方法 4)は,セメントペーストの弾塑性力学的性質を用いて,鉄筋の腐食生成物により鉄筋周囲
のセメントペーストに形成される引張応力により割れを形成するとするモデルに基づいている.以下
では汎用性の高い第 2 のモデルの定式化とそのモデルを用いた計算結果について述べる.
鉄筋の腐食は,先に述べた細孔内の溶液により発生する.鉄筋の腐食生成物を Fe(OH)2 とする.
鉄筋が,腐食して(または不動態保持電流として)溶出する Fe2+イオンまたは HFeO2-は細孔内溶液
の平衡溶解度に短時間で到達し,Fe(OH)2 として鉄筋表面に析出すると推定される.腐食生成物の
形成により鉄筋が体積膨張(鉄筋直径の増加:ΔD)(Short Note 3)して周囲に引張応力(f)を誘
起し,その結果,かぶり厚に割れを発生すると仮定すると下式に示す定式化ができる 4).
上式を用いて求めたかぶり厚に割れを発生する腐食生成物の限界厚:ΔD は ΔD=32.8(μm)である.
これには以下のような数値を用いた:
ΔD (mm) : 腐食生成物の生成による鉄筋直径の実効的増加, f : コンクリートの引張り強さ=3.9
(N/mm2), L : かぶり厚=30 (mm), D : 鉄筋の直径=20 (mm), δpp: コンクリートの実効弾性係数
=2.8x10-3[1/(N/mm3)], ν : コンクリートの Poisson 比 =0.18, φcr : コンクリートのクリープ定数 =2,
E : モルタルの弾性定数 =25200(N/mm2), Eeff : モルタルのみかけの弾性定数 =8400 (N/mm2).
次に,上記の ΔD に腐食生成物厚さが到達するまでの経過時間として,コンクリート構造物の寿命
を推定する.ここで,ttotal :コンクリートに割れを誘起する誘導時間, td :かぶり厚の中性化,または
(Cl-イオンが限界量に達して)鉄筋の孔食発生に要する時間, tΔD:かぶり厚に割れを誘起する鉄筋
の全面腐食または孔食による限界腐食量生成に要する時間, とすると,
ttotal = td + t⊿D
と表せる.測定された腐食電流から t⊿Dを求める方法は以下のように定式化できる.
ΔD:腐食生成物の形成による鉄筋直径の増加(cm), Q:Fe の腐食量に対応する電荷量(C),nFe:
Fe 溶出反応の電荷数, F:Faraday 定数(C/mol), ΔV:腐食生成物の形成による体積増加
(cm3/mol), S:腐食面積(cm2), icorr:腐食電流(A), t⊿D:icorr の経過時間(s), とすると,
以上に述べたコンクリート構造物の寿命評価のモデルに基づいて,かぶり厚:3cm の場合の寿命を
求めてみる.中性化していないコンクリートの場合,不動態保持電流として溶出する腐食速度は最大
0. 2 (μm/y)である.腐食生成物を Fe(OH)2 とすると,表 1 のデータからモル体積増加比 α:2.7 である
から,その成長速度は 0. 54 (μm/y)である.ΔD:32.8 (μm)であるから,かぶり厚に割れが発生するま
での経過時間は 60 年である.また,コンクリートの中性化により鉄筋が全面腐食する場合は,中性化
の平均的進行速度:1(mm/y)を採用すると,td は 30 年である.TΔD は O2 拡散電流密度に依存する.
ΔD : 32.8 (μm)に対応する電荷量:Q は 32.7(C)で,O2 拡散限界電流密度を最大値:1 (μA/cm2)
2
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(Short Note 1)とすると tΔD は 1 年で,中性化後の寿命は短い結果となる.実際には O2 拡散限界
電流密度はその建造物の存在する環境の気象条件(濡れ/乾燥の継続期間)に依存する(Short
Note1)ので,平均値として上記より小さい値になる.そのことを考慮して算出することが必要である.
Short Note 1:コンクリート環境における不動態-活性態転移
Fe の不動態―活性態転移は平衡論的に決定されるのではなく,アノード電流(密度)とカソード電
流(密度)の動的な平衡で成立する.図 2 はアノード電流(密度)とカソード電流(密度)の動的平衡を
示す模式図である.
コンクリート内部におけるカソード反応は O2 還元反応でFeの活性域に対応する電位域では O2 の
拡散が還元反応の律速になり,O2 拡散量に対応する大きさの拡散限界電流(図 2 の電位軸と平行な
カソード電流)が観測される.O2 拡散量は細孔における細孔溶液の飽和度に対応しており,飽和度
はコンクリート構造物の湿潤状態または外気の湿度(相対湿度:RH)に依存し,湿度の上昇に対して
飽和度(細孔中の溶液量)は増加し,その結果,みかけの O2 拡散量は減少する.コンクリート中のO2
拡散定数は湿度の影響が最も大きく,0.01-10x10-4(cm2/s)の範囲にある 5)6)7).最小の場合はコンクリ
ートの表面が湿潤状態,最大は乾燥状態である.
図 2 において活性態域(電位 E に対応して電流 log i が直線的に増加している電位域)から不動
態域(電位軸に対して電流 log i が平行で,電流が一定である電位域)に遷移する限界の電流 ip(不
図 2 アノードーカソード分極曲線の模式図
動態化電流)が, (i) O2 拡散限界電流より大きい場合はアノード電流とカソード電流は活性態電位
域でバランスしFeは活性態溶解し(腐食電位は活性態域にあり全面腐食する),この場合の腐食速
度は O2 拡散限界電流に相当する.一方,(ii) O2 拡散限界電流が ip より大きい場合は,両電流は不
動態域でバランスしFeは不動態化する(腐食電位が不動態域にある).
ip は図 3 に示すように pH 依存性がある(Short Note 2).O2 拡散限界電流に等しくなる ip に対応
する環境の pH が,Fe が不動態から活性態に転移する限界の pH (depassivation pH,pHd) である.
O2 拡散限界電流は表面が湿潤状態にある場合はコンクリートのかぶり厚等の違いに対応して 0.020. 2 (μA/cm2),外気の相対湿度(RH)が 70%付近では湿潤状態の 100-1000 倍になる.従って,図 3
の ip の pH 依存性と比較すると,正常なコンクリートの細孔溶液 (pore water) の pH の範囲:12.5-13.5
では(この範囲では図 3 において Leckie のデータを外挿すると ip はほぼ 0. 5 (μA/cm2)である),O2
3
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拡散限界電流密度の変動に対応して鉄筋は不動態と活性態の間を変動していることになる.ところ
で,同じ pH 範囲にあるコンクリート中の鉄筋の不動態保持電流密度も 0.01-0.1 (μA/cm2)である 9)10)11)
から,このような環境では活性態での腐食電流と不動態保持電流には大差がない(図 3 において
Pourbaix のデータを上記の pH 範囲に適用すれば,活性態としての ip が存在しないからこのような議
論が意味を持たなくなる).
コンクリート構造物の表面からコンクリート中を拡散する O2 が全てカソード反応に消費され,かつ,
コンクリート中(かぶり厚)の拡散過程が反応を律速していると仮定する.RH:60-80%における O2 拡
散定数:2-5x10-4(cm2/s)を用い,かぶり厚を 3cm とするとカソード電流密度は 8-20 (μA/cm2) となる.こ
の値が,図 2(Leckie のデータ)の ip と等しくなる pHd は 10-11 である.この場合,かぶり厚が大きくな
れば pHd はより大きい pH 値になる.この pHd はセメントペーストが中性化した場合の細孔溶液の平衡
pH:8.5 ではないことに注意する.
なお,O2 拡散限界電流密度は,(1)鉄筋表面での O2 還元反応において電極としての鉄筋表面の
水膜における拡散層内の O2 拡散が反応を律速する,(2) O2 拡散定数および拡散量にコンクリート構
造物の水/セメント比およびかぶり厚の影響が大きい,ので実際には上記より小さい値になる.
Short Note 2:不動態化電流 ip のpH依存性
図 3 に示すように ip は環境の pH に対応して変化する(図 3 において Leckie の原データは pH:11
までであり,pH:12 まで外挿した).Pourbaix12)と Leckie13)のデータ(log ip)はともに pH 値の増加に対
して直線的に低下している.しかし,Pourbaix のデータで pH がほぼ>12.5 である範囲では,logip は
pH 値の増加に対応して増加する.Log ip の pH 依存性の変化は前号の 「Short Note 2」 で述べた
アノード反応の変化に対応している.
pH<12 の環境では(1)式に示す Fe の溶出反応であるが,
Fe → Fe2+ + 2e(1)
pH>12 の環境では,以下のように不動態皮膜が溶解する.
(2)
Fe + 2H2O → Fe(OH)2 + 2H+ + 2e+
(3)
Fe(OH)2 → HFeO2 + H
0
:Leckie
log ip(ip : A/cm2)
-1
:Pourbaix
-2
-3
-4
-5
-6
-7
0
2
4
6
8
10
12
14
pH
図3 不動態化電流と環境溶液の関係.文献(12)および文献(13)から作図.
鉄筋のおかれている環境の pH はコンクリートの中性化の進行とともに低下するので,中性化の進行
とともに ip は増加する.また,Pourbaix のデータで pH>12.5 である環境では,分極曲線上で ip は観測
されなくなり(図 2 において,不動態保持電流と ip が等しくなる),従って,この pH 領域では不動態と
4
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活性態の区別は存在しないことになる.
Short Note 3:Feの腐食生成物形成による体積増加
Fe が腐食し,腐食生成物に変化すると相対的に体積は増加する.ρ:Fe または腐食生成物の密度
(g/cm3 ),M:Fe または腐食生成物のモル当量(g/mol),V:Fe または腐食生成物のモル体積
(cm3/mol),ΔV:Fe が腐食生成物を生成したことによるモル体積増加(cm3/mol),α:モル体積増加
比とすると,
ΔV = V(腐食生成物) - V(Fe), α = ΔV/V(Fe)
である.腐食生成物の種類に対応するそれぞれの値を表 1 に示す.
表1 鉄筋腐食生成物の対鉄筋体積増加率
Fe
Fe(OH)2
Fe(OH)3
FeO(OH)
ρ
7.87
3.4
3.12
4.26
M
55.85
89.85
106.85
88.85
V
ΔV
α
7.097
26.426
34.247
20.857
19.33
27.15
13.76
2.7
3.8
1.9
文献
1. L. Bertolini, B. Elsener, P. Pedeferri, and R. Polder:“Corrosion of Steel in Concrete“, Wiley-VCH,
(2004), p.74.
2. E.I. Moreno, R.G. Soris-Carcano, and L.R. Lopez-Salazar: Materials Performance, May (2006),
p. 56.
3. 小林一輔編:“鉄筋腐食の診断”,森北出版,(1993).
4. Z.P. Bazant: J. Structural Division (ASCE), ST6 (1979), p.1137 および p.1155.
5. K. Kobayashi and K. Shuttoh: Cement and Concrete Research, 21(1991), p. 273.
6. A. Bentur, S. Diamond and N.S. Berke: “Steel Corrosion in Concrete”, Chapman & Hall, (1997),
p. 41.
7. 文献 1, p. 42.
8. 文献 1, p. 114.
9. A.M. Dunster, D.J. Bigland, K. Hollinshead, and N.J. Crammond : “Corrosion of Reinforcement
in Concrete Construction”, (ed. C.L. Page, P.B. Bamforth, and J.W. Figg), The Royal Society
of Chemistry, p. 191, (1996).
10. 腐食防食協会編:“材料環境学入門”,腐食防食協会,p. 269,(1993).
11. 文献 1, p. 113.
12. M. Pourbaix: ”Atlas of Electrochemical Equilibrium in Aqueous Solution“, NACE International
/Cebelcor, p. 315, (1974).
13. H.P. Leckie: Corrosion, 24(1968), p. 70.
(小川洋之/腐食センター)
5
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Short Lecture
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異種金属接触腐食における面積比の影響
同面積(1cm2)の炭素鋼(CS)とステンレス鋼(SS)と
が同一断面積で長さ(距離)d の水溶液(抵抗率 ρs)を挟
んで対向するというモデルを図 1 に示した.
このモデルにおいて,ステンレス鋼上のカソード反応速
度を M 倍する場合の短絡電流密度 i と ρsd との関係を求め
た結果を図 2 に示す.
M=1 は両金属の面積比 Sss/Scs=1 に相当し,当センターニ
図 1. 対向モデル 1)
ュース No.036(2005 年 12 月)で扱い済みである.
i = iA1 – iC1 ,ここに iA1:炭素鋼の腐食速度,iC1:炭素鋼上の溶存酸素還元速度,または単
独時の炭素鋼の腐食速度,は次式:
,ここに i*=i(d=0), BC +BA = 0. 384, k = 0. 5∼1.0
で表され,M = 100, 10, 1, 0. 1, および 0.01 のとき,それぞれ i*=1.44E-3, 1.76E-4, 2.09E-5,
2.29E-6, および 2.33E-7 Acm-2 である.このような M の増大にともなう i*の増大は低 ρsd 域
に現われ,i =10-6 Acm-2(加速分 10%)
,i =10-7 Acm-2(加速分 1%)という影響限界(ここ
まで塗装すればよい,センターニュース No.036)に相当する ρsd 値への,M の影響はほとん
どないことがわかる.この M の増大は流速の増大によるカソード反応速度の増大とも考え
ることができよう.
1)(社)腐食防食協会編:金属の腐食・防食 Q&A
6
電気化学入門編,p.143,丸善(2002).
No. 040
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2006 年 12 月 1 日
表 1. 計算結果(M=100)
欄
名称
領域
記号
1
2
3
4
電流密度
i
カソード電位
アノード電位
EC-EA
EC
EA
V2-1
-2
Acm
単位
Vvs.SHE
5
6
7
8
V2-1/ i
BC+BA
V
Vdecade
-1
II
II
II
1.44 E-3
1.2 E-3
1.0 E-3
-0.271
-0.207
-0.143
-0.271
-0.277
-0.284
0.000
0.070
0.141
(0.384)
0.384
0.387
II
II/I
I
I
8.0 E-4
5.58 E-4
3.0 E-4
1.0 E-4
-0.065
+0.060
+0.079
+0.113
-0.291
-0.303
-0.324
-0.359
0.226
0.363
0.403
0.472
I
1.0 E-5
0.184
-0.416
I
1.0 E-6
0.255
I
1.0 E-7
I
ρsd
ρsLw
2
Ωcm
k
2
Ωcm
−
0
2.67 E2
5.83E1 3.20 E2
1.41 E2 3.84 E2
0.915
0.832
0.384
0.383
0.064
0.063
2.82 E2
6.50 E2
1.34 E3
4.72 E3
4.80 E2
6.88 E2
1.28 E3
3.84 E3
0.756
0.648
0.756
0.757
0.600
0.059
6.0 E4
3.84 E4
0.635
-0.437
0.692
0.052
6.92 E5 3.84 E5
0.554
0.326
-0.440
0.766
0.047
7.66 E6 3.84 E6
0.501
1.0 E-8
0.397
-0.440
0.837
0.043
8.37 E7 3.84 E7
0.459
1
2
3
4
電流密度
i
カソード電位
アノード電位
EC-EA
EC
EA
V2-1
表 1. 計算結果(M=10)
欄
名称
領域
記号
-2
Acm
単位
Vvs.SHE
5
6
7
8
V2-1/ i
BC+BA
V
Vdecade
-1
ρsd
ρsLw
2
k
2
Ωcm
Ωcm
−
II
II
II
II
1.759 E-4
1.5 E-4
1.2 E-4
1.0 E-4
-0.341
-0.285
-0.207
-0.143
-0.341
-0.346
-0.353
-0.359
0.000
0.061
0.146
0.216
(0.384)
0.383
0.382
0.382
0
4.07 E2
1.22 E3
2.16 E3
2.18 E3
2.56 E3
3.20 E3
3.84 E3
0.926
0.833
0.767
II
II/I
I
I
8.0 E-5
5.58 E-5
5.0 E-5
1.0 E-5
-0.065
+0.060
+0.063
+0.113
-0.365
-0.376
-0.379
-0.416
0.300
0.436
0.442
0.529
0.381
0.380
0.055
0.054
3.75 E3
7.81 E3
8.84 E3
5.29 E4
4.80 E3
6.88 E3
7.68 E3
3.84 E4
0.698
0.602
0.622
0.685
I
1.0 E-6
0.184
-0.437
0.621
0.046
6.21 E5 3.84 E5
0.615
I
1.0 E-7
0.255
-0.440
0.695
0.041
6.95 E6 3.84 E6
0.552
I
1.0 E-8
0.326
-0.440
0.766
0.038
7.66 E7 3.84 E7
0.501
7
No. 040
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2006 年 12 月 1 日
表 1. 計算結果(M=0.1)
欄
名称
領域
記号
単位
1
2
3
4
電流密度
i
Acm-2
カソード電位
アノード電位
EC-EA
EC
EA
V2-1
V
BC+BA
Vdecade-1
Ωcm
Ωcm
−
0
2.40 E4
1.00 E5
2.94 E5
1.68 E5
1.92 E5
2.56 E5
3.84 E5
1.013
0.883
0.736
Vvs.SHE
5
6
7
8
V2-1/ i
ρsd
ρsLw
2
k
2
II
II
II
II
2.29 E-6
2.0 E-6
1.5 E-6
1.0 E-6
-0.433
-0.386
-0.285
-0.143
-0.433
-0.434
-0.435
-0.437
0.000
0.048
0.150
0.294
(0.384)
0.354
0.354
0.355
II/I
I
5.58 E-7
5.0 E-7
0.060
0.063
-0.438
-0.438
0.498
0.501
0.353
0.027
8.92 E5 6.88 E5
1.00 E6 7.68 E5
0.583
0.600
I
1.0 E-7
0.113
-0.440
0.553
0.032
5.53 E6 3.84 E6
0.664
I
1.0 E-8
0.184
-0.440
0.624
0.031
6.24 E7 3.84 E7
0.613
表 1. 計算結果(M=0.01)
欄
名称
領域
記号
1
2
3
4
電流密度
i
カソード電位
アノード電位
EC-EA
EC
EA
V2-1
-2
Acm
単位
Vvs.SHE
5
6
7
8
V2-1/ i
BC+BA
V
Vdecade
-1
ρsd
ρsLw
2
k
2
Ωcm
Ωcm
−
II
II
II
II
2.33 E-7
2.0 E-7
1.5 E-7
1.0 E-7
-0.439
-0.386
-0.285
-0.143
-0.439
-0.439
-0.440
-0.440
0.000
0.053
0.155
0.297
0.347
0.352
0.351
0
2.65 E5
1.03 E6
2.97 E6
1.65 E6
1.92 E6
2.56 E6
3.84 E6
1.026
0.885
0.738
II/I
5.58 E-8
0.060
-0.440
0.500
0.350
8.96 E6 6.88 E6
0.584
I
2.0 E-8
0.092
-0.440
0.532
0.031
2.66 E7 1.92 E7
0.660
I
1.0 E-8
0.113
-0.440
0.553
0.031
5.53 E7 3.84 E7
0.664
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腐食センターニュース
No. 040
2006 年 12 月 1 日
アノード-カソード間電位差による推定
Q:上記 SL の計算結果を,カソ
ード(ステンレス鋼)とアノー
ド(炭素鋼)との電位差 V2-1 に
注目して,ρsd・M との関係を図 1
に表した.
図中にプロットした A,B 点
は,ρs=1.43E4(Ωcm)の水溶液中
に浸漬されたステンレス鋼
(SUS304)/炭素鋼(SM400B)
平板の突合せ溶接線からの距離
d で測られた V2-1 である 1).
この結果を計算に用いた対向
モデルによって解釈せよ.
1)松岡和巳,ほか:第 42 回腐
食防食討論会講演集,p.15(1995).
名称
単位
A
B
A: 横軸に ρsd,縦軸にM,を
目盛った図中に,V2-1 (V)を記入
したものを図 2,短絡電流密度
i (Acm-2)を記入したものを図 3,
に示す.両図から M と i の値が
下表のように推定できる.
M
i (Acm-2)
A
∼1
5E-6
B
0.3
∼1E-6
A は M ∼1 と両鋼の面積比がほ
ぼ 1 であり,ρsd が小さいため i
は大きい.B では ρsd の増大に M
の低下(ステンレス鋼面積比の
低下,あるいは同鋼上のカソー
ド反応速度の低下)が加わって,
i もより低下している.
9
V2-1
V
0.40
0.48
d
cm
5
20
ρs d
Ωcm
7.2E4
2.9E5
腐食センターニュース
トピックス
No. 040
2006 年 12 月 1 日
戦艦アリゾナの腐食速度は?
戦艦アリゾナといえば 1941 年 12 月 8 日(日本時間)ハワイ真珠湾において日
本軍によって撃沈され,太平洋戦争の火蓋を切ることになった我々にも因縁深い戦
艦である.以後 65 年余にわたってその場所に横たわっており,戦艦アリゾナをま
たぐようにアリゾナ記念館が作られ,保存されている.このたび保存会とネブラス
カ−リンカーン大で船体の健全性を調査するためにクーポンが取られ,その分析結
果,考察結果が MP に 2 号にわたって紹介されている 1,2).
解析の結果,船体鋼板の腐食速度は0.03∼0.08mm/yに低下しているという1).表
面に付着物がない鋼では海水中で0.18∼0.20mm/yの腐食速度に達することがある
が,これはその1/3の小さな速度である.この原因は海洋性生物付着物に覆われ,酸
素拡散が抑制されていることにある.X線回折,SEM観察,電位測定等で詳細に分
析した結果,aragonite (CaCO3),siderite (FeCO3),magnetite (Fe3O4) が3層をなす硬い
付着物で覆われている2).17箇所の試料の分析から,このような凝結物で覆われた
場合の腐食速度の推算も行っている.凝結物係数を定義し,その係数は温度,流速,
有機物量,pH,塩濃度,溶存酸素濃度が異なれば係数も異なってくるとし,普遍的
な式を提出している.
一方,NACE の春の大会”Corrosion 2006”では歓迎パーティの前に,探検隊メン
バーの J. MacInnis が沈船タイタニック号の探検の模様をビデオ映像付きで紹介す
る講演を行った.海底 3,650m の深海に沈んだタイタニック号は微生物腐食のため,
かなりの速度で腐食し,やがては消滅する見込みとされる(この講演は厳密な科学
的な報告ではなく,微生物腐食のメカニズムもはっきりしなかった).これに比較
して浅海に横たわる戦艦アリゾナは生物付着に始まり,強固な凝結被覆で保護さ
れ,かなりの寿命が期待される.沈船の運命は沈んでからも数奇である.環境の違
いにより腐食速度は異なる.鉄の腐食が一番むずかしいといわれるのももっともで
ある.
1) D.L. Johnson, B.M. Wilson, J.D. Carr, M. A. Russell, L. E. Murphy, D.L. Conlin,
MP, Vol. 45, No. 10, p.40 (2006).
2) ibid., MP, Vol. 45, No. 11, p.54 (2006).
No. 040
目次
コンクリート構造物の環境劣化(2)
−鉄筋の腐食速度(1)
異種金属接触腐食における面積比の影響
アノード−カソード間電位差による推定
戦艦アリゾナの腐食速度は?
2006年12月1日
発行者: (社)腐食防食協会 腐食センター
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6 電話: 03-3815-1302
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9 email: [email protected]
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