資料5 小型船導入検討協議について 1. 小型船導入検討の目的 定期航路事業の改善を目指し、平成 23 年度より佐田浜港を主基地として荷物取扱 の集約や 5 隻体制による運航を実施しているが、事業をとりまく状況は今後も厳し く、離島人口の減少及び高齢化による旅客収入の減収や、老朽化した船舶の修繕費の 増加が見込まれることから、旅客収入の確保に繋がる航路の魅力づくりや経営にかか る経費の削減が求められている。 そのため、老朽化した船舶の代替建造を含めた小型かつ高速の船舶の導入をするこ とで、今後の運航経費(船員費、燃料費、修繕料など)の削減とダイヤの維持・改善 を図るため、課内で検討協議を進めてきた。 2. 小型船導入の条件 (1)本土及び離島桟橋での係船が可能で安全に旅客の乗降ができ、利用者の利便向上のた めバリアフリー対応の船体とすること。 (2)航路全体の便数は現状を維持すること。 (3)小型船は、定員数や荷物輸送量に適した航路や時間に投入すること。 (4)船員法の定める船員労働時間を遵守したダイヤとする。 (5)小型船を運航することにより経営改善につながること。 3. 検討項目・内容 (1)小型船の規格 ア) 以下の基準を満たす基準とする。 トン数 20t 未満 速度(ノット) 22~23 ※坂手 12 船員 2名 定員 100 名 未満 乾舷 その他 水面から バリアフリー対応 110cm 以上 サイドスラスター イ) 交通バリアフリー法設置基準 ・バリアフリー客席:旅客定員 25 人に対し 1 個以上 ・車椅子スペース:定員 100 人に対し 1 個以上 ・バリアフリートイレ:最大積載人員 50 人に対し 1 個(トイレの設置義務につい ては、中部運輸局で確認中) 資料5 (2)運航可能航路の検証 ア) 答志航路(9.7km)、神島航路(14.9km) ・外洋に面しているため、波高が高く小型船に適さない。 イ) 桃取航路(4.7km)、菅島航路(5.6km) ・どちらの航路も離島発午前便、本土発夕方便は通勤通学利用の乗客数が多く小 型船に適さない。 ・菅島航路の循環便往復 4 便は答志・神島航路を運航するため小型船では運航が できない。 ・桃取航路は昼間の往復 3 便、菅島は昼間の往復 2 便が乗船人員も少なく運航は 可能であるが、荒天時や年間を通して吹く強風時には乗客の安全と利便性を考 慮すると欠航便とせざるを得ず小型船に適さない。 ※欠航となる便数の想定:伊勢湾海上交通センター(伊良湖岬)における気象状 況のうち平均風速 13m/s 以上かつ最大風速 20m/s 以上の日数は年間 42 日~ 46 日あり、ほとんどの月で運航できない日がある。 ウ) 坂手航路(2.4km) ・9 時台と 16 時台は旅客数や車椅子利用者が多く小型船の運航に適さないが、そ の他の時間帯では小型船の運航が可能。 ・他の航路の坂手経由便のうち、佐田浜~坂手~中之郷間の便を切り離せば運航 は可能となる。(佐田浜での乗り継ぎ便となる。 ) ・荒天時や年間を通して吹く強風時でも坂手航路なら運航は可能。 (3)坂手町の人口推計 国立社会保障・人口問題研究所人口構造研究部作成の人口資料を参考に推計した 結果、人口が減少傾向にあり将来的にも小型船の乗船は可能と推測できる。 [坂手町 人口推計] 項目 (単位:人) H22 H27 H32 H37 H42 人 男 210 175 148 123 102 口 女 270 219 176 140 111 合計 480 394 324 263 213 対 H22 比 100% 82.1% 67.5% 54.8% 44.4% 旅客数 149,891 123,061 101,176 82,140 66,552 資料5 (4)坂手航路を主船としたダイヤ組み 小型船を坂手航路主船としたダイヤ組みでは、本土と各離島を運航する現状の便 数は確保できるものの、離島~中之郷間の直行便は減便となり小型船による乗り継 ぎ便でも全てをカバーできない。 [離島~中之郷直行便] 航路 (単位:便) H24 年度ダイヤ 離島行 鳥羽行 小型船ダイヤ案 計 離島行 鳥羽行 増減 便数 計 神島 3 3 6 2 1 3 △3 答志 6 3 9 2 1 3 △6 菅島 4 6 10 1 3 4 △6 桃取 2 1 3 1 1 2 △1 計 15 13 28 6 6 12 △16 行】便数 96 便 坂手 31 便 中之郷~各離島 28 便 佐田浜~各離島 37 便 【小型案】便数 96 便 坂手 31 便 中之郷~各離島 12 便 佐田浜~各離島 53 便 【現 また、船員の労働時間が基準労働時間を超過して時間外労働が大幅に増える船が 出る。 [各船労働時間] 船名 船員数 基準労働 時 間 実労働 時 間 かがやき 3 名(6 名) 10:23 10:58 0:35 0:46 きらめき 3 名(6 名) 10:23 11:50 1:27 0:26 第 27 鳥羽丸 3 名(6 名) 10:23 10:23 △0:15 △0:01 第 28 鳥羽丸 3 名(7 名) 12:06 12:02 △0:04 △0:17 小型船 2 名(5 名) 10:23 10:59 0:36 △0:03 超過時間 現在の 超過時間 (5) サービス基準の変更(中部運輸局確認) ア) 坂手航路において、小型船の定員数に合わせたサービス基準の定員数(最低旅客定 員数)に変更する必要がある。サービス基準は利用者の合意のもと三重県に届出を する。 イ) サービス基準を下げることで民間事業者の参入があると、唯一の交通手段という条 件がなくなるため国の離島航路補助の対象とならなくなる。 資料5 (6)船舶建造に係る財源の確保 ア) 船舶建造補助金制度 ・離島航路構造改革補助金(効率化船舶):船舶建造にかかる経費の 1/10 の補助 代替建造を行う場合は効率化船舶設備を装備する船舶が補助の対象となる。 効率化船舶(省エネ性の向上に資する設備) ①ターボチャージャー、②推進効率改善に寄与するプロペラ設備、③特殊舵 ④バルバスバウキャップ、⑤燃料改質器 ※海上交通バリアフリー施設整備助成(バリアフリー施設の 1/3 補助)と同時に は補助は受けられない。 イ) 過疎事業計画(過疎事業債) ・市の過疎計画に計上する。(議会承認必須) ・起債充当率 50%、元利償還金の 70%が基準財政需要額に参入 ウ) 交通事業債 ・充当額=事業費-特定財源-過疎債、後年度財源充当なし 4. 小型船視察 (1)視察内容 [1 日目] 広島県福山市、走島汽船(有) ア) 福山市航路改善協議会と航路改善計画について ・老朽化船舶とフェリー船への代替建造要望 イ) 離島航路構造改革補助申請事務について ・フェリー建造と補助金申請事務 [2 日目] 岡山県笠岡市 三洋汽船(株) ア) 運航状況について ・旅客・荷物対応、隻数、欠航判断、船員体制(乗組人員、労働時間) イ) 小型高速船の船体構造 トン数 航海速力 船員 定員 主機関 19t 24 ノット 2名 79 名 575ps×2 基 その他 バリアフリー対応 サイドスラスター ・建造費用/建造期間:1 億 4 千万円弱/約 6 ヶ月 ・燃料消費量:767 ㍑/316km(9 月実績、1 日 316km、稼働時間 9 時間 30 分) ・その他、乾舷、定員数、荷物スペース、トイレ、船橋設備、甲板、機関室、係 船方法を調査、確認 ウ) 乗船 ・笠岡住吉~白石島(往路:普通船、復路:高速船) 資料5 (2)笠岡市諸島の小型船のメリットデメリット ア) メリット ・建造費用が在来船より少ない ・運航経費(船員費・船舶検査・燃料費)が少ない ・桟橋と乾舷の間にアルミ製タラップを掛けることで乗下船が容易。 ・乗船客、荷物とも多くないため小型船で輸送が可能。 イ) デメリット ・強風が吹くと船体が流されやすく桟橋の離発着が難しい。 ・船首乾舷が低く波高の高い時に波をかぶることもある。 ・中央甲板に側壁がなくしぶきや波を受けやすい。 ・長さ幅もなく揺れやすい。 ・船体通路が狭く乗客多数の場合は移動が困難。 ・バリアフリー対応としているため客席数が少ない。 5. 鳥羽市での小型船運航について 小型船の導入について、これまで検討した内容を踏まえ基本的な考え方や、効果及 び影響等を以下のとおり取りまとめた。 (1)小型船運航の基本的な考え方 ・坂手航路のみの運航とする。 (旅客定員数及び荷物、悪天候による欠航対策) ・船員は 5 人体制で常時 2 名乗船 ・運航速度は在来船と同じ 12 ノット(坂手航路の航行速度) (2)小型船運航による影響 ア) メリット ・建造費用が在来船より少ない。 ・運航経費(船員費・船舶検査・燃料費)が少ない。 ・年間を通して利用客数の少ない坂手航路に運航することにより、100 名以上の定 員のある在来船の不効率な運航をなくせる。 イ) デメリット ・長距離航路は日常でも欠航の可能性があるため運航できない。 ・離島本土間の便数は確保できるが、中之郷直行便が減便となる。 ・小型船の運航は強風や高波の影響を受けやすく、悪天候や冬の強風時は利用者 の快適性や速達性が損なわれる。 ・強風や高波時は 2 名の船員で桟橋での離発着の安全性や操作性を確保するため、 主機を 2 機 2 軸としサイドスラスターなどの装備が必要。 ・坂手航路以外の航路を 4 隻の在来船で運航する必要があるためダイヤが過密に なり、船員の基準労働時間を超過する船舶が出る。 資料5 (3)これまでの検討により得られた結果のまとめ 当初の目的の一つでもある運航経費の削減については、小型船の建造にかかる経費 及び日常の運航経費(船員費、燃料費、修繕料)など経営改善に繋がるメリットは大 きいと言える。 しかし、利用者の利便性については、鳥羽の気象条件に照らし合わせ運航すると荒 天時や季節風の強い冬場は小型で軽量な船体では快適性や安全性については問題があ る。さらに、今後、離島住民の高齢化が進み歩行の困難な利用者や、車椅子を利用し ディサービスや医療機関へ通院する利用者が増えると、客室内のスペースを充分に確 保することができず一度に複数の方の利用は困難であると想定される。 今回検討の中では、悪天候の影響を受けにくく比較的人口規模も乗船数も少ない坂 手航路の運航を主としたダイヤ組みを行ったが、他の 4 隻の船舶だけで坂手航路以外 の運航を行うため、運航距離や時間の制約があり一部の船舶で労働時間の延長が見ら れ船員の超過勤務が発生するなどの問題が明らかになった。 また、当初は小型の高速船を投入した航路では運航時間を短縮し、現行ダイヤより も便数を増やし増便による利便の向上ができると考えていたが、坂手航路を主船とし たことで、他の航路では離島からの中之郷直行便や中之郷発離島行きの直行便の便数 が減便となってしまうほか、佐田浜港での小型船へ乗り継ぎが必要になり、平成 23 年 度ダイヤ改正により利用者から不満があった乗り継ぎ便の利用が増えることとなる。 このことから、ある程度の減便を踏まえたうえで、事業の経営改善を考えていくの であれば、小型船を導入して行くことは効果的な手法であると思われるが、離島住民 の理解と協力が必須となる。 6. 参考 小型船導入検討の経緯 第1回(5/9) ⅰ検討に向けて経営の健全化、ⅱ小型化の目的、検討内容、 ⅲその他(小型化の問題、規模やイメージ、目標年度、資金計画 第 2 回(5/18) ⅰ建造補助、ⅱ条件整理、ⅲ利用実績、整備費用、視察 第 3 回(5/25) ⅰ建造補助の概要、ⅱサービス基準、ⅲ対象航路の旅客数 第 4 回(5/31) ⅰ坂手航路のメリット、ⅱ交通バリアフリー法、 第 5 回(6/7) ⅰ坂手主船想定、ⅱ視察予定、ⅲ菅島航路の乗船実績 第 6 回(6/14) ⅰ坂手主船ダイヤの検証、ⅱ検討経過確認 ダイヤ案(①坂手のみ、②桃取 1 便含む) 第 7 回(9/27) ⅰ視察検討、ⅱ乗り継ぎ便増便検討 第 8 回(10/9) ⅰ船舶建造スケジュール、ⅱダイヤ案検証、ⅲ視察行程・内容 ダイヤ案(①坂手のみ、②菅島 1 便含む) 第 9 回(10/10) ⅰ前回ダイヤ案再検証、ⅱ時間外手当と増便実績 第 10 回(10/17) ⅰ視察スケジュール、質問内容 資料5 第 11 回(10/24) ⅰ視察報告、ⅱ船舶建造スケジュール、ⅲダイヤ案検証 ダイヤ案(①菅島 1 便含む、②桃取 1 便、菅島 1 便含む) 第 12 回(10/30) ⅰ菅島航路の課題デメリット、ⅱ坂手航路ダイヤ案検証 ダイヤ案(坂手のみ 2 案)
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