高級ブランドにおけるキャズムを越えるための手段

高級ブランドにおけるキャズムを越えるための手段
~セカンドラインにおける消費者の購買プロセスの解明~
はしがき
本年度、関東学生マーケティング大会は、
「明日話したくなるマーケティング」
というテーマを掲げ開会された。昨年は、
「学生視点のマーケティング」という
テーマであったが、本年度は昨年と比べて時事的な要素がより重視され、学生
の大会ゆえに学生ならではの視点を盛り込み、話題性がある事象に着目し、そ
れをマーケティングで解決・活用することが求められていると解釈した。
本研究は7月から始まり、我々は結果を追い求めて研究に励んできた。研究
を始めた頃は、何から手を付ければいいか戸惑う日が多く、何回も研究の方向
性を見直すことがあった。しかし、そのような壁を越えられたのも、この 6 人
の班員で協力し、時には競争することがあったからである。研究が上手く行か
ずに悩み、苦しい思いをしたこともあったが、それ以上に 6 人で研究をしてい
く中で嬉しいことや楽しいことの方が多かった。班員には感謝の気持ちで一杯
である。
最後に、本研究を行うにあたり、数多くのご指導を頂いた高岡美佳教授、的
確かつ真剣にアドバイスをしてくださった先輩方、一緒に切瑳琢磨しあった同
期の仲間、そして本研究に関わってくださったすべての方々に感謝の意を表し
たい。
2014 年 10 月吉日
買場健介 市川絵利奈 溝田裕基 吉田朱里 鈴木悌哉
1
高村茉妃
ファッション産業におけるキャズムを越えるための手段
~セカンドラインにおける消費者の購買プロセスの解明~
①
―――はじめに
(5)
②
―――序論
(6) 分析結果の考察
1.
2.
③
(7) 分析まとめ
現状分析
(1)
高級ブランド市場と日本人
4.
(2)
ファストファッションの台頭
(3)
セカンドラインの登場
1.
本研究のまとめ
(4)
イノベーター理論からみるセカンドラ
2.
研究余地
④
2.
イン戦略
⑤
―――今後の展望
(5) 現状分析まとめ
⑥
―――おわりに
問題意識と問題設定
(1)
リサーチ・クエスチョン
参考文献
(2)
研究対象の選定
補録――モデル分析結果
標準化係数
既存研究レビュー
係数
(1)
イノベーター理論
信頼性分析結果(クロンバックのα係数)
(2)
ブランドの価値・サブブランドとは
モデル適合度
(3)
服飾品における消費者行動の研究
プレアンケートの調査票
(4)
消費者の購買意思決定プロセス
本アンケートの調査票
(5)
知覚リスク
(6)
ファッション・リスク
(7)
既存研究まとめ
3年
溝田 裕基
2年
セカンドラインにおける購買プロセス
吉田 朱里
仮説の提唱
(3) 本研究における仮説モデル
仮説の検証
(1)
調査方法と調査概要
(2)
プレ調査概要
(3)
本調査概要
(3)
分析結果
(4)
モデルの全体的妥当性
高村 茉妃
鈴木 悌哉
の構築
(2)
買場 健介
市川 絵利奈
購買プロセスの構築及び仮説の提唱
(1)
3.
新規提案
―――結論
―――本論
1.
モデルの部分的妥当性
2
いる高級ブランドの売り上げ増加のための要素が解明
されるとともに、今後の戦略構築に貢献できる。後述
①
―――はじめに
するが、高級ブランドに対するマジョリティ層に当た
るファッション・フォロアーの消費行動の解明によっ
突然だが、誰もが一度は「今流行りの商品は何
て、高級ブランドのキャズム越えるための示唆が得ら
だろう。
」
と疑問に思ったことがあるのではないだろう
れるであろう。
か。消費者側からすると、多くの消費者が、流行して
いる商品を購買したいと考えるが、企業の目的は商品
②
を“流行”させるだけではなく“普及”させることに
―――序論
ある。また、消費者の多くが流行している商品を採用
1.
することで商品は普及状態になる。ではどのような状
現状分析
態が普及しているのかというと、イノベーター理論に
おける市場拡大時に発生する溝を乗り越える状態、つ
本研究において高級ブランドのキャズムを越える
まり「キャズム越え」をしている状態であり、本研究
という目的のもと、現在のファッション業界とセカン
はキャズムを越える方法を解明することを目的とする。 ドラインについて論ずる必要がある。企業と消費者の
キャズムが発生する商財としてはハイテク機器、
繊維、
双方の観点から、高級ブランドのセカンドラインにつ
サービスなどがあげられる。今回、本研究ではたびた
いて考察していく。
び流行が変化するファッション業界に着目し、中でも
(1)
高級ファッションブランドの現状と日本人
代表格の高級ブランドのキャズム越えについて研究を
(2)
ファストファッションの台頭
行う。高級ブランドはキャズム越えのために価格を下
(3)
セカンドラインの登場
げた若年層向けのセカンドラインブランドを展開して
(4)
イノベーター理論からみるセカンドライン戦略
以上 4 点の現状を踏まえ分析していく。
おり、市場の拡大を図っている。そうしたセカンドラ
インのターゲットである大学生の購買理由・プロセス
を研究することでセカンドラインの成功要素をさぐり、 (1)
キャズム越えの要因を解明する。
高級ファッションブランド市場と日本人
■表―――1
本研究を研究するにあたり、学術的と実務的両面の
国内インポートブランド売上推移
意義があると考える。
学術的意義は消費者がセカンドラインを購買する
際に、どの様な心理を経て購買に至るのかということ
である。このプロセスが有効であると実証されること
で、セカンドラインだけではなく他の高級ブランドや
ファストファッションブランドにも転用することが可
(出典:矢野経済研究所国内インポートブランド市場に関す
能になるであろう。
る調査結果[2013])
さらに、実務的意義においては、本研究で立証する
モデルを利用することで、セカンドラインを展開して
3
5、更に購買時に日本人が考慮する意識として「公的自
近年、日本人の高級ブランド離れが叫ばれている。
表 1 は、国内インポートブランド市場売上推移を示し
己意識」6「私的自己意識」7を挙げている8。要するに
たものである。2001 年から 2010 年にかけては下降傾
日本人は様々な価値を吟味した後、自分のみならず他
向にあるがその後は右肩上がりとなっており、国内に
者からの目も意識し購買に至るのである。この購買プ
おけるインポートブランドの消費は好調さを取り戻し
ロセスは、ファッション業界においても同様であると
つつあるように見える。しかしながらこれは東京オリ
言える。下記の表 2 は、独自に行ったプレ調査「女子
ンピック誘致や円安に影響された訪日外国人数増加に
大学生のセカンドライン製品購買」時に考慮する要素
よる消費、また一部富裕層の変わらぬ購買量によるも
のアンケート結果である。これら 7 つの要素を使用し
のである。要するに一般的な日本人のブランド品に対
た理由については後述するが、今回の回答結果から、
する消費は減少傾向をたどっている。主な理由として
価格が安いというだけでは実際に購買に至らず、品質
は、日本人の消費性向の変化が挙げられる。かつて日
面や自己表現、話題性や優越感といった他の要素も重
本人は性別・年齢を問わず高額なブランド製品を好む
要であることが明らかとなった。
国民性で知られ、ブランド業界においてきわめて重要
■表―――2
なマス・マーケットであった。しかしバブル崩壊後、
女子大学生がセカンドライン製品購買時に考慮する要
不安定な経済や不況、所得低下等の要因で日本人は衣
素
類にお金をかけない節約志向へと変化した。事実、野
村総合研究所が行った生活者 1 万人アンケート調査に
よると、
「名の通ったブランドやメーカーの商品であれ
ば。その分多少値段が高くてもよい」というブランド
志向派の割合は 1997 年の 14.6%に対し、2000 年では
9.9%へと減少した。今やブランド信者だった日本人も、
不況等の影響を受け、ブランドであるという理由だけ
で高額な商品の購買に至るとは言い切れないのである。
ブランド以外の要素を重視せざるを得なくなってきた
のだ。
(出典:筆者作成)
自分が商品を購買する場合を考えてほしい。価格、
(2)
デザイン、品質、流行といった様々な要素を考慮して
購買するのではないだろうか。Sheth, et al.は消費者
ファストファッションの台頭
現在、日本のアパレル市場は、少子化の影響による
が購買行動に至る要素として「機能的価値」1「社会的
若年層人口の減少、消費の成熟化に伴う家計消費にお
価値」2「感情的価値」3「認識的価値」4「条件的価値」
ける衣料品の比率の減少等により、縮小傾向にある。
そのような中、H&M や FOREVER21、ZARA に代
1
機能的価値…製品における機能的側面,実利的側面,また
は物理的性能側面によってもたらされた消費価値であり,最
も基本的なものである。
2 社会的価値…特定の社会集団と自分との関わり合いによっ
てもたらされた価値である。
3 感情的価値…,楽しさ,興奮,ロマンス,情熱,怒り,恐
怖などの気分や感情によってもたらされた消費者の価値であ
る。
4 認識的価値…好奇心,目新しさや知識的欲求によってもた
らされる価値である。
5
条件的価値…特定の状況で他の価値を高める価値である。
6 私的自己意識…自分はどうしたいかなど、自己の内面的・
個人的側面への意識。
7
公的自己意識…他人が自分のことをどう思っているかなど、
他者から見られる自己への意識
8 Sheth, et al. [1991ab]
4
表される海外ファストファッションが日本市場に進出
■表―――3
し、好調な業績を上げている。ファストファッション
衣料品専門店企業の売上推移及びランキング
企業とは、リアルタイムのトレンド商品を低価格、短
サイクル、大量販売する企業である。一般的なアパレ
ルブランドが新商品の企画から発売まで平均 9 ヵ月を
要するのに対し、ファストファッションは 1~2 週間
でこの工程を終える。
この事業コストを抑えた SPA 型
9かつ短サイクルにより、
低価格で最先端の流行を取り
入れた製品を提供でき、消費者の心を掴んでいる。日
本でこのようなファストファッションが出現したのは
バブル崩壊後のことだ。前述したように、日本人は高
額なブランド製品を好むとして知られていたが、不況
等の影響により控えめな消費性向へと変化した。そこ
(出典:大村邦年『ファストファッションにおける競争優位
で人気に火がついたのがファストファッションである。
のメカニズム』[2011]より筆者作成)
かつて所得層に関わらず高級ブランドへの消費が活発
(3)
であったが、ファストファッションという選択肢が生
セカンドラインの登場
じたことで、富裕層を除く中間層の高級ブランドへの
以上で示した日本人の消費行動の変化やファスト
消費が減少していった。現在一般的にファストファッ
ファッションの台頭を受け、日本人は高級ブランドか
ションと呼ばれるブランドは、
2000 年代以前にはすで
ら離れつつある。そのような現状を踏まえると、高級
に存在し、衣類を販売していた。しかしながらファス
ブランドはより多くの消費者に自社製品を購入しても
トファッションという言葉が生まれたのは 2000 年に
らう必要がある。そのためには自社ブランドを守りつ
入ってからのことである。その後 2008 年に H&M、
つ、従来の価格を下げなければいけなくなった。そこ
2009 年に FOREVER21、と次々に海外の企業が日本
で、多くの高級ブランドが次なる戦略として採用した
へ上陸、2009 年度には「ファストファッション」とい
のがセカンドラインの立ち上げである。
う言葉が流行語大賞に選ばれるなどして、広く認知さ
セカンドラインとは、高級ブランドにおける従来の
れた。表 3 で示した、衣料品専門店企業の売上推移及
高額な製品ラインをファーストラインとすると、デザ
びランキングを見ても、ファストファッション系アパ
イナーのイメージやブランドの世界観を尊重しつつ、
レル企業が上位を占めていることが明らかである。以
生産ラインの効率化や高級な素材や副資材をワンラン
上のファストファッションの台頭を受け、高級ファッ
ク落とし、
低価格化を実現した第二のブランドである。
ションブランドは変化を強いられている。
セカンドラインは以下のブランドのように、ファッ
ションブランドにおいて多く用いられる戦略である。
例えば、Prada S.p.A.のセカンドラインである MIU
MIU や、Paul Smith のセカンドラインである Paul
Smith JEANS が挙げられる。
9
SPA 型…specialty store retailer of private label apparel の略で、
小売り製造業を指す。企画から製造、小売までを一貫して行
うアパレルのビジネスモデルのこと。トレンドの移り変わり
を迅速に製品に反映させ在庫のコントロールが行いやすいな
どのメリットがある。
5
(4)
■表―――4
ファーストライン・セカンドラインの一覧
ファーストライン
セカンドライン
GIORGIO
EMPORIO
ARMANI(1975)
ARMANI(1981)
Calvin
Klein
Collection(1942)
chloe(1952)
ANNA SUI(1992)
Dolce & Gabbana
(1985)
Prada
S.p.A.
(1913)
Lee
Alexander
McQUEEN(2006)
MARC
セカンドラインはディフュージョンラインとも呼
ばれ、
「普及」を意味する。ディフュージョンラインは
販売拡大のためにブランドのアイデンティティ、
感性、
特徴を保ちつつ、低価格で商品を生産し販売する新ブ
ランドである。
「普及」という言葉から、次は商品の市
ck Calvin Klein(1992)
場における普及のメカニズムを説いていく。
本節では高感度層に関する研究の 1 つとして、新し
SEE BY CHLOE(2001)
Jill Stuart(1993)
JACOBS
い商品がどのように社会に普及するのかを見るべく、
JILL by JILLSTUART
Rogers[1962,1983]による「イノベーター理論」と、
(2008)
これをハイテク市場における新商品・新技術の導入に
SUI ANNA SUI(2007)
特化した Moore[1991]による「キャズム理論」に着目
D&G(1994)
する。
「イノベーター理論」は、米国の社会学者 Rogers
によって提唱された普及学理論で、イノベーションが
MIU MIU(1993)
どのように社会システムの中に受け入れられるのかが
説かれている。この研究は人類学・社会学等多くの学
McQ(2009)
問に援用されているが、特にマーケティング分野にお
いては新製品の採用とそれに応じた消費者分類に用い
Marc By Marc Jacobs
(1986)
(2001)
DIESEL(1978)
55DSL(1994)
BURBERRY
BURBERRY(1856)
LABEL
られている。同理論では、 イノベーションの採用段階
に応じて社会システムの成員を「イノベーター」
「アー
リーアダプター」
「アーリーマジョリティ」
「レイトマ
BLUE
ジョリティ」
「ラガード」の 5 つに分類した。さらに 5
BLACK
類型のそれぞれ特徴を一言で言い表すならば、
「冒険
LABEL(1998)
Paul Smith(1970)
イノベーター理論からみるセカンドライン戦略
Paul
的な人々」
「尊敬される人々」
「慎重な人々」 「疑い深
Smith
い人々」
「伝統的な人々」となる。一般的には「革新的
JEANS(1981)
採用者」
「初期少数採用者」
「前期多数採用者」
「後期多
(出典:筆者作成)
数採用者」
「採用遅滞者」と表記され、イノベーション
の採用時期で分類している。
今回はファッションブランドのセカンドラインの
事例を挙げたが、その他のカテゴリーにおいてもセカ
ンドラインは多く存在する。これは、多くの企業で導
入されている戦略である。
6
■表―――5
■表―――6
イノベーション採用段階に応じた採用分布
ファッション産業におけるイノベーター理論
(出典:Rogers『Diffusion of Innovations』[1983])
この理論のポイントは、イノベーションの採用を時
間軸で捉えると、採用者の半数が採用する頃に最も採
用者分布が伸びることである。イノベーション採用者
の分布を示した上記の図に着目すると、累積分布曲線
の伸び率が急峻になるのは、イノベーション普及率が
(出典:神山進『被服心理学』[1985]より筆者作成)
16%に達する地点にあたる。この事実から Rogers は、
「アーリーアダプター」
層に イノベーションが支持さ
今回の研究で重視したいことは、高級ブランドにも
れることが重要とする「普及率 16%の法則」を説いた。
同じイノベーター理論が当てはまるということである。
これに対し、ハイテク製品の導入・普及に関する分析
図 6 から分かるように、高級ブランドでは「ファッシ
を行った Moore は、普及で先行している層と後続的
ョン・イノベーター」や「ファッション・オピニオン・
な大衆層には「大きな溝(キャズム)」があるとする「キ
リーダー」の層が購入をする。ここで述べている購入
ャズム理論」を説いた。ここでの「キャズム」は、専
者は購入に際して経済的な余裕がある者であることを
門的知識を多く持つ革新的な消費者が集まる「初期市
指す。しかし「ファッション・フォロアー」以降の層
場」から、当該商品が標準化・一般化されていること
は購入ができないのである。なぜなら高額な価格であ
で購買する消費者が集まる「メインストリーム市場」
るため、
「ファッション・フォロアー」の層は購入を諦
へとハイテク商品を伝播させる上で越えなければなら
めてしまうのである。しかし従来の高級ブランドは自
ない溝とされた。
「キャズム理論」での消費者分類は、
社のブランド価値を守るため価格を下げることはしな
構成比で見れば「イノベーター理論」での採用者分類
い。価格を下げてしまうと従来の「ファッション・イ
と変わりないが、普及のためにはキャズムの先にいる
ノベーター」や「ファッション・オピニオン・リーダ
「アーリーマジョリティ」
層 に支持されることが重要
ー」の層が購入しなくなるという懸念も発生するから
と説いている点で、
「普及率 16%の法則」に異を唱え
である。高級ブランドのキャズムを越えるためには価
ている。
格と独自性と言われている。そこで高級ブランドはデ
ザイナーの世界観を尊重しつつ、従来のものより低価
7
格で自社商品を販売することにより、
「ファッション・
るだけでなく、その他の価値をも重視して購買をする
フォロアー」
の層に販売対象を拡大しているのである。
ということも示した。そこで本研究では、高級ブラン
また原価率からもセカンドライン戦略を考察する
ドにおけるイノベーター理論の「ファッション・フォ
ことができる。高級ブランドのファーストラインの原
ロアー」を現在の大学生と設定し、
「ファッション・フ
価率は一般的には 25%であり、上限は 30%である。こ
ォロアーによるセカンドラインの購買動機」を研究す
のことは 10 万円の商品の 25%である 2 万 5 千円で商
る。そして高級ブランドでイノベーター理論の「キャ
品を作り、残りの 75%である 7 万 5 千円が企業の粗利
ズム越え」をするための示唆を得ようと考えている。
となる。しかしセカンドラインの原価率は一定に保た
2.
れることは少ない。セカンドライン戦略は、生産ライ
問題意識と問題設定
ンの効率化や高級な素材や副資材をワンランク落とし
(1) リサーチ・クエスチョン
低価格化を実現しているが、ブランド価値を守るため
に素材や副資材に関して大幅な商品レベルを下げるこ
以上の現状分析から、本研究におけるリサーチ・
とはできない。そのため、セカンドラインでは 5 万円
クエスチョンは以下の通りである。
の商品に対して原価率40%に相当する2 万円が原価と
・ファッション・フォロアーがセカンドライン製品
なる可能性がある。その際にはファーストラインで
を購買する要因の調査
5000 枚販売という売り上げ目標を掲げた際、
セカンド
・消費者の価値が多様化する中でセカンドラインの
ラインではファーストラインの目標の 1.6 倍である
有効な戦略とは何か
8000 枚を販売しなくてはならない。
このようにセカン
現状分析であったように不況の煽りを受け、多く
ドラインでは販売対象を拡大し、ある一定のブランド
の高級ブランドがその低価格版であるセカンドライ
価値を守るために、より多くの販売が必要になること
ンを出した。その背景として、企業は高級ブランド
を示した。
では確保できない顧客、つまりファッション・フォ
ロアーに対して販売対象を拡大することにより、自
(5)
現状分析まとめ
社製品の売り上げに繋げようとしている。一方で近
近況の不況による消費行動の変化やファストファッ
年、日本の消費者はブランド志向の減少と価格以外
ションの台頭により、多くの消費者は高級ブランドを
の要素を重視するという傾向が見られるため、ブラ
購買しなくなった。実際に日本の消費者のブランド志
ンドが低価格帯にしただけでは購買につながらない
向の割合も減少し、ブランドであるという理由だけで
という懸念がある。そのため、本研究においてファ
高額な商品を購入するとは言い切れなくなってきた。
ッション・フォロアーにおけるセカンドライン製品
そのような現状がある中で高級ブランドはセカンドラ
を対象とした購買プロセスを解明する。高級ブラン
イン戦略を活用し、販売対象を「ファッション・イノ
ドにとって、セカンドライン製品のファッション・
ベーター」や「ファッション・リーダー」だけではな
フォロアー層における購買動機を解明することは、
く、
「ファッション・フォロアー」までに拡大しようと
高級ブランドのイノベーター理論でいう「キャズム
している。そしてセカンドライン戦略を進める上で、
越え」を達成する条件として考えられる。実際には、
従来の高級ブランドの目標販売数よりも多くなること
イノベーター理論においてイノベーターやアーリー
が懸念される。しかし「ファッション・フォロアー」
アダプターの消費者行動を解明している研究は多数
を含めた消費者は、低価格であるという理由で購買す
あるが、マジョリティの消費行動に関する研究は少
8
➂ ―――本論
数である。層によって企業のマーケティング活動は
異なるため、マジョリティがどのように購買するの
かを研究することは、
「キャズム越え」を検証する上
1. 既存研究レビュー
で必須である。また高級ブランドに注目し、イノベ
ーター理論を用いてファッション・フォロアーの消
費者心理を研究することは実務的にも学術的にも、
前章でも述べたとおり、本研究の目的は、高級ブラ
近年の不況という現状に合った戦略を構築するため
ンドにおいてキャズムを越えることであり、そのため
の示唆を得ることができる。以上をリサーチ・クエ
に「セカンドラインにおける消費者の購買プロセスの
スチョンとする。
解明」をすることである。本章では、購買プロセスの
解明及び仮説の設定にあたり、6 つの既存研究から得
(2) 研究対象の選定
られる知見を用いる。
(1) イノベーター理論
今回、本研究においてリサーチ・クエスチョンを検
証するにあたり、
ターゲットを女子大学生に選定した。
(2) ブランド機能とセカンドライン
理由としては以下の点が挙げられる。第一に、高級ブ
(3) 服飾品における消費者行動
ランドのイノベーター理論に当てはめるとブランドの
(4) 消費者行動意図プロセス
ロイヤルティの高い顧客を含めた富裕層がファッショ
(5) 知覚リスク
ン・イノベーターとファッション・オピニオン・リー
(6) ファッション・リスク
以上 6 点の研究概要を述べたのち、まとめにおいて
ダーの層に属する。本研究ではファッション・フォロ
アーに属するため富裕層以外の層を研究対象とする必
考察を交えて記述する。
要がある。またその中でも将来のメイン消費を担う現
(1)
在の大学生の消費行動を調査することで、本研究にお
イノベーター理論
ける必要条件を満たすことができる。また日経消費ウ
前章で述べたように、Rogers[1962,1983]は、新商
ォッチャーの調査によれば、女性は海外高級ブランド
品の採用とそれに応じた消費者分類を表すイノベータ
を購入する際にファーストラインが良いと答えた人は
ー理論を提示した。そして Moore[1991]は、その中で
15.1%、セカンドラインで十分であると答えた人は
も特にアーリーアダプターとアーリーマジョリティの
49.5%、どちらでも良いと答える人が 24.7%いた。こ
間にはキャズムという溝があると示した。これは、一
のときに女性の回答者の 74.2%がセカンドラインでも
部の消費者の間で流行している商品からより多くの消
良いと回答している。男性にも同様のアンケートを取
費者が所持するような普及した商品にするためには、
ったが、
女性の方が高い数値を示した。
このことから、
キャズムを越える必要があるということを表したもの
女性はセカンドラインに対してブランド選択の障壁が
である。これらはハイテク市場において支持された理
ないと考え、今回の研究では女性が研究対象となる。
論であるが、神山[1985]によると、ファッション業界
以上により本研究のターゲットは女子大学生とする。
においてもこのイノベーター理論が当てはまるという
ことが分かった。このことから、前章の表 6 より、イ
ノベーターはファッション・イノベーター、アーリー
アダプターはファッション・リーダーないしファッシ
ョン・オピニオン・リーダー、アーリーマジョリティ
9
はファッション・フォロアー、
レイトマジョリティは、
という経済的現象である。一方スノッブ効果というバ
レイト・ファッション・フォロアー、ラガードはファ
ンドワゴン効果と対極を意味する経済現象も存在する。
ッション・ラガードと適合すると言える。よって、フ
スノッブ効果とは、人々が他者と異なったものを購入
ァッション・リーダーないしファッション・オピニオ
しようとする心理的傾向によって生じ、消費が増える
ン・リーダーとファッション・フォロアーの間にキャ
ほど需要が減るという経済的現象である10。
ズムが存在すると考える。そして、本研究では、ファ
このことから、他者が購買することで安心感を持つ
ッション産業においてこのキャズムを越えることを最
ファッション・フォロアーは、このバンドワゴン効果
終目的とする。
を起こして購買をすると考察する。
では、従来は、キャズムを越えるための手段として
以上のことから、本研究では、ファッション・リー
どのような研究がされてきたのだろうか。Rogers
ダーとファッション・フォロアーの間に存在するキャ
[1983]は、他の消費者への影響力が大きい消費者分類
ズムを越えることを目的とし、
それを達成するために、
はイノベーターやアーリーアダプターであるとして、
ファッション・フォロアーの購買プロセスを探ること
彼らの行動を重要な研究対象であるとした。一方で、
とする。また、ファッション・フォロアーはバンドワ
Moore[1991]は、普及段階において各々の消費者分類
ゴン効果を起こして購買を行うという特性を所持して
に対しマーケティングアプローチを変更していく必要
いると推測する。このファッション・フォロアーに関
があるとし、アーリーマジョリティの購買行動に着目
する研究は少なく、この購買プロセスを明らかにする
すべきであるとした。事実、近年ではイノベーターや
ことは、意義のある研究であると考える。
アーリーアダプターなどのオピニオンリーダーと呼ば
(2)
れるイノベーター理論における初めの段階の消費者の
ブランドの価値・セカンドラインとは
1990 年代のブランド・エクイティ概念の登場以降、
研究ではなく、アーリーマジョリティなどの消費者分
類に注目した研究に移行しつつある。このことから、
企業ではいかに自社のブランドを維持するか、どのよ
本研究ではファッション・フォロアーの購買プロセス
うにしてそのブランド力を高めていくか、また、消費
に着目することとする。
者との関係をいかに構築するか等について求められて
では、次にファッション・フォロアーはどういった
きている。ここでは、まずブランドが消費者において
特性を持っているのかを示す。Rogers[1962]によると、 どのような価値を生み出すのかを探っていく。
アーリーマジョリティ、本研究におけるファッショ
i.
ン・フォロアーは、比較的慎重に購買を行い、安心感
を持った際に購買に至るとしている。
この安心感とは、
購買・使用・所有場面でのブランド機能
柴田[2003]は、購買・使用・所有場面におけるブラ
他の多くの消費者が所持しているという現状を通し、
ンドの機能として、表 7 にある 4 つの機能を挙げてい
他者からの評価が良い商品と既に購買する際のリスク
る11。
が低減されている商品から感じる安心感である。
また、
この特性はバンドワゴン効果を起こして購買すると置
き換えることができると考える。バンドワゴン効果と
は、Leibenstein[1950]が提唱した経済的現象のことを
指す。人々が他者と同じものを購入しようとする心理
10
的傾向によって生じ、消費が増えるほど需要が増える
11
10
佐藤正博[2010]
柴田典子[2003], P.46
■表―――7
呈示を「ブランドの何らかの特性を通して自分をどの
購買・使用・所有場面におけるブランドの機能
ように見せるかを調整し、他者に見られる自分が自分
にとって望ましいものになるように努める行為」とし
た12。 そこから消費者がブランドを通して自己呈示を
行う場合、
自分の意思によってブランドを選択する
「独
自的な自己呈示」と、他者と同じブランドを選択する
「同調的な自己呈示」の 2 つのパターンに類型化した
13。
■表―――8
情報処理の効率化機能
ブランドを通した自己呈示の類型
消費者の購買意思決定
時において、そのブラン
ドをほかの類似製品と
識別できる。
自己表現的機能
内省自己概念形成:ブラ
ンドの使用・所有によっ
て、消費者の自己概念の
(出典:柴田典子『ブランドを通した自己呈示の類型とパー
形成を可能にする。
ソナリティ』[2003]より筆者作成)
自己呈示:ブランドの使
用・所有によって、他者
上記の表 8 から、社会的な規範を意識しない「独自
に対しての自己表現を
可能にする。
的」な自己呈示を行う消費者は以下のブランドを好む
対人コミュニケーショ
ブランドの使用・所有に
ことが分かる。
ン機能
よって、消費者同士おけ
・他者とは異なるブランド
る印象形成を可能にす
・自分の特性を表現できるブランド
る。
・自分が人より優れていることを示せるブランド
そこから周りに持っている人が多いという理由で、
敢
(出典:柴田典子『ブランドを通した自己呈示の類型とパー
えて別のブランドを選ぶ「差異化」による自己呈示、
ソナリティ』[2003]より筆者作成)
自分独自の特性をいかに見せることが出来るという理
以上 4 つの機能の提示する中で、ブランドと消費者
由でブランドを選ぶ「個性主張」による自己呈示、他
間の関係性を維持・強化するためにはブランドの自己
者が持っていないようなブランドであるという理由で
表現的価値が重要な要素であるとした。次に「ブラン
ブランドを選ぶ「優越性」による自己呈示に分類され
ドを通した自己呈示」について論ずる。
る。一方で社会的な規範に合致した「同調的」な自己
呈示を行う消費者は、他者が既に使用・所有している
ii.
ブランドを好む。そして「自分が憧れを抱きたい、ま
ブランドを通した自己呈示
柴田は、自己呈示を「日常の社会的な対人関係の中
12
で行われる行為」とした。またブランドを通した自己
13
11
前掲論文 P48
前掲論文 P58
た理想のイメージと近い人物と同じブランドを使いた
み産出したものである15。このモデルによると、消費
い」や、
「仲間意識を感じたい」という動機でブランド
者と企業のそれぞれが発信した外部情報が、ブランド
を選択する「積極的な同調」による自己呈示と、
「話題
認知や確信・態度に影響を与え、そして購買意図に繋
に遅れたくない」や「他の人が知らないブランドを持
がるということを示している。
つことが恥ずかしい」という動機でブランドを選択す
本研究の研究対象はであるセカンドラインは、ファ
る「消極的な同調」による自己呈示に分類される。
ーストラインの影響を受けるものであり、既に消費者
は情報を所持しているものとする。そのため、ブラン
(3)
服飾品における消費者行動の研究
ド認知から始まると推測される。さらに、このモデル
次に、消費者が服飾品を購買する際の行動モデルに
から、ブランド認知が購買意図に繋がることが明白と
ついて述べる。神山[1985]は、知覚は個人水準で服飾
なった。
品の選択やその着用行動にもっとも初期の段階で影響
(5)
する要因であるとした。これは消費者が服飾品を目に
知覚リスク
してから、刺激としてとらえる過程を指し、それは自
多くの消費者は商品を購入する際に、その商品は自
分自身への価値評価や他者からの評価に影響されると
分に似合うのか、その商品を購買することで他者から
ある14。
どう思われるのかといった何らかの不安や懸念を感じ
■表―――9
たことがあるのではないだろうか。Bauer[1960]によ
服飾品における消費者行動
ると、消費者のすべての行為は、彼らがほぼ確信をも
って予期することができない結果を引き起こし、そし
てそのいくつかは、少なくとも不快なものかもしれな
(出典:神山進『被服心理学』[1985]より筆者作成)
いという意味において、消費者行動はリスクを伴うも
のであるという。この消費者が商品を購買する際に感
次にテイラーによる「消費者行動におけるファッシ
じるリスクを、知覚リスクと言う。そして、消費者は
ョン・リスクの取得」表 9 によると、消費者は服飾品
その知覚リスクが低減するような方法を模索する行動
を選択してからファッション・リスクを知覚するとあ
を取る。つまり、リスク低減が購買に影響することが
る。ファッション・リスクについては後述するが、自
言えるだろう。
己や他者からの評価に影響されると考えられる。ここ
Jacoby and Kaplan[1972]によると、
知覚リスクは 6
で知覚されたファッション・リスクを低減させるため
つの要素から成るとしている。
「機能的リスク」
「社会
にリスク低減行動が発生し、購買行動につながるとさ
的リスク」
「心理的リスク」
「経済的リスク」
「身体的リ
れた。
スク」
「時間的リスク」である。これらリスクの詳細は
下記の表に記述した通りである16。
(4)
消費者の意思決定プロセス
本項では、Howard[1989]が提示した消費者意思決
定モデルについて言及する。このモデルは、Howard
の情報処理モデルを Howard-Sheth モデルに組み込
15
14
16
神山[1985]P185
12
清水[2013]
神山[1997]
するファッション・リスクの 2 つに着目した。
■表―――10
知覚リスク
「機能的リスク」
「社会的リスク」
「心理的リスク」
神山・高木によると、衣服を購入する際に消費者が
品質・性能に関する不
感じるリスクは 5 つの成分から構成される。
「ふさわ
備・不良に関するリスク
しさ」への懸念、
「品質・性能」への懸念、
「着こなし」
他者や所属集団から悪い
への懸念、
「自己顕示」への懸念、
「流行性」への懸念
評価を与えてしまうこと
である。これら懸念の詳細な内容は下記の表を参照と
に関するリスク
する。
自己イメージ・自分らし
■表―――11
衣服におけるファッション・リスクの概要
さを失うことに関するリ
「ふさわしさ」への懸念
スク
「経済的リスク」
「身体的リスク」
製品購買・金銭的損失に
者がどのような評価をす
関するリスク
るのか、また良い評価を
健康・安全性に支障をき
した際に気はずかしさを
たす可能性に関するリス
感じるかを懸念したもの
「品質・性能」への懸念
ク
「時間的リスク」
購入する衣服に対して他
衣服の維持や管理、着心
地などの考慮したもの
買い替え・修理の際に発
「着こなし」への懸念
生する時間の損失に関す
自分に似合うのか、着こ
なすことができるか、自
るリスク
(出典:神山進『被服心理学』[1985]より筆者作成)
分の所有している衣服と
この 6 つのリスクのうち「社会的リスク」は、他者
の組み合わせが可能であ
の評価を気にするリスクであることから、既存研究(1)
るかという不安で、無用
で示したバンドワゴン効果を引き起こす要因となるリ
な金銭の浪費を心配した
スクであると考察する。
もの
「自己顕示」への懸念
消費者は購買意思決定を行う際に、上記の表で示し
購入する衣服によってど
たような 6 つのリスクを確実に感じる。そして、これ
の程度自己を表現するこ
らのリスクを低減する手段を探索するのである。
とができるのかを心配し
たもの
(6)
「流行性」への懸念
ファッション・リスク
流行への認識が間違って
前述したように、消費者は購買する際に、知覚リス
いないか、流行を捉えた
クを感じる。知覚リスクの中でも特にファッション製
衣服選択ができているか
品を購入する際に感じるリスクのことをファッショ
を恐れたもの
ン・リスクと言う17。ファッション・リスクに関する
研究の中でも、神山・高木[1987]の衣服に特化したフ
(出典:神山、高木『ファッション・リスクに関する研究(第
ァッション・リスクと杉本[1992]の高級ブランドに対
一報)‘知覚されたファッション・リスク’の構造』[1987]
より筆者作成)
17
神山・高木[1987 ], P32
13
続いて杉本によると、高級ブランドを購入する際に
いるブランド品を購入す
消費者が感じるリスクは 7 つの因子から成る。
「品質
ることを嫌い、他者と差
評価因子」
「自己表現因子」
「話題性因子」
「優越性因子」
別化したいという欲求
「逸脱回避因子」
「不協和回避因子」
「反同調性因子」
(出典:杉本徹雄『ブランド志向の態度構造分析』[1992]よ
である。これら因子の具体的な説明は表 12 を参照と
り筆者作成)
する。
繰り返しになるが、本研究の目的は、ファッション
■表―――12
業界においてキャズムを越えるために「セカンドライ
ブランドにおけるファッション・リスクの概要
ンにおける消費者の購買プロセスの解明」をすること
「品質評価因子」
購入したブランド品によ
である。そのため、上記の衣服と高級ブランドにおけ
って、品質やブランド品
るファッション・リスクは、セカンドラインにおいて
選択の理由を帰属させる
も対象と成り得るリスクであると考察する。また、セ
側面、また、反復購買す
カンドラインにおける消費者のファッション・リスク
る際の情報負荷の低減を
が研究されていないことから、消費者のリスク低減行
する
動を研究することは、意義のあるものであると言える
購入したブランド品によ
であろう。
「自己表現因子」
って、自己のイメージや
(7)
好みを表現する
「話題性因子」
それでは、ここまでの既存研究で明らかとなったも
購入したブランド品によ
のを総括する。
って、流行を捉え、集団
(1)では、イノベーター理論について述べた。本節で
のファッションに同調す
「優越性因子」
「逸脱回避因子」
「不協和回避因子」
「反同調性因子」
既存研究のまとめ
る
は、本来はハイテク市場で用いられることが多かった
購入したブランド品が、
イノベーター理論が、ファッション業界においても適
自己のステータスとな
応することが示唆された。また、近年キャズムを越え
り、他者に対して優越感
る手段として、フォロアーと呼ばれる消費者集団に注
を持つ
目した研究が行われている。このフォロアーは、バン
購入したブランド品によ
ドワゴン効果を起こして購買するという特性があると
って、社会から外れるこ
推論した。しかし、ファッション業界においてキャズ
とや異端視扱いされるこ
ムを越える方法は未だ明らかになっていない。このこ
とを避けることができる
とから、本研究はファッション業界の今後の発展に対
購入したブランド品が、
し、意義のある研究であると言えるであろう。
商品選択の際に起きる認
(2)では、ブランドの機能について明示した。本研究
知的不協和を回避し、ま
では、ブランドのもつ 4 つの機能のうち自己表現的機
た普及品を購買する際の
能に着目し、2 つの自己呈示に分類した。自己呈示は
リスクを低減する
他者を意識した「同調的」な自己呈示、自己を意識し
多数の消費者が所有して
た「独自的」な自己呈示に分類され、それによって消
費者の好みや、自己の見せ方の違いが発生するという
14
2. セカンドライン購買プロセスの構築及び仮
ことが明らかになった。
(3)では、服飾品の消費者購買プロセスとして、知覚、
説の提唱
ファッション・リスク、リスク低減、購買意図の順で
(1)
購買が喚起されることが分かった。本研究では、この
モデルをベースとし研究を進める。その理由として、
セカンドライン購買プロセスの構築
前述した既存研究を踏まえ、本章では、
「セカン
本研究の目的はファッション産業においてキャズムを
ドラインにおける消費者の購買プロセスモデルの構築」
越えるために、
「セカンドラインにおける消費者の購買
を行う。
プロセスの解明」をすることである。そのため、セカ
本研究で構築する購買プロセスの軸は、神山[1985]
ンドラインも服飾品に含まれることから、このモデル
の服飾品における消費者行動モデルである。本研究の
は本研究に即したモデルであると考える。
研究対象は、
服飾品に含まれるセカンドラインである。
(4)では、ブランド認知が購買に繋がることが明らか
このことから、このモデルは、本研究に即したモデル
になった。このことから、(3)で示した服飾品の消費者
であると考える。
購買プロセスの知覚は、ブランド認知に置き換えるこ
このモデルを用いるにあたり、本研究の研究対象で
とができると言える。
あるセカンドラインに限定して援用することとする。
(5)では、消費者は購買意図プロセスの間で相違なく
これを踏まえ、パス・ダイアグラムにまとめたものが
知覚リスクを感じ、そのリスクを低減する手法を探索
表 13 である。
する行動をとることが分かった。この知覚リスクを低
■表―――13
減する行動は、(3)で示した購買プロセスのリスク低減
「セカンドライン」に援用した購買プロセス
に適合すると想定する。
そして、(6)では、(5)で記述した知覚リスクの中でも
衣服と高級ファッションブランドに焦点を当てたファ
ッション・リスクが存在することを記載した。これら
これに、既存研究(4)で示した Howard[1989]の消費
は、本研究の研究対象であるセカンドラインにおいて
者意思決定プロセスを参考とすると、ブランド認知は
も対象となりうるリスクであると考えた。また、ここ
購買意図に結び付くことが明らかになった。また、本
からセカンドラインにおける明確な動機が解明されて
研究では、セカンドラインの情報はメインブランドの
いないことが分かった。そのため、本研究でセカンド
影響により既に持っているものとするため、セカンド
ラインにおける消費者の購買動機を解明することは意
ラインに対する知覚は、セカンドラインの認知と入れ
義があると言える。
替えることとする。
これを表したものが表 14 である。
以上の既存研究と考察より、本研究の研究意義が明
らかになったと共に、これをセカンドラインの購買プ
■表―――14
ロセスの構築及び仮説提唱の基礎とする。
認知に置き換えたセカンドライン購買プロセス
次に、セカンドラインに対するリスク低減行動を具
体化する。ここでは、既存研究(4)で記載した Jacoby
15
and Kaplan[1972]が示した 6 つの知覚リスクを使用
質評価・逸脱回避・話題性・自己表現・着こなし・優
し、さらにそれをリスク低減へと変換する。Jacoby
越性の 6 つを抜粋する。本研究ではこれら 6 つの懸念
and Kaplan が表した 6 つの知覚リスクは「機能的リ
を対象とし、先ほど 3 つのリスク低減の中で意味が同
スク」
「社会的リスク」
「心理的リスク」
「経済的リスク」
様なものにパスを繋げる。その結果、意味が品質評価
「身体的リスク」
「時間的リスク」である。これらの中
は機能的懸念低減メリット、逸脱回避と話題性を社会
で、身体的リスクと時間的リスクは本研究の研究対象
的懸念低減メリット、そして自己表現と着こなし・優
であるセカンドブランドには関係のないものであると
越性を心理的懸念低減メリットに結ぶこととする。こ
考える。さらに、金銭面以外の消費者のセカンドブラ
れをモデルに組み入れたものが表 16 である。
ンド購入の動機を研究するため、経済的リスクは本研
■表―――16
究にはそぐわないとする。つまり、これら 3 つのリス
懸念を組み入れたセカンド購買プロセス
ク以外をリスク低減の対象とする。
このことから、消費者は性能面の持つリスクである
機能的リスク、集団から逸脱するリスクである社会的
リスク、そして自分らしさを損なうリスクである心理
的リスクを低減しようとする行動を取ると考えられる。
よって、これらを機能的懸念低減メリット、社会的懸
念低減メリット、
心理的懸念低減メリットと変更する。
これをモデルに組み入れたものが表 15 である。
本研究では、表 16 のモデルをセカンドラインにお
■表―――15
懸念低減メリットを組み込んだセカンド購買プロセス
ける消費者の購買プロセスモデルとする。
(2) 仮説の提唱
上記で示した購買プロセスモデルをもとに、仮説を
提唱する。
本研究で構築した仮説は大きく分けて 8 つある。
以下がその一覧である。
続いて、セカンドラインに対するファッション・リ
スクを体現化する。先に述べた既存研究(5)で示した、
仮説 1:ブランド認知はファッションにおける懸念に
ファッション・リスクには、神山・高木[1987]の衣服
正の影響を与える
に対するファッション・リスクと杉本[1992]のブラン
i.
ブランド認知は品質・評価に正の影響を与える
ドに対するファッション・リスクの 2 つを用いる。こ
ii.
ブランド認知は逸脱回避に正の影響を与える
れらのファッション・リスクを比較し同質なものを消
iii.
ブランド認知は話題性に正の影響を与える
去する。すると、品質評価・逸脱回避・話題性・自己
iv.
ブランド認知は自己表現に正の影響を与える
表現・着こなし・優越性・不協和回避・反同調性の 8
v.
ブランド認知は着こなしに正の影響を与える
つが残存した。この中でも、セカンドブランドに含ま
vi.
ブランド認知は優越性に正の影響を与える
れるであろう因子のみを対象とする。したがって、品
仮説 2:品質評価は機能的懸念低減メリットに正の影
16
仮説 1 は、ブランド認知がファッションにおける心
響を与える
仮説 3:逸脱回避は社会的懸念低減メリットに正の影
理項目に正の影響を与えるということである。杉本
響を与える
[1992]のブランド志向の態度構造分析によると、消費
仮説 4:話題性は社会的懸念低減メリットに正の影響
者情報処理および社会心理学要因から導出されたブラ
を与える
ンドに対する態度 33 項目の質問は 7 つの因子に分別
仮説 5:自己表現は心理的懸念低減メリットに正の影
されている。さらに神山[1963]はファッション・リス
響を与える
クを提唱しており 6 つの項目がある。二つの研究を熟
仮説 6:着こなしは心理的懸念低減メリットに正の影
考し、それらの計 6 つの要素を抽出した。認知から購
響を与える
買においての過程に抽出した 6 つの項目を導入してブ
仮説 7:優越性は心理的懸念低減メリットに正の影響
ランド認知がファッションにおける懸念に正の影響を
を与える
与えるという仮説を立てた。
仮説 8:懸念低減メリットは購買意図に正の影響を与
b.
える
a.
ii.
iii.
仮説 2、3、4、5、6、7 について
機能的懸念低減メリットは購買意図に正の影響
仮説 2:品質評価は機能的懸念低減メリットに正の影
を与える
響を与える
社会的懸念低減メリットは購買意図に正の影響
仮説 3:逸脱回避は社会的懸念低減メリットに正の影
を与える
響を与える
心理的懸念低減メリットは購買意図に正の影響
仮説 4:話題性は社会的懸念低減メリットに正の影響
を与える
を与える
仮説 5:自己表現は心理的懸念低減メリットに正の影
仮説 1 でブランド認知のファッションにおける懸念
響を与える
に与える影響について検証し、さらに仮説 2、3、4、5、
仮説 6:着こなしは心理的懸念低減メリットに正の影
6、7 でセカンドライン製品に対する知覚リスクとそれ
響を与える
ぞれのリスクにおける低減メリットの関係性、最後に
仮説 7:優越性は心理的懸念低減メリットに正の影響
仮説 8 で各懸念低減メリットと購買意図との関係性を
を与える
検証した。それらにより、高級ブランドにおけるセカ
ンドライン製品の購買について価格以外の要素は何が
これらの仮説は懸念低減メリットに正の影響を与
重要で、消費者はどのような懸念、またその低減を経
えるということである。仮説 2 は、自己の行動に対す
て購買に至るのかを検証したい。
る態度が機能的懸念低減メリットに強く影響を与えて
次にそれぞれの詳細を述べる。
いると言える。仮説 3、4 は自己の準拠集団に対する
意識が社会的懸念低減メリットに強く影響を与えてい
(3)
本研究における仮説モデル
ると言える。仮説 5、6、7 は自己のブランド製品の組
a.
仮説 1 について
み合わせが心理的懸念低減メリットに強い影響を与え
仮説 1:ブランド認知はファッションにおける心理
ている。消費者がブランド認知すると生じるファッシ
項目に正の影響を与える
ョン・リスクを知覚リスクが回避、解消する。知覚リ
スクは 6 つあるが、金銭的リスクを省いた中で関係性
17
(2)プレ調査概要
が強いと思われる機能的リスク、社会的リスク、心理
プレ調査で検証すべき点は 2 つある。一つは、大学
的リスクから仮説を検証する。
生がセカンドライン製品を購買する際に金銭面以外に
c.
仮説 8 について
も重要な要素があるのかということ。二つ目が、セカ
仮説 8:懸念低減メリットは購買意図に正の影響を
ンドライン製品の認知が大学生の中で十分であるかと
与える
i.
ii.
iii.
いうことを確かめることである。
機能的懸念低減メリットは購買意図に正の影響
■表―――17
を与える
プレ調査の概要
社会的懸念低減メリットは購買意図に正の影響
調査日:2014 年 10 月 15 日
を与える
調査対象:女子大学生
心理的懸念低減メリットは購買意図に正の影響
標本数:100
を与える
媒体:紙・web
質問内容
仮説 8 は、各懸念低減メリットが購買意図に正の影
①セカンドライン製品をどの程度知っているか
響を与えるということである。認知において生じたフ
②セカンドライン製品を選択するにあたり重視する
ァッション・リスクを知覚リスクで低減して、
その各々
項目は何か
のリスク低減因子が購買意図に強い影響を与えている
と考えて仮説 8 を設定した。この仮説を検証すること
によって、高級ファッション業界におけるセカンドラ
問 1 に関しては、いくつかのセカンドライン製品を
イン製品の購買が価格による影響だけではないという
提示し、それを知っているかどうかという質問形式を
観点から検証したい。
とった。ブランドをいくつか用意するのはセカンドラ
イン製品全般に通じる研究を行うためであり、一つの
3. 仮説の検証
ブランドのブランド・パーソナリティに統計結果が左
右されることを防ぐためである。
(1)調査概要と調査方法
問 2 はこちらから選択肢を複数提示し、当てはまる
対象を女子大学生とし、
変数が多いモデルを使用す
ものすべてを選択する形をとった。
るため大規模なサンプルが必要となる。調査は、プレ
■表―――18
調査と本調査の 2 度行った。
女子大学生のセカンドライン製品の認知率
認知から購買のプロセスを研究するにあたり、
セカ
ンドライン製品の認知率の高さ、さらに現状分析で一
度述べたが、金銭面以外の重要な要素が存在するとい
う前提が必要となる。そこでプレ調査ではそれらにつ
いての 2 問を設置し、それが実証された後、共分散構
造分析を用い本研究のモデルを検証する。なお、詳細
については補録としてアンケート票が添付してある。
18
b.
問1 は女子大学生の90%がセカンドライン製品を認
本調査概要
知していると回答したという結果となった。これによ
■表―――20
り本研究において、セカンドラインの認知率は高く、
本調査の概要
仮説モデルを用いることが妥当であるということが検
調査期間:10 月 23 日~10 月 27 日
証された。
調査対象:女子大学生
■表―――19
標本数:361 有効回答数:320
女子大学生がセカンドライン製品を購買する際に重視
媒体:紙・web
する要素
質問内容
①
認知について
②
心理について
③
リスク低減について
④
購買意図について
本研究の質問項目は、共分散構造分析を用いるため
7 段階のリッカート尺度を採用しており、4 つの質問
項目に分別される。問 1 は Q1 から Q2-4 までの質問
内容となっており、Q1 は認知度を測る設問で認知度
問 2 は現状分析の繰り返しとなるが、セカンドライ
が高いターゲットを絞るために設置し、Q2-1 から
ン製品購買の際、女子大学生は価格面以外も重視する
Q2-4 はセカンドブランドの認知に関する設問で、
度合
傾向にあるということが検証された。このことから本
いを図るために独自に作成した。問 2 は Q3-1 から
研究の仮説モデルである、金銭面を考慮しないセカン
Q8-4 までの質問内容となっており、
消費者の感情につ
ドラインの購買プロセスを研究することに意義がある
いての質問となっている。質問文の構築は、神山・高
ということができるだろう。
木[1987]のファッション・リスクと杉本[1992]の態度
構造分析の質問項目を参考にして、本研究に合った形
(3)
本調査
に修正して使用する。問 3 は Q9-1 から Q11-4 までの
a.
調査方法
質問内容となっており、Jacoby & Kaplan[1972]から
本調査では、現状分析にもあるように高級ファッシ
引用した。機能面・社会面・心理面の 3 つのリスク低
ョン業界におけるセカンドライン製品の購買に関して
減についての質問を構築している。問 4 は Q12-1 から
調査対象を女子大学生に設定した。統計手法は共分散
Q12-3 までの質問内容となっており、セカンドライン
構造分析(SEM: Structural Equation Modeling)を
製品の購買についての質問となっている。なお、統計
用いる。本研究では感情やリスク低減の数値化できな
に関しては IBM SPSS Statistics21, Amos Graphics
い変数の因果関係を見るものであるため、直接的に数
を用いた。
量化できない構成概念の因果を説明することができる
各潜在変数に対応した質問項目を表に現すと以下
共分散構造分析を用いることは妥当であると考えられ
のようになる。
る。
19
■表―――21
心理的懸念
潜在変数に対応した質問項目の一覧
低減メリット
認知
Q2-1, 2-2, 2-3, 2-4
品質評価
Q3-1,3-2,3-3,3-4
購買意図
Q11-1,11-2,11-3,11-4
Q12-1,12-2,12-3
本研究の仮説モデルは以下のようになり、統計的解
逸脱回避
Q4-1,4-2,4-3,4-4
話題性
Q5-1,5-2,5-3,5-4
自己表現
Q6-1,6-2,6-3,6-4
着こなし
Q7-1,7-2,7-3,7-4,7-5
優越性
Q8-1,8-2,8-3,8-4
機能的懸念
低減メリット
社会的懸念
低減メリット
析を行った。また、Q1 の質問項目は認知度が高い標
本のみを抽出するために設置し、7 段階中 5 以上と回
答したサンプルのみに絞り分析を実行した。
Q9-1,9-2,9-3,9-4
Q10-1,10-2,10-3,10-4
■表―――22
本研究における仮説モデル
20
(4)
分析結果と検証
した。しかし、社会的懸念低減メリットから機能的懸
統計モデルを用いて分析を試み、決定係数が芳しく
念低減メリット・心理的懸念低減メリットへの有意の
ない観測変数を除去して再度分析したところ、いくつ
パスが存在することが明らかになり、さらに有意であ
かのパスが非有意になるという興味深い結果が得られ
る新たなパスも追加して修正を行った。修正を行った
た。まず仮説 3 と仮説 6 が棄却され、心理項目の逸脱
モデルが以下である。
回避と着こなしを除去した。さらに仮説 5 が棄却され
たが、自己表現から社会的懸念低減メリットへのパス
を引くと有意であるということが明らかになり、修正
した。最後に仮説 8-ⅱが棄却され、社会的懸念低減メ
リットが直接購買意図に繋がらないということが判明
■表―――23
修正を加えたセカンドラインの購買プロセスモデル
(出典:筆者作成)
各パス係数は補録として記載しているので参照し
・社会的懸念低減メリット→機能的懸念低減メリット
ていただきたい。
・社会的懸念低減メリット→心理的懸念低減メリット
新たなパスとしては、
・社会的懸念低減メリット→優越性
の 4 つである。
・自己表現→社会的懸念低減メリット
21
研究において、重要なことは構築した仮説がすべて
リット」に関しては、前述したとおり社会的に認めら
支持されることではなく、棄却された仮説がなぜ支持
れた後にさらにほかのリスクが低減され購買に至ると
されなかったかを解釈することである。ここでは棄却
いことが明示されたといえよう。
された仮説を一つずつ解釈する。
「社会的懸念低減メリット→優越性」について、話
「仮説 3:逸脱回避は社会的懸念低減メリットに正
題性や自己表現を経て社会的懸念低減メリットを介し
の影響を与える」が棄却された理由としては、そもそ
優越性に至るパスが有意であるということが明らかに
もブランド品は自己呈示のために存在し、セカンドラ
なった。社会的懸念低減メリットだけでは購買に至ら
イン製品を購買するにあたり周囲から逸脱するかどう
ないことから、心理的懸念低減メリットを介する前の
かという感情が弱いのではないかと考えられる。高級
仮定をより具体的に示した結果といえよう。
ブランド並びにセカンドラインの研究ならではの結果
(5)
といえよう。
「仮説 5:自己表現は心理的懸念低減メリットに正
モデルの全体的妥当性
次にモデルの妥当性をモデル適合の指数から見る。
の影響を与える」について、自己表現は他者の存在あ
モデル適合度を測る指標は、GFI,AGFI,CFI,RMSEA
っての感情であり、個人的側面が強い心理的リスクで
の 4 つを用いる。
はなく社会的リスクに強い影響が出たのではないかと
■表―――24
考えられる。その根拠として社会的リスクとの間に有
モデル適合
GFI
0.871
AGFI
0.831
の影響を与える」は、ブランドの主な製品は鞄や財布
CFI
0.936
といったファッションの一部として取り入れられる製
RMSEA
0.081
意であるパスが新たに引かれた。
「仮説 6:着こなしは心理的懸念低減メリットに正
品が多いため、全体のコーディネートにおいて着こな
せるかどうかという着こなし懸念が強く現れなかった
分析結果のモデル適合度指標は GFI=0.871,
と推測される。
「仮説 8-ⅱ:社会的懸念低減メリット
AGFI=0.831,CFI=0.936, RMSEA=0.081 であった。
は購買意図に正の影響を与える」について、この結果
豊田[1998]によると GFI, AGFI,CFI の理想値は 0.90
から社会的リスクは購買意図に直接関係しないという
以上であり、CFI は基準を十分に満たしたが GFI,
ことが明らかになった。その理由としては社会に同調
AGFI はともにこれを下回る結果となった。しかしな
するだけでは購買に至らず、さらに何らかのリスクが
がら豊田[2007]はこれらの指標は観測変数の数に影響
低減されてから購買に至ると考えられる。
される傾向があることを示し,本研究におけるモデル
次に、新たなパスが引かれた部分において考察して
には多くの観測変数が組み込まれているため GFI,
いく。
AGFI が大きくならなかったと推測される。さらにこ
「自己表現→社会的懸念低減メリット」においては
れらは標本数にも影響を受けるため、標本数が増加す
前述したとおり、自己表現は他者の存在によって生じ
るにつれ基準値の 0.90 に近づくことが期待される。ま
ている感情であり、社会的懸念低減メリットに有意な
た、豊田[1998]によると RMSEA が 0.10 以下であれ
パスが引かれると考えられる。
ばモデルの採用が可能であり、今回は 0.081 と基準の
「社会的懸念低減メリット→機能的懸念低減メリ
0.10 を下回っているため、本研究におけるモデルを採
ット」
、
「社会的懸念低減メリット→心理的懸念低減メ
用する。
22
(6)
モデルの部分的妥当性
セスの間に知覚リスクを介するということが実証され
次にモデルの妥当性を各質問 R2 乗値と、因子間の
た。
有意確率から確認し、
さらにクロンバックの α 係数
(信
b.
頼性分析)を検証し、モデルの部分的妥当性を評価す
心理的項目→懸念低減メリット
心理的項目からリスク低減行動における仮説、仮説
る。
2、3、4、5、6、7 のうち、逸脱回避、着こなし、自
■表―――25
己表現を除く 3 つの仮説が支持された。しかし、新た
決定係数
なパスとして「自己表現→社会的懸念低減メリット」
の有意性が確認された。
変数
決定係数
変数
決定係数
Q2-1
0.792
Q9-3
0.782
Q2-2
0.782
Q9-4
0.775
懸念低減メリットから購買意図における仮説、仮説
Q3-1
0.663
Q10-2
0.775
8ⅰから 8ⅲのうち、仮説 8ⅱ「社会的懸念低減メリッ
Q3-2
0.798
Q10-3
0.895
ト→購買意図」が非有意という結果になった。そこで
Q4-3
0.818
Q10-4
0.882
既存研究に反し、セカンドライン購買において、社会
Q4-4
0.693
Q11-1
0.816
Q6-2
0.881
Q11-2
0.786
Q6-3
0.786
Q11-4
0.786
Q8-2
0.725
Q12.2
0.857
Q8-4
0.806
Q12.3
0.858
Q9-2
0.794
c.
懸念低減メリット→購買意図
的懸念は購買意図に直接至らないという新たな発見が
あった。
d.
新たな知見
仮説とは異なる新たなパスが引かれたのは、
・自己表現→社会的懸念低減メリット
・社会的懸念低減メリット→機能的懸念低減メリット
・社会的懸念低減メリット→心理的懸念低減メリット
・社会的懸念低減メリット→優越性
各質問項目の決定係数 R2 乗値は上記のとおりで、
の 4 つである。自己表現は心理的懸念低減メリットへ
いずれも高い数値を示している。また、有意確率や標
のパスが非有意であり、社会的懸念低減メリットに有
準誤差、信頼性分析の結果と各質問項目は補録に記載
意であった。このことからセカンドライン購買によっ
した。
有意確率は
「優越性→心理的懸念低減メリット」
て自己表現は他者を前提とした心理であるということ
は 5%以下、それ以外のすべての係数は有意確率 0.1%
が明らかになった。さらに本研究では、社会的リスク
以下という結果になった。さらに各因子の信頼性分析
が低減されても直接購買意図には至らず、機能的もし
を行ったところ、すべての因子が 0.8 以上という高い
くは心理的懸念低減メリットを介して購買意図に繋が
数値を示しており、このモデルは部分的にも妥当であ
ることが判明した。社会的懸念低減メリットから心理
ると解釈した。
的懸念低減メリットへ移行する結果から、消費者はセ
カンドライン製品購買においてただ準拠集団や周りの
(7)
分析結果の考察
a.
認知→心理的項目
承認を得ただけでは購買に至らず、その中で自分を発
揮できると考えると購買に至るということが明らかに
認知から消費者心理における仮説、仮説 1ⅰから 1
なった。機能的懸念低減メリットを経て購買意図に至
ⅵのうち、逸脱回避、着こなしを除く 4 つの仮説が支
るという結果は、他者からの同意ではなく、自分自身
持された。このことから認知から購買意図に至るプロ
23
で満足しなければ購買しないという心理が生じて
リットに正の影響を与える
いると考えられる。さらに、社会的懸念が低減さ
社会的懸念低減メリットは心理的リスク低減メ
れた後、優越性を感じて心理的懸念低減メリット
リットに正の影響を与える
に移行する現象も見られた。
社会的懸念低減メリットは優越性に正の影響を
与える
(8)
分析まとめ
既存研究では懸念低減メリットは購買に繋がる
本研究において、提唱した仮説の多くが支持さ
とある。しかし、セカンドライン製品の購買にお
れたが、一部は棄却される形となった。しかし、
いては、すべての懸念低減メリットが購買意図に
認知から知覚リスク、さらに懸念低減からの購買
正の影響を与えるとは必ずしも限らないことが明
意図という購買プロセスが起こりうるということ
らかになった。さらに社会的懸念低減メリットを
が実証された。有意であったパスを再度確認する
感じた後に、他の懸念低減メリットに移行すると
と以下のようになる。
いう 2 段階のプロセスを経て購買に至るという新
■表―――26
たな発見を得ることができた。また、機能的・心
有意が出たパスの一覧
理的懸念低減メリットにおいては認知から知覚リ
認知は品質に正の影響を与える
スクを経て直接購買意図に繋がることが検証され
認知は話題性に正の影響を与える
た。
認知は自己顕示に正の影響を与える
結果として、仮説が支持された部分と新たな知
認知は優越性に正の影響を与える
見により認知から知覚リスク、またその低減から
品質は機能的懸念低減メリットに正の影響を与
の購買意図に繋がるということが検証された。さ
える
らにその過程は様々で、直接購買に繋がるものと 2
話題性は社会的懸念低減メリットに正の影響を
段階のプロセスを経て購買に繋がる場合があると
与える
いうことが明らかになった。
本研究はセカンドライン製品の購買において消
自己顕示は社会的懸念低減メリットに正の影響
を与える
費者の心理を解明したことによりセカンドライン
優越性は心理的懸念低減メリットに正の影響を
を提供している高級ブランドにとって非常に有意
与える
義な研究であったといえるだろう。
機能的懸念低減メリットは購買意図に正の影響
を与える
心理的懸念低減メリットは購買意図に正の影響
を与える
社会的懸念低減メリットは機能的リスク低減メ
24
4. 新規提案
■表―――27
本研究のモデル
(出典:筆者作成)
本章では、ここまでの分析結果を踏まえ実務的
に関するリスクを低減することと定義している.
応用としての示唆を行う。
今回ターゲットとした女子大学生は、セカンド
実際に本研究で提唱した下記のモデル表 27 に沿
ライン製品を認識してから、その製品が流行を捉
って提言していくのだが今回の研究結果によると、
えているか、そのことを周りの人も知っているか
①認知→②話題性→③社会的懸念低減メリット→
どうかの懸念を抱く。この懸念を低減するために、
④心理的懸念低減メリット→⑤購買意図の繋がり
周りの人と同調しているという安心感、つまり社
が最も強く現れた。②の話題性とは、購入した商
会的懸念を低減させるメリットを与えた上で、心
品によって流行を捉え、集団のファッションに同
理的懸念を低減させる必要がある。
調すること、③社会的懸念低減メリットとは他者
これに即した提案を行う。今回提案するのはブ
や所属集団から悪い評価を得てしまうことに対す
ランドの世界観を生かした写真撮影企画である。
るリスクを低減すること、④心理的懸念低減メリ
以下、具体的に提案内容を論ずる。前述した過程
ットとは、自己イメージや自分らしさを失うこと
を踏まえた上で、高級ブランドにおいてファッシ
25
ョン・フォロアーである女子大学生に対するセカ
と考えられる。
ンドライン製品の販売と商品認知、ブランド価値
の向上を目的とし、様々なセカンドラインが出店
④ ―――結論
する企画の提案を行う。具体的な企画内容として
は、主催者が複数の友人や家族での参加を条件に、
1. 本研究のまとめ
セカンドライン製品を試着しての撮影およびその
写真付きのブランドパンフレットを配布する。複
数人での来店に限る理由として次の二点を挙げる。
近年の不況の煽りを受け、多くの高級ブランド
第一に、話題性を喚起させるために、自分に限
がその低価格版であるセカンドラインを出した。
らず友人や家族といった準拠集団もセカンドライ
その背景として、企業は高級ブランドでは確保で
ン製品について気になっている、すなわち本人に
きない顧客、つまりファッション・フォロアーに
そのセカンドライン製品は話題性を持っていると
対して販売対象を拡大することにより、自社製品
認識させることが可能となる。第二に、準拠集団
の売り上げに繋げようとしている。一方で近年、
という他者からの意見を取り入れることが可能と
日本の消費者はブランド志向の減少と価格以外の
なり安心感を抱かせ、社会的リスクの低減が可能
要素を重視するという傾向が見られるため、単純
となる。
に、ブランドが低価格帯にしただけでは購買に繋
次に心理的懸念の低減が必要となる。そこで本
がらないという懸念がある。
研究では、セカンドライン製品を身に着けての写
そこで本研究では、高級ブランドのキャズムを
真撮影を行い、その撮影した写真付きのブランド
越えるという目的のもとで、ファッション・フォ
パンフレットを発行する。この写真撮影は各ブラ
ロアーのセカンドラインの購買プロセスを検証し、
ンドの世界観を表現したブースにて行うため、実
それぞれの動機が購買に与える影響を研究した。
際にセカンドライン製品を身に着けた自分がその
仮説は一部支持されなかったものの、分析結果や
ブランドによって輝けるといった特別感を抱かせ
既存研究から得る示唆、そして考察を踏まえて、
ることが可能となる。また、ブランドのパンフレ
セカンドラインを購買する消費者心理を示した。
ットの一番後ろに撮影した写真を差し入れ、アル
以下が本研究の研究結果をまとめたものである。
バムにすることにより、自分がそのブランドの一
部であるという気持ちにさせることが出来る。さ
・ファッション・フォロアーは「品質評価」
「話題
らに撮影した写真を見返す際や友人に見せる際、
性」「自己表現」「優越性」の4要素によって懸念
自然とパンフレット部分も再現することになり、
低減メリットを介して購買に繋がる
再購買意欲の掻き立て、並びに友人への商品の拡
・
「認知」
「話題性」
「社会的懸念低減メリット」
「心
散が期待される。
理的懸念低減メリット」
「購買」の順に繋がること
この提案により、ロイヤルティを高め、セカン
が最も強く出ている
ドライン製品の購買を効果的に促すことが出来る
26
本研究による消費者心理の概念から、ファッシ
ることが必要であろう。
ョン・フォロアーのセカンドラインの購買プロセ
スを検証するにあたって、価格以外の要素を抽出
➄
し、
「機能的」
「社会的」
「心理的」懸念低減メリッ
―――今後の展望
トを介して購買に至るという新たな知見を得るこ
とができた。そしてこの研究結果は、本研究の目
発展的研究として、メインブランドとの関係性
的である高級ブランドのキャズム越えを消費者心
を研究することが挙げられる。本研究で起こった
理から解明した。高級ブランドのファッション・
ことがメインブランドの購買プロセスと同じなの
フォロアーがセカンドライン製品を購買すること
か、また何が異なるのかということを解明したい。
で、キャズム越えが可能になる。今後の実務化が
本研究では、社会的懸念低減メリットが直接購
高級ブランドのセカンドラインを出すにあたって、
買に至らないことが明らかになった。この現象が
非常に有益な結果であると言える。
セカンドライン特有のものなのかブランド全体に
言えるものなのかを検証することに意義があると
2.
研究余地
考える。また、セカンドライン製品を女子大学生
本研究におけるモデル適合度は、CFI と RMSEA は
に購買してもらうことで将来のメインブランドの
基準を満たしたが、GFI や AGFI は基準値の 0.9 を
顧客とすることも企業の目的である。そこでセカ
わずかだが下回った。しかし、本研究はモデルに
ンドラインからファーストラインへの消費者の移
多くの観測変数が含まれているため GFI と AGFI の
行、並びに移行要因を解明したい。そのことが高
値が大きくならなかったためだと考えられる。よ
級ブランド市場の活性化に繋がるだろう。
り標本を集め、分析をかけることで GFI と AGFI が
基準値を満たすだろう。本研究は対象をセカンド
ラインに抵抗がない女子大学生のみに絞っており、
➅
―――おわりに
それに対する研究、新規提案を行った。しかし、
セカンドラインに対して男性よりも女性の方が、
本研究において、高級ファッションブランドが
抵抗が少ないということは、裏を返せば男性のセ
不況やファストファッションの台頭により苦しい
カンドライン購買において潜在的なマーケットが
状況であることに着目した。そこで、高級ファッ
存在し得るということである。そこで男性のセカ
ションブランドがキャズムを越える手段として、
ンドライン製品の購買プロセスの研究を研究余地
セカンドラインにおける消費者の購買プロセスの
として残したい。また、セカンドラインの位置付
解明を研究した。当初思い描いていた研究とは異
けは各ブランドによって異なり、それを訴求した
なる部分もあったが、非常に興味深い示唆を得る
マーケティングを行っている。本研究はセカンド
ことができたと言えるだろう。
ライン全般に通じる内容であった。そこで各高級
また、本研究は本大会のテーマである「明日話
ブランドのセカンドライン戦略に応じた研究をす
したくなるマーケティング」を念頭に研究を進め
27
参考文献
てきた。近年、多くのブランドがセカンドライン
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Marketing Strategy, Englewood Cliffs, NJ』Prentice
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ーソナリティ』横浜市大学紀要社会系列 2003,
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に及ぼす影響』商学論集, P98
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式モデリング』朝倉書店
矢野経済研究所[2013]『国内インポートブランド市場に
関する調査結果 2013』P2
野村総合研究所[1997,2000]『生活者 1 万人アンケート調
査』
を立ち上げ、消費者にとってセカンドラインが身
近な存在になりつつある。そのため、セカンドラ
インの購買プロセスとその動機の研究は、現代の
市場に即した研究と言えるのではないだろうか。
最後に、本研究が、高級ファッションブランドを
はじめ様々な業界の発展に寄与することができれ
ば幸いである。
28
補録
1.モデル分析結果
2.非標準化係数
3.信頼性分析結果(クロンバックのα係数)
4.モデル適合度
5.プレアンケートの調査票
6.本アンケートの調査票
補録 1
モデル分析結果
29
補録 2
標準化係数
推定値
推定値
品質評価
<--- 認知
0.305
Q2.1
<---
認知
0.89
話題性
<--- 認知
0.504
Q2.2
<---
認知
0.885
自己表現
<--- 認知
0.235
Q3.1
<---
品質評価
0.796
優越性
<--- 認知
0.382
Q3.2
<---
品質評価
0.893
<--- 品質評価
0.288
Q4.3
<---
話題性
0.905
<--- 話題性
0.524
Q4.4
<---
話題性
0.833
<--- 自己表現
0.246
Q6.2
<---
自己表現
0.939
<--- 優越性
0.134
Q6.3
<---
自己表現
0.886
0.75
Q8.2
<---
優越性
0.852
0.438
Q8.4
<---
優越性
0.898
0.353
Q9.2
<---
0.261
Q9.3
<---
0.575
Q9.4
<---
Q10.2
<---
Q10.3
<---
Q10.4
<---
Q11.1
<---
Q11.2
<---
Q11.4
<---
Q12.2
<---
購買意図
0.926
Q12.3
<---
購買意図
0.926
機能的懸念_
低減メリット
社会的懸念_
低減メリット
社会的懸念_
低減メリット
心理的懸念_
低減メリット
心理的懸念_
低減メリット
機能的懸念_
低減メリット
<--<---
購買意図
<---
購買意図
<---
優越性
<---
社会的懸念_
低減メリット
社会的懸念_
低減メリット
機能的懸念_
低減メリット
心理的懸念_
低減メリット
社会的懸念_
低減メリット
30
機能的懸念_
低減メリット
機能的懸念_
低減メリット
機能的懸念_
低減メリット
社会的懸念_
低減メリット
社会的懸念_
低減メリット
社会的懸念_
低減メリット
心理的懸念_
低減メリット
心理的懸念_
低減メリット
心理的懸念_
低減メリット
0.891
0.884
0.929
0.88
0.946
0.934
0.939
0.903
0.886
補録 3
係数
検定統計
推定値
標準誤差
確率
量
話題性
←
認知
0.608
0.77
7.876
***
自己表現
←
認知
0.281
0.75
3.733
***
←
話題性
0.539
0.58
9.359
***
←
自己表現
0.256
0.53
4.807
***
品質評価
←
認知
0.263
0.59
4.479
***
優越性
←
認知
0.451
0.59
7.623
***
優越性
←
0.546
0.46
11.791
***
0.347
0.68
5.095
***
0.697
0.54
12.975
***
0.366
0.44
8.347
***
0.131
0.54
2.422
0.015
0.385
0.65
5.929
***
0.256
0.57
4.452
***
社会的リスク
低減メリット
社会的リスク
低減メリット
社会的リスク
低減メリット
機能的リスク
←
品質評価
低減メリット
心理的リスク
社会的リスク
←
低減メリット
低減メリット
機能的リスク
社会的リスク
←
低減メリット
低減メリット
心理的リスク
←
優越性
低減メリット
機能的リスク
購買意図
←
低減メリット
心理的リスク
購買意図
←
低減メリット
31
補録 4
クロンバックのα係数 信頼性分析
観測変数(質問項目)
α係数
Q2-1:そのセカンドライン製品が気になる
0.884
Q2-2:そのセカンドライン製品を見たとき、その製品を欲しいと思う
Q3-1:そのセカンドライン製品を買うとき、品質が良いかどうか気にする
0.83
Q3-2:そのセカンドライン製品を買うとき、使い心地や着心地が良いかどうか気にする
Q4-3:雑誌やテレビで話題のセカンドライン製品を身につけたい
0.86
Q4-4:モデルが着用しているセカンドライン製品を身につけることでそれに近づきたいと思う
Q6-2:そのセカンドライン製品を買うとき、独自性を発揮できるものかどうか気にする
0.908
Q6-3:そのセカンドライン製品を買うとき、人とは違う自分を表現できるものかどうか気にする
Q8-2:そのセカンドライン製品を身につけると、他の人よりも魅力的になれると思う
0.869
Q8-4:そのセカンドライン製品を身につけていると、優越感を感じると思う
Q9-2:高級ブランドが提供しているセカンドライン製品を買えば、品質に関する大きな失敗を避けられる
Q9-3:高級ブランドが提供しているセカンドライン製品を買えば、品質や着心地の面で失敗はしないと思う
0.927
Q9-4:高級ブランドが提供しているセカンドライン製品を買えば、品質が悪くてがっかりすることはないと思う
Q10-2:高級ブランドが提供しているセカンドライン製品を買えば、少なくとも他者から悪く評価されることはないと
思う
0.943
Q10-3:高級ブランドが提供しているセカンドライン製品を買えば、周囲の人は自分に好意を抱いてくれると思う
Q10-4:高級ブランドが提供しているセカンドライン製品を買えば、周囲の人から反感を持たれることはないと思う
Q11-1:高級ブランドが提供しているセカンドライン製品を買えば、他者から悪い評価を受けることはないと思う
Q11-2:高級ブランドが提供しているセカンドライン製品を買えば、自分の個性がなくなることはないと思う
Q11-4:高級ブランドが提供しているセカンドライン製品を買えば、周囲と同じになってしまうことはないと思う
32
0.935
補録 5
モデル適合
CMIN
モデル
NPAR
CMIN
自由度
確率
CMIN/DF
55
519.882
176
.000
2.954
飽和モデル
231
.000
0
独立モデル
21
5432.491
210
.000
25.869
モデル番号 1
RMR, GFI
モデル
RMR
GFI
AGFI
PGFI
モデル番号 1
.262
.871
.831
.662
飽和モデル
.000
1.000
独立モデル
1.019
.230
.153
.209
基準比較
モデル
モデル番号 1
NFI
RFI
IFI
TLI
Delta1
rho1
Delta2
rho2
.904
.886
.935
.921
飽和モデル
1.000
独立モデル
.000
1.000
.000
.000
CFI
.934
1.000
.000
33
.000
補録 6
プレアンケート調査概要
【1】以下のブランドの中に知っているものが多い
・マーク・ジェイコブスの「Marc By Marc Jacobs」
・ジル・スチュアートの「JILL by JILLSTUART」
・クロエの「SEE BY CHLOÉ」
・プラダの「MIU MIU」
・コーチの「COACH Factory(アウトレット商品)
」
・ヴィヴィアン Gold Label の「Red Label」
□当てはまる
□どちらともいえない
□当てはまらない
【2】セカンドライン製品を買う際に、以下の項目で重視するものを全てチェックしてください。(複数回
答可)
□価格を気にするか
□品質・性能を気にするか
□周囲から奇異な目で見られないか
□自分の個性を発揮できることができるか
□自分に似合うのか
□着ることで自分が流行に乗っているか
□他者に対して優越感を持つことが出来るか
34
補録 7
本アンケートの調査表
高級ブランドのセカンドライン製品に関する調査(対象は女子大学生)
今回の調査は高級ブランド業界におけるセカンドライン製品の購買に関する調査です。
女子大学生の方を対象に調査しております。
高級ファッション業界における「セカンドライン製品」とは、メインブランドとデザイナーのイメージを
尊重しつつ、販売対象を広げるために価格を抑えたものです。
実際には
・マーク・ジェイコブスの「Marc By Marc Jacobs」
・ジル・スチュアートの「JILL by JILLSTUART」
・クロエの「SEE BY CHLOÉ」
・プラダの「MIU MIU」
・コーチの「COACH Factory(アウトレット商品)
」
・ヴィヴィアン Gold Label の「 Red Label」
などが挙げられます。それらのブランドをイメージしながらお答えください。
ただし、あなたは今十分にセカンドライン製品を購入できるだけのお金を持っていると仮定します。
各設問は 1~7の 7 段階となっており、前半部分は心理的項目、後半部分はリスク回避の項目となってお
ります。
第二問からの基準は
7:非常にそう思う
6:そう思う
5:ややそう思う
4:どちらともいえない
3:ややそう思わない
2:そう思わない
1:全くそう思わない
となっております。
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ご回答よろしくお願いいたします。
1. セカンドブランドの製品を買う金銭的余裕があるという前提で、以下の質問にお答えください。
【1:全くそう思わない、2:ほとんどそう思わない、3:どちらともいえない、4:ややそう思う、5:
非常にそう思う】
Q1.上記に挙げたブランドの中で知っているものがある。
1
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7
Q2-1.そのセカンドライン製品が気になる
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7
Q2-2.そのセカンドライン製品を見たとき、その製品を欲しいと思う。
1
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7
Q2-3.そのセカンドライン製品を見たとき、その製品を手に取ろうと思う。
1
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6
7
Q2-4.そのセカンドライン製品を見たとき、その製品をもっと知りたいと思う。
1
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7
Q3-1.そのセカンドライン製品を買うとき、品質が良いかどうか気にする。
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5
Q3-3.そのセカンドライン製品ならば、長期間使えるのでお得感があると思う。
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7
Q3-4.そのセカンドライン製品ならば、飽きにくいと思う。
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7
Q5-3.そのセカンドライン製品を選べば、社会や集団から外れることはない。
1
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7
Q5-4.人気が高いセカンドブランド製品を持ちたい。
1
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7
Q3-2.そのセカンドライン製品を買うとき、使い心地や着心地が良いかどうか気
にする。
Q4-1.そのセカンドライン製品を買うとき、世間の流行に合ったものかどうか気
にする。
Q4-2.そのセカンドライン製品を買うとき、世間で良く知られているものかどう
か気にする。
Q4-3.雑誌やテレビで話題のセカンドライン製品を身につけたい。
Q4-4.モデルが着用しているセカンドライン製品を身に着けることでそれに近
づきたいと思う。
Q5-1.そのセカンドライン製品を買うとき、人から変な目で見られないものかど
うか気にする。
Q5-2.そのセカンドライン製品を買うとき、目立ちすぎないものかどうか気にす
る。
Q6-1.そのセカンドライン製品を買うとき、自分の個性を表現できるものかどう
か気にする。
Q6-2.そのセカンドライン製品を買うとき、独自性を発揮できるものかどうか気
36
にする。
Q6-3.そのセカンドライン製品を買うとき、人とは違う自分を表現できるものか
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7
どうか気にする。
Q6-4.そのセカンドライン製品によって、自分のイメージやフィーリングを主張
できる。
Q7-1.そのセカンドライン製品を買うとき、自分の雰囲気にふさわしいものかど
うか気にする。
Q7-2.そのセカンドライン製品を買うとき、着こなしが難しいかどうか気にす
る。
Q7-3.そのセカンドライン製品を買うとき、自分に似合うかどうか気にする。
Q7-4.そのセカンドライン製品を買うとき、手持ちの服と組み合わせにくいので
はないかを気にする。
Q7-5.そのセカンドライン製品を買うとき、手持ちの服と組み合わせにくいので
1
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7
Q8-3.そのセカンドライン製品を持つことで、自分の価値が高められると思う。
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Q8-4.そのセカンドライン製品を身につけていると、優越感を感じると思う。
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7
はないかを気にする。
Q8-1.そのセカンドライン製品を買うとき、自分のコーディネートに影響を与え
るのではないかと気にする。
Q8-2.そのセカンドライン製品を身に着けると、他の人よりも魅力的になれると
思う。
Q9-1.そのセカンドライン製品を持つことは、自分のイメージアップに繋がると
思う。
Q9-2.高級ブランドが提供しているセカンドライン製品を買えば、品質に関する
大きな失敗を避けられると思う。
Q9-3.高級ブランドが提供しているセカンドライン製品を買えば、品質や着心地
の面で失敗はしないと思う。
Q9-4.高級ブランドが提供しているセカンドライン製品を買えば、品質が悪くて
がっかりすることはないと思う。
Q10-1.高級ブランドが提供しているセカンドライン製品を買えば、 品質や着心
地の面で安心感が得られると思う。
37
Q10-2.高級ブランドが提供しているセカンドライン製品を買えば、少なくとも他
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Q12-3.セカンドライン製品を買いたいと思う(上記の例以外のブランドも含む)
。 1
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5
6
7
Q12-4.セカンドライン製品を今後買うだろう(上記の例以外のブランドも含む)
。 1
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5
6
7
者から悪く評価されることはないと思う。
Q10-3.高級ブランドが提供しているセカンドライン製品を買えば、周囲の人は自
分に好意を抱いてくれると思う。
Q10-4.高級ブランドが提供しているセカンドライン製品を買えば、周囲の人から
反感を持たれることはないと思う。
Q11-1.高級ブランドが提供しているセカンドライン製品を買えば、他者から悪い
評価を受けることはないと思う。
Q11-2.高級ブランドが提供しているセカンドライン製品を買えば、自分の個性が
なくなることはないと思う。
Q11-3.高級ブランドが提供しているセカンドライン製品を買えば、自分らしさを
損なうことはないと思う。
Q11-4.高級ブランドが提供しているセカンドライン製品を買えば、周囲と同じに
なってしまうことはないと思う。
Q12-1.高級ブランドが提供しているセカンドライン製品を買えば、個性がない人
間に見られることはないと思う。
Q12-2.セカンドライン製品を買ったことがある(上記の例以外のブランドも含
む)
。
質問は以上になります。ご協力ありがとうございました。
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