中小企業金融の現状と課題 Ⅰ.中小企業金融円滑化法施行後の現状と課題 1.管内中小企業金融の現状と見通し 2.条件変更の現状と見通し 3.中小企業金融の課題 Ⅱ.金融機関による消費者向け貸付(住宅ローンを除く)の現状と課題 平成22年11月 東 北 財 務 局 ※記載されている内容は、おおむね10月中旬までに得られた情報に基づくものです。 Ⅰ.中小企業金融円滑化法施行後の現状と課題 1.管内中小企業金融の現状と見通し 1.管内中小企業金融の現状と見通し ※東北財務局管内中小企業(28社)及び、金融機関(銀行、信用金庫及び信用 組合。35先)に対しヒアリングを実施。(一部項目は金融機関のみから回答) 中小企業の業況 ○借り手側は、売上低迷、競争激化等を理由に、現状、先行きとも厳しいとみる企業が多い。 ○貸し手側も、先行きについて円高進行への懸念や売上低迷等が継続することなどを理由に、より悲観的な見方を している。 ◎金融機関ヒアリング結果 ◎景況判断BSI(第26回法人企業景気予測調査) (「上昇」―「下降」) 構成比(%) 現状判断 100% (%ポイント) 10 悪い 42.9 0 ▲ 10 悪い 68.6 ▲ 20 50% ▲ 30 良くも 悪くも 無い 57.1 ▲ 40 ▲ 50 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 21 (東北全産業) Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ 22 Ⅳ Ⅰ 23 0% 見通し 良い 0 現状 良い 2.9 良くも 悪くも 無い 28.6 見通し 〔借り手側〕 ・広告印刷受注は回復したものの、企業の販売促進費が依然抑えられていることに加え、競争激化(他県同業者)により受注単価の引下げ 圧力は強い。【製造業(印刷)】 ・今後も地価は確実に下がることが予想され、業況の好転は見込めない。 【不動産業】 〔貸し手側〕 ・全般的に、前年に比べても売上不振・伸び悩みが続いており、過当競争による価格下落などにより収益が確保できず業況は悪化している。 【信用金庫】 ・受注が回復していた企業も、円高進行等により先行き見通しに懸念を抱く先が多い。また、小売、建設、宿泊等の業種は売上増加の確たる 材料が無く、維持していくので精一杯。 【地方銀行】 1 Ⅰ.中小企業金融円滑化法施行後の現状と課題 中小企業の資金繰り ○借り手側は、条件変更の実施により資金繰りを賄った先が一部あるものの、現状、先行きとも厳しい見方を している。 ○貸し手側も、先行きについて業況悪化等を理由に厳しい見方をしている。 ◎資金繰り判断BSI(第26回法人企業景気予測調査) ◎金融機関ヒアリング結果 構 成 比 (% ) 現状判断 10 0 % (「改善」―「悪化」) 悪い 3 1 .4 (%ポイント) 0 悪い 4 5 .7 ▲ 10 ▲ 20 50% 良くも 悪くも 無い 6 5 .7 ▲ 30 ▲ 40 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 21 (東北全産業) Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ 22 Ⅳ Ⅰ 23 0% 見通し 良い 0 良い 2 .9 現状 良 くも 悪 くも 無い 5 4 .3 見通し 〔借り手側〕 ・既存設備資金借入の一本化は出来たものの、運転資金の要望については満額借り入れることが出来ず、資金繰りが厳しい。【製造業(印刷)】 〔貸し手側〕 ・条件変更により、全般に資金繰りの逼迫感は緩和されているものの、一部には返済額の減額だけでは足元の決済資金等が賄えない厳しい企業が見受けられる。 【地方銀行】 ・各企業の実態的・抜本的な経営改善とともに、地域経済全体の上昇効果がなければ厳しいものがある。【信用金庫】 中小企業の資金需要 ○資金需要については、中小企業、金融機関とも新たな設備投資など前向きな需要は見込まれないとしているが、 資金繰り悪化に伴う運転資金が必要になるとの声も聞かれている。 〔借り手側〕 ・競争激化や原材料価格の上昇等による収益圧迫に伴い資金繰りが悪化しており、このための運転資金として借入れが必要である。 【製造業(印刷)】 〔貸し手側〕 ・新たな資金需要の増加は見込めず、赤字補填、資金繰り資金等後ろ向きな資金は増加が見込まれる。【地方銀行】 ・全体的には、依然として、設備投資抑制傾向が続く一方、運転資金については、前向きな需要が増加する兆しは無い。【地方銀行】 2 Ⅰ.中小企業金融円滑化法施行後の現状と課題 2.条件変更の現状と見通し 2.条件変更の現状と見通し 条件変更の現状 条件変更の見通し ○条件変更申込みは、平成22年3月末で大きく増加。 以降高水準で推移。 ○貸し手側では、今後の条件変更申込みについて、先 行きの景況感が不透明なことなどから、引き続き高 水準が続く、もしくは更に増加するとみている。 ○条件変更を行った取引先の経営改善状況について、 貸し手側の半数以上は変わらないとしているものの、 3割程度はやや良化としている。 ○加えて、条件変更を実施した先については、業況に 好転がみられないことなどから、再条件変更が発生 するものとみている。 ◎条件変更申込みの推移 (銀行) ◎新たな条件変更申込みの見通し (再条件変更を除く) (件数) 20,000 13,93 5 15,000 11,746 H22.9末 見込み 10,000 5,000 ◎条件変更を行った先にかかる 再条件変更の見通し H.22.9末(見込み) 増加 0 〔管内銀行(15行)ヒアリング〕 横ばい・・・9行/15行 4,808 減少 8.6% 0 H21.12末 H22.3末 H22.6末 ◎条件変更を行った取引先中小企業の経営改善状況 やや増加 22.9% ほとんど 無い 8.6% かなりある 5.7% やや減少 34.3% やや悪化 20.0% 変化なし 34.3% やや良化 28.6% 変化なし 51.4% 〔金融機関ヒアリング結果〕 〔金融機関ヒアリング結果〕 3 ある 85.7% 〔金融機関ヒアリング結果〕 Ⅰ.中小企業金融円滑化法施行後の現状と課題 3.中小企業金融の課題 3.中小企業金融の課題 ○借り手側からは、速やかな景気対策の策定、実行の要望や、業況が安定的に回復するまでの間、金融円滑化法の 延長や緊急保証制度の更なる拡充などを期待する声も聞かれる。 ○貸し手側からは、企業の経営改善に要する時間が長期化することに加え、条件変更先債権の不良債権化による信 用コストの増加と経営への影響を懸念する声が聞かれる。 中小企業金融にかかる課題 〔借り手側〕 〔貸し手側〕 ・デフレの解消とともに消費が回復しない限り、現状の業況は 回復しない。速やかな景気対策の策定、実行が不可欠である。 【不動産業】 ・条件変更対応した債権の不良化を防ぐため、経営改善支援に 努めているものの、改善材料は経費削減以外にないのが現状 であり、経営改善は長期化するものと思料する。従って、再 度の条件変更申込み等への対応は苦慮せざるを得ない。 【地方銀行】 ・企業業績が安定的に回復するまでの間には、再度の条件変更 が必要となる場合もあることから、金融円滑化法の延長や緊 急保証制度の更なる拡充など、金融円滑化への対応を期待す る。【建設業】 ・地域経済の低迷は今後も続くものと考えられ、条件変更等の 処置を行っても企業の抜本的な経営改善に繋がらず、最終的 に条件変更債権が不良債権となるリスクが内包されている。 金融円滑化法の終了後、信用リスクが顕在化することによる 経営に与える影響が懸念される。 【信用金庫】 ・経済対策としての金融円滑化による効果は限定的である。条 件変更の実施により資金繰りは一旦良化するものの、取引先 からの支払圧力は強い。 【小売業(スーパー)】 4 Ⅱ.金融機関による消費者向け貸付(住宅ローンを除く)の現状と課題 ○改正貸金業法完全施行以降、金融機関は貸金業者からの借換え需要を見込んでおり、各金融機関とも積極的に取 組んでいくとしている。なかには、新商品の開発や新たな審査態勢の構築などを進めている金融機関もみられる。 ○一方で、金融機関は、金融機関が総量規制の適用対象外であることなど改正貸金業法にかかる顧客周知や、貸付 推進に伴う新たな多重債務者の発生防止に向けた取組みについても配慮していく必要があるとしている。 消費者向け貸付の現状と取組み 特徴的な取組み例・・・改正貸金業法完全施行を機に、融資条件や審査態勢を見直し 【地方銀行】 主婦等顧客層を拡大するとともに、顧客利便性も図っている ◎消費者向け貸付に対する取組み姿勢 〔従 前 〕 消極的 0.0% やや積極的 5.7% 〔改 善 点 〕 条件 条件 やや消極的 0.0% 勤 続年 数 居 住年 数 勤続年数、居 住年数、 年収等の条件 を廃止 主婦 やア ルバイ ト も借入可能 年収 審査態勢 審査態勢 積極的 94.3% 〔現 在 〕 案 件 毎 に審 査 担 当 者 に よる 個 別 審査 スコアリング モデル の導入 商品構 成 審査の 迅速 化 商品構成 一 つの 目 的 に 複数 の 商 品 目的毎に一本 化 選択 の簡易化 〔金融機関ヒアリング結果〕 ※イメージ図 ◎資金需要の状況(改正貸金業法完全施行以降) 消費者向け貸付の課題 減少 14.3% 増加 22.9% 変わら ない 62.9% 〔金融機関ヒアリング結果〕 ○改正貸金業法の内容(総量規制の適用対象)について、金融機関も適用対象となると の誤解が一部顧客にみられることから、正しい内容を認識させる必要。 【地方銀行】 ○消費者ローンについては積極的に推進していくが、高金利でもあり、多重債務者に ならないよう顧客に対し十分な説明を行っていく必要がある。 【信用金庫】 5
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