第 5 回:ジャズ∼その 2

田中幸太郎:リズム生き生き、グルーヴ・プロデュース
楽曲の印象を大きく左右するリズム・アレンジ。ジャンル固有のリズム・パターンを流用するだけで満足してい
ませんか?
もちろんさまざまなリズム・パターンを知っておくことは、リズム・アレンジの幅を広げるために
必要なことですが、そのパターンに単純に当てはめるだけではダメ。楽曲に魂を吹き込むには、そこから先の創
意工夫が重要です。キーワードは グルーヴ 。DTM では、データをエディットすることによって、さまざまなグ
ルーヴ感を生み出すことができます。本セミナーでは、楽曲に最適なグルーヴをプロデュースするためのデータ・
エディット方法を考察。インストラクターはドラマーでもあるレコーディングエンジニア・作曲家の田中幸太郎
氏。若い感性でリズム・アレンジに切り込んでいただきます。
第 5 回:ジャズ∼その 2
( 2010 年 2 月 4 日 )
前回の最後に聞いたデモ演奏は、とてもシンプルなジャズ・ドラムの演奏でしたが、もっと”ジャズ”らしく聞かせるた
めにはどのような手法があるのでしょうか? 今回はそのテクニックを紹介していきたいと思います。
■ ゴースト・ノートについて
スネアを使う/スネアをワンポイントのアクセントとして使う
先のデモ音源では、スネア・ドラムは一切使っていませんね。ジャズの基本ビートはスネアなしでも十分成り立つので敢
えて使ってはいなかったのですが、スネア・ドラムをアクセントとして入れることで、生のジャズ・ドラムに一歩近づき
ます。
スネアでゴースト・ノートを奏でる
ゴースト・ノートをスネアで入れると、アクセントとして鳴らすのとは違った働きをしてくれます。そもそも“ゴースト・
ノート”とは何なのでしょうか?
ゴースト=お化け
ノート=音
“お化けの音”=居るのか居ないのかが分からない音
と言う表現通りに、一聴しただけでは聞き取れないくらいの小音量で演奏された音のことを指します。ジャズではこのゴ
ースト・ノートで音の隙間を埋めるように演奏します。
Sound①
譜面①
このように隙間を埋めるだけではなく、ライド・シンバルと同時に鳴らすことにより、シンバルによって演奏されるビー
ト感を補強することもできます。
■ シンコペーションを取り入れる
シンコペーションとは……
小節の中にあるオモテ拍、ウラ拍(第 4 回のコラム参照)の強弱を表すと…
①
②
③
④
強
弱
強
弱
といった形になり、クラッシュ・シンバルを打つ位置やコード・チェンジの位置は強拍である①③で行われます。ですが、
シンコペーションを用いると、
①
②
③
④
強
弱
弱
強
というように、一時的に強拍と弱拍の関係が変化します。上記は 4 分音符の刻みの中でのシンコペーションですが、8 分
音符や 16 分音符でもシンコペーションは行われます。
シンコペーションを用いる場所やテンポによっては、
①
②
③
強
強∼弱
④
弱 (∼はタイ)
の様に、タイを用いて強拍から弱拍がつながるような形も多くあり、よく聞くのは 8 分音符で
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
|
①
②
③…
強
弱
強
弱
強
弱
強
強
∼
弱
弱
強…
の様に、小節をまたいでタイを用いるケースの方が、イメージが掴みやすいでしょう。ポピュラー・ミュージックでもよ
く聞きますし、バンド用語では一拍目を食うといった言い方もあります。
では、シンコペーションをジャズ・ドラムのプログラミングに取り込んでみましょう。
Sound②
譜面②
譜面上の○印で囲んだ音符は 8 分音符のシンコペーションで、□印は 4 分音符のシンコペーションとなります。シンコペ
ーションを用いる際は、メロディやベース・ラインなどとリズムを合わせることで、より強弱の関係を自然に、より効果
的に表現することができます。
ここまでプログラミングが進むと、かなりジャズらしいフレーズが多くなり、それらしく聞こえるようになってきました。
ここまで追い込んでくると、フレーズの切れ目を盛り上げるフィルインが欲しくなりますね。ジャズ・ドラムのフィルイ
ンも定番のものから、少しマニアックなものまで色々とありますので、状況に応じて使い分けられるように次回のコラム
で解説していきます。