2006年上半期の上海市民1人当たりの平均可 処分所得が前年同期比10.9%増の10,704元 (約15万円)と、初めて1万元を突破しました。 可処分所得の上昇に伴い、住宅関連耐久消費財 (住宅建材・内装、家電、家具など)の支出が増 え、昨今の住宅ブームと相まって住宅関連業界 は活況を呈しています。 日本では長く続いたデフレの影響で低価格住 宅が広まり、中国などからの安い建材が流入し ています。建材の生産拠点や調達先として中国 の存在は大きくなるばかりですが、一方で日本 の伝統技術や最新の省エネ技術を中国へ売り込 もうという動きも出ています。今回は日本の建材にスポットを当てて、その現状と販売方 法の事例についてレポートいたします。 1.中国の住宅事情の変化 中国の住宅事情は、1998年の持ち家制度の導入により大きく変化しました。従来の住 宅分配制度下においては、特に都市部では社宅や官舎が主流であったため、内装にはあま りお金をかける必要がありませんでした。この住宅分配制度を廃止し、個人の持ち家保有 促進政策を実施したことにより、住宅・内装市場は急速に拡大しました。 住宅着工面積を見ますと、日本が1996年をピークに減少傾向(2004年はピーク対比 33%ダウン) にあるのに対し、上海が5年連続、中国全体では7年連続で増加を続けてい ます。2004年の実績では、中国は日本の実に20倍もの面積の住宅が着工されている計算 になり、中国の住宅市場の大きさが伺えます。 2.環境保護・省エネ建材の普及 中国でのマンション購入は、一部の高級物件を除いて、内装が施されていない (スケルト ン) 状態で引き渡されますので、内装は購入者が自分で手配します。予算を指定して業者に 依頼したり、自ら建材市場やホームセンター で建材や住宅設備を購入し施工だけ業者に 依頼する場合もあります。日本人からする とやや派手すぎるような内装を好む中国人 も、最近では見た目の豪華さよりも環境に やさしいと認定された「緑色環保」製品や省 エネ効果の高い建材を求める傾向が強まっ ています。また、政府から税金の減免など の優遇措置を受ける制度が導入されるよう になり、住宅デベロッパーやメーカー各社 も「緑色環保」製品や省エネ建材を採用する イギリス最大のホームセンター「B&Q」 (中国名:百安居) (上海市内の店舗) 動きが目立ってきました。 ● 9● 3.中国での建材販売 2004年12月以後、外国資本100% での中国国内販売が可能となり、日系 企業でも卸売・小売業やサービス業で の中国進出が盛んになっています。外 資への開放当初は、「いくらの投資で会 社が設立できるか」に関心が集まって いましたが、設立認可が増えるにつれ、 「どのように販路を開拓するか」が注目 されるようになりました。品質は良く ても価格差が問題になることもしばし ばです。 日本の建材を中国で広める手法とし て、上海での事例をいくつかご紹介い たします。 【 上海世貿商城(上海マート)】 上海マートは上海虹橋経済開発 区内に位置し、①展示貿易センター、 ②展示会場、③事務所という3つ の形態から構成されています。上 海マートは上海5大展示会場として有名ですが、ここでは 「中国初、アジア最大規模の 国際的展示貿易センター」 についてご説明いたします。 展示貿易センターは約2,200の長期レンタル展示ブース(オフィス)を備え、建材、 アパレル、ギフトの3部門が集積しています。入居条件としてオフィスの半分は製品 展示が義務付けられていますが、家賃・管理費は 「4.5元 (約67.5円) /㎡・日」 と近隣に ある同等のオフィスビルの5∼6割程度です(60㎡で月額約12.5万円)。運営会社が 毎年ビジネスイベントを開催するほか、仕入・販売先開拓のためのサポートを行なう 点に特長があります。 【 上海新日本建材館 】 上海新日本建材館は今年5月、建材、内装材、家具等の住宅関連設備の販売店や ショールームが集まる宜山路に、日本建材の常設展示館としてオープンしました。日 本建材を専門に扱い、和室建築、日本の高級建材・内外装材、省エネ・環境対応製品 を中国に広めようとする日系企業が出展しています。販売会社設立のような大きな投 資負担をせず、「14元(約210円) /㎡・日」の出展料・管理料でテスト・マーケティン グができるほか、運営会社が販売代理や資金回収の代行も行ってくれるとあって注目 されています。 【 アリババ http://japan.alibaba.com/ 】 アリババは、世界最大規模のBtoB (Business to Business) サイトです。こち らは建材に限らず様々なアイテムの売買情報、会社情報、製品情報の入手・検索が可 能です。インターネットを通じてバイヤー・サプライヤーを探したり、自社製品が中 国で受入れられるかを把握したりするのに役立ちます。 【 展示会 】 住宅や建材関連の展示会への出展も、市場開拓の有力な手段の1つといえます。中 国、特に上海では世界でも有数の展示会が開催されるようになり、毎年、各展示会の ● 10 ● 規模は拡大しています。建材や住宅関連の展示会 には業者 (バイヤー・サプライヤー) だけでなく一 般消費者の来場も多く、展示会への出展は新たな 販売先の開拓や最新技術などの情報収集に役立ち ます。 8月18日から4日間の日程で「第17回中国(上 海) 国際建材&室内装飾展覧会」 が上海で開催され ました。展示製品はエコ建材、床材、化学建材や 厨房・浴室など住宅関連全般です。昨年の同展示 会では出展企業400社、来場者数7万人以上と 年々規模が拡大し、関心の高さが伺えました。 建材関連展覧会の「畳」展示ブース 4.終わりに 内装建材施工や原材料加工技術が先進国と比べて低いと指摘されている中国は、2020 年までに住宅・公共建物において使用するエネルギー消費レベルを、現在の先進国レベル に近づけることを目標としています。建物の省エネ対策で急成長する中国は、もはや日本 企業にとっても無視できない市場となりました。 中国では北京オリンピックや上海万博を控え、また相次ぐ内陸部の振興策により、建設 ラッシュは当面続くことでしょう。住宅市場においても、日本の技術が必要とされている ことは言うまでもありません。日本の高品質な製品が中国の住環境の向上に寄与すること が期待されています。 ● 11 ●
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