民族自決とテロリズム 民族自決とテロリズム

第3回勉強会 2009/9/26
民族自決とテロリズム
文責:中村俊裕
目的
・ 「民族自決」という概念そのものへの理解を深める
・ 民族自決とテロリズムの区別の難しさについて知る。
1、民族自決ってなんなの?
→様々な国際文書に明記されている。
例えば……
(①
国連憲章
)1条第2項
人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおく諸国間の友好関係を発展させ
ること並びに世界平和を強化するために他の適当な措置をとること。
(②
国際人権
)規約第1条第1項
すべての人民は、自決の権利を有する。この権利に基づき、すべての人民は、
その政治的地位を自由に決定し並びにその経済的、社会的及び文化的発展を
自由に追求する。
友好関係原則宣言
国際連合憲章に謳われた人民の同権及び自決の原則によって、すべての人民は、外
部からの介入なしにその政治的地位を自由に決定し、その経済的、社会的及び文化
的発展を自由に追及する権利を有し、全ての国家は、同憲章に基づいてこの権利を
尊重する義務を有する。
→しかし、独立国内の少数民族の民族自決については、国際的に認められているとは
言えない。
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「すべての人民」に「自決の権利」があるんじゃないの?
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第3回勉強会 2009/9/26
「すべての人民」?
「人民」……国際法上の明確な定義なし
解釈
1、他国の抑圧下にある国家の人民 (ex.ナミビア
本来の意図
2、独立国家の一部を構成する人民 (ex.ケベック州
「自決の権利」?
・外的自決……分離・独立する権利
自決権
・内的自決……統治に参加する権利
自決権に含まれるのか?
「誰」に「何」が認められるのか? → 見解は様々
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「誰」に「何」が認められたのか?
例1、 ナミビア
ナミビア人民の意思に反して、南アフリカが抑圧、人種差別政策を実行
→国連総会:ナミビア人民に自決権を認める →1990年独立
例2、 ケベック州分離問題(カナダ)
カナダのケベック州が分離独立を主張
→カナダ最高裁:ケベック州の人民に自決権を認めるも、自決権は通常は内的自決によっ
て実現され、分離の権利を含む外的独立は最も極端な場合に例外的に、
外国の支配を受けている人民にのみ認められるとし、分離を認めず。
結局?
民族自決の概念はあいまいで、立場によって解釈が違っている。
誰にどんな権利があるのか?という点で
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2、民族自決とテロリズム
例:パレスチナ問題
概要
イスラエル
パレスチナ
パレスチナを入植支配
パレスチナの自治を求める
PLO¹を中心に抵抗運動
(③
ミュンヘンオリンピック
)事件
ハイジャック事件など
1993年のオスロ合意に基づいて PLO による暫定自治が開始された。
問題点
テロ組織だ!
イスラエル
オスロ合意
PLO
PLO
イスラエル
自決運動だ!
中東
中東
つまり……(④
テロ
自治組織ですよねー
)組織として扱われてきたものが、
(⑤
自治
)組織として認められた!
テロ組織か自治組織かは関係国が恣意的に決める?
――――――――――――
¹パレスチナ解放機構(PLO)はイスラエル支配下にあるパレスチナを解放することを目的
とした諸機構の統合機関。その一部がイスラエルに対して武装闘争を行っていた。
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3、議論の紛糾
議題:
「国際テロリズムの防止措置及びその根本的な原因の追求」
<国連総会第(⑥ 6 )委員会>(~1985年)
(⑦
措置
)重視派
(⑧
欧米・日本・ラテンアメリカ
原因
)追求派
アラブ・アフリカ諸国・東欧・ソ連
アフリカ諸国は植民地支配から独立を果たした経験から、アラブ諸国はパレスチナの民族
運動を擁護するために、民族自決運動とテロリズムの区別、定義を求めた。
しかし……
未だにテロの定義は決まって(⑨
いない
)
。
現在、インドが定義を含む包括テロ防止条約案を提出するなど議論は続いている。
まとめ
テロと民族自決の違いを理由に、テロの定義についての議論は続いている。
参考文献:松井芳郎ほか 『国際法 第5版』有斐閣 2007
松井芳郎 『国際法から世界を見る』 東信堂 2004
中野進 『国際法上の自決権』 信山出版 1996
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