音声出力機能を有したオンラインアクセント辞書の構築

2012 年日本語教育国際研究大会ポスター発表 2012 年 8 月 18 日(土)
音声出力機能を有したオンラインアクセント辞書の構築 峯松信明(東京大学大学院)・鈴木雅之(東京大学大学院生)・
平野宏子(吉林華橋外国語学院)
・中川千恵子(早稲田大学)
・中村則子(慶応義塾大学)・
田川恭識(早稲田大学)・広瀬啓吉(東京大学大学院)
1.背景と目的 日本語らしく自然に聞こえる発音を身に付
けたいと考える学生が多い一方で,発音教育,
特に韻律教育に当てる時間が限られている。
また教師本人が音声(韻律)教育を受けてい
ないために,効果的な指導方法を模索せざる
を得ない場合が多いのも事実である。このよ
うな状況を鑑み,筆者等の一部は必要最小限
かつ大きな効果が期待できる韻律教育を目的
として,フレージング(チャンキング)とポ
ージングに基づく,自然なイントネーション
生成に着眼した発音教育法を提唱している
(中川ら 2009)。自然なフレージングができ
るようになると,個々の単語アクセントに基
づくイントネーション制御が課題となるが,
フレーズを構成する単語はその接続によりア
クセントが変形する(アクセント結合)。こ
れは文脈に依存するため,逐一説明するのは
非常に煩雑である。活用に伴う用言のアクセ
ント変形は規則性が高いため,我々は用言の
活用に伴うアクセント変形を体系的に閲覧,
自習できる教材としてオンラインアクセント
辞書を構築してきた(小林ら 2011)。今回,
このアクセント辞書に対して,用言の活用パ
ターンを音声提示する機能を付与した。 2.オンラインアクセント辞書 2.1 二つのアクセント辞書 我々はこれまで Web 上で閲覧できる,二つ
のアクセント辞書の開発を行なってきた
(OJAD: Online Japanese Accent Dictionary)。
ここでは教科書ガイド版,任意テキスト版と
呼ぶ。教科書ガイド版では,広く流通してい
る複数の日本語教科書を対象にそれら教科書
に出現する全用言を抽出し,各用言の活用に
伴うアクセント変形を分かり易く視覚表示で
きる。教科書の課,難易度(レベル)などを
キーとする検索機能も付与しており,学習の
進度に応じて必要な情報だけを提示できる。 任意テキスト版では,学習者が用意した任
意テキスト(日本語サイトからコピーした文
章など)を入力させ,そこから全用言を抽出
し,アクセント変形を網羅的に表示する。 前者は個々のアクセント変形をデータベー
ス化し,その情報を提示している。後者は日
本語読み上げ技術(日本語音声合成技術)を
応用し,個々の単語のアクセント変形の様子
を,その都度統計的に自動推定し(規則的な
推定では十分な精度が出ない),その結果に
基づいて表示を行なっている(小林ら 2012)。 2.2 音声読み上げ機能の付与 教科書版に関しては,発声教育を受けた話
者に発声を依頼し,登録済みの全用言,全活
用の音声を収録した。各用言の活用パターン
は,対応する自然音声が提示される。任意テ
キスト版については,抽出された用言の全活
用パターンを,その都度音声合成技術を用い
て合成音を生成し,それを提示している。 3.今後の課題 今後は,Web インターフェイスの充実を図
る一方で,実際の韻律教育の場で使用して戴
き,より教育的に効果の高いシステムとなる
よう改善していきたい。 【参考文献】 中川千恵子ら(2009)『さらに進んだスピーチ・プレゼン
のための日本語発音練習帳』,ひつじ書房 小林俊平ら(2011)「任意の日本語テキストを対象とした
活用語アクセント辞書の自動生成」『日本語教育国際研
究大会論文集』,pp.784-786 小林俊平ら(2012)「規則処理と CRF に基づくアクセント
予測の高精度化」『信学技報』,SP2011-172, pp.95-100 【謝辞】本研究は国語研の領域指定型共同研究プロジェ
クト(峯松信明(東大)代表,H22~)の一部成果である。 1