1997年度: 政/本 試 政治・経済 時間 第1問 60分 本試験 配点 100点 次の文章を読み,下の問い(問1∼8)に答えよ。(配点22) 日本経済の国際化の進展は,経済と政治との緊密な結びつきをクローズ・アップ させることになった。 1980年代に入って,日本の貿易収支の黒字は増大し,1985年以降の大幅な (a)円高によってもすぐには縮小しなかった。一方,証券投資や(b)直接投資などの 形態での資本輸出も活発化し,日本は世界最大の債権国になった。(c)1980年代後 半の株価と地価の高騰を伴う好況期には,一時的に黒字が縮小したが,90年代の はじめには,(d)輸入の伸びが鈍化し,再び黒字が拡大した。 このような貿易不均衡はとくに(e)アメリカとの経済摩擦を激化させ,大きな 政治問題を引き起こした。そして,日米政府間の交渉の場で,(f)日本市場の閉鎖 性が大幅黒字の要因の一つになっていると指摘された。すなわち,排他的取り引き につながる諸種の商慣行や,(g)政界・官界・産業界の三者の強い連携など,いわ ば日本の政治経済体制そのものが問題視されたのである。他方で,国内でも,日本 の(h)官僚主導的な体質に対する批判が強まり,また経済の効率化などの観点から も,規制緩和を求める声が高まった。 こうして日本は,戦後維持されてきた政治経済体制を,内外に対してより開かれ たものに再編するよう求められているのである。 -1- 1997年度: 政/本 試 問1 下線部(a)についての記述として正しいものを,次の①∼④のうちから一つ選 べ。 [1] ① 円高は,経常収支の黒字によってばかりでなく、資本の流入によっても引 き起こされる。 ② 円高は,日本企業が国内で生産する商品の国際競争力を高める。 ③ 円高になると,日本企業が保有している外国の不動産の,円に換算した価 値は上昇する。 ④ 円高になると,輸入品の価権が上昇するので,インフレーションの可能性 が高まる。 問2 下線部(b)に関連して,日本企業の直接投資についての記述として 誤っている もの を次の①∼④のうちから一つ選べ。 [2] ① 直接投資は,現地工場での技術指導などにより,日本から投資相手国への 技術移転を促進することが多い。 ② 日本から先進国への直接投資は,発展途上国向けの輸出品の生産を主な目 的にしていることが多い。 ③ 直接投資の増加は,雇用の減少など,日本の国内産業の空洞化を引き起こ す可能性がある。 ④ 直接投資の増加は,本社に送られる配当などの受取を増やし,その分日本 の経常収支を好転させる。 問3 下線部(c)の時期に生じた事態の記述として 誤っているもの を,次の①∼④の うちから一つ選べ。 [3] ① ② ③ ④ 貿易黒字を縮小させるために,政府は総需要拡大政策を採った。 国際協調を考慮して,金利が低く抑えられた。 株価の高騰を抑制するため,日本銀行は保有する株式を市場で売却した。 企業は,生産拡大などのために活発に設備投資を行った。 -2- 1997年度: 政/本 試 問4 下線部(d)に関連して,1980年代後半以降,日本の輸入構造も大きく変化し た。次の図は,下に示す①∼④の四つの商品種類の輸入額について,輸入総額 に占めるそれぞれの比率の推移を示したものである。図中の [4] にあては まる商品種類を,下の①∼④のうちから一つ選べ。 (資料)日本銀行国際局『国際収支統計月報』により作成。 ① ② ③ ④ 問5 食料品(牛肉,エビなど) 原料および燃料(鉄鉱石,原油など) 機械機器(自動車など) 繊維製品(衣類など) 下線部(e)に関連する記述として正しいものを,次の①∼④のうちから一つ選 べ。 [5] ① ② ③ ④ 日米間の貿易摩擦は,まずカラーテレビをめぐって生じた。 両国政府の保護の対象であった農産物については,摩擦は生じなかった。 日本の輸出自主規制は,自動車には適用されなかった。 日米間の摩擦は,大規模小売店の日本進出をめぐっても生じた。 -3- 1997年度: 政/本 試 問6 下線部(f)として指摘された事項についての記述として 誤っているもの を,次 の①∼④のうちから一つ選べ。 [6] ① ② ③ ④ 問7 輸入品の関税率がしばしば引き上げられている。 大企業が下請企業を系列化している。 株式持ち合いなどを通じて,企業集団が形成されている。 公共事業の入札の際に,企業が談合をしている。 下線部(g)についての記述として 誤っているもの を,次の①∼④のうちから一 つ選べ。 [7] ① 高級官僚が、在職中に関係の深かった企業に「天下り」することは,行政 と企業の癒着を生み出すことがある。 ② 特定の産業とその産裏の利益を代弁する政治家との結びつきから,汚職事 件が発生することもあった。 ③ 高級官僚であった者が,国会議員になった例はないが,地方自治体の首長 になった例はある。 ④ 企業が,従業員を,支援する侯補者の選挙運動員として派遣することがあ る。 問8 下線部(h)に関連する記述として正しいものを,次の①∼④のうちから一つ選 べ。 [8] ① ② ③ ④ 日本の官庁は,国政調査権を行使して,膨大な情報を収集している。 委任立法は、官僚の強大な権限を制約するために用いられている。 許認可や補助金の制度を背景に,官庁が広範に行政指導を行っている。 規制緩和の促進を目的として、行政委員会の制度が導入された。 -4- 1997年度: 政/本 試 第2問 次の文章を読み,下の問い(問1∼5)に答えよ。(配点13) 資本主義経済は,(a)市場メカニズムを通じた自由競争を特徴としている。家計 や企業などの経済主体は,ある価格の下で自己の利益が最大となるように需要量と 供給量を決定するが,市場では,全体の需要と供給が一致するように価格が調整さ れる。このようなメカニズムが様々な市場で働くことによって,経済全体として, 効率釣な資源配分が行われることが期待されている。 しかし現実には(b)市場メカニズムは万能ではなく,それによってあらゆる経 済問題が解決されるわけではない。時には,(c)特定の目的のために政府によっ て市場メカニズムが制限されることもある。 1929年に始まる世界恐慌を経た後は,景気調整のために,(d)政府が経済に積極 的に働きかけるべきであるという考え方が一般的になった。しかし、近年では,財 政赤字の拡大などを背景に ,「小さな政府」や規制緩和によって、市場メカニズム をより活用すべきであるとの考え方が強くなっている。とはいえ,(e)市場メカニ ズムを利用しつつも,政府が何らかの働きかけを行うことで解決を図らねばならな い問題も,依然として存在している。 -5- 1997年度: 政/本 試 問1 下線部(a)に関連して,次の図は,ある財の市場における需要曲線と供給曲線 を示している。この図についての説明として 誤っているもの を,下の①∼④の うちから一つ選べ。 [9] ① 右下がりの需要曲線は,価格が下落すれば消費者は購入量を増大させよう とすることを示している。 ② 右上がりの供給曲線は,価格が上昇すれば企業が生産を増大させようとす ることを示している。 ③ 価格がP 0 のとき,消費者の需要と企業の供給は一致し,取引量はQ0と なる。 ④ P 0より高い価格の下では,需要が供給を上回るので,価格は一層上昇す る。 問2 下線部(b)に関連して ,「市場の失敗」を示す例とは 言えないもの を,次の ①∼④のうちから一つ選べ。 [10] ① ② ③ ④ 企業が,独占や寡占によって,自らに有利な管理価格を形成する。 工場の建設により,周囲の生活環境が害される。 生産の効率化が進展した産業で,製品価格が下落する。 道路・港湾等の公共財が十分に供給されない。 -6- 1997年度: 政/本 試 問3 下線部(c)に関連して,これまでに日本で行われた事例とは 言えないもの を, 次の①∼④のうちから一つ選べ。 [11] ① 労働者が不当に低い賃金で働かされることのないように,最低賃金制度を 設けた。 ② 銀行経営を安定させ信用秩序を維持するために,預金金利を規制した。 ③ 重要産業の成長を促す目的で,資金をそこに優先的に配分した。 ④ コンピューター産業を基幹産業として育成するために,半導体の輸出を制 限した。 問4 下線部(d)を裏付けたのはケインズであるが,彼の主張を示す記述として正し いものを,次の①∼④のうちから一つ選べ。 [12] ① ② ③ ④ 問5 労働者は次第に窮乏化していく。 財政支出はその何倍かの有効需要を作り出す。 人口は等比(幾何)級数的に増大していく。 分業は生産性を飛躍的に上昇させる。 下線部(e)に関連して,二酸化炭素(CO 2 )による地球温暖化問題の解決のため に,CO 2 排出を伴う生産活動に課税すべきであるとの考え方がある。これが 実行されると,生産物の価格と生産量はどのように変化すると考えられるか。 この変化を示すものとして適当なものを,次の①∼④のうちから一つ選べ。 ① ② ③ ④ 価格は上昇し,生産量は減少する。 価格は上昇し,生産量は増大する。 価格は下落し,生産量は減少する。 価格は下落し,生産量は増大する。 -7- 1997年度: 政/本 試 第3問 次の文章を読み,下の問い(問1∼5)に答えよ。(配点13) 私たちは,日ごろ買い物をするとき,おカネを支払います。私たちの財布の中に あるおカネは現金通貨と呼ばれ,(a)日本銀行が発行する日本銀行券と,大蔵省が 鋳造する硬貨とからなっています。これとは別に,私たちが,(b)銀行に預けてい る預金の一部も,現金と同じようにおカネとして機能しており,預金通貨と呼ばれ ています。たとえば企業間の支払の多くは,預金口座の間の振替により行われま す。最近では,情報・通信技術の発達に伴って個人でも(c)現金を使わずに支払 をすることが多くなってきています。 ところで,日本全体のおカネの量は,経済の動きと密接に関係しています。たと えば,おカネの量が多くなりすぎると,(d)インフレーションが発生し,逆におカ ネの量が少なすぎると,物価が下落し景気が悪くなります。このため,日本銀行の 重要な仕事は,物価や景気の安定を目的に,現金通貨と預金通貨を加えた全体のお カネの量をコントロールすることにあります。しかし今日では,国内の物価や景気 だけでなく,為替レートや経常収支などの外国との関係も考慮することが必要で す。また世界経済における日本の重要性が高まるにしたがい,(e)円が国際的に 使用されることも多くなってきています。こうして,日本銀行の金融政策は,より 国際的な視野を要求されるようになっています。 問1 下線部(a)についての記述として正しいものを,次の①∼④のうちから一つ選 べ。 [14] ① ② ③ ④ 問2 日本銀行は,優良な製造業者には公定歩合で資金を貸し出す。 日本銀行は,民間銀行より高い金利で家計から預金を集める。 日本銀行は,為替相場の安定のために外国為替市場に介入する。 日本銀行は,公開市場において国債を買うことを禁止されている。 下線部(b)に関連して,銀行の信用創造についての記述として 誤っているもの を,次の①∼④のうちから一つ選べ。 [15] ① ② ③ ④ 銀行に預けられた預金は,その一部が支払準備として保有される。 銀行は,企業にその預金を増やすという方法で貸出しを行う。 支払のために引き出された預金の一部が,他の銀行に預けられる。 銀行は,支払準備が不足すると貸出しを増加させる。 -8- 1997年度: 政/本 試 問3 下線部(c)の効果を持つとは 言えないもの を,次の①∼④のうちから一つ選 べ。 [16] ① ② ③ ④ 問4 下線部(d)についての記述として正しいものを,次の①∼④のうちから一つ選 べ。 [17] ① ② ③ ④ 問5 公共料金の支払を預金口座からの自動引き落としにすること 商品の購入代金の支払に手形や小切手を利用すること デパートで買物をするときにクレジットカードで支払うこと 必要なだけの小遣いをキャッシュカードで引き出すこと インフレーションは,原油などの特定の商品の価格上昇を意味する。 インフレーションは,通貨の購買力を低下させる。 インフレーションは,在庫が過剰なときに起こる。 インフレーションは,為替相場を円高にする要因となる。 下線部(e)のような現象を「円の国際化」というが,その例とは 言えないもの を,次の①∼④のうちから一つ選べ。 [18] ① ② ③ ④ 自動車などの輸出価格を,ドル建てから円建てに変える。 海外旅行のために,円をドルなどの外国通貨に両替する。 外国の政府が,外貨準備として円を保有するようになる。 日本の銀行が,海外の企業への貸出しを円で行う。 -9- 1997年度: 政/本 試 第4問 次の文章を読み,下の問い(問1∼5)に答えよ。(配点13) 1950年代以降の長期にわたる先進諸国の順調な経済成長は,(a)1970年代に入る と,様々な要因によって阻まれるようになった。にもかかわらず,日本経済は,い くつかの困難を経て,その後も相応の成長を維持し続けた。 長年にわたる経済成長は,(b)日本の経済構造を大きく変化させたが,同時に, 家庭や職場,地域社会などにも変化をもたらすことになった。たとえば,成長に伴 う雇用機会の増大は,(c)女性の社会進出を促すきっかけとなったし,交通網の発 達やテレビの普及は,都市と農村の間の生活様式の違いを縮めることにもなった。 経済成長は,日本の社会のあり方そのものをも変える役割を果たしたのである。た だこのような変化の過程で,(d)日本経済の抱えていた問題がすべて解消された わけではなかった。 日本経済は,1980年代後半のいわゆるバブル景気を経て,90年代に入ると低迷 を続けることになる。そうした状況の下で生じている(e)多様な現象をみると,日 本の経済・社会の中で,新たな模索が始まりつつあると言えよう。 問1 下線部(a)に関連して,1970年代前半の西側先進諸国の状況についての説明 として 適当でないもの を,次の①∼④のうちから一つ選べ。 [19] ① 東西対立の緩和によって軍事支出が大幅に減少したため,軍需産業が衰退 した。 ② 石油産出国による大幅な石油価格の引上げなどによって,資源・エネル ギー価格が急騰した。 ③ アメリカ合衆国が,国際収支の悪化を防ぐために,ドルの大幅な切下げを 実施した。 ④ 長期にわたる経済成長の結果上昇した賃金が,企業利潤を圧迫するように なった。 - 10 - 1997年度: 政/本 試 問2 下線部(b)に関連して,戦後日本における就業構造の変化についての記述とし て正しいものを,次の①∼④のうちから一つ選べ。 [20] ① 農業の大規模化によって農業での就業機会が増えたため,第一次産業の就 業者割合は増加した。 ② 資本集約的な部門を中心にした製造業の発展の結果,第二次産業の就業者 割合は減少し続けた。 ③ 就業者割合の面からみると,日本は,モノの生産を中心とした経済から サービスの生産を中心にした経済へと変化した。 ④ 第三次産業の労働生産性,他の産業よりも高かったので,その就業者数 は減少した。 問3 下線部(c)に関連して,次の図は,女性就業者の年齢層別の数と割合を示した ものである。この図についての説明として 誤っているもの を,下の①∼④のう ちから一つ選べ。 [21] (資料)総務庁『日本統計年鑑』平成8年版により作成。 ① 19歳以下の割合が減少したのは,女性の高学歴化が進み,就業年齢が高 くなってきたことが影響している。 ② 1970年に25∼34歳で就業していなかった女性は,その後も就業せずに いることが多い。 ③ 35歳から54歳までの割合が増大したのは,子育ての終わった女性が就業 するケースが増えているからである。 ④ 55歳以上の割合が増大していることからみて,高齢の女性も働く傾向が 強まっている。 - 11 - 1997年度: 政/本 試 問4 下線部(d)の一つとして,中小企業問題がある。今日の中小企業を取り巻く状 況の記述として正しいものを,次の①∼④のうちから一つ選べ。 [22] ① マイカーの普及や都市化の進展に伴って大型小売店舗が増えたため,中小 の小売店の経営が圧迫されることか多い。 ② 中小企業は,政府から特別な保護を受けることはないので,大企業に比べ 倒産件数が多い。 ③ 中小企業は,一般に,大企業よりも賃金水準が高いので,人件費が経営の 重荷になることが多い。 ④ 経営の効率化をめざす大企業による吸収合併が進んだため,中小企業の数 は減少している。 問5 下線部(e)に関連して,最近の日本経済や日本企業に生じている現象について の記述として正しいものを,次の①∼④のうちから一つ選べ。 [23] ① ② 小売業における価格競争が弱まり,消費者物価が持続的に上昇している。 地域経済活性化の切り礼として,コンビナートの建設など重化学工業を中 心にした開発が計画され,いずれも順調に実施されている ③ 従業員の自己啓発やイメージの向上を目的に,ボランティア活動に対 する支援や助成を行う企業が出てきている。 ④ 北アメリカや西ヨーロッパから優れた技術を輸入し,発展途上国向けの軽 工業製品を安いコストで生産するようになってきている。 - 12 - 1997年度: 政/本 試 第5問 次の文章を読み,下の問い(問1∼5)に答えよ。(配点13) 「権利の保障が確保されず,権力の分立も定められないすべての社会は,憲法を もつものではない 。」 [24] はこのように述べ,近代立憲主義の考え方,つま り,国民の権利を保障するため国の統治の組織は,(a)権力分立の原理に従うべ きであるとする考え方を示している。 [24]では,国民の権利は,とくに人間の「自然権」という表現で示されてお り,具体的には,自由・ [25] ・安全・圧制への抵抗の四つを内容としている。 ここでは(b)国家からの自由という理念が強く打ち出され国の統治権は,本来 自由な人間の行動に対して制約を加える存在として立ち現れる。 [24]は,しかし同時に,(c)すべて主権の源泉は国民に存するとうたい,国 民自らまたはその代表者が法律の制定に関与することも述べている。この場合,統 治の基礎となる立法に国民が参加することが当然に予定され,国の統治権は,国民 自らが作り出す権力としてとらえられている。その意味で,近代立憲主義の考え方 には,国民が(d)参政権をもつという [26] の要素が含まれているのである。 問1 問2 文中の [24]∼ [26]に入れるのに最も適当な語を,次のそれぞれの ①∼④のうちから一つずつ選べ。 [24] ① ③ ワイマール憲法 マグナカルタ ② ④ [25] ① ③ 所有権 革命権 ② ④ 請願権 生存権 [26] ① ③ 積極国家 法治主義 ② ④ 民主制 連邦制 アメリカ独立宣言 フランス人権宣言 下線部(a)についての記述として適当なものを,次の①∼④のうちから一つ選 べ。 [27] ① ② ③ ④ この原理は,主としてボーダンやグロチウスによって基礎づけられた。 この原理によると,国の統治作用は内政・外交・司法に分けられる。 アメリカの大統領制は,この原理を厳格に適用した政治体制である。 社会主義国の政治体制は,この原理を思案に守ろうとした制度である。 - 13 - 1997年度: 政/本 試 問3 下線部(b)に関連する記述として 適当でないもの を,次の①∼④のうちから一 つ選ぺ。 [28] ① 19世紀の多くの憲法は,信教の自由や出版の自由だけでなく,不当な逮 捕を防ぐため,人身の自由をも保障している。 ② その役割が,社会秩序の維持と外敵からの防衛など,必要最小限のものに 限られる国家は ,「夜警国家」と呼ばれている。 ③ 営業の自由や契約の自由などに対しては,20世紀に入ると,社会的弱者 の保護のために,強い制約が加えられるようになった。 ④ 国際連合に加盟した国は,国際人権規約(B規約)に規定された ,「市民的 及び政治的権利」を保障する義務を負う。 問4 下線部(c)は ,「国民主権」の考えを表すが,これと同じ意味で「主権」とい う言葉を用いている文を,次の①∼④のうちから一つ選べ。 [29] ① 「主権・国民・領域(領土)」は,国家というものを構成する三要素である と言われる。 ② 明治憲法は ,「君主主権」の原理に立つ政治体制を採用し,多くの天皇大 権を認めていた。 ③ ポツダム宣言によって ,「日本国の主権」は本州・北海道・九州・四国な どに限定されることになった。 ④ 従来絶対視されてきた「国家主権」は,現代では,国際組織や国家間の合 意などによって制限される傾向にある。 問5 下線部(d)についての記述として 適当でないもの を,次の①∼④のうちから一 つ選べ。 [30] ① 参政権の保障が,言論の自由や集会・結社の自由と結びつくところに,政 党というものが生まれる。 ② 選挙制度の歴史をみると,選挙権の要件については,制限選挙制から普通 選挙制に移行してきた。 ③ 議院内閣制では,国民は議員を選挙するだけでなく,首相をも直接に選挙 するのが一般的である。 ④ 国民投票(レファレンダム)は,国民が国政に直接参加するための方法とし て用いられている。 - 14 - 1997年度: 政/本 試 第6問 次の文章を読み,下の問い(問1∼5)に答えよ。(配点13) 日本の国民生活にも裁判が浸透しつつある。裁判は,法的な争いに最終的な判定 が下される場であり,国民にとっては,個人,企業などの組織,国・自治体のいず れによるものであれ,違法行為が行われたことを明らかにして,法のルールにのっ とった正当な利益や主張を実現する手段となる裁判所は,(a)原則としてあらゆる種類 の争いに,憲法その他の法令を適用して法の支配を実現する任務を負っている。 日本国憲法は,(b)裁判官の独立を規定して裁判が公正に行われるようにすると ともに,国民に裁判を受ける権利を保障している。刑事事件では,犯罪行為とその 処罰について裁判所の判断を仰ぐために検察官が起訴するが,民事事件では,争い の当事者自身が訴えを起こさなければならないのが原則である。そこで,国民が 弁護士の助力を受けやすくするとともに,費用や時間がかかりすぎることや立証が 難しいことなど,(c)国民を裁判の利用から遠ざける要素を少なくすることが重要 である。 裁判の機能は,当該の事件を解決することに尽きるわけではない。判決によっ て, [31] のような,それまで法令の明文で規定されていなかった権利が新たに 認められることもある。さらに,(d)判決がその後の立法に影響を与えることや,裁 判で明らかにされた問題が行政による解決のきっかけとなることもある。 問1 文中の [31]に入れるのに最も適当なものを,次の①∼④のうちから一つ 選べ。 ① ③ 問2 生存権 条例の制定を請求する権利 ② ④ プライバシーの権利 消費者の四つの権利 下線部(a)に関連する記述として 誤っているもの を,次の①∼④のうちから一 つ選べ。 [32] ① 裁判所は,国や自治体による人権侵害だけでなく,私人による人権侵害に 対しても救済を与えることができる。 ② 違法な行政指導など,国民の監視が届きにくい行為が裁判で明らかになる こともある。 ③ 違憲の疑いのある法律案が国会に提出されたとき,国民は最高裁判所に違 憲審査を求めることができる。 ④ 国の行為でも,国会や内閣などの政治的判断の問題として,裁判所の審査 になじまないとされるものがある。 - 15 - 1997年度: 政/本 試 問3 下線部(b)に関連して,裁判官の地位についての記述として 誤っているもの を,次の①∼④のうちから一つ選べ。 [33] ① 下級裁判所の裁判官は,最高裁判所の作成する名簿に従って内閣によって 任命される。 ② 下級裁判所の裁判官は,判決を下すさいに最高裁判所の裁判官の指示に従 う義務はない。 ③ 裁判官は,国会議員で組織される弾劾裁判所の裁判により罷免されうる。 ④ 最高裁判所の裁判官は,国民審査によっては罷免されない。 問4 下線部(c)に関連して,とくに民事裁判を利用しやすくする制度の例として最 も適当なものを次の①∼④のうちから一つ選べ。 [34] ① 欠陥商品から生じた損害について,企業側に無過失責任を負わせる製造物 責任(PL)の制度 ② 行政に対する苦情について調査し,改善勧告などをする権限をもつオンブ ズマン(行政監察官)の制度 ③ 第一審の判決に不服のある当事者に,控訴の機会,さらに上告の機会を与 える三審制度 ④ 被告人が自ら弁護人を依頼することができないときに,国が弁護人を付す る国選弁護人の制度 問5 下線部(d)についての記述として 誤っているもの を,次の①∼④のうちから一 つ選べ。 [35] ① 四大公害裁判の判決を受けて,全国的な環境アセスメント法が制定され た。 ② 議員定数の格差を違憲とする最高裁判所の判決が,格差を是正する公職選 挙法改正を促した。 ③ 女子差別撤廃条約を契機として制定された男女雇用機会均等法には,男女 定年差別などを違法とする一連の判決の趣旨が反映している。 ④ 大阪国際空港訴訟では,夜間飛行禁止は,最高裁判所の判決によっては認 められなかったが,行政指導で実現された。 - 16 - 1997年度: 政/本 試 第7問 次の文章を読み,下の問い(問1∼5)に答えよ。(配点13) 国際連合というとき,私たちは,どのような活動をイメージしているのであろう か。国連の活動には,平和の確保と経済的・社会的国際協力という二つの柱のもと に,さまざまな側面があるが,実はその重点は,時々の情勢や(a)加盟国の構成の 変化により,移り変わってきたのである。 まず,平和の確保の面では,冷戦下においては大国間で意見が一致せず,ほとん どの場合,国連は,侵略行為を抑圧する行動をとることができなかった。それに代 わって主に展開されてきたのは,平和維持活動など事態の悪化を防ぐ活動で あった。ところが,冷戦終結後,イラクがクウェートに侵攻した(c)湾岸危機を契 機として,軍事的な活動に積極的に関与することが多くなった。 一方,経済的・社会的国際協力については,とくに1960年代から80年代にかけ て,国連は,南北問題への取り組みや人権条約の採択など,多くの成果をあげてき た。さらに,(d)環境問題についても,国連人間環境会議を開催するなど,積極的 に取り組んできた。 近年,(e)日本と国連との関係が議論の一つの焦点となっている。その際忘れて ならないのは,日本が国連から求められるものは何か,ということとともに,日本 がどのような側面においてどう国連に働きかけていくのか,という観点であろう。 - 17 - 1997年度: 政/本 試 問1 下線部(a)に関連して,次の図は,国連加盟国の地域別構成比の推移を表した ものである。この図中の A , B , C には,アジア,アフリカ,ラテンアメリカ のいずれかの地域があてはまる。これら3地域の組合せとして正しいものを, 下の①∼⑥のうちから一つ選べ。 [36] (注) ここでは,西欧・北欧に,オーストラリア・ニュージーランド・ 南アフリカ・イスラエルを含めている。 (資料) Yearbook of the United Nations などにより作成。 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ 問2 A A A A A A アジア アジア アフリカ アフリカ ラテンアメリカ ラテンアメリカ B B B B B B アフリカ ラテンアメリカ アジア ラテンアメリカ アジア アフリカ C C C C C C ラテンアメリカ アフリカ ラテンアメリカ アジア アフリカ アジア 下線部(b)の原則として,冷戦時代に認められてきたものについての記述とし て 適当でないもの を次の①∼④のうちから一つ選べ。 [37] ① ② ③ ④ 安全保障理事会の常任理事国の部隊が中心となる。 受入れ国の同意に基づいて活動が行われる。 紛争当事者双方に対して中立的な立場をとる。 受入れ国の内政に干渉しないように行動する。 - 18 - 1997年度: 政/本 試 問3 下線部(c)に対する国連の対応についての記述として正しいものを,次の①∼ ④のうちから一つ選べ。 [38] ① イラクとクウェート双方の行為を ,「平和の破壊」として非難し,双方に 対して制裁を発動した。 ② 安全保障理事会では拒否権が行使されたため,緊急に招集された総会が, イラク制裁のための措置を勧告した。 ③ 国連との事前の協定に基づいて,加盟国が提供した部隊からなる国連軍 が,イラク制裁のために派遣された。 ④ イラク制裁のために,アメリカ合衆国を中心とする多国籍軍に,武力行使 の権限を与えた。 問4 下線部(d)に関連して,環境問題をめぐる国際協力についての記述として正し いものを。次の①∼④のうちから一つ選べ。 [39] ① 国連は,重大な環境汚染を引き起こした多国籍企業の操業を禁止する権限 をもつようになった。 ② ナショナル・トラスト運動は,貴重な自然環境を国連の管理にゆだねる運 動として展開されてきた。 ③ オゾン層の保護のために,フロンの生産と消費を規制する国際合意が積み 重ねられてきた。 ④ 国連環境開発会議においては,先進国と発展途上国との間の利害の対立は みられなかった。 問5 下線部(e)についての記述として正しいものを,次の①∼④のうちから一つ選 べ。 [40] ① 日本は ,「旧敵国」であるため,日中共同声明による中国との国交の正常 化をまって,国連への加盟が認められた。 ② 日本は,国連を中心に世界の平和と繁栄に貢献するという「国連中心主 義」を,外交上の原則として掲げた。 ③ 日本は,カンボジアにおける国連の平和維持活動に参加したが,自衛隊員 は派遣要員から除外した。 ④ 日本は,将来にわたって安全保障理事会の常任理事国になる意思はない, と表明してきた。 - 19 - 1997年度: 政/本 試 問 題 番 号 (配点) 第1問 (22) 第2問 (13) 第3問 (13) 第4問 (13) 問 題 設 問 解答番号 正 解 配 点 1 1 ① 2 2 2 ② 3 3 3 ③ 3 4 4 ② 2 5 5 ④ 6 6 7 8 1 番 号 (配点) 解答番号 正 解 配 点 24 ④ 1 1 25 ① 1 26 ② 1 2 27 ③ 2 3 3 28 ④ 3 ① 3 4 29 ② 2 7 ③ 3 5 30 ③ 3 8 ③ 3 1 31 ② 2 9 ④ 3 2 32 ③ 3 3 33 ④ 2 第5問 (13) 第6問 設 問 2 10 ③ 2 3 11 ④ 3 4 34 ① 3 4 12 ② 2 5 35 ① 3 5 13 ① 3 1 36 ⑥ 2 1 14 ③ 2 2 37 ① 2 (13) 第7問 2 15 ④ 3 3 38 ④ 3 3 16 ④ 3 4 39 ③ 3 4 17 ② 2 5 40 ② 3 5 18 ② 3 1 19 ① 2 2 20 ③ 3 3 21 ② 3 4 22 ① 3 5 23 ③ 2 (13) 1997 年度:政/本試(解答) - 20 -
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