後期研修プログラム - 慶應義塾大学医学部 リハビリテーション医学教室

リハビリテーション医学
Ⅰ.プログラムの名称
慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室
後期臨床研修(専修医課程)プログラム
Ⅱ.基本方針
リハビリテーション科は、主に神経・筋・骨格器系の異常にもとづく運動機能障害を対象とし
て、医学的治療を施す診療科である。我々、リハビリテーション科医は、運動機 能障害の診断・
治療・予防を専門とし、筋電図・神経伝導検査、歩行分析などの診断手法を用いながら、適切な
障害の診断、残存機能の評価、機能回復の予測を行い、充分な診断・評価のもとに、適切なリハ
ビリテーションプログラムを施行し、疾患により生じた移動・身辺動作・コミュニケーションな
どの障害に対して失われた機能の回復を促し、日常生活の自立や社会復帰を支援することを使命
とする。
2年間の研修をもとにして、慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室の各教育関連病
院においてリハビリテーション医としての臨床経験を積むと同時に、研究活動の指導を受ける。
この期間に、リハビリテーションに関する臨床面での自立、日本リハビリテーション医学会のリ
ハビリテーション専門医制度における専門医の取得ないし学位取得のための準備を行う。
Ⅲ.プログラム責任者と参加協力施設
①
プログラム責任者
慶應義塾大学病院リハビリテーション科
診療部長 里宇 明元 教授(日本リハビリテーション医学会専門医、指導医)
専修医担当主任 辻 哲也 専任講師(日本リハビリテーション医学会専門医、指導医)
②
基幹施設: 慶應義塾大学病院(リハビリテーション科)
③
参加協力施設(独立行政法人国立病院機構は国立病院機構と略す)
群 馬 県:慶友整形外科病院
埼 玉 県:国立病院機構東埼玉病院
千 葉 県:市川市リハビリテーション病院、東京湾岸リハビリテーション病院
東 京 都:国立成育医療センター、東京都リハビリテーション病院、
国立病院機構村山医療センター、武蔵野陽和会病院
神奈川県:川崎市立川崎病院、済生会横浜市東部病院、済生会神奈川県病院
静 岡 県:慶應義塾大学月が瀬リハビリテーションセンター、静岡県立静岡がん
センター
Ⅳ教育課程
2年間の初期研修修了に続く4年間とする。
慶應義塾大学病院を含めた各教育関連病院に、それぞれ1-1.5年間ずつを目安に勤務する。
Ⅴ.教育内容
専修医4年間を通じて、リハビリテーション科各教育関連施設の特色を生かし(脳血管障害、
脊髄損傷、骨関節疾患、小児、神経筋疾患、切断、悪性腫瘍など)、リハビリテーション専門医
の指導のもとで、主治医としてリハビリテーション医学・医療を実践し、リハビリテーション専
門知識を習得する。対象疾患と主なプログラムの内容を下表に示す。
脳卒中
麻痺の回復促進、痙縮コントロール、装具処方、嚥下リハビリ
外傷性脳損傷
高次脳機能障害評価、神経心理学的アプローチ、就学・就業支援
脊髄損傷
排尿管理、合併症管理、車椅子処方、対麻痺歩行再建、褥瘡対策
関節リウマチ
自助具検討、スプリント作成、関節保護、生活指導
骨関節疾患
肩関節周囲炎、腰痛・脊椎疾患、変形性股・膝、骨折・骨粗鬆症等への対応
四肢切断
義肢処方、適応判定、歩行訓練
脳性麻痺、発達障害
発達評価、シーティング、ブロック療法、歩行器処方
神経筋疾患
パーキンソン病、脊髄小脳変性症、多発性硬化症、ALS、ポストポリオ症候群、
筋ジストロフィーへの対応(車椅子処方、NPPV、環境制御装置等含め)
慢性閉塞性肺疾患
呼吸障害の評価、呼吸リハビリ、筋力トレーニング
心筋梗塞、心不全
心負荷に対するリスクマネジメント、心筋梗塞後プログラム、心臓リハビリ
末梢神経損傷
筋電図評価、補装具処方
悪性腫瘍
周術期リハビリ(脳腫瘍・乳癌・子宮癌・頭頚部癌、食道癌、肺癌、骨軟部腫
瘍等)、フィジカルフィットネス維持・向上プログラム、骨髄移植、緩和医療
リンパ浮腫
評価法、複合的理学療法(スキンケア、ドレナージ、バンデージ・運動療法)
大学病院での研修は、特定機能病院ならではの先端医療に関わる症例、急性期症例のリハビリ
テーションについて学ぶ。脳卒中急性期に関しては神経内科と連携し、併診チームとして早期か
らのリハビリテーション介入を行い、高い治療効果を挙げている。
研修では急性期病院から回復期、維持期への流れを理解し、マネジメントする能力を実践的に
高めることができる。また、リハビリテーション科の固有病床においては、外来では対応が困難
な症例に対してリハビリテーション医療を提供している。リハビリテーション医学の視点から全
身評価、管理を行うとともに他職種とのカンファレンスなどを通じて主治医としての資質を養う。
そのほか、骨髄移植、心大血管、呼吸器疾患などでは専門チームを設け治療プログラムを強力
にサポートするとともに、外来ではリンパ浮腫外来の開設のほか、ジストニアに対するボツリヌ
ス療法や脳卒中片麻痺に対する上肢運動機能回復のための先端治療など、高度な先進リハビリテ
ーションについても学習する機会を用意している。
研修協力施設においては、それぞれが特色あるリハビリテーション医療を展開しており、ロー
テーションによって、脳卒中回復期、脊髄損傷、骨関節疾患、小児、神経筋疾患、切断、悪性腫
瘍など様々な疾患に関する知識を深め、幅広い臨床経験を積むことができる。
1-2年目
リハビリテーションチームのリーダーとしての役割を臨床場面で実践する。
臨床的あるいは基礎的研究の指導を受け、学会発表および論文作成を行う。
3年目
日本リハビリテーション医学会認定臨床医の資格を獲得する。
医学生、後輩および関連職種スタッフの教育及び指導を行う。
4年目
日本リハビリテーション医学会専門医の資格を獲得する。
診療、研究面での Subspecialty を確立する。
学位研究のテーマを決定し、予備実験および本実験を開始する。
なお、専修医コース 1 年目~4年目のいずれの年次においても、大学院博士課程への入学が可
能である。その際の研修の進め方については、個別に対応する。
Ⅵ.教室内行事
教室勉強会:毎月1回(土曜日)。教室員全員(研修協力施設の医師も含む)による勉強会で、
教育講演や症例検討などを行う。
サマーセミナー:8月 学位取得へ向けての研究過程を教室員全員で検討する。
予演会:不定期。主な関連学会の前に行う(専修医は必ず慶應義塾大学リハビリテーション科
にて予演会を行う)。
抄読会、症例カンファレンス等は各教育関連病院にて、定期的に実施される。
Ⅶ.研究活動
運動障害・認知障害の診断・評価・治療を専門とする学問分野として、神経生理学、運動生理
学、神経筋病理学、分子生物学、障害の評価、各種疾患・障害に対するリハビリ、リハビリ心理
学、地域リハビリ、リハビリ工学など幅広いテーマに取り組んでいる。近い将来予定されている
長期宇宙滞在においては、微小重力環境下で不可避の筋萎縮、骨粗鬆症などの健康問題に対する
宇宙医学的研究にも関与している。
慶應義塾大学病院を拠点とし、各教育関連病院においても、日常診療の他に、先輩の研究に積
極的に参加するとともに、各病院部長ないし医長から臨床的あるいは基礎的研究の直接的な指導
を受ける。研究の実績は国内発表にとどまらず、国際的な交流も盛んである。慶應義塾大学理工
学部や国内の研究機関とも共同研究を行っている。
4年目までに学位の研究テーマを決定し、適当な指導者からの助言のもとに、予備実験および
本実験を開始し、その研究過程は随時サマーセミナーで発表する。海外留学も積極的にサポート
している。大学院博士課程入学者については、個別に対応する。
研究のテーマとしては、主に以下のものを扱う。
○ 臨床神経生理学
筋電図:運動単位自動解析、運動単位発射調節など
伝導速度:筋線維伝導速度など
反射:H 反射、長潜時反射など
誘発電位:体性感覚誘発電位、運動誘発電位、脳磁図など
神経筋の生理学および病理学
末梢神経:神経病理、運動負荷の影響など
筋肉:筋線維タイプ変換、脱神経筋の病理など
ニューロイメージング:光トポグラフィー(NIRS)、脳磁図、機能的 MRI など
○ 運動生理
筋力:運動と筋トルク値など
呼吸・循環:障害者の呼吸・循環動態、体力評価など
動作分析:関節運動の解析、歩行分析など
○ リハビリテーション心理学
障害の受容、痛みのコントロール、神経心理学、認知リハビリテーションなど
○ 障害の評価
脳卒中の機能障害の評価、日常生活動作(ADL)の評価など
○ 各種疾患に関する臨床研究
脳卒中、外傷性脳損傷、脊髄損傷、関節リウマチ、脳性麻痺、筋ジストロフィー、慢性閉
塞性肺疾患、悪性腫瘍、リンパ浮腫など
○ その他
医用工学(ブレインマシンインターフェース、ロボット開発)
、宇宙医学、画像による筋
萎縮の評価、神経因性膀胱、義肢・装具の開発など
Ⅷ.学会、研究会など
臨床的あるいは基礎的研究の成果を、年2〜3回以上、学会にて発表する。また、共同演者
として参加する。その主な学会は以下の通りである。
【国内学会】
日本リハビリテーション医学会
日本リハビリテーション医学会関東地方会
日本臨床神経生理学会
日本義肢装具学会
日本脊髄障害医学会
日本脳卒中学会
国立病院総合医学会
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会
日本運動療法学会
日本体力医学会
日本高次脳機能障害学会
日本呼吸管理学会
日本癌治療学会
日本緩和医療学会など
【国際学会】
Annual Meeting of Association of Academic Physiatrists
Annual Assembly of American Academy of Physical Medicine Rehabilitation
International Congress of the International Society of Physical and
Rehabilitation Medicine
Annual Scientific Meeting of International Medical Society of Paraplegia
World Congress of International Society for Prosthetics and Orthotics
International Congress of EMG and Clinical Neurophysiology
Mediterranean Congress of Physical Medicine & Rehabilitation
International Society of Electrophysiology and Kinesiology Conference
World Congress for Neurorehabilitation など
Ⅸ.評価方法など
① 評価方法
各教育関連病院の部長ないし医長により逐次評価を受け、プログラム指導者と協議される。
年間の学会発表、論文、講演、文献抄録などの数から、最も活躍した専修医をその年の
「Resident of the Year」として表彰する。
② プログラム修了の認定
プログラム指導者は、卒業後6年経過した時点で、専修医修了の認定を行う。
③ プログラム修了後のコース
教育関連病院での指導医として、臨床および後輩や関連職種の指導を行う。必要に応じて
関連病院間での移動が行われる。
Ⅹ.身分
活動内容に応じて以下の 3 つに分かれる。
・医学部助教(専修医)
(診療):診療活動に重点
・医学部助教(専修医)
(臨床研究)
:臨床研究活動に重点
・医学部助教(専修医)
(出向):教育関連病院に出向
ⅩI.その他
慶應義塾大学医学部リハビリテーション科専修医研修プログラムに関する最新情報は、下記の
リハビリテーション科ホームページをご覧下さい。
URL:http://web.sc.itc.keio.ac.jp/rehabil/index-jp.html
リハビリテーション科後期臨床研修評価表
後期臨床研修におけるリハビリテーション医として下記の研修項目について自己評価するとと
もに、直接の指導医による評価も受ける。
リハビリテーション科後期臨床研修評価細目
A:習得した
B:ほぼ習得した
C:目標に達しない
自己評価
指導医評価
A・B・C
A・B・C
リハビリテーション医学総論
I.
知識
1) リハビリテーション医学概論
2) 機能解剖・生理学
①
筋骨格系(骨,関節,靱帯,骨格筋)
②
神経系(中枢神経系・末梢神経系・自律神経系,感覚器)
③
呼吸・循環器系
④
摂食嚥下
⑤
排泄(排尿・排便)
3) 運動学
①
上肢
②
下肢
③
歩行と姿勢
④
発達と反射
4) 障害学
II.
①
運動障害
②
感覚障害
③
高次脳機能障害
④
排泄障害
⑤
嚥下障害
⑥
廃用症候群
⑦
歩行障害
⑧
日常生活動作障害
⑨
参加制約(社会的不利)
⑩
QOL
診断・評価
1) リハビリテーション診断学
①
画像診断
A) 単純 X 線撮影(胸部/腹部/脊椎/四肢)
(ア) 単純 X 線像を読影し,基本的な異常を指摘できる
B) 頭部 CT/MRI
(ア) 頭部 CT/MRI 像を読影し,脳血管障害や外傷性脳損傷,水頭症等の基本
的な異常を指摘できる
(イ) 脳出血・脳梗塞及び出血性梗塞の CT 所見から発症からの時期を把握でき
る
(ウ) CT/MRI 所見上の障害された部位を機能解剖学的に把握できる
C) 脊椎 MRI
(ア) 脊椎 MRI 像を読影し,脊髄損傷やヘルニア,脊柱管狭窄症等の基本的な
異常を指摘できる
D) 核医学
(ア) 脳血流シンチ像を読影し,脳血管障害や頭部外傷等の基本的な異常所見を
指摘できる
(イ) 骨シンチ像を読影し,転移性骨腫瘍等の基本的な異常所見を指摘できる
E) 電気生理学的診断
(ア) 筋電図
i)
主な筋の針筋電図を行い,安静時の異常所見を指摘できる
ii)
主な筋の針筋電図を行い,運動単位電位の各パラメーターを測定でき
る
iii)
針筋電図でニューロパチー運動単位電位とミオパチー運動単位電位
を判別できる
iv)
神経伝導検査
a) 主な神経の運動誘発電位(CMAP), 感覚誘発電位(SNAP)を導
出し,潜時・振幅及び伝導速度を測定できる
b) H 波, F 波を導出し各パラメーターを測定できる
v)
反復刺激検査を行うことができる
(イ) 脳波
i)
脳波検査の結果を解釈できる
ii)
体性感覚誘発電位
a) 体性感覚誘発電位(SEP)を実施できる
(ウ) 心電図
i)
心電図検査を行い,虚血性変化,不整脈等異常所見を指摘できる
F) 病理診断
(ア) 筋肉
i)
簡単な筋肉組織の病理所見が読める
(イ) 神経
i)
②
その他
A) 骨密度
簡単な神経組織の病理所見が読める
(ア) 骨密度検査の結果を解釈できる
2) リハビリテーション評価
①
意識障害の評価
A) Japan Coma Scale (JCS) による意識障害の評価が行える
B) Glasgow Coma Scale (GCS) による意識障害の評価が行える
②
運動障害の評価
A) 関節可動域
(ア) 四肢・体幹の関節可動域を測定できる
B) 筋力
(ア) 四肢・体幹の筋力を徒手筋力テスト(MMT)で測定できる
C) 麻痺
(ア) 運動麻痺の有無と程度を評価できる
D) 失調
(ア) 失調の有無と程度を評価できる
E) 痙縮と固縮
(ア) Ashworth Scale (Modified Ashworth Scale) による痙縮の評価が実施で
きる
F) 不随意運動
(ア) 不随意運動の種類を評価できる
③
感覚障害(疼痛を含む)の評価
A) 表在感覚・深部感覚・二点識別覚を評価できる
④
言語機能の評価
A) 失語症
(ア) 標準失語症検査(SLTA)に基づき評価ができる
(イ) 失語症と痴呆の鑑別ができる
B) 構音障害
(ア) 障害を会話明瞭度に沿って分類できる
C) 痴呆・高次脳機能の評価
(ア) 知的機能障害,痴呆
(イ) 痴呆を診断できる(DSM IV に基づいて)
(ウ) 長谷川式スケール, Mini-mental State Examination (MMS)を実施できる
(エ) WAIS-R の解釈ができる
D) 記憶障害
(ア) 健忘を診断できる(DSM IV に基づいて)
E) 失行
(ア) 失行のタイプを診断できる
F) 失認
(ア) 失認のタイプを診断できる
G) 注意障害
(ア) 注意障害の診断ができる
(イ) Paced auditory serial addition test (PASAT), Train making test (TMT)
を実施できる
H) 遂行機能障害
Wisconsin card sorting test (WCST)を実施できる
⑤
心肺機能の評価
A) 一般肺機能検査
(ア) 一般肺機能検査で基本的な異常を評価できる
(イ) 運動負荷試験
i)
運動負荷試験を施行できる
ii)
運動負荷試験の禁忌と中止基準を理解している
iii) リスク管理と緊急時の対応ができる
⑥
摂食・嚥下の評価
A) スクリーニングテスト
(ア) 水飲みテスト・反復唾液嚥下テストの実施と解釈ができる
B) 嚥下造影
(ア) 嚥下造影を施行し,読影・結果の解釈ができる
C) 嚥下内視鏡
(ア) 嚥下内視鏡を施行し,結果の解釈ができる
⑦
排尿の評価
A) 排尿の理学的所見
B) 排尿の画像診断
(ア) 経静脈性腎孟撮影法(IP)の結果を解釈できる
(イ) 逆行性膀胱造影(CG)の結果を解釈できる
(ウ) 逆行性尿道撮影法(UG)の結果を解釈できる
C) 尿流動態検査
(ア) 尿流測定(ウロフロメトリー)の結果を解釈できる
(イ) 膀胱内圧測定(シストメトリー)を施行し,レポートが書ける
⑧
成長・発達の評価
A) 緊張性頚反射,一連の立ち直り反応,パラシュート反応,Landau 反射,平衡
反応等が評価できる
B) 反射,反応から大まかな運動発達のプロフィールがわかる
C) 4・7・12・18 の key month の所見を評価できる
D) 評価尺度を用いて発達を評価できる
⑨
障害者心理の評価
A) 障害受容の過程を理解できる
B) 障害の受容過程に沿って,患者の心理状態を把握できる
C) 患者の心理状態に合わせた接し方やチームへの指示ができる
⑩
歩行の評価
A) 異常歩行を診断できる
B) 異常歩行を評価し、原因を推定できる
⑪
日常生活動作(ADL)の評価
A) Functional Independence Meaure (FIM)による評価ができる
B) Barthel index による評価ができる
⑫
手段的 ADL(IADL)の評価
A) IADL の項目を挙げ,その評価ができる
⑬
参加制約(社会的不利)の評価
A) 参加制約(社会的不利)の客観的評価ができる
III.
治療
1) 全身状態の管理と障害評価に基づく治療計画
①
健康状態管理
A) 患者の健康状態を管理できる
②
高血圧・糖尿病・高脂血症などの併存疾患の管理
A) 高血圧・糖尿病・高脂血症などの併存疾患の管理ができる
③
急変(ショック)時の対応 (BLS)
A) 患者急変(ショック)時に適切に対応できる (BLS)
④
廃用症候群の予防
A) 廃用症候群を予防できる
⑤
栄養管理(胃瘻,腸瘻など)
A) 胃瘻,腸瘻などによる適切な栄養管理ができる
2) 障害評価に基づく治療計画
①
予後予測
A) 障害評価に基づき、予後予測ができる
②
治療期間とゴール設定
A) 障害評価に基づき、適切な治療期間とゴール設定ができる
3) 理学療法
①
運動療法
A) 主な関節の関節可動域訓練ができる
B) 障害評価に基づいた筋力増強・持久力訓練が処方できる(等張性・等尺性・等
運動性)
C) 障害評価に基づいた筋再教育・治療体操ならびに持久力訓練が処方できる
D) 障害評価に基づいて歩行訓練が処方できる
E) 呼吸理学療法の指導・処方ができる
②
物理療法
A) 温熱療法(ホットパック,極超短波,超音波,レーザー等)の適応・禁忌・特
徴を把握し,適切に処方できる
B) 低周波治療が適切に処方できる
C) 水治療が適切に処方できる
D) 頚部と腰部の牽引ができる
③
バイオフィードバック療法
A) バイオフィードバック治療による運動学習を実施できる
4) 作業療法
①
機能的作業療法
A) 上肢関節の関節可動域訓練を実施・処方できる
B) 上肢の筋力強化訓練を実施・処方できる(等張性・等尺性)
C) 障害評価に基づいた筋再教育・治療体操ならびに持久力訓練を処方できる
②
高次脳機能障害に対する作業療法
A) 高次脳機能の障害評価に基づいて作業療法を処方できる
B) 高次脳機能障害を有する患者・家族に生活・介護指導ができる
③
ADL, IADL 訓練
A) ADL の指導を患者・家族に行える
B) 買い物などの IADL の指導を患者・家族に行える
④
家屋改造
A) 家屋改造の指導ができる
5) 言語療法
①
失語症
A) 言語療法を処方し,患者・家族に指導できる
②
構音障害
A) 言語療法を処方し,患者・家族に指導できる
6) 義肢
①
義手の処方と適合判定ができる
②
義足の処方と適合判定ができる
7) 装具・杖・車椅子など
①
上肢装具の処方と適合判定ができる
②
下肢装具の処方と適合判定ができる
③
体幹装具の処方と適合判定ができる
④
杖や歩行補助具の処方ができる
⑤
車椅子の処方と適合判定ができる
⑥
座位保持装置の処方と適合判定ができる
8) 訓練・福祉機器
①
自助具
A) 自助具の紹介,家族指導ができる
②
環境制御装置
A) 環境制御装置を処方できる
9) 摂食嚥下訓練
①
間接的嚥下訓練と直接的嚥下訓練を処方できる
②
経管栄養法を実施できる
10) 排尿・排便管理
①
排尿管理
A) 間歇的導尿法(方法)を患者に指導できる
B) 間歇的導尿の管理(時間設定,飲水管理)ができる
C) 収尿器の紹介ができる
D) 膀胱瘻の管理・処置ができる
②
排便管理
A) 緩下剤・坐薬・浣腸の処方・管理,食事・生活指導ができる
③
尿路合併症の治療
A) 合併症(尿路感染,結石,膀胱尿管逆流)の治療,泌尿器科へのコンサルテーシ
ョンができる
④
ブロック療法
A) 神経・筋肉ブロック
(ア) 主要な神経の神経ブロックが実施できる
(イ) 主要な筋の筋内神経ブロックが実施できる
B) トリガーポイントブロック
(ア) 腰痛のトリガーポイントに対して注射ができる
(イ) 項部痛のトリガーポイントに対して注射ができる
⑤
心理療法
A) 認知障害に対するもの
(ア) 神経心理学的観点から治療が施せる
B) 心理的サポート
(ア) 患者の心理状態を概ね把握し,初歩的なカウンセリングができる
⑥
薬物療法
A) 痙縮に対する処方
(ア) 痙縮に対し,筋弛緩薬の処方ができる
B) 排尿排便障害に対する処方
(ア) 病態に応じた薬物療法が行える
C) 疼痛に対する処方
(ア) 局所の疼痛を評価し,鎮痛薬の処方ができる
D) 症候性てんかんに対する処方
(ア) 脳損傷等による症候性てんかん患者に対し,抗てんかん薬の処方ができる
(イ) 痙攣発作時に治療ができる
E) 精神症状(うつ状態,不穏など)に対する処方
(ア) うつ状態の患者に抗うつ薬の処方ができる
(イ) 脳損傷患者のせん妄や痴呆・攻撃的行為に対し,薬物治療ができる
F) 異所性骨化に対する処方
(ア) 異所性骨化の薬物療法ができる
G) 神経因性膀胱に対する処方
(ア) 神経因性膀胱の病態に基づいた薬物療法ができる
H) その他
IV.
マネージメント・法制度
1) チームアプローチ
①
チーム医療の管理
②
リハビリチームの構成とスタッフの役割を理解し,チームリーダーとしての医師の
役割を果たせる
2) 地域連携
①
地域における社会資源を把握している
②
地域のスタッフと連携できる
3) 医療制度の概略を理解している
リハビリテーション医学各論
V.
脳卒中
1) 知識
①
脳卒中の分類を理解している
②
損傷部位による障害の違いを理解している
③
急性期における血圧管理の意義を理解している
④
麻痺の回復過程を理解している
2) 診断・評価
①
損傷部位ならびに程度を診断できる
②
評価尺度を用いて中枢性運動障害を評価できる
③
高次脳機能障害を評価できる
④
摂食・嚥下障害を評価できる
⑤
排尿障害を評価できる
3) 治療
①
原疾患と併存症に対応できる
A) 再発予防(薬物療法)
B) 痙攣発作
C) 水頭症
②
特徴的な障害と合併症の管理ができる
A) 摂食・嚥下障害
B) 排泄障害
C) 肩手症候群
D) 肩関節亜脱臼
E) 疼痛
F) 痙縮
VI.
③
理学療法の処方ができる
④
作業療法の処方ができる
⑤
言語療法の処方ができる
⑥
補装具の処方ができる
外傷性脳損傷
1) 知識
①
外傷性脳損傷の分類を理解している
②
損傷部位による障害の違いを理解している
2) 診断・評価
①
損傷部位ならびに程度を診断できる
②
評価尺度を用いて,中枢性運動障害を評価できる
③
高次脳機能障害を評価できる
3) 治療
①
原疾患と併存症に対応できる
A) 痙攣発作
②
特徴的な障害と合併症の管理ができる
A) 摂食・嚥下障害
B) 排泄障害
C) 痙縮
③
理学療法の処方ができる
④
作業療法の処方ができる
⑤
言語療法の処方ができる
⑥
補装具の処方ができる
⑦
神経心理学的アプローチが行える
A) 遂行機能障害に対するアプローチ
B) 外的補助手段・包括的アプローチ
⑧
VII.
就学・就業支援ができる
脊髄損傷
1) 知識
①
脊髄損傷の分類を理解している
A) 外傷性脊髄損傷
B) その他の脊髄損傷
②
脊髄損傷の病態を理解している
A) 損傷レベルと機能予後
B) 損傷部位と病型
③
脊髄損傷の合併症を理解している
2) 診断・評価
①
損傷レベルと病型を診断できる
②
評価尺度を用いて機能障害を評価できる
A) ASIA
B) Zancolli 分類
C) Frankel 分類
③
排尿障害を評価できる
④
呼吸障害を評価できる
3) 治療
①
原疾患と併存症に対応できる
②
特徴的な障害と合併症を管理できる
A) 自律神経過反射
B) 異所性骨化
C) 排泄障害
D) 褥瘡
E) 疼痛
F) 痙縮
G) 呼吸障害
③
理学療法の処方ができる
④
作業療法の処方ができる
⑤
補装具の処方ができる
⑥
神経心理学的アプローチができる
VIII. 二分脊椎
1) 知識
①
二分脊椎の分類を理解している
2) 診断・評価
①
麻痺レベルと歩行を評価できる
②
排尿障害を評価できる
③
脊柱・下肢変形を評価できる
④
水頭症を診断できる
3) 治療
①
原疾患と併存症に対応できる
②
特徴的な障害と合併症の管理ができる
A) 排泄障害
B) 水頭症
C) 脊柱・下肢変形
IX.
③
理学療法の処方ができる
④
作業療法の処方ができる
⑤
補装具の処方ができる
⑥
手術療法の適応が判断できる
⑦
就学支援ができる
関節リウマチ
1) 知識
①
症状の発現機序を理解している
②
病型分類を理解している
③
関節変形の名称と特徴を理解している
2) 診断・評価
①
診断基準にそって診断できる(ARA)
②
機能障害 ADL を評価できる(Steinbrocker class 分類)
③
進行度(病期)を評価できる(Steinbrocker stage 分類)
3) 治療
①
原疾患と併存症に対応できる
A) 局所および全身の安静を指導できる
X.
②
薬物療法を理解している
③
理学療法の処方ができる
④
作業療法の処方ができる
⑤
補装具の処方ができる
⑥
手術療法の適応が判断できる
⑦
生活指導ができる
骨関節疾患
1) 肩関節周囲炎・腱板断裂
①
症状を評価できる
A) X 線学的所見を評価できる
B) 薬物療法が行える
C) 関節内注射が行える
D) 理学療法の処方ができる
E) 手術療法の適応が判断できる
F) 生活指導ができる
2) 腰痛・脊椎疾患
①
症状を評価できる
②
X 線学的所見を評価できる
③
薬物療法が行える
④
理学療法の処方ができる
⑤
補装具の処方ができる
⑥
手術療法の適応が判断できる
⑦
生活指導ができる
3) 変形性股関節症
①
症状を評価できる
②
学的所見を評価できる
③
理学療法の処方ができる
④
補装具の処方ができる
⑤
手術療法の適応が判断できる
⑥
生活指導ができる
4) 変形性膝関節症
①
症状を評価できる
②
X 線学的所見を評価できる
③
関節穿刺,関節内注射が行える
④
理学療法の処方ができる
⑤
補装具の処方ができる
⑥
手術療法の適応が判断できる
⑦
生活指導ができる
5) 骨折・骨粗鬆症
XI.
①
代表的な骨折(大腿骨頸部骨折・脊椎圧迫骨折など)を理解している
②
症状を評価できる
③
X 線学的所見を評価できる
④
理学療法の処方ができる
⑤
補装具の処方ができる
⑥
手術療法の適応が判断できる
⑦
生活指導ができる
脳性麻痺
1) 知識
①
脳性麻痺の定義を理解している
②
病型分類を理解している
③
成人脳性麻痺の問題点(二次障害)を理解している
2) 診断・評価
①
発達を評価できる
②
原始反射が評価できる
③
評価尺度を用いて運動機能、ADL を評価できる
3) 治療
①
原疾患と併存症に対応できる
②
特徴的な障害と合併症の管理ができる
A) 痙攣
B) 痙縮
C) 呼吸障害
XII.
③
理学療法の処方ができる
④
作業療法の処方ができる
⑤
補装具の処方ができる
⑥
手術療法の適応が判断できる
⑦
就学支援ができる
神経筋疾患
1) パーキンソン病
①
知識
A) パーキンソン病の症状を理解している
B) 薬物療法を理解している
②
診断・評価
A) 評価尺度を用いて中枢性運動障害を評価できる
B) 障害度を評価できる(Hoehn & Yahr 重症度分類)
③
治療
A) 理学療法の処方ができる
B) 作業療法の処方ができる
C) 言語療法の処方ができる
2) 脊髄小脳変性症
①
知識
A) 病型分類を理解している
②
診断・評価
A) 診断基準にそって診断できる
B) 評価尺度を用いて中枢性運動障害の評価ができる
③
治療
A) 理学療法の処方ができる
B) 作業療法の処方ができる
C) 言語療法の処方ができる
3) 多発性硬化症
①
知識
A) 疾患の概要を理解している
B) 薬物療法を理解している
②
診断・評価
A) 評価尺度を用いて中枢性運動障害の評価ができる
③
治療
A) 理学療法の処方ができる
B) 作業療法の処方ができる
C) 生活指導ができる
4) 筋萎縮性側索硬化症
①
知識
A) 疾患の概要を理解している
B) 人工呼吸器の適応を理解している
②
診断・評価
A) 症状を評価できる
B) 筋電図による診断ができる
C) 呼吸障害を評価できる
D) 摂食・嚥下障害を評価できる
③
治療
A) 理学療法の処方ができる
B) 作業療法の処方ができる
C) 言語療法の処方ができる
D) 補装具の処方ができる
E) 人工呼吸器の管理ができる
F) 心理的サポートができる
5) 多発性神経炎
①
知識
A) 疾患の概要を理解している
B) 薬物療法を理解している
②
診断・評価
A) 症状を評価できる
B) 筋電図による診断ができる
③
治療
A) 理学療法の処方ができる
B) 作業療法の処方ができる
C) 補装具の処方ができる
6) ポストポリオ症候群
①
知識
A) 疾患の概要を理解している
②
診断・評価
A) 症状を評価できる
B) 筋電図による診断ができる
③
治療
A) 理学療法の処方ができる
B) 作業療法の処方ができる
C) 補装具の処方ができる
D) 生活指導ができる
7) 末梢神経損傷
①
知識
A) 末梢神経損傷の分類を理解している
B) 末梢神経の再生過程を理解している
②
診断・評価
A) 症状を評価できる
B) 筋電図による診断ができる
③
治療
A) 理学療法の処方ができる
B) 作業療法の処方ができる
C) 補装具の処方ができる
8) 筋ジストロフィー
①
知識
A) 疾患の概要を理解している
②
診断・評価
A) 上肢機能障害を分類できる
B) 機能障害度を評価できる(厚生労働省分類)
C) 筋電図による診断ができる
D) 筋生検による診断ができる
E) 呼吸障害を評価できる
F) 摂食・嚥下障害を評価できる
③
治療
A) 理学療法の処方ができる
B) 作業療法の処方ができる
C) 言語療法の処方ができる
D) 補装具の処方ができる
E) 就学支援ができる
XIII. 切断
1) 知識
①
切断部位による機能的特徴を理解している
2) 診断・評価
①
断端の状態(形状, 断端長)を評価できる
②
合併症を評価できる
3) 治療
①
断端管理ができる
②
義肢の処方ができる
③
義肢の適合判定ができる
④
合併症に対応できる
XIV. 慢性閉塞性肺疾患
1) 知識
①
疾患の概要を理解している
②
薬物療法を理解している
2) 診断・評価
①
呼吸障害を評価できる
3) 治療
XV.
①
理学療法の処方ができる
②
生活指導ができる
循環器疾患
1) 心筋梗塞
①
知識
A) 疾患の概要を理解している
B) 薬物療法を理解している
②
診断・評価
A) 心電図を評価できる
③
治療
A) ガイドライン(厚生労働省)にそって急性期の運動処方ができる
B) 運動負荷試験を実施できる
C) 慢性期の運動処方ができる
D) 生活指導ができる
2) 慢性心不全
①
知識
A) 疾患の概要を理解している
B) 薬物療法を理解している
②
診断・評価
A) NYHA 機能分類によって評価できる
③
治療
A) 重症度によって運動処方ができる
3) 末梢循環障害
①
知識
A) 疾患の概要を理解している
②
診断・評価
A) 末梢循環障害を診断できる
③
治療
A) 理学療法の処方ができる
XVI. その他
1) 悪性腫瘍
①
知識
A) 疾患の概要を理解している
②
診断・評価
A) 疾患の状態把握が行える
③
治療
A) 理学療法の処方ができる
B) 作業療法の処方ができる
C) 疼痛の管理ができる
D) 心理的アプローチができる
2) 熱傷
①
知識
A) 疾患の概要を理解している
②
診断・評価
A) 機能障害を評価できる
B) 異所性骨化を診断できる
③
治療
A) 理学療法の処方ができる
B) 作業療法の処方ができる
C) 補装具の処方ができる