アサド政権弱体化はテロ拡大に=欧米などの武器

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東京外国語大学総合国際学研究院教授 青山弘之
アサド政権弱体化はテロ拡大に=欧米などの武器支援は混乱助長
■正統性欠く反体制組織
■国民代表せず、むしろ暴力の主体に
■アサド政権が防波堤という実態
「アラブの春」が中東全域を席巻する中、欧米諸国が反体制デモを
弾圧するシリアのアサド政権の正統性を一方的に否定し、政権幹部ら
への制裁を発動してから2年がたった。シリアに対する経済制裁は、
デモが沈静化し始めた2011年9月以降段階的に強化され、今年に
入ってからは反体制勢力への非殺傷兵器供与や軍事教練が本格化
している。
こうした動きは、化学兵器使用・拡散危機、イスラム教の原点回帰を
目指すサラフ主義武装集団の台頭、避難民流入による周辺諸国の負 破壊されたシリア北部アレッポのモス
担増などによって混迷を深めるシリア情勢に対処するためには、政権 クを歩く反体制派武装勢力(4月16
日、AFP=時事)
打倒がこれまで以上に急務になっているとの認識に基づいているか
に見える。しかし、ひとたびシリアの実情に目を向けると、欧米諸国の政策には何らの合理性もなく、
テロと混乱を助長しているだけだということに気付く。
◇正統性欠く反体制組織
欧米諸国の干渉は、現下の紛争をアサド政権とシリア国民の対立を単純に
捉えた上で、弾圧を阻止するために国際社会が「保護する責任」を負い、体制
転換を推し進める必要があるとの論理によって正当化されている。しかし、政
権打倒をシリア国民の総意と断じるのは一方的な解釈であり、その是非をめ
ぐってシリア国内の世論は割れている。国民の多くは、政権を支持しているか
否かに関わらず紛争には積極的に関与しておらず、政権と武装集団の戦闘
が激化して以降は、国内外で避難生活を余儀なくされるなど当事者ではなく被
害者として疎外されている。
シリアの反体制組織も、体制転換の方法をめぐって意見を対立させたままで
ある。欧米諸国が「シリア国民の唯一の正統な代表」として承認したシリア革
命反体制勢力国民連立(国民連合)は武力による政権打倒を目指し、国際社
シリアの反体制派統一組
織「国民連合」のハティブ議 会に軍事支援を求めている。しかし「国民連合」には、イスラム原理主義組織
長(2月25日、EPA=時
ムスリム同胞団と在外活動家の一部が参加しているだけで、メディアが言うよ
事)
うな「反体制派の統一組織」ではない。反体制勢力の本流は、平和的手段と
政権との対話を通じた体制転換を目指し、外国の介入を強く拒否する民主的変革諸勢力国民調整委
員会、シリア民主フォーラム、民主連合党などからなっている。
しかも、米国の肝煎りで結成された「国民連合」は、アラブ連盟首脳会議でのシリア代表資格の獲得
や移行期政府首班選出をめぐって内部分裂を来し、カタールなど支援国の介入に反発する多くの主
要メンバーが脱会。発足から半年も経ずして実体のない「かいらい」に成り下がっている。
◇国民代表せず、むしろ暴力の主体に
「自由シリア軍」と総称される反体制武装組織も、名前通りのフリーダム・ファイターのイメージからは
ほど遠い。参謀委員会(在トルコ)や合同司令部(在レバノン)を名乗る上級士官は、「自由シリア軍」
が統合的な組織だと主張する。だが、現地の戦闘員の多くは、安全な周辺国で暮らす彼らの指導を受
け入れていない。一般市民と共生している武装集団もあるが、彼らはあまりに微力で、現下の紛争に
おける主要な当事者ではない。
「自由シリア軍」はむしろ、身代金目当ての誘拐や略奪行為によってその名を知られるようになって
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いる。また「ヤルムークの殉教者」を名乗る犯罪集団が、ゴラン高原で
イスラエルとシリアの停戦監視に当たる平和維持活動(PKO)「国連
兵力引き離し監視軍(UNDOF)」の要員を誘拐した事件は記憶に新し
い。
さらに、シリア国内で活動する主要な武装集団はチュニジア人、リビ
ア人、サウジアラビア人、欧州連合(EU)加盟各国出身者といった多
ゴラン高原の国連兵力引き離し監視
数の外国人によって占められている。その筆頭に挙げられるのが
軍(UNDOF)車両の前に立つシリア
シャームの民の反体制イスラム武装組織「ヌスラ戦線」である。国際テ 反体制派武装勢力のメンバー[イン
ロ組織アルカイダの系譜を踏むイラク・イスラム国から派生したこの組 ターネット上の映像より](3月6日、
織は、「シリア・イスラム解放戦線」や「シリア自由人戦線」といった他 AFP=時事)
のサラフ主義武装集団を主導する形で、都市や軍事基地への攻撃、
さらには市街地での自爆テロを繰り返している。
「ヌスラ戦線」とこれらの組織は、サラフ組織の「イラク・イスラム国」との統合(イラク・シャーム・イスラ
ム国の結成)や国際テロ組織アルカイダの指導者アイマン・ザワヒリ容疑者への忠誠をめぐって不協
和音を生じつつも、基本的には共闘関係にあり、彼らによる武力行使こそが、シリアにおける近年の
暴力の主因となっている。
しかも、サラフ主義者の活動を支えているのは、シリアの反体制組織でも市民でもなく、武器兵たん
支援、資金援助、外国人戦闘員の潜入支援を行うカタール、トルコ、サウジアラビアといった国々であ
り、戦闘は、こうした国々が「シリアの友」連絡グループやアラブ連盟でアサド政権への非難を強める
のに呼応する形で激化している。
アサド政権はこうした攻勢に大規模な軍事作戦で対抗し、それによって多くの市民が犠牲となってい
る。そのこと自体は非難を免れ得ないが、政権が対峙(たいじ)している勢力は、そのいずれもがシリ
ア国民を代表しておらず、その意味で現下のシリア情勢は「内戦」というよりは、アサド大統領が言う
通り「真の戦争状態」に近い。
◇アサド政権が防波堤という実態
サラフ主義者の台頭に危機感を強めた米国は、12年12月に「ヌス
ラ戦線」をテロ組織に指定し、EU各国もこれに同調する動きを見せて
いる。またこれらの国々は最近になって、在外の世俗的な活動家を軍
事教練し、シリア国内に送り込むことで武装闘争の中心に据えようと
しており、英仏に至っては反体制勢力に対するEUの武器禁輸措置を
解除するべきだと主張している。
しかしこの方針は、期せずしてサラフ主義者に対する唯一の防波堤
シリアのアレッポで行われた反体制 となっているアサド政権の統治能力を低下させるだけの無謀な試みで
派による反政府デモ(4月12日、
ある。なぜなら、欧米諸国の軍事支援は、サラフ主義者の活動を抑制
AFP=時事)
する具体策を伴っていないため、彼らを増長させるだけであり、世俗
的活動家が反体制武装闘争の主たる担い手になるかどうかは不確実だからである。
「民主化」を振りかざして安易に体制転換を推し進めようとする欧米諸国は、今や「保護する責任」を
通じて、シリア国民ではなくサラフ主義者のテロを支援してしまっている。「政権崩壊は時間の問題」と
いう誤認に基づいて、アサド政権を弱体化させることに固執する近視眼的な政策こそが、シリアだけ
でなく東アラブ地域全体の安全保障に悪影響を与え、化学兵器の使用・拡散の脅威をあおる欧米諸
国のプロパガンダをかえって現実のものにする危険をはらんでいる。
青山弘之(あおやま・ひろゆき)
東京外国語大学総合国際学研究院教授。
1968 年東京都生まれ。東京外国語大学卒、一橋大学大学院修士課程修了、在ダマ
スカスIFPO(フランス中東研究所)共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員、東
京外国語大学准教授を経て2013年4月より現職。専門は現代シリア・レバノン政治。
主著は『混迷するシリア:歴史と政治構造から読み解く』(岩波書店、12年)、『シリア・ア
ラブの春(シリア革命2011)顛末記』(http://www.ac.auone-net.jp/~alsham/)ほか。
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