医療を取り巻く法制度の変遷 医師が患者と自分を守るために

医療を取り巻く法制度の変遷
医師が患者と自分を守るために
2012年2月17日
牧野総合法律事務所
弁護士牧野二郎
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医療を取り巻く法制度、
法環境の変化
• 医療行為に対する不満が訴訟に
準委任契約の契約違反?
不法行為(過失責任)?
安楽死対応の責任?
• 医療法の改正
インフォームドコンセントの義務化98年4月
医療情報提供の推進 01年3月
患者の意思決定方法 07年4月
• 04年e文書法の制定と、各種ガイドラインの設定
• 情報高度化と医療現場、医師の注意義務の高度化への対応
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前提問題
訴訟との関係
視点
<これまでの関心>
説明したことの証拠をどのように残すか
患者の同意があることを証拠としてどのように確保するか
そのための要件の検討・・・・
この関心の基礎にあるもの
○ 訴訟、争いを前提とする
○ 争った場合に、勝てることを前提とする
○ 担当医師の身の保全だけが関心事なのではないか
本来の姿は、訴訟法務ではなく、予防法務ではないのか?
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新しい視点とすべきもの
• 予防法務的視点
・・・争わないための準備
争いの原因を作らない準備
争いが提起される前の説得と納得
<特許紛争と研究ノート問題>
• 動的視点・・・すべてが変化するということ
固定化しない、絶対視しない
変化することを前提に、状況の変化を記録し、確認し、
対応可能とすること
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新しい視点で見えてくること
なぜ事故が起きるのか、争いが起きるのか
① 結果として医師側に重大なミス、欠陥がある場合
避けられたのに(気づいていたはずなのに)、漫然と?注意義務違反がなぜ起きたのか
(1)客観的な注意義務が明確で、客観的に見て違反しているか
(2)具体的なケースで、注意義務違反が確認できるか
患者が関与していることは無いのか、特異な、予想外ということは無いのか、それを示す記録は
注意義務の存在と、内容をどのように説明したか 医師は万能ではない、
最大限努力するが人間だから限界もある、ということを伝えているか
ミスならば、ミスとして、責任を取る必要があるが、責任の取り方が異なる可能性がある
② 明確なミスとは判明していない場合、不明な場合
動的視点からは、原因不明が存在するという発想
医療行為が医師だけの手で行われるものではないこと。患者の主体的関与が前提であること
患者からの問診、聴き取りの際に、間違えた情報が伝えられていないか
予想外ということがある すべての情報が見えるわけではない それをどのように説明してきたか
③ 患者側に誤解がある場合
結果だけから決めつけをしている場合
患者からの問診、聴き取りの際に、間違えた情報が伝えられていないか
患者がその事実を忘れていないか
医師の発言や記録はある・・・・患者の発言や回答、主訴の記録があるか
患者は医師に、本当に正確に説明しているのか
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患者を見直す
患者の情報を正確に記録しているか
患者の提供する情報を正確に聴き取っているか
「正確に」とは、患者の言語能力についても疑ってかかっているか、ということ
患者は自分のこともよくわかっていない 現象面の表現が正確にできない 聞きかじった言葉を使いた
がる
ではどうするか
患者の主訴を正確に記録することから始まるが、その際も結果のみ記録するのではなく、その過程も記録す
ること
患者が事実でないことを言うこともある。それを記録することのみが重要なのではなく、それが正しくない可能
性を確認し、その場合のリスクを説明しているか、 ということ
その目的とは:患者が、医師との間で何をはなしたか、どのように症状を説明し、治療方針を立てたかをしっ
かりと思い出させる
注意すること: 忘れっぽい患者に、正確に思い出させるだけの特徴を提供できるか、患者の記憶を喚起でき
るか
患者に対して、治療に積極的に参加することを提案しているか
私個人の気持ちのよい体験・・・薬を飲まずに再診を受けた時の経験
「調子が良ければ、気にすること無いですよ」「すぐに規定通りの飲み方をすると、ショックがあるかもしれな
い」
「少しずつ、注意して、様子を見ながら飲んでください。それでも良いですよ」
患者に対して、自ら判断する姿勢を与えていること
患者は医師から批判されたくない、責められたくない、説教されたくない
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インフォームドコンセントの重要性
インフォームドコンセント:十分な説明と納得、納得した内容に従った治療の実施
患者の権利の意識と、情報提供を前提とした決定権限の尊重ということ
患者の治療は、患者の人格を尊重して・・・医師において納得できない場合
エホバの証人輸血拒否事件
1 事件の内容
肝臓 ガンのケースで、輸血せずに手術を成功させた実績のある東大病院に手術を依頼、担当医に信仰を説明、輸血をし
なかったため死亡しても病院の責任は問わないことを約束した免責証書を手渡した 。
重い肝臓病であったため、様態が急変、担当医は緊急手術が必要と判断、承諾を得ないまま輸血を実施。
2
原告は「信仰を踏みにじった」と主張して、不法行為を理由として、損害賠償1200万を請求。
判決
第一審 東京地裁 (1994)
どんな場合でも輸血を拒否するという患者の信仰は「公序良俗」に反するもので無効。原告の訴えを棄却。
控訴審 東京高裁 (1998)
患者の自己決定権は保障されるべきものであり、医師は患者に治療方針を十分に説明しておらず、インフォームド・コン
セントをおこたっている。損害賠償として55万円の支払い命令。
告審
最高裁・小法廷 (2000)
判決文「花子が輸血を伴う可能性のあった本件手術を受けるか否かについて意思決定をする権利を奪ったものといわざ
るを得ず、この点において同人の人格権を侵害したものとして、同人がこれによって被った精神的苦痛を慰謝すべき責任
を負うものというべきである。 」
高裁判決を支持。インフォームド・コンセントをおこたっており、55万円の損害賠償の支払い義務を認めた。
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患者の選択権と説明義務
• 患者には自己決定権があるとされる
• 自己決定権とは、選択権でもある
• 治療しない場合の問題点と、治療した場合の
リスクとを説明する必要
• いくつかの治療方法がある場合にはその得
失の説明
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第一
医療情報の電子化
• 94年 3月「エックス線写真等の光磁気ディスク等への保存に
ついて」 厚生省健康政策局長通知
• 99年 4月「診療録等の電子媒体による保存について」 厚生
省健康政策局長等よりの通知
• 04年 2月「e-Japan戦略Ⅱ加速化パッケージ」
• 04年11月e-文書法 成立
• 05年 3月「医療情報システムの安全管理に関するガイドライ
ン」
• 05 年3 月3 1 日厚生労働省医政局長、厚生労働省医薬食
品局長、厚生労働省保険局長発 「民間事業者等が行う書
面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律
等の施行等について」
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E文書法とは
• 文書として保存義務のある場合に、従来の文
書に代えて、電磁的記録で代替することを認
める法律
第一条
この法律は、法令の規定により民間事業者等が行う書面の保存等に関
し、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用
する方法(以下「電磁的方法」という。)により行うことができるようにする
ための共通する事項を定めることにより、電磁的方法による情報処理の
促進を図るとともに、書面の保存等に係る負担の軽減等を通じて国民の
利便性の向上を図り、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発
展に寄与することを目的とする。」
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e文書法の構成
首相官邸のHP
から引用11
電子化のメリット
E文書法の目的
文書保管コストの削減
・・・場所、人手、運搬コストなど
情報利用の利便性向上
・・・情報の共有化が容易に。
共同利用、同時利用
・・・雑多な情報の混合に対応
統計データ、メール、論文etc
環境に配慮する・・・・配送エネルギー、管理
エネルギー、コピー作成など
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医療情報の電子記録のメリット
•
•
•
•
•
•
•
•
画像などを示して説明したことが記録できる
患者に、患者の情報を正確に伝えること、情報を共有すること
モニターを見せて確認しながら進めることができる
前回の診察の情報を瞬時に検索して、説明を思い出させることができ
ること
担当医が代わっても、電子カルテを瞬時に呼び出して内容を常に確認
し、患者とのやり取りが確立できる
過去の投薬歴や、治療経過等が、瞬時に患者に提供できること
紹介医の提供した情報を、患者とともに確認できること
必要であれば、音声で記録することも可能であること
<情報の意識的な記録化⇒正確化という効果>
<点検、検証の容易さ、事故防止のための検討容易>
<事故防止のための匿名化が可能になるというメリット>
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事故事例から見る情報伝達の重要性
【実施した医療行為の目的】
• 本事例は、一般的事例と若干異なる所見の動脈解離に、放射線機器の故障が加わり、動
脈解離の診断に至らなかった。患者 は頻繁に来院し、医師間の協議も繰り返したが、初期
の診断計画を生かす結論に至らず、診断を誤った。結果として動脈解離に対する的確な対
処(厳格な血圧管 理と手術適応の判定と患者への説明責任)を欠いた。
【改善策】
• 本事例において、初診時の考察が最も的確であった。日時を経ても疼痛が軽快せず、血圧
が徐々に上昇しても、初診時の医師の判断 (動脈解離の診断は造影CT)との所見を想起
されることはなかった。
• 思いこみは払拭されず、初心に帰ることはなかった。
• この初診時の考察の伝達と継続手段 を確立させる。
•
交替性勤務での診療では、前医の判断の影響や根拠の薄い思いこみを受け入れやすい。
医師は前医の見立てを尊重するとともに、原点に立ち返り、自らの感性と 知識で論理を構
築し、小さな疑問の収集と解明に務める必要がある。
• 事例の検証審議を重ね、白紙で患者に向き合い、小さな疑問を疎かにしないことの大切さ
を、周 知、納得させる
公益財団法人日本医療機能評価機構
医療事故情報収集等事業
http://www.med-safe.jp/mpsearch/SearchReportResult.action 検索結果から14
事故の内容
【事故の内容】
1日目10時~16時25分(休日であった)。朝は胸痛、来院時には右腰痛と
下腹痛を訴えていた。医師による診察時、側臥位 の指示をした時の体動時に尿
管結石の時の痛みとは異なる印象あり。鑑別診断に大動脈解離、尿路結石を考え
た。血液、尿検査所見は異常なし。解離や他の血管 閉塞疾患等を疑いDダイマー
も検査したが陰性。造影CT検査を予定したが、造影剤注入直後にCT装置が故障し
検査ができなくなった。腹部単純レ線で(CT 用造影剤のため)医師は心血管系
疾患を除外するためICU日当直の循環器医師に診察を依頼した。循環器医師の診
察時、痛みは軽減した状態であった。心電 図、心エコー検査を行い、エコー装
置が古くて見えにくかったため病棟から別のエコー装置を持ってきて診察した。
検査結果は異常なし。医師は、痛みが治まっ た後も夕方4時まで点滴で血管確保
して様子をみた。本人と母親には「尿管結石の落石だろうか?原因が解らないの
で、同じ症状があれば、また来てくださ い。」と話した。 23時30分~2日目0
時10分。20時頃、患者本人から電話あり、CT装置がまだ故障中のため、痛み
がひどいようならCT装置がある近くの病院を受診す るように勧めた。23時3
0分、患者が家族と受診。このときCT装置は復旧していた。心窩部痛、右腰背部
痛を訴え、大動脈解離を疑いCT検査を行った。 CTでは大動脈に明らかな瘤の形
成はなかった。 2日目8時37分~10時40分。L4/5に限局した疼痛を訴えた
ため、胸腰椎Xpを追加した。L5の骨棘を認め、他に原因がないのであれば、疼痛
の原因 となり得ると考えた。患者は痛みの程度について、坐薬が効かなくなっ
たといった。入院について本人は「痛みさえ引けば帰りたい」と言われたので、
ペンタジ ンを使用し反応をみた。ペンタジン筋注後痛みは改善した。疼痛が軽
減しなければ再診するよう患者に話した。 2日目16時35分~20時20分。
救急外来で整形外科医師へ患者に関する申し送りあり。単純レ線で脊椎に骨折は
みられず、右腰部に限局してきていた。痛 みの性質は、本患者の場合は安静時
痛で拍動性というのが気になったがそれまでの検査で大動脈解離は否定されてい
ると考え、何よりも初診から48時間が経過 していたことで解離は除外した。
3日後の朝、泌尿器科病院を紹介され、患者は退院した。4日後9時頃整形外科
を受診。医師はMRIを予約し、腎臓内科を紹介した。腎臓内科担当部長は、電 話
で看護師を通じて、当日救急車当番のためできれば翌日に受診してもらえないか
と患者に伝えた。 5日目20時45分~23時55分。患者は、受診30分前か
ら胸骨の裏側が痛み、それまでとは違った性質の痛みがでたので受診した。鑑別
な動脈解離の対処を欠いた
疾患としては、胆 嚢炎、心嚢炎、胃痛などを考えた。21時30分にブスコパ
ン1A筋注し、その後疼痛は6/10に改善したと患者が話したため、明日昼間に
必ず受診するよう 患者に伝えて帰宅させた。 5日後、腎臓内科部長を受診。患
者から病歴を詳細に聴取した。心窩部に軽度の圧痛あり、胸骨部、背部の叩打
痛なし(鎮痛剤使用の有無は不明)。腎臓内科部 長は痛みの原因精査のため入
院が必要であることを患者と患者の家族に説明し、胆道系、後腹膜線維症などの
チェックのため入院前にIgG、IgA、IgM、 補体、自己抗体の採血、検尿、腹部エ
コーを行なった後入院させた。循環器科との合同カンファレンスで相談したが、
大動脈解離についての意見はでなかった。 入院後経過で18時20分頃から痛
みが出現したが疼痛時指示通りの処置がなされた。23時から激痛が出現した
が、病棟にいた研修医が対応し軽減した。5時 ナースコールが有り訪室した直
後、患者が急変し救命処置を行うが死亡。
【事故の背景要因の概要】
救急外来の担当医は突然の胸部痛に対し、心筋梗塞、肺梗塞、動脈解離を疑い、
必要な検査のひとつとして胸部、腹部 造影CTを試みたが、CT装置が故障した。
代替手段としてMRを検討したが、全身の彫り物の影響を考慮し、実施を断念し、
詳細なエコー検査を実施した。残 念ながら、動脈解離の診断に至らなかった。
約7時間後にCT装置が復旧し、造影CTの実施を検討したが、血清Crが1.3mg/dl
の患者に2回造影剤を投与することを躊躇した。単純CTでは大動 脈は異常所見
なしであった。ところが、初診時の造影剤が残留し、左腎は造影されたが、右腎
は 造影されず、若干小さいとの報告であった。右腎の造影不良、あ るいは、左
腎の造影遅延で、腎血流の異常が示唆された。深刻な胸痛の存在を考え合わせ
ると、動脈解離を疑うことも可能であった。 患者は翌日以降も深刻な胸痛で頻繁
に来院し、当直医は疼痛の管理と、種々の検査を施行し、当直医間で協議を繰り
返した。ところが、突然に発症した胸痛の主 要鑑別疾患である心筋梗塞、肺梗
塞と同様、動脈解離も単純CT所見で除外したとの思いこみを払拭することはな
かった。 動脈解離の診断に至らなかった結果、第6日目にCa拮抗薬を投与し
ただけで的確な血圧管理を行わず、適切
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電子化できないもの
① 処方箋
薬局(病院(診療所)に置かれる調剤所は除く。)で調剤を行うために患
者等に交付する処方せん(以下「院外処方せん」という。)については、電磁
的記録による作成及び交付における必要な要件を満たす環境が整っていな
いとし、法施行後も容認することはできないとされたことを踏まえ、法の適用
対象外とされたこと。
② 同意書など自書の必要なもの
電子化は難しいため、引き続き自書とすることになる。
(5)署名
民間事業者等は、他の法令の規定により署名等をしなければならないとされているものに
ついては、当該規定の法令にかかわらず、電子署名及び認証業務に関する法律(平成12年法
律第102号)第2条第1項に規定する電子署名をもって、当該署名等に代えることができるこ
と。
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第二
ビックデータ問題
• ビックデータの解析処理が可能となった
将棋対決・・・コンピュータと元名人の戦い
過去の棋士の戦いのすべてを記録
徹底解析、そして最善の一手を探し出す
• センサー技術の発展、センサーの普及
センサーの吐き出すデータ、連続性のあるデータの拡大、情報の爆発
• WEBにおける行動情報収集の飛躍的発展
WEBビーコンの設置、アクセスログ、クッキーなどの収集、集積、解析
コンピュータの性能が良くなり、巨大なデータを利用できるようになった
では人間はついてゆけているのか????
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データがあることは迷惑なのか!?
• 理解できて、判断できるデータは使える
• しかし、あまりに膨大であると使えない
しかし、あるということは危険でもある
注意義務の拡大
予見可能性の拡大
予見義務、回避義務の拡大
• では、データを利用しない診療はありうるのか?時代遅れの
診療で間違いがあったらどうするのか?時代遅れの危険は、
誰が負うのか?
• データはますます拡大するが、対応しないのか?
• ならばどうしたらいいのか?
ビックデータへの関心をしっかり持ち、前向きに対応すること
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合理的判断の確保、その基盤とは
大量情報に煩わされず、合理的な判断が可能となるような世界
• 大量情報の的確な収集
• 情報の精査と特徴点の抽出
専門的視点からの情報解析
分
• 課題、問題点の明確化
情報提供
資料情報の検討
重要性判断
離
で
き
る
か
価値判断、優先順位の決定、戦略策定
専門的知見の活用
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情報収集業務と、
判断業務の明確な区分と役割分担
共同通信社
AP通信社
UPI通信など
情報収集配信企業
新聞社 各社
各種総合研究所
統計局
アンケート調査会社
世論調査
政治的判断
テレビ局
戦略の策定
各種メディア
政府の方向性判断
大学機関の活用
研究所と提携
メディアとの提携
企業における新製品
開発
企業戦略策定
その他、企業の決定
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電子記録管理の手法のあり方
情報の多様な視点からの収集
客観的見地からの解析
網羅的な検索と収集
多角的な情報収集とその集約、記録、保管が必要
収集された情報を前提に、合理的判断を行う
判断の基礎となった情報を明確にする
判断基準と判断仮定を明示する
判断結果と、その射程、妥当する範囲の明示
特定目的解決のための情報の確定と、判断過程の記録が必要
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責任の設定の仕方について
東京地裁 平成16年3月25日判決
日本長期信用銀行がグループノンバンクに対して行った5つの支援行為に対して当時
の取締役らを相手取り、善管注意義務違反及び忠実義務違反による損害賠償を求め
た事案
•
•
「 (支援する場合の問題と、支援しない問題を説明した後)
以上のような観点から、支援をしない場合と支援を行う場合に見込まれる損失を幅広く情
報収集・分析、検討した上で、後者が前者よりも小さい場合、すなわち支援により負担する
損失を上回るメリットが得られる場合にのみ、支援を行うことが許されるものというべきであ
る。」
「 しかしながら、このような判断は、情報の非対称と多数の経済主体間の複雑な相互依存
関係の中において、これを取り巻く諸情勢を踏まえた専門的かつ総合的判断であることか
ら、情勢分析と衡量判断の当否は、意思決定の時点において一義的に定まるものではなく、
取締役の経営判断に属する事項としてその裁量が認められるべきであり、いわゆる経営判
断の原則が妥当する。したがって、本件各支援行為について取締役の責任を問うためには、
取締役の判断に許容された裁量の範囲を超えた善管注意義務違反があったか否か、すな
わち、意思決定が行われた当時の状況下において、原告と同程度の規模を有する大銀行
の取締役に一般的に期待される水準に照らして、当該判断をするためになされた情報収
集・分析、検討が合理性を欠くものであったか否か、これらを前提とする判断の推論過程及
び内容が明らかに不合理なものであったか否かが問われなければならない。
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第三 個人情報保護の視点から
医療情報、医療関係情報の取扱
• 医療情報、医療関係情報の多様性
• 医療情報等の利活用は誰のため
患者・本人の治療などのため
後続者の健康維持、公衆衛生など
• 「医療情報は誰のもの」議論
成績表は誰のもの、と同じ議論がある
• がん登録とがん情報利活用の必要性(後述)
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個人情報というけれど・・
情報の精査、分
析解析、
相互関係検討
環境汚染
危険業務
薬、効能、副作用、
知見、経験、先例
治療行為
主観的要因
意欲など
回復、復帰
技能、能力
行動様式
生育歴、体質、既往症
コミュニケーショ
ン、人間関係
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問題は何か
個人情報の保護
個人情報保護の制度について
医師のデータ漏えい事故が多いこと
利用する必要性、研究の必要性、有用性
院外持ち出し、外部での研究、学会発表など
<利用したいがセンシティブ情報として厳格に管理され利用できない>
匿名化という手法による救済
電子的処理の必要性・・・匿名化するには電子化が必須となる
匿名化作業の内容、レベル
氏名、生年月日、その他特徴を消去すること
消去できるデータのレベルによって、利用範囲が異なる
不要なデータの範囲を定めて、消去、匿名化する
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医療情報、医療関係情報の、より充
実した利活用を目指して
•
医療情報の利活用
本人が拒否しても、客観情報、副作用情報等は利用すべきだろう
がん登録情報の利活用を推進すべき(現在34都道府県にとどまる)
がん登録に関する厚生省通達(平成16年1月8日)民間医療機関、行政医療機関、独立法人医療機関
などが国または地方自治体に診療情報を提供する場合は、第三者提供制限、利用提供の制限の例外
規定に該当する。
医療介護ガイドライン(平成16年12月24日)も同趣旨。
世界各国では、同意不要とする例、削除権を否定する例などがある
◇CHEO(Children`s Hospital of Eastern Ontario カナダ、オンタリオ)
医療データを研究に供する場合の申請手続きを制定、匿名化して情報活用中とのこと
•
医療関係情報、健康情報、介護情報など
健康増進、生きがいなどに利活用すべきではないか
児童虐待に関する多様な情報の利活用は児童保護のために必須であって、本人(親)拒否権、削除研
は制限すべきではないか
匿名化情報として、加工し、利用する等
•
匿名情報は
本人が推測する程度では破られていないとすべき。誰が見ても、本人であることが分かる程度に特定性
を持つ場合には破られていると見るべきではないか
ライフログの利活用という要請
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まとめ
• 医師と患者の情報交換を正確に
• 医師がデータを活用して、合理的治療が出来ること
が患者にとっても重要
• 情報活用とは
医師相互で共有し、同時利用、点検検証
匿名化加工によって、事故も防止できる
電子化は避けられず、それを活用することが
医療の前進となるはず
完
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