神戸ビエンナーレ組織委員会への「公開質問」経緯報告 ギャラリー 島田

神戸ビエンナーレ組織委員会への「公開質問」経緯報告
ギャラリー 島田 島田誠
「公開質問」の目的
「神戸ビエンナーレ」については、プロデューサー、ディレクターやコンテナー会場、テーマ
の設定など多くの検討課題がありますが、今回の「公開質問」は 2013 年「公式ガイドブック」
(美
術手帖 2013 年 10 月号増刊)の記載内容に限っています。それは単に「掲載」「不掲載」の意味
を超え神戸の文化が抱えた大きな問題点を露にすると考えたからです。
神戸における芸術文化を支える文化的土壌を真に開明的・創造的に変えていくことを多くの皆
様と考え、変革していくためのきっかけであって欲しいと思いました。
公開質問書の内容
神戸ビエンナーレ組織委員会御中
公開質問書
「第 4 回 神戸ビエンナーレ 2013」が開幕いたしました。
毎回、拝見いたしております。その内容についてここで言及するものではございません。
今回の質問は「公式ガイドブック」に限定してお尋ねし、本ガイドブックが美術手帖 2013
年 10 月号増刊とされていますので、美術出版社にも「質問書」を送ります。
10 月 16 日までにご回答をいただきたく、お願いいたします。
質問
1 2013 年「公式ガイドブック」には北野地区のギャラリーやアートスペースが掲載され
ていません。前回まで、大きく紹介されていた「芸術と計画会議(C.A.P.)
」も今回か
ら不掲載となっています。その理由をご回答下さい。
2 北野地区には、そのほか、ギャラリーAO、アートスペースかおる、ギャラリー北野坂
など、しっかりとした活動をされているギャラリーがあります。それらが、すべて不
掲載です。北野のレストラン、ホテル、ミュージアムなどは詳細に紹介されている中
で芸術文化の拠点が紹介されていない理由をご回答下さい。
3 2009 年の「公式ガイドブック」に美術手帖編集部がギャラリー島田を取材、掲載ゲラ
(2分の1ページ)まで確認し、編集権があるから掲載しますと約束しながら貴委員会
の指示で地図からも削除され、現在に至るまで不掲載です。その理由をご回答下さい。
4 過去に重要な役割を果たした Dance Box も今回は不掲載と思われます。その理由をご
回答下さい。
質問で触れた文化拠点は広く認識された神戸の文化を発信しつづけている拠点だと思い
ます。そこを外している意味をお聞きしたいと思います。
「神戸ビエンナーレ」は市税を投入した公的な組織であると認識しています。
その立場からの回答をお願いいたします。
公開質問の意味は当ギャラリーの発信媒体、および美術関係者を考えています。
公開についてはご解答をいただく 10 月 16 日といたします。
また「神戸ビエンナーレ」全体の評価については、本展が終了後に実質的な検証に参加
させていただくか、質問させていただきたいと思います。
2013 年 10 月 10 日
ギャラリー島田
島田 誠
今回の「公式ガイドブック」はあまりにひどいと思い、関係者にも意見をきいて、ビエンナーレ
組織委員会に、事前に予告したうえで「公開質問書」を出すことにし、10 月 10 日付け書留速達
で上記の文を出しました。
神戸ビエンナーレ組織委員会からの回答
10 月 16 日消印、17 日に下記の回答を受け取りました。
平成 25 年 10 月 16 日
ギャラリー島田
島田誠様
公開質問書に対する回答
[回答]
平素より、神戸の文化発信の拠点として、ご尽力いただいていることについて敬意を表
します。
公式ガイドブックは、神戸ビエンナーレの広報並びに各会場への集客を図るための毎開
催年に発行しています。
より魅力的で分りやすい内容にしていくために、神戸ビエンナーレ組織委員会事務局は
概要並びに展示作品について情報提供しておりますが、全体の編集構成は、美術出版社が
編集権を有しており、当事務局からお答えすることではありませんので、ご理解下さい。
今後も、神戸文化の発信にご協力を賜りますよう、よろしくお願いいたします。
神戸ビエンナーレ組織委員会事務局
「神戸ビエンナーレ組織委員会」宛に送りましたが、回答は事務局からで名前も印もありません。
美術出版社からの回答
大下健太郎社長あてに書留速達で 10 月 10 日に発送。回答も接触もないので回答期限を 10
月 30 日までと当初の期限を 2 週間延ばして回答を促しました。大下健太郎社長あてに2回、
ペン書きの手紙を添えて、岩淵貞哉編集長宛に、これも2回の手紙と、3回の電話を入れ、
言伝もお願いしましたが、これにも無応答、無回答でした。
「美術手帖 2013 年 10 月号増刊」とし、編集長、スタッフの名も明記しながら、掲載内容に対す
る意見でもない「質問」に対して完全に無視するという姿勢からは美術ジャーナリズムとしての
責任の自覚も自負の欠片も感じることは出来ません。
今回の経緯から読み取れること
質問書の 3 項にあるように美術出版社の編集権を侵害しても削除を指示し、今回は「公式ガイ
ドブック」でありながら「内容についてはすべて美術出版社の編集権に属する」と全てを出版社
へと投げ、その美術出版社は完全に沈黙を貫きました。当然、両者は連絡を密にとりあって回答
をしなかったと考えるのが自然です。おそらく「回答をしなかった」ではなく「回答できなかっ
た」が正確だと思われます。
「質問書」は事実を上げて、どういう意図であるかを聞いただけのことです。
「ご指摘を受けて、
次回からは訂正します(留意します)
」と回答がくれば、それで終わりです。
「回答できなかった」
のは、そこに明確な意図があり、その意図は歪んで公表できないものであるが故に、社会的なマ
ナーを逸脱し、批判覚悟て回答を避けたのだと推論できます。
「質問書」の先にあるもの
「目的」に書きましたように、これは単に「公式ガイドブック」への掲載、不掲載を問題にし
ているわけではありません。強固な村社会を形成している「隠された問題」を明らかにするため
に、隠れようもないこの問題を使ったにすぎません。そして「無回答」がその「隠された問題」
を照射してみせました。
私が現在にいたるまで行なってきたこと、主張についてはギャラリー島田 HP の「蝙蝠(こう
もり)日記」や「出版物」のなかにある「執筆記録」をご覧下さい。
私たちがなすべきこと
神戸の文化的土壌を形成しているのは「神戸芸術文化会議」を筆頭とする様々な芸術文化団体
です。一人で孤立していては無力であるアーティストが会に属し、そこで切磋琢磨し成長し、未
来を切り拓いていくのは認められることです。
しかし、組織は「内向き」の性質をもち「上下」の関係を必ずかかえます。そして厄介なのは、
行政や企業においては、それらが固定化されることなく必ず、退場していく制度が用意されてい
ます。しかし、文化については「不祥事」以外に自ら退場することはほとんどなく、高齢化、保
守化をたどり、現在、顕在化した「日展問題」の大同小異がどこにでも存在します。
私も、かつてはそれらに属し組織の改革に努力をしてきました。それは数冊の本にできるほど
です。この「質問書」が、明らかにした歪みについては、表現に関わる一人一人が行動や表明す
ることで変えていかねばならないことで、彼らの問題だけはなく「うちなる私」を含めて私たち
自身が変らねばならなく、変えていかなければならないのです。黙っていることは加担している
ことにほかなりません。
私は触媒に過ぎません。化学変化を促し若い皆さんを中心に様々な動きが出始め、神戸の文化
を変革し、共に豊かに育てていく同行者であることを願っています。
(2013 年 11 月 5 日)