小児慢性特定疾患の治療研究事業(ぜんそく) 主任研究者加藤忠明 研究協力者森川昭廣 (国立成育医療センター研究所生育政策科学研究部) (群馬大学大学院医学系研究科小児生体防御学) A.研究目的 小児慢性特定疾患のうち、ぜんそくを取り上げ、平成15年度の登録状況を検討 するとともに、ぜんそくの重症者の動向、および転帰、 さらには、医療意見書に ついての記載状況について検討した。 B.研究方法 小慢事業に関して、都道府県から報告された平成15年度電子データから、その 内容について集計・解析した。 C・結果 ぜんそくの年度別登録者と新規登録数の推移では、平成11年度の登録者数は8924 人で、新規登録者は5903名。平成12年度に増加したが、その後、徐々に減少し、 平成15年度では、登録者数は4203人と半減し、新規登録者数も1272名と4分の 1以下に減少している。重症者数も平成12年以降減少しているが、登録者数に占 める割合は増加している傾向であった。すなわち、軽症者の減少が著しいことを 示している。さらに、重症者に占める乳児の割合を検討した結果、平成13年度以 降は横這いで、約20%程度占めていた。 年齢別登録者の転帰を平成11年度と15年度で比較すると、改善がやや増加した 傾向は認められたが、不変、悪化、再発など全体的な傾向には変化はなかった。 また、年度別検査実施率に関しては、IgE、RASTや肺機能の実施率には大きな変化 は見られなかった。 D.考察 ATS-DLDやISSACの方法を用いての調査では、本邦での小児の気管支喘息は、その 増加は少なくなった、またはほぼ停止したと考えられる。また、ガイドラインの 普及に従って重症者が減少していると考えられる。平成15年度の登録状況をみ てもそれが伺える。しかし、重症者中にしめる乳幼児の比率が高く、乳幼児の重 症化または治療の不十分さが考えられる。今後の大きな課題である。 一方、登録に際しての医療意見書については、乳児・幼児の比率が高いこともあ って、肺機能や採血を要する検査についてはその施行率が低い。また書類作成に あたっての参考書類の整備、記載例の提示も必要であると思われた。なお、本登 録のような重症児に限っての貴重なデータは諸外国にも少なく、今後とも継続の 必要があると考えられた。 −71− 小児慢性特定疾患の治 療研究事業 (ぜんそく) 進 研究目的と方法 鎚 小児慢性特定疾患のうち、ぜんそくを取り上げ、 主任研究者加藤忠明 平成15年度の登録状況を検肘するとともに、ぜ 国立成育医療センター研究所 生育政策科学研究部 んそくの重症者の動向、および転帰、さらには、 医疫慧見書についての記鮫状況について検肘した。 研究協力者森川昭展 小慢率業に関して、都道府県から報告された 平成15年度電子データから、その内容につ 群馬大学大学院医学系研究科小児生体防御学 いて菜計・解析した。 結果 11鬼4人 − │ 鰯 麺唖 11 ’ 一人 111 岬麺岬唖州唖緬0 一人 樹 齢 そく) 5年度の比較) 小児慢性特定疾患(ぜんそく) 年度別登録者と新規登録数の推移 …人 園 8“, ’ : M 0123456789101$1213141516171819 平戚1112131415年度 年齢 平成12年度 平鹿15年度 10%2% 霞 32鵠 謁鵠 % 小児慢性特定疾患(ぜんそく) 年度別登録者数の推移と愈症度の 頻度 岬岬岬諏輌唖麺0 幾一 の比較) − 一 一 一 一 一 一 一 一 二 一 一 画 一 一 一 a 一 一 空” 263% 肌 平成11平成12早成13平成14平成15 −72− 園 碓郵綿恥蝉睡 幾 小児慢性特定疾患(ぜんそく) 年 度と15年度の比較) 小児慢性特定疾患 (ぜんそく) 画症考に占める0-3鰻の年齢層の割合 一 D 凸 句 一 一 = 今 ー 型 平成11年度 !;’ 蔀” 。M 騨 │ 2 岬F 1 ‘ . 則 8 . . 1 , 1 ’ 9 日 ﹃1刑1 斤■いむ 1 ウ 9 ■0.3, F 蚕 豆 引 0 7』・'1 夕0U ーGP F , glI … 43帖 00 平鹿11平成12平鹿13平成14平成15 縦 一 一 一 一 一 画 一 一 一 C ・ 閏 ① 樟 考察1 鰯画 |p﹂Oro1l言BU8ⅡU■flF016皇11 111■ 記鮫率% ー ATS-DLD"ISSACの方法を用いての鯛査では、本邦で の小児の気管支喘息は、その増加は少なくなった、ま たはほぼ停止したと考えられる。また、ガイドライン の普及に従って重症者が減少していると考えられる。 平成15年度の登録状況をみてもそれが伺える。 1年度 5年度 しかし、重痙者中にしめる乳幼児の比率が高く、乳幼 児の重遼化または治療の不十分さが考えられる。今後 | IgE RAST 肺楓能 の大きな牒題である。 考察2 篭 鬮 25% 小児慢性特定疾患(ぜんそく) 年度別検査記戦率(実施率) 1IFしけFP心一 印加釦釦細和銅泊0 蟻 平成15年度 l . i E _ 、 j 一方、登録に際しての医擦愈見書については、乳 児・幼児の比率力塙いこともあって、肺槻能や採 血を要する検査についてはその施行率が低い。 また書頚作成にあたっての参考書類の整備、記戦 例の提示も必要であると思われた。なお、本登録 のような重症児に限っての貴重なデータは賭外国 にも少なく、今後とも継続の必要があると考えら れた。 −73− スライド 小児慢性特定疾患のうち、ぜんそくを取り上げ、平成15年度の登録状況を検討するとともに、ぜ んそくの重症者の動向、および転帰、さらには、医療意見書についての記載状況について検討した。 方法は、小慢事業に関して、都道府県から報告された平成15年度電子データから、その内容につ いて集計・解析した。 スライド 以下に結果を示す。ぜんそくの年度別登録者と新規登録数の推移を示す。平成11年度は8924人で 新規登録者は、5903名であり、平成12年度に増加したが、その後、徐々に減少し、平成15年度 では、登録者数は4203人、新規登録者数も1272名と4分の1以下に減少している。 スライド 年齢別登録者数を平成ll年度と15年度で比較した。両年度とも年齢は3∼6歳にピークを示した。 スライド 登録者年齢構成を平成12年度と15年度で比較すると、両年度とも年齢別登録者数には大きな変化 はなく、0-3歳は20%前後で、6歳未満で55%程度を占めていた。 スライド 年度別登録者数の推移と重症度の頻度を示す。黄色の棒グラフが重症者の数で、数字は登録者数に 対する重症者の割合を示した。登録者と同様に、重症者の数も平成12年以降減少しているが、割 合は増加している傾向であった。すなわち、軽症者の減少が著しいことを示している。 スライド さらに、重症者に占める乳児の割合を検討した。その結果、平成13年度以降は横這いで、約20% 程度占めているのがわかった。 スライド 次に、年齢別登録者の転帰を平成11年度と15年度で比較した。改善群がやや増加した傾向はある が、全体的な傾向は変化ないと考えられる。 スライド 年度別検査実施率に関しては、IgE,RASTや肺機能の実施率には大きな変化は見られなかった。 スライド ATS-DLDやISSACの方法を用いての調査では、本邦での小児の気管支喘息は、その増加は少なくな った、またはほぼ停止したと考えられる。また、ガイドラインの普及に従って重症者が減少してい ると考えられる。平成15年度の登録状況をみてもそれが伺える。しかし、重症者中にしめる乳幼 児の比率が高く、乳幼児の重症化または治療の不十分さが考えられる。今後の大きな課題である。 スライド ー方、登録に際しての医療意見書については、乳児・幼児の比率が高いこともあって、肺機能や採 血を要する検査についてはその施行率が低い。また書類作成にあたっての参考書類の整備、記載例 の提示も必要であると思われた。なお、本登録のような重症児に限っての貴重なデータは諸外国に も少なく、今後とも継続の必要があると考えられた。 −74−
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