訓練日誌は、訓練生の成長過程の振り返りに有効

訓練日誌は、訓練生の成長過程の振り返りに有効
(株)法道工務所
<企業概要>
■所在地:山口県下関市
■業種:製造業
■資本金:1,500万円
■従業員数:7人
1.制度の活用に取り組んだ目的
当社は、三菱重工業㈱下関造船所の大和町
工場の構内協力会社として、昭和43年
《山口県商工会議所連合会扱い》
<訓練概要>
■コース名:製缶工養成コース
■職種:製缶組立
■訓練生数:第1回・1人(終了後に正社員採用)
第2回・1人(終了後に正社員採用)
■期間:第1回・平成21年5月~21年8月
第2回・平成23年12月~24年4月
■種別:有期実習型訓練(いずれも基本型)
備のトラブルも多く、製品の規格も多種であ
るために、製造工程を全てマスターするには、
短くても5年かかります。
(1968 年)に操業を開始しました。設備の営
1回目の訓練生は、NC機械の操作などの
繕工事を主軸とし、甲板機械製造の一部を担
経験は多少あったものの、当社が求めている
い、火力発電所のエアヒーターのエレメント
資格は未取得でした。2回目の訓練生も、
製造を請け負っています。
様々な職種を経験していましたが、資格の取
平成21年5月には、エレメント製造ライ
得状況は、1回目の訓練生と同様でした。2
ンで1人の欠員が生じました。このように、 人とも、募集要項を見てクレーンや玉掛け、
新たな人材が必要になったときに、山口県地
フォークリフト、溶接、ガス溶接などの資格
域ジョブ・カードセンターの制度普及推進員
を取得できることが魅力だったようです。
の方からの案内でジョブ・カード制度の有期
実習型訓練のことを知りました。これは、人
材を育てていくためには大変有効な制度だ
と思いましたので、早速、有期実習型訓練を
活用することにしました。
また、平成23年の秋以降は、エレメント
の需要が急増し、新たな人材が必要になりま
したので、有期実習型訓練を再び活用しまし
た。
クレーン操作演習(Off-JT)
2.具体的な取組内容
入社間もない新人に対し、これだけの資格
エレメントの製造工程では、クレーン操作
を取得させるのは、会社としては大変な負担
や玉掛け、溶接、プレス機械、フォークリフ
です。三菱構内では、無資格者の運転や作業
トの運転など、作業が多岐にわたります。設
は絶対に許されません。ジョブ・カード制度
の有期実習型訓練の活用は、こういった問題
を解消してくれました。また、資格の取得後
は、必ず現場で演練を行い、技術を習得させ
ることに努めました。
有期実習型訓練は、資格取得の関係でそれ
ぞれ3カ月間と4カ月間の2種類に分けて
設定し、専務と現場の責任者が講師となって
指導しました。また、2回目の訓練では、1
(2)Off-JT
1)就業規則と安全衛生教育
訓練生と就業規則の読み合わせをし
ました。過去にエレメントラインで起き
た災害について説明し、危険予知訓練を
実施しました。
2)エアヒーターとエレメント製品につい
ての教育
回目の訓練を通じて採用した社員にも、訓練
エレメントラインで製造された製品
生を指導させました。特に、訓練日誌は、訓
が何に使われるかなどについて説明し
練生にとって、成長の過程を振り返ることが
ました。
できましたので、大変有効でした。
(1)OJT
1)エレメントの詰め込み実習
クレーンの操作をはじめ、機械の操作
が主でしたので、慣れないうちはトラブ
3)エレメントの詰め込み作業
機械の操作方法やトラブルが発生した
ときの対応や様々な機械の調整について
教育しました。
4)アーク溶接
ルが起きるとパニックになり、手を切る
一般的なものから、登り溶接や上向き
などの危険も多い作業です。トラブルの
溶接、ビード書きについて順次、教育
発生時の対応手順や過去の災害事例を教
しました。
えながら、危険予知教育を実施しました。
2)仕上げ作業
5)クレーン操作と玉掛けについての教育
フックを吊り荷の重心の真上にもっ
グラインダー掛けによる仕上げ作業
てきて玉掛けを行い、地切りや巻き上
は、グラインダーの角度やスピードに
げ、走行、横行、斜め走行、巻き下げ、
よって仕上がりが変化することを体験
接地を教育しました。また、荷の振れ
させることによって、品質管理のポイ
止めについても教えました。
ントを教育しました。そして、防錆油
6)フォークリフトの運転教育
を吹き付ける装置に流す際は、クレー
フォークリフトの運転や爪の平行度
ン操作がメインになりますので、荷振
の確認、走行時の諸注意について教育
れによって製品をぶつけることがない
しました。
ように教育を徹底しました。
3.阻害要因とそれを乗り越えるための工夫
訓練実施計画届を訓練開始日の1カ月前
までに雇用・能力開発機構(2回目の訓練で
は、山口労働局)に提出した後に、ハローワ
ークで求人を募集し、訓練生として採用しま
した。当社が計画していた資格は、訓練生が
既に取得していましたので、訓練カリキュラ
ムを作成し直し、変更届を山口労働局に提出
しなければなりませんでした。
この提出書類の作成には大変戸惑いまし
グラインダー掛けによる仕上げ作業(OJT)
たが、山口県地域ジョブ・カードセンターの
訓練コーデイネーターの方からの適切なア
ドバイスを受けながら、フォローしてもらっ
て対応しました。
4.制度の活用による具体的な効果
様々な資格を早い段階で計画的に取得で
きたのは、メリットが大変大きかったと思い
ます。資格の取得後の演練では、訓練生の技
術が上達していくのが目に見えて分かった
ことも良かったことです。
また、訓練日誌に記入することによって一
日を振り返り、
「何を学び」
「どのような技術
を習得できて」「何ができなかったか」など
について整理、確認できたことは、技術の上
達に役立ったようです。
ジョブ・カード制度の有期実習型訓練の活
用によって、3カ月~4カ月の間でしたが、
新入社員の成長を記録できました。もう少し
経過したら、正社員として採用した元訓練生
に対し、訓練日誌を見せようと思っています。
こうしたことを実施するのは、訓練時を思い
出し、初心に帰ってくれるのではないかと期
待しているからです。
(平成25年2月現在)
有期実習型訓練の概要
※1回目の有期実習型訓練 (株)法道工務所
職務名または教科名
O
J
T
製罐・詰込み
職務または教科の内容
時間
工場内における製罐作業と詰込みの基礎
実務を習得する。
Off-JTの
実施主体
384
OJT合計 384
オリエンテーション
業務マニュアル・就業規則・諸規定
1
組織と業務分担
自社と担当部門
1
危険予知活動(KY)、ヒヤリハット活動
1
危険予知活動の目的・意味
1
過去の類似災害事例から危険予知を学ぶ
1
リスクアセスメント、ゼロ災害運動
1
健康管理
ストレスと健康管理
1
評 価
評価シートによる能力評価
4
学
作業標準について
科
O
f
f
‐
J
T
社 内
学科合計 11
作業標準・工場見学
危険予知活動(KY)、ヒヤリハット活動
1
製罐・詰込み実務補助
三菱重工エレメントラインにて実習
30
ハンドル操作、重心の確認、積み荷の落下防
止
24
クレーンの位置決め、地切り時の荷振れ防止
16
火力調整、ひずみを出さない溶接技能講習
8
電圧・電流調整、角度・スピード調整
16
社 内
実 フォークリフト
床上操作式クレーン(5t未満 )
技
ガス溶接
アーク溶接
社 外
実技合計 95
Off-JT合計 106
総時間数 490
有期実習型訓練の概要
※2回目の有期実習型訓練 (株)法道工務所
Off-JTの
職務名または教科名
職務または教科の内容
時間
実施主体
O
J
工場内における製罐作業と詰込みの基礎
400
T 製罐・詰込み
実務を習得する。
オリエンテーション
危険予知活動(KY)、ヒヤリハット活動
1
危険予知活動の目的・意味
1
危険措置訓練
1
リスクアセスメント、ゼロ災害運動
1
健康管理
ストレスと健康管理
1
能力評価
評価シートによる能力評価
5
学 作業標準について
科
O
f
f
‐
J
T
OJT合計 400
就業規則・諸規定、有期型訓練オリ エン
1
テーション
社 内
学科合計 11
作業標準実習
危険予知活動(KY、ヒヤリハット活動
1
製罐・詰込み実務補助
三菱重工エレメントラインにて実習
34
社 内
実
習
・
実
技
クレーンの位置決め、地切り時の荷振れ防
止
プレス機械及びシャー取扱 動力プレス・シャーの安全装置・作業の知
い業務
識
床上操作式クレーン運転
アーク溶接
電圧・電流調整、角度・スピード調整
玉掛け
搬送物の固縛法、ワイヤー・吊り具の選択
20
8.33
15.5
19
実技合計 97.83
Off-JT合計 108.83
総時間数 508.83
社 外