第46回熊本県中学校国語教育研究大会 ~阿蘇大会~ 研 究 紀 要 大会主題 生きてはたらく「ことばの力」を育てる国語科教育の創造 ~学びを生かす授業づくり~ 熊本県中学校教育研究会国語部会 熊本県中学校教育研究会国語部会 阿蘇郡市教育研究会中学校国語部会 平成21年10月16日(金曜日) 平成21年10月16日(金曜日) 会場 阿蘇市立一の宮中学校 会場 目 次 Ⅰ あいさつ 熊本県中学校教育研究会国語部会 会 長 角 居 恭 一 ‥‥‥‥‥‥ 1 阿蘇大会実行委員長 山 範 夫 ‥‥‥‥‥‥ 2 Ⅱ 大会要項 日程・公開授業・授業研究会・講演等 ‥‥‥‥‥‥ 3 Ⅲ 大会主題(基調提案) ‥‥‥‥ 4~6 Ⅳ 大会指導案 【公開授業1】 「盆土産」 【公開授業2】 「~夏草~おくの細道から」 【公開授業3】 「言語① 敬語」 ‥‥‥ 8~11 ‥‥ 12~15 ‥‥ 16~19 Ⅴ 実践事例報告 ・小説 ・古典 ・言語事項 ‥‥ 22~23 ‥‥ 24~25 ‥‥ 26~27 Ⅵ 全体会要領 ‥‥‥‥‥ 28 Ⅶ 県大会のあゆみ ‥‥ 29~30 Ⅷ 阿蘇大会運営組織 ‥‥‥‥‥ 31 Ⅰ あいさつ 熊本県中学校国語教育研究大会の開催にあたって 熊本県中学校教育研究会国語部会 会 長 角 居 恭 一 第46回熊本県中学校国語教育研究大会が、ご来賓の皆様のご臨席のもと、県内各地より多数の先 生方のご参加をいただきまして、ここ阿蘇の地で開催できますことに、心より感謝申し上げます。 さて、いよいよ本年度から新学習指導要領への移行措置が始まりました。国語科におきましては、 本年度から、全部又は一部について新学習指導要領によることができるとなっています。ただ、平成 23年度の第一学年で、〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕の一部を指導するという特例 はありますが、各学校では、平成24年度からの全面実施に向けて計画的に取り組みが始まっている と思います。 今回改訂のポイントの重要な柱の一つは「言葉の力」にほかなりません。言葉の力を、国語の時間 はもとより、他の教科、領域等の授業でも力を入れて育成しようというわけです。中教審の審議では「言 葉や体験などの学習や生活の基盤づくりの重視」をあげ、言葉の重要性を次のように示しています。 言葉は、 「確かな学力」を形成するための基盤であり、生活にも不可欠である。言葉は他者を理解し、 自分を理解し、社会と対話するための手段であり、家庭、友達、学校、社会と手をつなぐ役割を担っ ている。言葉は、思考力や感受性を支え、知的活動、感性 ・ 情緒、コミュニケーション能力の基盤と なる。国語力の育成は、すべての教育活動を通じて重視することが求められている。 国語の授業は子どもたちの言語能力を直接高める時間です。したがって、言語力育成の中心として の国語科の役割が、ますます大きなものになっています。基礎的 ・ 基本的な知識 ・ 技能を習得し、活 用するために、実生活や実社会で必要な言語能力、各教科等の基本となる言語能力、さらに言語文化 に親しむ態度を確実に育成することが求められているわけです。 そこで、日々の授業において、目的に沿って意図的、計画的に言語能力を育成し、周りと関わりあ いながら言語能力を身に付けていくなど、生徒の視点に立った授業改善に努め、言語活動の充実を目 差していきたいものです。 最後に、本大会の開催にあたり、ご理解とご支援をいただきました、熊本県教育委員会、阿蘇郡市 の各教育委員会、熊本県教育弘済会をはじめ、丁寧なご指導ご助言を賜りました熊本大学教育学部国 語科の先生方には、本当にお世話になりありがとうございました。また、実行委員会として運営にご 尽力いただきました阿蘇郡市中学校国語教育研究会の椙山会長はじめ支部の先生方、そして、こころ よく会場を提供いただきました阿蘇市立一の宮中学校の工藤重行校長先生並びに諸先生方に心より感 謝申し上げます。 -1- 生きてはたらくことばの力を 第46回熊本県中学校国語教育研究大会 阿蘇大会実行委員長 山 範 夫 子どもたちに確かな学力をつけたい。子どもたちの豊かな心をはぐくみたい。わたしたち教師の誰 もが願うことであり、日々の授業は、その実現に向けての営みです。 授業を充実させること、よりよいものに改善していくことを求め、それぞれの教室で実践を重ね、 研究を積み上げている国語教師が、ここ阿蘇の地に集い、共に学ぶ機会を持てたことを、ありがたく、 そして、うれしく思います。 さて、新しい学習指導要領では、 「言語活動の充実」が重視されています。言うまでもなく、言語は、 知的な活動を行ったり、コミュニケーションを図ったりする上で欠かせないものであり、感性や情緒 の基盤です。言語活動の充実は、各教科等の指導においても取り組んでいくことではありますが、そ の推進の中心となるのは、やはり国語科です。国語教師の果たすべき役割は、ますます大きいと言え ます。 これからの授業の在り方について、「習得型から活用型へ」ということが言われます。このことを国 語科なりに言い換えるならば、「生きてはたらくことばの力を育てる授業を」ということになるでしょ う。 そのような意味から、阿蘇大会の研究主題を「生きてはたらく“ことばの力”を育てる国語科教育 の創造」としました。 崇高な理念も、新しい授業の方向性も、そのこと自体に力はありません。それらが力を発揮するのは、 常に「教室における実践」を通してです。 教師が変わらなければ、授業は変わりません。教師の授業力が向上しなければ、授業の質は向上し ません。阿蘇大会が、教師の授業力を向上させ、授業の質を向上させるために、何らかの役割を果た すことができればと願っています。 デカルトは「先の者が到達した地点から後の者が始め、こうして多くの人の生涯と業績を合わせて、 われわれ全体で、各人が別々になし得るよりもはるかに遠くまで進むことができる」と言っています。 46回目の開催となる阿蘇大会は、過去45回の大会の歩みを踏まえたものであり、熊本県中学校 教育研究会国語部会を支えてこられた多くの先人の実践と研究の成果に学びつつ開催するものです。 大会を支えてくださるすべての方々に感謝しつつ、よりよい授業を求めてきた県中国研の歩みに学 びながら、その上に何らかの価値を加え、次代につなげていければと思います。 -2- Ⅱ 大会要項 Ⅰ 大会要項 1 主 題 生きてはたらく「ことばの力」を育てる国語科教育の創造 ~学びを生かす授業づくり~ 2 主 催 3 後 援 熊本県教育委員会 小国町教育委員会 南阿蘇村教育委員会 4 期 日 平成21年10月16日(金曜日) 5 会 場 阿蘇市立一の宮中学校 〒869-2612 阿蘇市一の宮町宮地1669番地の2 熊本県中学校教育研究会国語部会 阿蘇郡市教育研究会中学校国語部会 阿蘇市教育委員会 産山村教育委員会 西原村教育委員会 TEL: (0967)22-0201 6 9:40 9:50 受付 開会行事 ○ 移 動 10:40 10:55 移 動 公開授業 開会行事 ・会場校校長挨拶 ・オリエンテーション ・研究主題の説明 12:30 13:30 昼食 アトラクション 授業研究会 阿蘇市立一の宮中学校校長 15:50 16:00 14:20 全体会 工藤 重行 講演 閉 会 様 学年 公開授業並びに授業研究会 授業者 単元・題材名 「盆土産」 司会者 授業 1 2 松原 孝行 (阿蘇市立一の宮中学校教諭) 山内 康夫 (光村図書 2 年) (南阿蘇村立白水中学校教諭) 授業 2 3 福嶋 宏美 (阿蘇市立一の宮中学校教諭) (光村図書 3 年) (高森町立高森東中学校教諭) 授業 3 3 御秡如 ちなみ (南阿蘇村立長陽中学校教諭) や 8 FAX: (0967)22-3815 大会日程 8:50 9:10 7 南小国町教育委員会 高森町教育委員会 (財)熊本県教育弘済会 講 ご う ら 「夏草」 「言語 1 敬語」 堺 昭博 白石 かおり (光村図書 3 年) (西原村立西原中学校教諭) 助言者 河野 順子 (熊本大学教育学部准教授) 杉 哲 (熊本大学教育学部教授) 堀畑 正臣 (熊本大学教育学部教授) 演 講師 演題 国立教育政策研究所学力調査官 杉本 直美 先生 「言語活動の充実を通して確かな力を育てる国語科の授業」 -1- -3- Ⅲ 大会主題 第46回 熊本県中学校国語教育研究大会阿蘇大会 基 Ⅰ 調 提 案 研究テーマ 生きてはたらく「ことばの力」を育てる国語科教育の創造 ~学びを生かす授業づくり~ Ⅱ 研究テーマ設定の理由 (1)今日的課題から 平成20年の中央教育審議会答申において、「習得・活用・探求」という学習活動のとらえ方が示さ れた。この「習得・活用・探求」という学習活動はそれぞれを明確に分類できるものではなく、相互に 密接に関連し合うものである。答申では、「子どもたちの思考力・判断力・表現力等を確実にはぐくむ ために、まず、各教科の指導の中で、基礎的・基本的な知識・技能の習得とともに、観察・実験やレポ ートの作成、論述といったそれぞれの教科の知識・技能を活用する学習活動を充実させることを重視す る必要がある。」と表されている。つまり、習得した知識・技能を活用させることを通して確実に定着 させ、教科等を横断した課題解決的な学習や探求的な活動へ発展させるといった連続性を重視すること が求められている。さらに、「習得・活用・探求」は、決して一方向性のものではなく、知識・技能の 活用や探求がその習得を促進するなど、相互に関連し合って力を伸ばしていくものである。 新中学校学習指導要領では、国語科教育の領域構成は維持しつつ、習得した基礎的・基本的な知識・ 技能を活用して、課題を解決することのできる国語の能力を身につけることに資するよう、言語活動例 を具体的に示してある。国語科において、知識・技能の習得を図り、活用する力を育むためには、指導 事項を明確にし、習得すべき内容を自覚させた上で、言語活動を通して活用させることが大切である。 生徒一人一人の「ことばの力」が、国語科授業の中で閉じるのではなく、実生活の様々な場面で生き てはたらき、生涯にわたって自ら学び、自ら考える力に発展していくことが求められている。自らの学 びを生かす場面を重視した授業づくりを工夫し、生きてはたらく「ことばの力」を育てる国語教室であ りたい。 (2)生徒の実態から 阿蘇郡市には、学習活動に積極的に取り組むが、全国学力・学習状況調査や熊本県学力調査によれば、 「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」のそれぞれにおいて、既習内容が定着していないとい う実態がある。 また、「これまで学習してきたことを使って、問題を解決しようとしていない」、「文章を読んで、自 分の意見を持ったり、周囲の異なる意見と交流させたりすることが苦手である」等の声が郡市内の教育 研究会で聞かれる。このようなことから、次の点を授業を通して克服すべき課題としてとらえている。 ① 既習内容が生徒の知識・技能として定着していない。 ② 授業で習得した知識・技能を様々な場面に転移できない。 授業の中で学び、習得した内容が定着していないことの要因として、「どんな力を身に付けるのか」 という生徒の意識や、「この力を身につけなければ」という必要感を高める指導が十分ではないという -4- ことが考えられる。そのような意味から、本時の学習内容と関連して、これまでどんな学習を積み上げ てきたかということを明確にし、学習課題に対する自覚や必要感を高めていく必要がある。 また、授業で習得した知識・技能が様々な場面に転移できないということは、活用できるような習得 のさせ方ができていないからではないかと考える。様々な場面や相手、目的等に応じて活用させる場面 を前提に知識・技能を習得させ、授業で身につけた知識・技能は様々な場面で生きてはたらくものであ るということを実感させる必要がある。 Ⅲ 研究テーマについて 「ことばの力」は、国語科授業で習得・活用した知識・技能を、自ら学び、自ら考える言語生活の中 で、思考したり、判断したり、表現したりして、広がり深まるものである。 国語科授業は、言語活動を通して、意図的・計画的に「ことばの力」を育てる場である。そこでは、 これまでの学習内容を振り返り、そのことをふまえながら新たな学習課題に取り組み、表現したり交流 したりしながら、「ことばの力」を育てていく。さらに、習得した知識・技能は、活用することによっ て、実生活に生きてはたらく「ことばの力」へとつながっていくのである。 サブテーマの「学びを生かす」とは、習得した知識・技能を活用するということである。習得した知 識・技能を、実生活と関連させながら使いこなす言語活動を中心に、授業づくりを工夫したい。その際、 活用できるような習得のさせ方を重視する必要がある。 そうすることで、知識・技能が確かに身に付いたと実感でき、その力を他の場面にも転移できる実践 力、即ち、生きてはたらく「ことばの力」が高まると考える。「学びを生かす」授業の積み上げこそ、 自らの言語生活を切り拓き、豊かにしていくことにつながっていく。 Ⅳ 研究の視点 次のような視点で授業の展開を工夫すれば、実生活に生きてはたらく「ことばの力」が育つものと考 える。 視点① 既習の学習内容や、授業で習得する知識・技能について自覚させる。 視点② 授業で習得したことを活用する場面を設定する。 〔視点①について〕 生徒自身に「これまでの学習でどんな力を身につけてきたのか」「今回の学習でどんな力を身につ けるのか」を自覚させるために、既習の学習内容と関連させながら授業で取り組む言語活動を明確に し、指導事項を焦点化したい。また、生徒自身の「この力を身につけなければ」という必要感を高め るために、言語生活と関連させながら取り組めるよう工夫したい。 〔視点②について〕 授業で習得した知識・技能が、様々な場面に転移できない実態から、習得したことを活用する場面 を指導計画の中に設定することを重視した。活用する場面では、知識・技能を使う必要性のある場面 を設定したり、他領域と関連させた言語活動を展開したり、他教科や道徳、特別活動等と関連させた りといった授業展開が考えられる。活用することを通して、習得した知識・技能が生きてはたらくも のになるとともに、本当に習得ができているのかという振り返りもでき、知識・技能の習得をより確 かなものにできると考える。 -5- 探 求 生きてはたらく「ことばの力」 習得 知識・技能 思考力 活用 判断力 表現力 既習・内容 生活体験 -6- Ⅳ 大会指導案 -7- 【公開授業1】 第2学年国語科学習指導案 1 2 授業者 題材 「盆土産」(光村図書2年) 題材について 阿蘇市立一の宮中学校 教諭 松原 孝行 (1)題材観 本作品は、東北地方の「山村」を舞台とし、そこに住む一家のお盆の二日間が描かれてい る。日本は高度経済成長期で、農村部から多くの男性が建設、土木作業員として都市部に出 稼ぎに行っていた時代である。この作品に描かれている生活風景は、普段生徒たちが慣れ親 しんでいる消費中心、飽食の生活とはかけ離れたものがある。「冷凍のエビフライ」に対す る「期待」と「喜び」は、時代の違いとだけとらえるのではなく自分のこれからの生活に対 して問いかけるのに適した教材である。特に人との関わりが、希薄になりがちな現在、離れ ていても心がつながり、互いに寄り添いあい生活する家族の姿は、心のきずなを考えさせる のにふさわしい作品である。 また、「お盆」を通じて、亡くなった母親に思いを寄せる主人公や父親の姿から日本の伝 統行事や文化のもつ意義についても考えることができる教材である。 (2)系統観(読むこと) ※◎…重点的指導、○…指導 を表す 語句の意 内容把握 構成や展 表現の仕 主題や要 ものの見 情報の活 味や用法 や要約 開 方 旨と意見 方考え方 用 麦わら帽子(1年) 大人になれなかった弟た ちに・・・・(1年) 少年の日の思い出(1年) 盆土産(2年) 字のないはがき(2年) 走れメロス(2年) 挨拶 -原爆の写真によ せて(3年) 故郷(3年) ○ ○ ◎ ◎ ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ○ ◎ ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ○ (3)生徒の実態 本学級は、男子16名、女子12子名、計28名のクラスである。明るく素直な生徒たち であるが、ややもすると落ち着きに欠けた言動が目立ってしまうことがある。また、積極的 に授業に参加する反面、なかなか授業に集中できず参加できない生徒もおり、個人の学力差 も大きい。 アンケートの結果より国語の学習に対して、クラスの85%以上の生徒が「好きだ」と答 えている。さらに、すべての生徒が「国語は将来、社会で役に立つ」と答えており、積極的 に授業に参加しようとする姿勢はうかがえる。 4 月に実施された、標準学力検査(NRT)における国語の正答率は、全国平均を若干上 回っているが、「読むこと」の領域は、2 ポイント下回っている。特に人物の気持ちを読み 取ったり、作者の考えを読み取ったりする問題においては全国平均を 10 ポイント下回って おり、それぞれの場面における登場人物の心情をとらえることを苦手としていることがうか がえる。 (4)指導観 研究の視点との関連 ①既習の学習内容や、授業で習得する知識・技能について自覚させる。 ②授業で習得したことを活用する場面を設定する。 -8- -1- [視点①について] 文学作品を「読むこと」において大切なことは「表現の仕方や文章の特徴に注意して読むこ と」と「文章を読んで人間、社会、自然などについて考え、自分の意見を持つこと。」である。 生徒が意欲をもって学習に取り組み、文の流れや表現に即して人物の心理や行動をとらえるた めに適切な学習目標と学習課題の設定を行いたい。 [視点②について] 単元のテーマである「情景や心情の描写をとらえ、作品を味わう」ことができるように、場 面や人物を想像豊かに読み取り、イメージすることを大切にしたい。そのためには、作品を何 度も読み返し、人物描写や情景描写を読み深めることと、適切な発問を行い、生徒の題材に対 する理解を深める場面を設定する。 3 題材の目標 (1)作品の社会状況や語句の意味をとらえる(C読むこと ア) (2)主人公や父の行動、心情に注意し、主題に迫る。(C読むこと エ) (3)表現の特徴を読み味わい、その表現効果を考える。(C読むこと ウ) 4 指導計画(6時間取り扱い) 次 1 時 1 主な学習活動 作品を通読し、心に残った点や 感じたことをまとめる。 2 2 登場人物、舞台、時代背景など のあらすじをとらえる。 3 3 登場人物の心情と物語の特徴や 表現を読み取る。 ○主人公の「えびフライ」という 言葉に込められた気持ちについて 考える。 ○父親の家族に対する思いについ て考える。 ・父親がえびフライを土産に選ん だ理由を考える。 ○主人公と父親の別れの場面を読 み、「きづな」について考える。 作品と自分自身のこれまでの体 験や経験を重ね、自分にとって忘 れられない一場面を書く。 4 本 時 5 4 5 6 評価規準 【関心・意欲・態度】 作品にふれ、感想や自分の考 えを表現できる。 【関心・意欲・態度】 これまでの読書体験や情報か ら登場人物、舞台、時代背景を 理解しようとしている。 【読むこと】 ①登場人物の行動や関係、情景 の描写などの表現の仕方や文体 や文章の特徴に注意して読んで いる。 ②登場人物の行動や関係などの 表現の仕方や文体や文章の特徴 に注意して読み、心情を理解し て読んでいる。 ③作品を読んで、これまでの自 分の生活や体験を振り返り、家 族や社会について考え、自分の 意見をもとうとしている。 評価方法 文章作成 文章作成 文章作成 (ワーク シート使 用) 文章作成 (作文用 紙使用) 本時の学習 (1)目標 ○主人公の心情を考えることができる。 (2)評価 評価項目 具体的な評価基準 関心 課題に対して積極的に取組、自分 意欲 の考えや意見を表現しようとしてい 態度 る。 読むこと 作品の表現に注意し、父親の心情 を考えことができる。 ・父親の行動をもとに、家族に対す る深い愛情をイメージさせる。 -9- -2- つまづきへの グループ学習、教師の支援を適 宜行う。 グループ学習、教師の支援を適 宜行う。 (3)展開 過程 導入 学 習 活 動 時間 1 これまでの学習を振り返り、本時の 学習について知る。 生徒の反応 ・出稼ぎで東京に暮らしている。 ・一人暮らし ・工事現場で働いている。 2 本時の目標を知る。 5 基本発問・指示 ○前時の学習は、「えびフライ」と いう言葉に込められた主人公の気持 ちについて考えました。今日はお父 さんについて考えたいと思います。 まずは、お父さんについて簡単に確 認しておきます。 本日の学習目標:「えびフライ」に込められている父の思いを考える。 展開 3 父親の家族に対する思いが読み取れ る表現を教科書から探し、その思いを ワークシートにまとめる。 生徒に反応 〈表現〉 ・「えびフライ」の鮮度を保つために眠 りを寸断し冷やし続けて帰ってきた。 ・1日半しか休みを取れなかったのに9 時間もかけて帰ってきた。 ・満足そうな表情 [思い] ・おいしい「えびフライ」を食べさせて あげたい。 ・早く食べさせてあげたい。 ・買ってきてよかった。 4 3の活動をもとに、「えびフライ」 にこめた思いを表現する。 生徒の反応 ・東京で「えびフライ」食べて、と てもおいしかった。子どもたちにも 食べさせ、喜ぶ顔が見たくて、もっ て帰っているのですよ。 10 5 10 5 10 ・尻尾を残すことと、車えびや伊勢えび について知っているからです。 まとめ 5 本時のまとめと次時の学習を聞く。 - 10 - -1- 5 ○父親の家族を思う強い思いが描か れています。その思いが読み取れる 「表現」を探してください。また、 その表現から読み取れる「思い」を ワークシートにまとめてください。 ○では、発表してください。 ・「思い」についても発表してくだ さい。 ○どうして「えびフライ」を盆土 産に選んだのだろう。 ※故郷に帰る夜行列車の中で、他の 帰省客から袋の中身を尋ねられ、父 親が説明をする、場面を設定する。 ○班をつくって、意見交換を行って ください。 ・足りないところを補わせる。 ○机を元の位置に戻してください。 意見発表を行います。 ※発表意見に対して質問を行う。 ・なぜ、東京で父親はえびフライを 食べていると思うのですか。 ○父親は毎日、家族のことを思い東 京で働いているんだね。 ○次時の学習内容について伝える。 教 師 の 支 援 ○作品のなかの登場人物の掲示 ・主人公 ・父 ・姉 ・祖母 ○父親についての確認 ・どこ ・だれと ・なんのために 評 価(評価方法) 備考 掲示 ・何を ○目標の掲示 ・父親の気持ち ⇒東京で暮らしていても、常に家族のことを思 い生活していること 短冊 ○初発の感想を利用する。 ワークシ ○主人公、父親の行動や様子が分かる表現に、 ート配布 最初の朗読のときに線を引かせておく。 ○父親が「えびフライ」をもって ・主人公に関する表現 線 帰る場面を描いた表現に気づくこ ・父親に関する表現 線 とができる。 ○父親に関する表現に着目させる。 ○思いについては簡潔にまとめさせる。 ○表現に気づくことができない生徒に対して支 援を行う。 ○席が近くの生徒同士で交換を行わせる。 ○発表において教師の指名によって行う。 ・机間指導により生徒の様子を把握しておく。 ○場面設定の絵を掲示し、課題に対する意欲を ○作品に描かれた表現をもとに父 絵の掲示 高める。 親の家族に対する思いを書くこと ○生徒一人一人が文章表現をもとにイメージを ができる。 ワークシ 膨らませることができるように留意する。 ート記入 ・文体の工夫 ・ワークシートの工夫 つまづきに対する支援 ・父親は「えびフライ」を食べたことがあった のか。・・・「えびの尻尾は残すのせ。」 ・なぜ、急にお盆に帰ってきたのだろうか。 ・満足そうな表情はどうしてか。 などの表現に着目させる。 ○「父親」の家族を大切に思う気持ちをおさえ る。 ワークシ ート回収 - 11 - -2- 【公開授業2】 第3学年国語科学習指導案 1 2 授業者 阿蘇市立一の宮中学校 題材 「夏草-『おくのほそ道』から-」 (光村図書3年) 題材について 教諭 福嶋 宏美 (1)題材観 本題材は「おくのほそ道」の冒頭部分と平泉の部分とが抜粋され、その間に「『おくのほ そ道』俳句地図」が付されている。本文(散文)は、簡潔にして格調高い文体から成り、音 読すると流れるような音律を感じ取ることができる。繰り返し読み、暗唱することで、漢語 の多さや漢詩の引用、AはBであるという文体の繰り返しなどによる漢文調の言い回しや、 対句的な表現、比喩、縁語、数字を配した表現など作品の持つ表現の特色を味わうことがで きる。 また、単元の目標は、昔の人の思いや考え方をとらえ、古典を楽しむことである。「古典 を楽しむ」とは、古典の文章や内容を読んだり知ったりし、今の生活と比べたり、つながり を考えることで、感受性を豊かにすることである。本文を読んで、旅を想像したり、芭蕉の 旅への思い、人生観に思いを寄せることができる。 さらに、「『おくのほそ道』俳句地図」では、芭蕉の足跡と、主要な土地の写真およびそ の地を題材に詠んだ俳句が掲載されており、旅の全行程が一目でわかり、聞いたことがある であろう代表的な俳句も判明して、生徒には親しみやすい資料となっている。作品の背景で ある旅への思いをこめた読みを促しながら、現代の旅と芭蕉の旅を比較し、芭蕉の旅や俳句 にかける思いを想像させるのに優れた題材である。 (2)系統観(読むこと) 語句の意 内容把握 構 成 や 表 現 の 主題や要 ものの見 情 報 の 味や用法 や要約 展開 仕方 旨と意見 方考え方 活用 蓬莱の玉の枝「竹取物語」から(1年) ○ ○ ○ ◎ ○ ◎ ○ ◎ ○ ◎ ○ ◎ ※◎…重点的指導、○…指導 を表す 枕草子(2年) 扇の的「平家物語」から(2年) 仁和寺にある法師「徒然草から」 (2年) 夏草「おくのほそ道」から(3年) (3)生徒の実態 本学級は男子13名、女子17名計30名のクラスである。明るく素直な生徒たちが多く、 静かに集中して授業を受けることができ、積極的に発言する生徒も数名いる。その反面、個 人の学力差が大きく、個別の指導が必要な生徒も数名見られる。 これまでに、歴史的仮名遣いや助詞・主語の省略など、古典を読解するための基礎知識を 学習しているが、全員が完全に定着するまでには至っていない。 古典の学習においては、1年時の「竹取物語」において、現代人との共通点を考える授業 に取り組み、2年時の「平家物語」においては、場面の状況と人物の心情を読み取る授業を 行った。いずれも大多数の生徒が意見を持つことができたが、古典を理解する上で大切な要 素となってくる時代背景や状況の把握が難しく、各課題に対して自分の意見を持つことがで きなかった生徒も数名見受けられた。 古典の知識・技能に関するレディネステストの結果は以下の通りである。(28名実施) ・歴史的仮名遣いの正答率…いふ(89%)よろづ(82%)なむ(61%)うつくしう (79%)ゐたり(96%) ・助詞の正答率…竹取の翁といふもの( )ありけり(79%) ・主語の正答率…野山にまじりての主語(75%) 「なむ」は、現代では用いられない古語である。正答率が他の古語に比べ落ち込んでいる ことから、現代では用いられない古語については、今後授業の中でしっかりとおさえる必要 がある。また、助詞を間違えた生徒の中には、主語を間違えている生徒が多い。よって、そ - 12 - -1- の生徒については、個別に対応していく支援が必要である。 (4)指導観 研究の視点との関連 視点① 古典の文章の読解に必要な知識・技能を自覚させる。 視点② 俳句地図の俳句に込められた心情や俳句を作った時のエピソードを知り、それを 根拠に、芭蕉の、それぞれの俳句にこめる思いを考えさせる。 ① 原文を書いたシートを活用することで、古典の文章の読解に必要な、歴史的仮名遣いや助 詞・主語の省略、言葉のまとまりを自覚させる。また、「芭蕉にとって旅とはどんなものだ ったのか」というテーマを意識させ、本文や俳句を読み取り、古人の思いや考え方をとらえ ることで、古典を楽しむことができることを自覚させたい。 ② 第1時の冒頭部分から、芭蕉の旅にかける特別の思い、つまり命をかけて俳句をつくる旅 に出ようとしていることが読み取れる。そこで、その旅とはどんなものだったのかをさらに 詳しく知るために、俳句地図の俳句を鑑賞し、俳句を作った時のエピソードを調べ、発表す る活動を取り入れ、知ったこと、分かったことを根拠に、「芭蕉の、それぞれの俳句にこめ る思い」を一人一人に捉えさせたい。 3 題材の目標 (1)芭蕉の生き方に関心を持ち、その生き方や考え方について感想を話し合ったり、文章にま とめたりする。(関心・意欲・態度) (2)表現をたどりながら、人生や自然に対する作者のものの見方や感じ方を捉える。 (C読むこと-エ) (3)歴史的仮名遣いや古文特有の語句、漢文調の言い回しなど、作品の表現の特徴を理解す る。(言語事項) 4 指導計画(5時間取り扱い) 次 時 主な学習活動 評価規準 〔1〕を音読し、古典独特の文体に 1 慣れ親しむ。原文の内容を理解し、 芭蕉が命をかけて俳句を作る旅に出 る様子を読み取る。 俳句地図から俳句を選び、資料をも 1 2 とに班で心情やエピソードをまと め、発表資料を作成する。 1 友達の発表を聞き、それを根拠に芭 本 蕉の、それぞれの俳句にこめる思い 時 を考える。 1 〔2〕を読み、芭蕉の涙の理由を考 えることで、無常観について、さら に詳しく理解する。 5 〔関心・意欲・態度〕 ・作者の生き方や考え方について、 感想を話し合ったり、文章にまとめ たりしようとする。 〔読むこと〕 ・説明や描写、比喩など文章の叙述 の仕方に注意しながら読むことがで きる。 ・文章を読んで芭蕉の思考や心情に 迫り、人間、社会、自然などに対す る自分の感想や意見を持つことがで きる。 〔言語事項〕 ・歴史的仮名遣いや古文特有の語 句、漢文調の言い回しなど、作品の 表現の特徴を理解することができ る。 評価方法 観察 ノート 実技の観察 ノート ワークシー ト ワークシー ト 本時の学習 (1)目標 ○芭蕉の、それぞれの俳句にこめる思いを、発表をもとに考え、まとめる。 (2)評価 評価項目 読むこと 具体的な評価基準 つまずきへの手だて 芭蕉の、それぞれの俳句にこめる思い それぞれの班の発表資料を活用す をシートに書くことができる。 る。 - 13 - -2- (3)展開 過程 導入 学 習 活 動 時間 1 これまでの学習を振り返る。 ○今度は命をかけて俳句を作る旅に出 ようとしていました。もう家に帰ら ないつもりです。 2 本時の目標を知る。 5 芭蕉の、それぞれの俳句にこめる思いを考 えよう。 展開 まと め 3 発表会をする。 20 ○発表者…調べた発表資料をもとに、 黒板に貼られた俳句地図を活用しな がら発表する。ポイントになる言葉 (こだわり)や写真などはカードに して貼る。 ○聞く時…その俳句で、芭蕉は何を表 現しているのか。また、どんな状況 で俳句を作ったのか。(作った時のエ ピソード)以上の2点と、その俳句 における芭蕉のこだわり。 4 発表や発表資料を参考に、芭蕉の、 それぞれの俳句にこめる思いを考え、10 シートに書く。 ○より優れた俳句を読もうとする思い ・何度も言葉を変えたりした。 (立石寺) (最上川) ・引き返したりして、実際に見ること、 体験を大切にしていた。(立石寺) (最上川) ○自然を見る目を養おうとする思い ・実際に聞いた音や景色を表現してい る。(6つの俳句から) ○先人の足跡を見てまわり、自分の感 性を高めようとする思い(小松) ○より優れた俳句を作るために、自分 の人生をかけようとする思い (大垣) 5 書いたことをもとに発表する。 ~~な思いを持っていたと思います。 根拠は、~~の俳句から、~~だか らです。 10 6 おくのほそ道の冒頭部分を朗読する。 - 14 - -1- 5 基本発問・指示 ・芭蕉は、これから俳句を作る旅に 出ようとしていました。今までの旅 との違いは何だったでしょう。 ・俳句地図の6つの俳句について、 班ごとに調べてもらいました。今日 は発表を聞いて、それをもとに、芭 蕉の、俳句にこめる思いを考えまし ょう。 ・発表する人は、芭蕉が表現してい ることと、作った時のエピソードを 発表してください。 ・それぞれの俳句における芭蕉のこ だわりをしっかり聞きましょう。 ・発表資料を配るので、発表を聞い て初めて知ったことやポイントに線 を引きながら聞きましょう。 ・自然を書いたものや、体験したこ とを書いたもの、歴史上の人物に思 いを寄せたものなど、いろいろな作 品がありました。また、俳句を作る 時に、引き返したり、実際に体験し たり、何度も読み直したりしていた ことがわかりましたね。それでは、 芭蕉の、それぞれの俳句にこめる思 いを考えましょう。 ・発表でわかったことや発表資料に 線を引いたところを参考に、根拠を 明確にして、シートに書きましょう。 ・友達の意見を自分の意見と比べて 聞きましょう。いいと思った所は、 メモしましょう。 ・芭蕉の旅に寄せる思いを考えなが ら朗読しよう。 教師の支援 評価(評価方法) 備考 ・1時の学習を、振り返るようにする。 ・芭蕉がこれから、命をかけて、俳句をつくる 旅に出ようとしていることを押さえる。 ・旅についてのアンケート結果を紹介し、気分 転換や楽しみのための旅とは違うことを確認す る。 ・班の発表は、旅の行程順に行うようにする。 ・発表は、以下の点で行うようにする。 ○その俳句で表現してあること ○芭蕉がその俳句を作った時のエピソード ○それぞれの俳句での芭蕉のこだわり ・拡大した俳句地図を黒板に用意し、発表に使 うようにする。 (エピソードや表現したこと・こだわり) ○那須…ほととぎすの鳴き声(CD) 自然の瞬間を表現した ○立石寺…蝉の声(CD)何度も書き直す 30キロを引き返して見物した ○最上川…川の音(CD)何度も書き直す 宿泊のお礼として作った 実際に急流下りをした ○出雲崎…写真 佐渡に流された歴史上の人 物に思いを寄せて作った よこたう ○小松…きりぎりす=(今の)こおろぎ 平家物語(実盛) 無常観 ○大垣…旅の終わりにつくった俳句 また旅に出る自分の気持ち ・発表や発表資料をもとに、芭蕉の、それぞれ の俳句にこめる思いを考えるように指示する。 ○より優れた俳句を読もうとする思い ○自然を見る目を養おうとする思い ○先人の足跡を見てまわり、自分の感性を高め ようとする思い ○より優れた俳句をつくるために、自分の人生 をかけようとする思い ・発表を聞きながら、芭蕉の、俳句にこめる思 いがさらに深まっていくようにする。 ・友達の意見は色を変えてシートに書くように 指示する。 発表資料 CD カード 写真 俳句地図 発表資料 シート ・自分が調べたことを根拠に、芭 蕉の俳句にこめる思いを書くこと ができる。(B評価) ・発表を聞き、自分の考えをふく らませ、芭蕉の思いや考えにせま ることができる。(A評価) ・声をそろえて、全員で朗読する。 教科書 - 15 - -2- 【公開授業3】 第3学年国語科学習指導案 1 2 題材 「言語① 題材について 敬語」(光村図書 授業者 教諭 国語3) 南阿蘇村立長陽中学校 御秡如 ちなみ (1)題材観 「敬語」には、丁寧語・尊敬語・謙譲語という種類があり、私たちは、これらを相手 や場面に応じて組み合わせて使っている。敬語を用いることにより、他者とのコミュ ニケーションを円滑にしたり、敬意あるいは丁寧さを表したりすることができる。生 徒たちは、学校生活や、社会とのかかわりの中で、目上の方との会話や改まった場面 での会話など、敬語を用いる機会が増えてくる。 本題材は、敬語の用法を中心に、自らの言語生活を見つめ直し、今後も様々な相手 や場面に出会うであろう生徒のコミュニケーション能力を高めることにつながる題材 である。 (2)系統観 音声 語句 語彙 話 や 文 単語 言語生活 章、文 話し言葉と書き言葉(1 年) 方言と共通語(2 年) ◎ ◎ ○ 敬語(3 年) ○ ○ コミュニケーション(3 年) ◎ ◎ ◎ ○ ○ ○ ○ ○ ※◎…重点的指導、○…指導 ◎ ○ を表す (3)生徒の実態 生徒は、1年生時に「話し言葉と書き言葉」、2年生時に「方言と共通語」につい て学習し、相手や場面に応じた言葉遣いが必要であることを学習した。学校での様子 から、相手や場面に応じた言葉遣いをしようと意識するものの、適切に使えていない 場面も見受けられる。 ことばに関するアンケートの結果は以下の通りである(22名回答) 。 1 あなたはどんな相手に対してふだんと違う言葉遣いをしますか? ・目上、年上、大人(15人) ・先生(10人) ・初対面の人(7人) ・クラスの人(2人) ・親(1人) 2 あなたはどんな場面でふだんと違う言葉遣いをしますか? ・発表する時(9人) ・年上の人と話すとき(5人) ・公の場(1人) ・電話するとき(1人) ・真面目な時(1人) 3 敬語を使おうとしてうまく使えなくて困ったことはありますか? ・ある(5人) 【具体的に】みんなの前で話すとき。 親せきの人や初めて会う人と 話すとき。 電話の応答。 敬語がうまく出てこなくて 言葉に詰まってしまった。 ・ない(17人) 4 言葉遣いの間違いに気づきにくいのはどちらですか? ・話し言葉(14人) 【理由】話し言葉は形に残らないから。耳で聞くだけでは気づ きにくいから。 ・書き言葉(8人) 【理由】なんとなく。話しているときは気づくから。 5 これからどういうときに敬語が必要だと思いますか。 ・目上の人と話すとき ・入試のとき ・社会に出たとき ・相手への敬意を表すとき 6 敬語を適切に使えるようになりたいと思いますか? ・はい(22人) ・いいえ(0人) レディネステストの結果から、敬語に関する知識・技能の定着は十分ではないが、 アンケートでは、敬語を使う際に困った経験をした生徒は少ない。これは、正しく使 えているかどうかの実感がないためであると考えられる。他にも、アンケートから、 言葉の間違いに気づきにくいのは書き言葉よりも話し言葉であるという実態がある。 そのため、話し言葉を中心に言語活動を展開する必要があると考える。 また、アンケートの結果から、多くの生徒が相手や場面に応じて話したり書いたり しようとしていることがわかる。その上、ほとんどの生徒は、これからの生活で敬語 は必要であり、敬語を適切に使えるようになりたいと考えている。そこで、敬語の知 識・技能を活用する場面を重視した学習活動が効果的であると考える。 - 16 - -1- (4)指導観 研究の視点との関連 視点① 自らの言語生活と関連付けながら、相手や場面に応じて言葉を使い分ける必要感 を高める。 視点② 敬語を話したり聞いたりする活動を通して、敬語の知識・技能を定着させる。 まず①については、日常生活に近い場面設定で寸劇を作成させる中で、お互いの知 識や経験を出し合わせることによって、自分が普段どのような言葉遣いをしているの かを振り返らせ、言葉を相手との関係や場面によって使い分けようとする意識を高め たい。 次に、生徒は、話し言葉での間違いに気づきにくいという実態がある。そこで、② については、話し言葉による言語活動を中心に据え、意図的に誤った表現を取り入れ た寸劇を作らせる中で敬語について調べたり、他者と意見を交流させたりしながら、 敬語に対する理解を深めさせたい。また、班ごとに異なる場面設定で寸劇発表会を行 うことで、誤りが潜みやすい表現に気づかせるとともに、自らの知識・技能が定着し ているかどうかを振り返らせたい。さらに、相手との関係や場面などの視点から生徒 の思考を揺さぶる発問をし、敬語の適否や多様性について考えさせたい。 3 題材の目標 (1)敬語についての理解を深め生活の中で適切に使えるようにすること。(2・3-言 語-キ) 4 指導計画(4時間取り扱い 次 時 1 本時4/4) 主な学習活動 評価規準 評価方法 1 1 自らの言葉遣いについて振り返る。 敬語の種類や特徴について理解する。 【関心・意欲・態度】 観察 1 2 寸劇用シナリオを作り、練習する。 ・相手や場面に応じた適切な 学習シート 条件 ①3~4人班とし、全員が関わる。 敬語表現について理解し、 シナリオ 2 ②2分以内で行う。 自分の言語生活に生かそう ③敬語の誤りを2ヶ所以上入れる。 としている。 2 3 寸劇発表会を通して、敬語の学習を振 【言語事項】 学習シート 本 り返り、 これからの言語生活につなげる。・敬語についての理解を深め、振り返り 時 適切に使うことができる。 シート 2/2 5 本時の学習 (1)目標 ○敬語の知識を生かして、相手や場面に応じた適切な言葉遣いを考えることができる。 (2)評価 評価項目 関心 意欲 態度 言語事項 具体的な評価基準 つまずきへの手だて ・言葉遣いについての自分の考えを表現 ・自分の考えを出しやすくするため しようとしている。 に、 他の生徒と意見を交流させる。 ・敬語の知識を生かし、会話の中で適切 ・前時までの学習内容を想起しやす な言葉遣いを考えることができる。 いように板書で整理しておくとと もに必要に応じて助言を与える。 - 17 - -2- (3)展開 過程 導入 学 習 活 動 時間 1 既習事項を整理し、本時の目標を 5分 確認する 基本発問・指示 「敬語を使う上で気をつけなければ ならないことは何でしょう。」 敬語の知識をいかして 言葉遣いを見直そう。 展開 2 班での最終打ち合わせをする。 3 班ごとに発表をする。 5分 「班での発表に向けて、最終打ち合 わせを行いましょう。」 35分 「○班の寸劇を見てみましょう。」 ①場面及び配役の説明 ②寸劇Ⅰ【誤りを含む】 ③班で相談する ④気づきを発表する ⑤発表班が解説する ①場面及び配役の説明 ②寸劇Ⅰ【誤りを含む】 「今から誤りを含む寸劇を行いま す。誤りや直したほうがいいと思 う表現に気づいた人は黙って手を 挙げて下さい。」 ③班で相談する ④気づきを発表する ⑤発表班が解説する 「~~は~~~~だから誤りです。」 4 まとめ 5 言葉遣いについて考える。 「こういう場合も同じように言うか な?」 「こういう相手だったら今の言い方 でいいかな?」など 敬語学習の振り返りをする。 5分 - 18 - -1- ○「最後に、これまでの学習の総ま とめ問題にチャレンジし、敬語学 習の振り返りをしましょう。」 教 師 の 支 援 評 価(評価方法) 備考 ・前時までに学習したことを確認する。(適切な 言葉遣いは相手や場面によって変わること。 表現の仕方は一つとは限らないこと。など) ・班で寸劇発表の段取りを確認させ、自信をも って発表させる。 学習シート ・発表が終わっている生徒には、敬語について 復習させる。 【関・意・態】 言葉遣いについての自分の考え を表現しようとしている。 (観察・学習シート) ・自分の考えを表現しやすくするために、班の 生徒と意見を出し合わせ、交流させる。 【言語事項】 敬語の知識をいかし、会話の中 で適切な言葉遣いを考えることが できる。 ・誤りに限定せず、表現の仕方を変えることで (観察・学習シート) より適切になると思われる点も発表させる。 ・発表後、敬語の適否や多様性について考えさ せるために、次のような視点で揺さぶりや示 唆を与える。 (1)相手との関係 (2)場面 (3)目的 ・会話の中でどのような言葉遣いが適切か考え 【言語事項】 振り返り る問題を提示するとともに敬語学習を振り返 敬語の知識をいかし、会話の中 シート らせる。 で適切な言葉遣いを考えること ができる。 ・敬語の学習を通して気づいたこと、考えたこ (振り返りシート) を発表させる。 ・敬語も含めて言葉は、相手・場面・目的に応じ て判断し、使うものであることを確認する。 - 19 - -2- MEMO - 20 - Ⅴ 実践報告 - 21 - 文学作品での学びを表現に生かす 文学作品での学びを表現に生かす ~「盆土産」から「食」に関する作文を書く活動へつなげる~ ~「盆土産」から「食」に関する作文を書く活動へつなげる~ 授業者 1 南阿蘇村立白水中学校 山内 康夫 生徒の実態から 本校の生徒の実態として、書くことに関心は持っているが、何を、どのように書い ていいかが、わからないため、作文に対して苦手意識を持っている生徒がいることが 挙げられる。 2 実践のねらい (1)読解・表現の総合単元として 教材文「盆土産」は、日本が貧しく食糧に恵まれていなかった時代の、家族の温 かい交流を描いている教材である。「盆土産」の読解学習の後、「印象的な一場面を 書こう。」という表現教材を発展させ、「盆土産」で学んだ食べ物の貴重さ、食の大 切さ、家族の温かさなどを、父母・祖父母から聞き取ったり、自分の体験をもとに したりして、文章にまとめる学習を展開させることにした。「食」を通して、人間の くらしや命を見つめさせ、家族や自分自身を大切にしようとする心情を育ませたい と考えた。 3 実践の概要 (1)「教師自作の作文」を示す 「盆土産」の読み取り学習と並行し、昭和世代である生徒の親や祖父母から「食」 への思い出を聞き取らせ(取材)、文章にまとめるという活動を行う。学年通信に教 師作の「食」への思い出の例を載せ、保護者が話しやすくなるように配慮を行った。 それは生徒にとって、「どんな作文を書けばいいか」という目標にもなる。 資 料 ① 教 師 自 作 の 作 文 私の母の小さい頃は、戦争のため、本当に食べ物がない時代でした。毎日の食事はほとんどがイモや麦が中心 でした。でも、阿蘇は農村地帯ですから、都会に比べれば、まだましでした。何かめでたいことがあると、白米の おにぎりが作られました。その当時も町内のいくつかの小学校が集まって、合同で学芸会が行われていました。二 年生ぐらいだった私の母は、数人の友達とともに、その代表に選ばれました。▲「今日のお弁当、うちのお母さん が特別にごちそうを作ってくれたつよ。おにぎりと卵焼き。」季節は秋、頭の上にはとても青い空が広がっていま した。▲みんなの会話は弾みました。発表も無事終わり、いよいよ楽しみにしていたお昼ご飯の時間になりました。 お弁当を食べようとした、その時です。花子ちゃんの姿がありません。「何か、あったとかなあ。花子ちゃん」花 子ちゃんのいたところに、さっきまであった袋もありません。学校の講堂を出て、辺りをさがしました。林のむこ うに女の子の小さな背中が見えました。▲「花子ちゃん、どうしたの」 花子ちゃんは何も答えずに、下を向いた だけでした。花子ちゃんの手には小さなお弁当ばこがありました。その中には小さなイモしか残っていただけでし た。そのイモを見ただけで、花子ちゃんがなぜ、講堂から飛び出したか、みんなはわかりました。 「ごめんなさい。 花子ちゃん。私たちごちそうが食べられると、自分だけ舞い上がってしまって・・。」 -1- 22 - (以下略) (2)目的をはっきりさせて「読む活動」と「書く活動」を 「盆土産」の読解では、情景・人物描写の工夫を読み取らせる活動を行った。あと で作文を書くときに参考にするという目的を示し、教科書にサイドラインを引かせ た。「書く活動」時には、そのサイドライン部分を繰り返し読ませ、情景・人物描 写を工夫することを助言した。 資料②・ 生徒作文 (一部) (略)「じいちゃんの思い出の食べ物は鶏肉かな。鶏肉って、地鶏のこつたいなあ。じいちゃんたちがまだ小さ いときは、今みたいに店に行けばすぐ手に入るっちゅうもんじゃなかったとたい。鶏肉は今は簡単に手に入るば ってん、昔は盆か正月にしか食べられんだったとばってんなあ。」▲(A)「常ちゃん、明日は正月だけん、鶏肉 が食べられるバイ。」水に触ると手が凍ってしまいそうな大みそか。とても寒い日だったが、じいちゃんは鶏肉 が食べられると聞き、うれしさでたまらず外を走り回っていた。▲一年の始まりの日の元旦。うきうきする気持 ちをおさえ、飛び起きて土間に向かうと、じいちゃんのお母さんがすでに鶏肉をさばいていた。さっきまで生き ていたと思うと、とても罪悪感があったが、もうすぐうまいものが食べられると思うと、そんなの関係なかった。 食卓にみんながそろうとお母さんがおじやにしてくれた鶏肉をつぎ、みんなに渡し始めた。いよいよ、じいちゃ んにも回ってきた。おわんをのぞくと、特大サイズのお肉が入っていた。うれしさのあまり、すぐに食べきって しまった。▲今ではとても考えられないが、昔は骨まで食べてしまったそうだ。この話をしている時の祖父はと ても楽しそうに見えた。多分一昨年亡くなった祖父の母のことを思い出しているのだろう。▲昔の祖父の家族は 10人ぐらいいたため、どんな食事でもおいしかったらしい。農家をしていたために、あまり苦労しなかったらし いが、他の家の人たちは、とてもひもじい思いをしていたと話していた。昔は、魚も町の方から1ヶ月に1回ぐ らいしか持ってきてくれず、高級品だったらしい。(略) 4 実践の成果 ○ 「教師自作」の例文を生徒・保護者に示したことは効果があったと思う。どのよう な話を生徒にしてやればいいのか、どのような作文を書けばいいかが、明確になった。 ○ ほとんどの生徒が「盆土産」の情景・人物描写を自分の作文に生かすことができた。 生徒作文を見てほしい。この作文を▲(A)まで書いたとき、次をどう書きつなぐか、 迷っていた。「小説を書くように書いていいですか。」と質問してきた。そして、▲ (A)以下を書き始めた。情景描写等もいれ、生き生きと表現することができた。 ○ 「盆土産」と「家族や自分の『食』に関する思い出をまとめよう」という教材の配 置は、非常におもしろいと思う。「食」に対する思い出は、誰もが持っている。そし て、それは必ず、その当時の家族や自分自身のくらしと密接に関係してくる。祖父母 から聞き取って作文を書いた子は、「『盆土産』と祖父母の暮らしは同じだった、生 活が貧しかったが、その中で本当においしいものがあったんだ」という感想を書いて きた。 5 これからの課題 ● この教材には、時間がかかりすぎるという難点がある。 それは、単元の配置を変えることで解決するのではないかと思う。「単元7新しい 言葉」の「教材 ちいさな物語を探る」等を利用すれば時間がかかるという問題も解 決するのではないかと思う。 -2- 23 - 古典の世界に触れ、楽しみ、親しむために 古典の世界に触れ、楽しみ、親しむために ~中学校古典教材における「習得」と「活用」~ ~中学校古典教材における「習得」と「活用」~ 授業者 1 高森町立高森東中学校 堺 昭博 生徒の実態から 平成二十年度および平成十九年度全国学力・学習状況調査の結果を分析すると、古典 教材そのものについての苦手意識や学習状況の悪化はみられない。これは全国的な傾向 で熊本県・阿蘇郡市ともに同じである。ただ歴史的仮名遣いの読みに関する問題でみら れるように、語句の文脈上の意味をとらえることができていないことは古典教材を学習 する上での課題であるといえる。本校生徒に対して行った古典学習のアンケートの結果 でも古文の内容を理解することを苦手とした生徒が多かった。こうした生徒の実態から 求められる古典教材の学習は、単純な知識の蓄積ととらえるべきではない。習得した知 識を活用しながら、自分たちの言語生活を振り返り生徒たちが能動的に古文内容や作者 の思考を読み取るような活用型の学習が求められている。 2 実践のねらい (1)古典教材の読みに必要な知識を体系的・実践的に習得させる。 新学習指導要領解説によると古典教材の読みに必要な知識は「歴史的仮名遣いなど 現代の口語と異なる古文特有のきまり」と「返り点、送り仮名など漢文の訓読に必要 な基礎的な事項」とされている。これらの事項は第1学年に配されているが、必要に 応じて確認を行う。また作品の歴史的背景については第3学年で扱うが、教材によっ ては他の学年でも必要に応じて生徒に示し、理解を深める支援をする。 (2)習得した知識を活用しながら内容の読みを深め、古典の世界を楽しませる。 習得した知識を活用することを主な拠り所としながらも、現代語訳や語注を手がか りに情景や登場人物の心情を想像し、そのことを音読に生かす学習活動を行う。朗読 や群読等、音読の工夫をする。 (3)読み取ったことを表現したり、交流したりする活動を通して課題解決を図らせる。 読み取ったことを表現しあい、読み取った情景、登場人物の心情、作者の思考など について交流を行い、自分の理解や考えを深める活動を行う。 これらの活動は発達段階によって中心となる活動が変わる。第1学年では(1)が、 第3学年では(3)が中心となるものの第1学年で(3)の活動が不可能な訳ではな い。それぞれの学習の流れを意識しながら実践に取り組むようにする。 3 実践の概要 実践例 「扇の的」(光村図書 2年) (1)生徒に提示、確認を行った知識等 ・歴史的仮名遣いなど現代の口語と異なる古文特有のきまり ・平家物語の歴史的背景と本編登場人物の相互関係 ・群読の基本的な技術と表現内容との関連 (2)習得した知識等を活用した学習活動 -1- 24 - ・群読台本の作成を通して情景や登場人物の心情を読み取り、その表現を工夫する。 ・グループで群読することを通して平家物語特有のリズムを感じ取る。 (3)意見交流と読みの深まり ・グループで発表し、相互評価をしながらクラスでの群読台本を作る。 ・クラス全体で群読しながら、平家物語の持つ作品世界を楽しむ。 題材の指導計画(4時間) 次 時 主な学習活動 評価規準 1 ・学習の見通しとねらいをつかむ。 ・平家物語の時代背景や粗筋をつかむ。 1 ・平家物語の内容や原文のリズム・特徴を 生かして、群読計画を作る。 1 1 ・平家物語の内容や原文のリズム・特徴を 生かして、効果的に群読する。 ・群読を聞くことによって,平家物語につ いてのの理解を一層深める。 1 ・お互いの読みを交流しながら、平家物語 についての理解を深め、クラス全体で群 読する。 4 〔関心・意欲・態度〕 ・登場人物の生き方や考え方について、 感想を話し合ったり、読みに表現した りしようとする。 〔読むこと〕 ・説明や描写、比喩など文章の叙述の仕 方に注意しながら読むことができる。 ・文章を読んで登場人物の思考や心情に 迫り、人間、社会、自然などに対する 自分の感想や意見を持つことができる。 〔言語事項〕 ・歴史的仮名遣いや古文特有の語句、漢 文調の言い回しなど、作品の表現の特 徴を理解することができる。 実践の成果 ○生徒が作品の理解とその表現について考える学習となり、台本を作るなかで生徒たち は情景や登場人物の心情を読み取り、その読み取ったことを自分たちなりに表現する ことができた。その群読自体は稚拙なもので、声の合わせ方など、まだまだ訓練を要 するものであった。しかし、群読が集団で行う朗読であるという点は、朗読本来の意 味を生徒たちに再認識させる手立てとなった。つまり朗読と音読の違いは読み手の表 現意図の有無であることを実感し、自分を含めた読み手の表現意図を集団の中で練り 上げ、表現するという経験ができた。 ○情景や登場人物の心情の読み取りに課題のある生徒にとって、群読は作品理解のよい 手立てになったという点である。登場人物の心情はまだしも、情景、さらには作品世 界などは言葉では説明しがたいものである。群読の中で、それらを直感的に感じ取り、 自分たちなりに理解することができた。 5 これからの課題 ●群読そのものを充実させることが本題材での学習活動の中核ではないものの、群読の 巧拙が生徒の学習意欲を引き出すことに直結しているため、より焦点化を行い生徒の 実態に応じた無理のない学習計画を作ることが大切である。 ●古典に親しむ態度を育成するため、古典をはじめとする伝統的な文章や作品を読んだ り、書き換えたり、演じたりすることを積極的に学習の中に取り入れることができる よう工夫する。 - 25 - -2- 方言と共通語の特徴を生かした使い方を考える 方言と共通語の特徴を生かした使い方を考える ~交流から生まれる豊かな言語感覚~ ~交流から生まれる豊かな言語感覚~ 授業者 1 西原村立西原中学校 竹若 美千代 生徒の実態から 本校の生徒の実態として、言語事項に関する学力については、漢字の書きや語句の意 味の理解などに課題が見られ、会話や作文においても言葉を適切に活用することを苦手 とする傾向にある。 言 語 事 項 に つ い て は 、 一 年 生 で 「 話 し 言 葉 と 書 き 言 葉 」「 漢 語 ・ 和 語 ・ 外 来 語 」 な ど を通して、相手や場面等に応じて言葉を使い分けることの学習をしている。しかし知識 として身につけたことを生かしながら、自らの言語生活を高めていくまでには至ってい ない。よって今後は授業の中で、実生活を意識できるような学習活動を取り入れていく 必要がある。 2 実践のねらい (1)方言と共通語のそれぞれの特徴や長所を捉え、それらを生かしながら、相手や場面 に応じた効果的な使い方ができるように図る。 方言は暮らしに根付いた感覚や感情を言い表し、身近な人間関係を築く場合に有効 である。また共通語は改まった場面や、異なる地域の人とやりとりする場合に有効で ある。これらの特徴をふまえ、それぞれの効果的な使い方を考えることにより、実生 活における「ことばの力」の育成につなげていく。 「共通語」に関しては、常体と敬体の違いを意識させた言語学習を行い、敬語の学 習につなげていく。 (2)地元である熊本の方言を調べ、自らの言語生活を振り返りながら、その特徴や生活 の 中 で の 使 わ れ 方 に つ い て 意 見 の 交 流 を 行 う 。ま た 熊 本 の 方 言 版『 桃 太 郎 』を 音 読 し 、 共通語の『桃太郎』と比較しながら、方言ならではの言い回しや表現のおもしろさを 味わい、方言の良さを再発見する学習につなげていく。 3 実践の概要(実施2年生) (1)方言と共通語の特徴を捉えるため、まずは日常のどのような場面で方言と共通語が 使 用 さ れ て い る か を 出 し 合 い 、そ れ を も と に そ れ ぞ れ の 特 徴 や 長 所 を あ げ さ せ た 。 「い つ ・ ど こ で ( ど ん な 場 面 で )・ 誰 に 対 し て 使 う の か 」 を 具 体 的 に 考 え 、 実 生 活 を 振 り 返りながら特徴や長所に気付かせていった。 (2)日常における言語活動の場面を出し合い、方言と共通語をどのように使い分ければ 効果的な会話ができるかを考えさせた。またロールプレイを取り入れ、実際に活用す ることを通して、相手や場面を意識することの必要性を実感できるようにした。 (3)個々で熊本の方言について調べ、調べたことを交流しあう中で、方言の良さやおも しろさを共有することができるようにした。特に、これまで方言と認識していなかっ た言葉に焦点を当てて調べたり、熊本弁の『桃太郎』を読んだりすることで、方言な らではの言い回しや味わいを実感し、改めて方言の良さを見つめ直す学習となった。 -1- 26 - (生徒のワークシートより) ( 熊 本 の 方 言 版 「 桃 太 郎 」) む か し む か し の こ つ だ っ た 。あ る ん と こ ん に じ い さ ん と ば あ さ ん が お ん な は っ た げ な 。 じいさんはやまんしばばかりにいきなはったて、ばあさんはかわんせんたくにいきなは ってたい。ばあさんがかわでせんたくばしとんなはったら、かわんうえのほうからふと うかももん「どんぶらこ~どんぶらこ~」ちながれてきたつよ。ばあさんなそんももば ひろうて、うちにもどんなはった。ばあさんがそんももばきろうってしたら、ももんふ たつにわれちふとうかおとこんこがうまれてきたったい。ばあさんなそんこに『ももた ろう』ってなばつけなはったつよ。 4 実践の成果 ○日常における言語活動の場面を出し合い、ロールプレイで実践的な活用を行ったので、 方言と共通語が与える印象や効果について、自らの言語生活と関連づけて考えることが できた。 ○熊本の方言と認識していなかった言葉に焦点を当てて調べたことで、ごく身近な言葉が 方言であるという意外性や言葉の影響力に気づき、言語生活に関する興味関心が高まっ た。 ○ 熊 本 の 方 言 版 『 桃 太 郎 』 を 音 読 す る 学 習 に お い て は 、「 昔 話 に は 方 言 の ほ う が 合 っ て い る 気 が す る 」「 方 言 の ほ う が 味 わ い が あ っ て い い 」 な ど 方 言 の 良 さ を 再 発 見 し な が ら 、 方言を尊重していきたいという感想も聞かれた。 5 これからの課題 ●授業の中など、意識している時は共通語と方言をうまく使い分けることができたが、日 常における言語生活を振り返り、自発的に言語感覚を高めていくことはできていないた め、今後も継続的に指導を行う必要がある。 -2- 27 - Ⅴ 総会要領及び講師紹介 Ⅵ 全体会要領及び講師紹介 全体会要領 1 総会 13:30~14:20(体育館) (1)開会 熊本県中学校教育研究会国語部会副会長 平井健三郎 (2)会長挨拶 熊本県中学校教育研究会国語部会会長 角居 恭一 (3)実行委員長挨拶 阿蘇郡市教育研究会中学校国語部会会長 山 範夫 (3)来賓・助言者紹介 阿蘇郡市教育研究会中学校国語部会副会長 甲斐 孝美 (5)会務報告 熊本県中学校教育研究会国語部会事務局 吉田 陽 (6)助成金交付 熊本県教育弘済会より 角居 恭一 (4)表彰 2 講演 14:20~15:50(体育館) (1)講師紹介 熊本県中学校教育研究会国語部会会長 (2)講演 国立教育政策研究所/学力調査官・教育課程調査官 杉本 直美 演題 先生 「言語活動の充実を通して確かな力を育てる国語科の授業」 (3)謝辞 阿蘇郡市教育研究会中学校国語部会会長 山 (4)閉会 熊本県中学校教育研究会国語部会副会長 平井健三郎 講 師 紹 介 杉本 直美 先生 (国立教育政策研究所/学力調査官・教育課程調査官) 《 経歴 》 神奈川県川崎市立中学校教諭として, 平成 16 年度 国立教育政策研究所特定の課題に関する調査、 問題作成委員、分析委員。 平成 20 年版中学校学習指導要領解説国語編 作成協力者 などを務める。 -1- 28 - 範夫 Ⅶ 県大会の歩み Ⅶ 県大会の歩み 会長 1 山崎 貞士 2 〃 3 槙田 長亀 4 〃 5 浜田 6 〃 7 〃 8 松本 弘 9 〃 10 〃 11 〃 12 〃 13 〃 14 河上 良輝 15 渡辺 清隆 16 〃 17 元田 正則 18 藤森 正巳 19 〃 20 八木 孝 21 〃 22 〃 23 中島 正雄 24 〃 研究大会 開催地 講師 研究テーマ 39 小中合同の研究会で発足 40 熊本市 読むことの指導を推進するためにはどのように 41. 1.24 武藤 光磨 白川中学校 したらよいか 熊本市 書くことを通して読みを深めるにはどのようにし 42. 1.30 石森 延男 帯山中学校 たらよいか 八代市 43. 2. 2 安藤新太郎 〃 第一中学校 玉名市 44. 2. 7 田上 正立 作文教育はいかにすすめたらよいか 市民会館 熊本市 渡辺 実 国語教育の近代化を目指す学習指導の究 44. 8. 9 藤園中学校 栗原 一登 明 熊本市 蓑手 重則 45.10.23 国語科における読書指導をどう進めるか 附属中学校 安永 蕗子 菊池市 堀川喜八郎 46.10.26 作文指導をどう計画し、実践したらよいか 菊池中学校 田近 洵一 表現力を高める作文指導はどのようにしたら 天草郡 八木橋雄次郎 47.10.20 よいか 本渡中学校 熊本市 48.10.18 西郷 竹彦 教育機器利用による学習の効率化を図る 白川中学校 阿蘇郡 国語科における読書指導はどのようにしたら 49.11. 1 望月 久貴 阿蘇北中学校 よいか 鹿本郡市 中学校における古典の指導はどのようにした 50.11.18 小泉 弘 山鹿中学校 らよいか 八代市 51.11.30 中本 環 豊かな感受性を育てる詩歌学習を求めて 第二中学校 熊本市 表現と理解との関連指導はどのようにしたら 52.11.29 浮橋 康彦 帯山中学校 よいか 上益城郡 ひとりひとりを生かす「読み」の指導過程はど 53.11. 9 中本 環 御船中学校 のようにしたらよいか 人吉市 54.10.29 滑川 道夫 楽しい文学の授業をどうつくりだすか 第一中学校 熊本市 作文の基礎能力を育てるにはどうしたらよい 55.11.20 中西 一弘 白川中学校 か 下益城郡 56.11.26 北御門二郎 いきいきした国語科授業の創造 松橋中学校 熊本市 58.10.13 尾崎 秀樹 自ら学びとる生徒の育成をめざして 西原中学校 玉名市 「豊かさと確かさをめざす作文教育」表現へ 59.11. 2 飛田多喜雄 玉南中学校 の関心・態度をどう育てるか 熊本市 60.11.27 斎賀 秀夫 楽しく、力のつく国語の指導 出水南中学校 芦北郡 61.11.27 上田 幸法 確かな国語の力を育てる学習指導 佐敷中学校 鹿本郡市 説明的・論理的文章の理解力を高めるための効 62.10.29 中本 環 果的な授業の進め方はどのようにすればよいか 山鹿中学校 - 29 - 25 〃 26 〃 27 今村 正晴 28 池田 昌昭 29 〃 30 吉田 浩 31 〃 32 宗 裕彰 33 〃 34 下城 統 35 〃 36 山並 信久 37 〃 38 〃 39 〃 40 〃 41 〃 42 江口 哲郎 43 中島 衛 44 齋藤 公拓 45 〃 46 角居 恭一 熊本市 63.11. 藤園中学校 4~5. 産業文化会館 平成元年 八代市 11.14 第一中学校 熊本市 2.10.26 帯山中学校 阿蘇郡 3.11.12 阿蘇北中学校 天草郡 4.11.20 大矢野中学校 熊本市 5.11. 5 北部中学校 荒尾市 6.11.25 第三中学校 人吉市 7.10.18 第二中学校 熊本市 8.11.22 東町中学校 菊池郡 9.10. 3 泗水中学校 水俣市 10.10.30 第一中学校 熊本市 11.11.18 託麻中学校 上益城郡 12.11.17 嘉島中学校 八代郡 13.11.15 千丁中学校 熊本市 14.11. 1 竜南中学校 玉名市 15.10.22 玉名中学校 熊本市 16.10. 8 武蔵中学校 宇城地区 17.11.22 下益城城南中 鹿本郡 18.10.19 鹿南中学校 八代市 19.10.25 第一中学校 熊本市 20.10.24 長嶺中学校 阿蘇市 21.10.16 一の宮中学校 甲斐 睦朗 未来に生きる国語教育の創造生活をきりひ 三木 卓 らく確かで豊かな言語能力の育成をめざして 八木 孝 生徒の学習意欲を高め、基礎・基本をおさえた 「わかる授業」の創造-文学教材を中心として- 中西 一弘 学ぶ喜びを育てる国語教育の創造 確かな読みから豊かな読みにせまる指導の 研究 言語の教育に立つ国語科指導過程の研究 白石 寿文 ~主体的な学習を促す指導法の工夫~ 自ら学びとる力を育てる国語指導 中本 環 ~新教材による具現化~ 個を生かした豊かな表現をめざして 安河内義己 ~表現の場を設定する授業の創造~ 長谷川孝士 浜本 純逸 生き生きとした授業をどうつくり出すか 大林 宣彦 未来に生きる国語教育の創造 ~言葉の力を磨く国語教室をめざして~ 長尾 高明 主体的な学習を促す国語の指導のあり方 北川 茂治 中学校国語科教育の改善の方法 学びがいのある国語の授業 工藤 直子 ~新教育課程での国語授業のあり方を探る~ 国語科の新しい学び方への挑戦 安藤 修平 ~新教育課程での国語授業のあり方を探るⅡ~ 新川 和江 生きる力を育む国語科授業のあり方 ~「伝え合う力」を高めるための確かな言語能力の育成~ あまんきみこ 三浦 和尚 領域の特性を生かした国語授業のあり方 ~確実で豊かな国語の力を育てる言語活動・評価の工夫~ 「伝え合う力を育む国語科授業のあり方」 安河内 義己 ~基礎基本を踏まえた新教育課程での授業づくり~ 落合 恵子 自らの言語生活を拓く国語授業のあり方 ~領域の特性を生かして確実に力をつける評価と指導~ 甲斐 睦朗 確かな国語の力を育てるために ~わかる喜びを味わえる授業の創造~ 伝え合う力を育む国語科教育の創造 相澤 秀夫 ~自分の考えを生き生きと表現し合う授業をめざして~ 「読みの力」をはぐくむ授業の創造 上谷 順三郎 ~伝え合う力を求めて~ 「わたしの言葉で語り合う学び手の育成」 ねじめ 正一 ~学び手の言葉からの出発~ 生きてはたらく「ことばの力」を育てる国語科教育の創造 杉本 直美 ~学びを生かす授業づくり~ - 30 - Ⅶ 大会組織 第46回熊本県中学校国語教育研究大会阿蘇大会実行委員会 1 大会本部役員 熊本県中学校教育研究会国語部会会長 角居 恭一(熊本:西原) 熊本県中学校教育研究会国語部会副会長 山 範夫(波 野) 熊本県中学校教育研究会国語部会副会長 平井健三郎(佐伊津) 熊本県中学校教育研究会国語部会事務局長 吉田 陽(出水南) 熊本県中学校教育研究会国語部会研究部長 中川 豪太(熊大附中) 2 大会実行委員会 阿蘇大会実行委員長 阿蘇郡市教育研究会中学校国語部会会長 山 範夫(波 野) 阿蘇大会実行副委員長 阿蘇郡市教育研究会中学校国語部会副会長 事務局 事務局長 本田 雅隆(産 山) 企画部 広報部長 堺 昭博(高森東) 企画部長 山内 康夫(白 水) 研究部 研究部長 熊谷 潤一(高 森) 甲斐 孝美(一の宮) 緒方浩一郎(南小国) 松原 孝行(一の宮) 福嶋 宏美(一の宮) 御秡如ちなみ(長 陽) 上田 香織(阿 蘇) 塚本 浩子(阿蘇北) 岩佐 祐子(阿蘇北) 杉 由紀(波 野) 後藤 彩花(波 野) 宮崎 貴史(南小国) 緒方浩一郎(南小国) 福島 浩暁(小 国) 杉尾 大輔(小 国) 本田 雅隆(産 山) 寺園 恵美(産 山) 堺 昭博(高森東) 山内 康夫(白 水) 寺田 亜紀(久木野) 白石かおり(阿蘇西原) 竹若美千代(阿蘇西原) 平成20年度 研究同人 大池由美子 ( 阿 蘇 ) 杉本奈緒美(阿蘇北) 北村 太理 ( 西 原 ) 小林 美幸(西 原) 柴田 尊子(阿蘇北) 宮﨑 奏映(小 国) - 31 - MEMO - 32 -
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