旭 保彦 - ヤマハ株式会社

手持ちの iPhone や iPod に小さなトランスミッターを装着するだけで、室内に設置したスピーカーに電源が入り、音楽が流れだす。
曲選びも音量調節もすべて手元で OK。あなたは一歩も動かなくていい――。
そんな快適かつスムーズな使い勝手で着実に支持を広げているのが、ヤマハ独自のデジタルワイヤレス転送技術「AirWired」だ。
すべてのデジタルデバイスを解き放ちたいという情熱から生まれた。
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04
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デジタル楽器に自由を
シームレスな音楽体験
02
05
集まった 若きサムライ たち
03
高音質・低遅延の理由
広がる「AirWired」の世界
開発者プロフィール
デジタル楽 器に自由を
「電子楽器で手軽にセッションが楽しめるワイヤレス技術って、どうして存在しないん
だろう?」。そもそもの発端は 5 年ほど前。ヤマハの楽器部門にいた旭保彦がふと抱いた、
素朴な疑問がきっかけだった。
旭:アコースティックの場 合、楽 器を持ち
寄ればすぐセッションが始められますよね。
お互いの演奏を肌で感じながら、自由に音
楽を創りあげていける。ところがアナログで
旭 保彦
は簡単なことが、デジタルになると途端に難
AV 機器事業部 商品開発部
しくなるんです。音声データをワイヤレスで
デスクトップグループ 技師
飛ばそうとすると、よほど高いプロ用のシス
これまでの主な担当製品
テムを使わないかぎり、演奏と音がズレてしまう。プレーヤー同士がリアルタイムでコミュ
・PDX-30/50 ・光るギター EZ-EG
ニケートできる手頃なワイヤレス技 術は、意外なことに、どこにも存 在しませんでした。
・歌うトランペット EZ-TP
ジャズ、R&B、ボサノヴァ― ―。どんな音楽でも、そこにグルーヴが宿るかどうか
・テノリオン
は微妙なタイミングにかかっている。たとえシンプルな 8 ビートでも、アクセントをほんの少
し前に置くか後ろに置くかで、曲のニュアンスはまるで変わってくるはずだ。そんな「音楽
の本質的な愉しさ」をきちんと再現するためには、データの遅延こそ最もあってはならない。
旭:Bluetooth® も試してみましたが、全然ダメでした。例えばギターであれば、コードをカッ
ティングしてから一拍遅れて
ジャーン
・歌う , 光るキーボード PSR-J20
・USB-MIDI ケーブル UX-16
・デジタルピアノ P-70/140
・ポータトーン PSR シリーズ他多数
・ポータサウンド PSS シリーズ多数
・デジタルドラム DD シリーズ多数
と鳴る感じで。とてもセッションには使えない。
いろいろ探した結果、これは自分で作るしかないと考えたんです。
こうして「AirWired」を巡る長い旅が始まった。
コンセプトメーカーとなった旭は、斬新なモノ作りをする技術者として、実はヤマハ社内で
はかなり知られた人物だ。02 年にはネック上に弦ではなく光るスイッチを配置し、コードを
知らなくても簡単に弾けるギター『EZ-EG』を開発。また、16×16 個の LED ボタンで音
EZ-EG
EZ-TP
趣 味
と光を同時に奏でる『TENORI-ON』の開発にも携わり、全く新しい電子楽器を生み出した。
光るギターでパフォーマンス(演奏 / デモ / 講
そこに通底するのは「特別なテクニックを持たない人に、いかに音楽を解放するか」という
演 / 教室)
思いだと言っていい。
旭:きっと僕自身が上手くないからでしょうね(笑)。中学生の頃、親にねだってヤマハのガッ
トギターを買ってもらって。以来ずっと弾き続けているけれどちっとも上達しない。だから
開発者プロフィール
かな、とにかく誰でも簡単に楽しめる楽器を作りたいんですよ。そうやって音楽の敷居を
下げれば、長い目で見ればヤマハの市場も広がる。どんな製品でもその軸はブレません。
実は新しいワイヤレス通信の仕様と格闘するなかで、旭がイメージする製品のカタチ
は「楽器」から「携帯用オーディオプレーヤー」へと変わっていった。せっかく簡単にセッショ
ンできる仕組みを作るんだから、既存の電子楽器よりもっと身近な存在の方がいい。そう
考えたからだ。
鈴木 真人
旭:ちょうどその頃、いろんなソフトが搭
AV 機器事業部 商品開発部
載できる携帯電話やオーディオ端末がポ
デスクトップグループ 主任
ツポツ出始めていたんですね。それならヤ
これまでの主な担当製品
マハ独自で、セッションもできるポータブ
・PDX-30/50 ・TSX-140
ルプレーヤーを作れば 面白いと思った。
・携帯端末向けアニメーションシーケンサ (
ギター、ピアノ、ドラムなどのアプリが入っ
ソフト )
ていて。イヤフォンをしたまま、電車の中
・その他、研究開発 ( 組み込みミドルウエア )
でもどこでもすぐにワイヤレス・セッショ
ンが始められるイメージです。格好を付けて言うなら、音楽の民主化。 デジタル楽器に
自由を という感じですね。
EZ-EG
02
EZ-TP
趣 味
集まった 若きサムライ たち
・フットサル ・ウインドシンセ
2007 年、旭はほぼ一人で社内プロジェクトを立ち上げる。そこに組織の壁を越えて
合流したのが、ネットワーク系の部署にいた鈴木正人。「AirWired」のソフトウェアを手が
けることになる若きエンジニアだ。「ヤマハの若手社員にとって、旭はちょっとしたアイドル
開発者プロフィール
なんですよ」。自分より 20 歳近く年上の上司を、親愛の情たっぷりに鈴木はこう評する。
鈴木:たとえ面識はなくても、旭の作った
製品を見て「こんな突拍子もない発想でやっ
て構わないんだ」と元気をもらっている人は
多い。光るギターなんて、その最たるもの
だった気がします。僕自身、プロジェクト
に応募するまでは話したこともありませんで
九頭龍 雄一郎
したが、あの人と一緒に働いてみたいという
AV 機器事業部 商品開発部
思いはずっと持っていましたから。
さらにもう一つ。学生時代、趣味でフュージョンのコピーバンドを組んでいた鈴木にとって、
音楽専用のワイヤレス通信はいつか取り組んでみたいテーマでもあった。「トランペットから
ウインドシンセサイザーに転向したんですが、楽器にラインがつながると、いきなり吹きにく
くなった経験があるんですね。動きに制約が出て、気付くと自分でコードを踏んづけていた
りする。ですからヤマハに入ったら、ワイヤレスの楽器類をいつか手がけてみたかった。そ
こもうまくモチベーションが重なったのかもしれません。
デスクトップグループ 主任
これまでの主な担当製品
・MusicCAST(MCX-C15/CA15 )
・AV アンプ(DSP-AX4600/361/461/463)
・デスクトップ(PDX-50/60)
・共通アイテム(YIT-W11TX, YID-W10)
・代表的な製品(YID-W10)
当初、チーム内にワイヤレスの専門
家は皆無。旭たちはほぼゼロから出発し、
少しずつ知識を蓄えながら、あらゆる方式
を片っ端から検証していった。無線技術の
見本市に出向き、ヒアリングを重ねて試作
YID-W10
DSP-AX4600
趣 味
機を作ってみるという作業の繰り返し。「ワ
・サッカー ・ベース ・スキー
イヤレスオーディオといえば Bluetooth®」
・ゴルフ ・文章書き ・ビデオ編集
という当時の常識にあえて背を向け、とに
かく徹底して「リアルタイムでコミュニケートができる音楽用のワイヤレス方式」にこだわった。
開発者プロフィール
ところが「AirWired」の仕様がだんだん固まりつつあった頃、
「セッションもできる携帯用オー
ディオプレーヤー」という当初のコンセプトはいったん頓挫してしまう。アップルから圧倒的
なユーザビリティーを備えた iPhone という強敵が登場したからだ。もちろん、それで諦める
旭ではない。逆に iPhone のプラットホームを利用し、しかも低遅延という「AirWired」の
利点が生かせるプロダクトに発想を切り換えた。具体的には、iPhone/iPod に対応したデス
クトップオーディオ。プロジェクトチームを「楽器」から「AV 機器」の事業部へとまるごと
移動させ、今度はこの開発に力を注いだ。
無線モジュールの開発からオーディオ内の設計まで幅広く手がける九頭龍は、ここから合流し
たメンバーだ。それまで AV アンプの電気回路を手がけていた彼もまた、心の中で「何か新
しいブレイクスルーを創り出したい」という思いを抱えていた。
九頭龍:オーディオの開 発はある種、職人技
の世界。AV アンプもそうですが、音質にこだ
わるユーザーに向けて、ストイックに製品を作
り込んでいく文化があるんですね。そこに旭が、
川田 章弘
AV 機器事業部 技術開発部
第三開発グループ 主任
これまでの主な担当製品
・YIT-W11TX(TSX-W80, YID-W10,
PDX-W61 用のトランスミッター)
・YID-W10
「音楽の解放」というかなり異質なカルチャー
を持ち込んだ。当然、最 初は軋 轢もありまし
たが、そこから新たに生まれてくるものが僕は
面白いと思った。それで自分から大声を上げて、
こちらのチームに入れてもらったんです。
YID-W10
SWK-W10
趣 味
志のある若者たちが一人また一人と集まって、ふたたび試行錯誤の日々が始まった。
アナログ回路設計 ( 速いのが好き ),料理,
今度は「AirWired」の利点を生かしつつ、iPhone/iPod 周辺機器としての使いやすさをブラッ
テクニカル・ライティング
シュアップしていく作業だ。さらにまる 1 年という時間を費やし、ようやく世に出たのがポー
タブルプレーヤードック『PDX-50』。2008 年秋のことだ。
03
高音質・低遅 延の理由
ここで改めて、『PDX-50』に採用された「AirWired」の実力を見てみよう。まずは音のズレ感の少なさについて。オーディオ用ワイヤ
レス通信の代表格と言える Bluetooth® の場合、条件にもよるが、0.1 ∼ 0.2 秒の遅延が発生するとされている。対する「AirWired」では、
遅延は 12ms(0.012 秒)で、その差は歴然だ。遅延を距離に置きかえてみるとより分かりやすい。音の速さは秒速 340m。つまり 340m
向こうにいる人の声が 1 秒後に届くことになる。これを Bluetooth® に当てはめると、34 ∼ 68m の距離をおいて会話している感覚だ。一方
「AirWired」の場合、相手は 4m 先にいる計算。旭に言わせれば「小さめのライブハウスでセッションしている距離感」だ。
旭:12ms のズレというのは、超一流ドラマーでようやく気付くようなレベル。普通に聴いている分には、まず違和感はありません。例え
ば手元の iPhone でゲームアプリを楽しむ場合でも、画面にタッチした瞬間、スピーカーから音が出る感覚ですね。
iPhone や iPod 上で映像コンテンツを見る場合にも、口の動きとセリフがズレたりすることがない。一般的に、ビデオの視聴でギリギ
リ許容できるとされる遅延は 40ms(0.04 秒)。Bluetooth® や Wi-Fi のようにストレスを感じることなく、ワイヤレスで迫力あるサウンドを楽
しめるのは大きな利点だろう。ではなぜ「AirWired」は低遅延を実現できているのか。そこには明確な思想に基づいた割り切りがあるからだと、
ワイヤレス担当のエンジニアである川田章弘は説明する。『PDX-50』の発売後に合流した彼は、「AirWired」の性能をより高め用途を拡大し
ていくためにわざわざ他社からスカウトされた、無線のプロフェッショナルだ。
川田:Bluetooth® や Wi- Fi の場合、こちらから送ったデータが完全に届いたという返信
が来ないと次のデータが送信できません。郵便小包に喩えると、受領証にサインして送り
返してもらう仕組み。通信品質を保証するため、エラーが少しでもあると再送要求がかか
り ま す。だ か ら どうして も 演 算 が 多 くな り、遅 延 が 生 じ て し ま うんで す ね。一 方
「AirWired」では、ある程 度のエラーは許容してどんどんデータを送る仕様になっている。
多少水滴が零れても、フレッシュな状態で素材を届けるようなもので、演算による遅 延を
最小限に抑えているのが特徴。ベストエフォート型という意味では、IP 電話の考え方に近
いと言えるかもしれません。
完璧な通信品質は最初から狙わず、むしろ音楽が違和感なく成立するベストなバランスをめざす。プロダクトの本質を見極めた旭の割
り切りは、「おそらく無線のエンジニアがうんうん頭を捻っても出てこない発想」だと川田は言う。また「AirWired」では、音声データを非圧
縮の PCM 方式でやりとりしている。このためクリアで自然な高音質が楽しめるが、実はこれも「リアルタイム性を最優先する」というベース
のコンセプトと無関係ではない。
川田:音声データを圧縮するとトラフィックが減るように思えますが、信号のエンコード・デコード処理の分だけ、演算量が増えてしまうん
ですね。しかもその過程でデータが間引かれてしまうので音質はどうしても劣化してしまう。実はほとんど利点がないんです。それもあって
「AirWired」ではあえて圧縮行程を省いている。結果、Bluetooth® や Wi-Fi に比べると、高域の艶っぽさや微妙な残響音などもずっと豊
かに再現できている。すべて、音楽に特化したからこそ可能になったことだと思います。
当初、部内には「やはり評価が確立した Bluetooth® で行くべきじゃないか」という意見もあったという。だが、ゲームや映画ソフトで
社内デモを繰り返し、iPhone/iPod の映像と音がぴったりシンクロするのを見せたところ、次第に理解者が増えていった。「AirWired」は決し
て音質にこだわってきたヤマハの伝統と矛盾するものではない。むしろそこに、今までなかった新しい価値観の軸を加える試みなのだと。
04
シームレスな音楽体験
ワイヤレスの完成度を高める一方、九頭龍と鈴木はどうすれば『PDX-50』をより快適に使ってもらえるか、徹底的にアイデアを絞った。
とりわけ重視したのはスピーカーの存在を意識させないことだ。
鈴木:帰宅したらイヤフォンを外して、代わりに小さなトランスミッターを本体に装着し再生す
ると、勝手にスピーカーの電源が入り、あとは面倒な設定など何もしなくても、すべての動
作が手元の iPhone で完結できる。スピーカーは普段手の届かない棚の上に置いておいても
らっても構わない― ―。自分ならそんな製品がほしいと思ったんです。もちろん音楽を飛ばし
ながらツイッターでつぶやくことも可能だし、電話がかかってくればすぐ切り替わる。とにかく
自分がユーザーならどう動いてほしいかを中心に、ソフトを作っていきました。
その結果『PDX-50』は、直方体のボディーにごく控えめなボタンが 2 つだけ付いた、
これ以上ないほどシンプルなデザインに落ち着いた(その音量ボタンでさえ、鈴木は当初不要だと主張したという)。ただしユーザーの手間が
少なくなるほど、エンジニアの仕事が増えるのも事実だ。
九頭龍:ワイヤレス接続を確立するためには、まずトランスミッター側が iPhone や iPod に対して「私はアップル社に正式承認されたアク
セサリーです」という情報を伝え、認証を受ける必要があります。そこで初めて電源が供給されて、スピーカー本体との通信が可能になる。
ただ難しいのは、iPhone や iPod にはいろいろ種類やバージョンがあって、それぞれ微妙に挙動が異なったりするんですね。その種類を
認識し、すべてのモデルに対してやりとりをきちんと成立させる作業は想像以上に大変でした。
ちなみに、独自方式のワイヤレス技術でアップル社から公認されているのは、現在のところ「AirWired」のみ。これを取得するためには、
ワイヤレス通信が通話を邪魔しないことを高いレベルで実証する必要がある。チームメンバーは何度も海外に足を運び、定められた検証施設
で実機試験を行った。
九頭龍:アップル社の定めた数値基準は非常に厳しく、大抵のメーカーはここで断念してしまうんですね。「AirWired」では電波をつねに
監視し、状況に応じてワイヤレス側の強度をコントロールすることで、通話とデータ通信を共存させています。
大切なのは、ユースケースを端から端まで想定し、ユーザーが少しでも不便に感じる要素をとことん潰していくこと。いかにエンジニア
が想像力を働かせ、見えないところで汗をかいたかによって、製品の価値は決まる。曲の選択から音量調整まですべてを手元で操作できるよ
うにしたのも、面倒なペアリングの行程を省いたのも、すべてはユーザー目線から生まれてきた発想。そんな旭の変わらない哲学もまた、
「AirWired」の開発を通じて若い世代に受け継がれることになった。
05
広がる「AirWired」の世界
2011 年秋には『PDX-50』の性能・使い勝手をさらにブラッシュアップした後継モデル『PDX-W61』が発売された。さらにマイクロコン
ポや AV アンプ、デジタル・サウンド・プロジェクター「YSP」シリーズなど、
「AirWired」対応の製品も続々登場し、その世界は着実に広がってきた。
川田:ワイヤレスの仕様そのものは同じですが、アンテナの設計制度を高めたり、内部構
造を工夫してなるべく金属体と離すようにしたりと、細かい積み重ねで受信性能もかなり上
がっています。今後はさらに通信時のアルゴリズムを改良するなどして、例えば Wi-Fi の電
波がたくさん飛んでいるような環境でも切れにくく、遅延も生じないシステムをめざしたい。
具体的なアイデアも、すでにいくつか考えているんです。
一つのトランスミッターで複数の機器が操作できるのも、「AirWired」の強みだろう。
例えば書斎に「AirWired」対応のデスクトップオーディオ、リビングに「YSP」、シアタールー
ムに AV アンプが置いてあれば、iPhone 片手に家中を移動するだけで、さまざまなスピーカーからシームレスに音楽を楽しむこともできる。機
器を操作するのではなく、機器の側から自分に近づいてきてくれるイメージ。あくまでユーザー中心で音楽を楽しめるのが「AirWired」の根本
哲学だと言っていい。
九頭龍:「AirWired」という新しい風が入ってきたことで、ホームシアター文化にもいろいろ面白い変化が起こると思うんです。例えば、
iPod 内の音声データをワイヤレスで AV アンプに飛ばせば、普段イヤフォンで聴いている曲に「シネマ DSP」をかけて、迫力の 5.1ch サ
ラウンドで楽しむこともできる。また、1 台の iPod を「YSP」とサブウーファーに同時に繋ぐという楽しみ方なんかも、既に実現されています。
そうやって今は別々に存在している 2 つの世界が混じり合い、面白い楽しみ方が生まれてきたら嬉しいなと思うんですよね。
ソフトウェア担当の鈴木も、将来は「AirWired」のプラットホームをなるべく多くのデベロッパーに公開し、低遅延・高音質という特質
を生かしたアプリに使ってもらいたいと夢を語る。
鈴木:iPhone 用のアプリを書いている人はもちろん、それ以外のスマートフォンやゲーム、
パソコン用にも、「AirWired」の利点を生かせるフレームワークを用意してあげたい。そう
すれば僕らが思い付かないような遊び方、楽しみ方が出てくるんじゃないかなと。
リアルタイムセッションというアイデアから出発し、オーディオへと広がった「AirWired」。
デジタル音声を扱うデバイスになら何にでも応用できる豊かな可能性を、ヤマハという枠を超
えて大きく広げていきたい。そう考えて、旭は今日も走り続けている。
旭:伝統的なアコースティック楽器、それをベースにしたデジタル楽器、さらに高音質なオー
ディオ。私たちヤマハは音楽について 3 つのチャンネルを持っています。こんな会社はどこにもないと思う。そしてその 3 つが重なって初め
て生まれたのが「AirWired」なんですね。音楽をもっと身近にして、万人に解放すること。それはヤマハにしかできないことだと、私は思
うんです。