PM Tools A to Z

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No.26 アーンド・バリュー・マネジメント(4)
2005.6.15
KT
アーンド・バリュー・マネジメント(EVM)については、当シリーズ No.6、7、8 の3回
にわたって詳しくかつ具体的に説明しました。今回はその続編です。EVM の指標を3つ追
加説明するとともに、SPI(スケジュール効率指数)と CPI(コスト効率指数)を利用した
簡単な分析例を紹介します。既掲載分と合せてご覧ください。
◆追加する EVM の指標
・PC(Percent of Completion:出来高パーセント)
PC=100%×EV/BAC
BAC(Budget At Completion:完了予定予算)に対する EV(Earned Value)の
割合(%表示)。プロジェクトの全体価値に対してどのくらい(何%分)達成して
いるかを表します。
・CR(Critical Ratio:危険度指数 又は 効率指数)
CR=CPI×SPI
測定時点から完了に至るまでのプロジェクトの効率性を表します。
1より大きければ予定に比べ効率が高い。
1より小さければ予定に比べ効率が低い。
CR の使用例:
ETC(Estimate To Complete:今後発生するコストの予測)の、より慎重な
算出方法として、使用する実績係数に CR を適用する場合があります。
当シリーズ No.7 では、CR の代わりに(CPI×SPI)として紹介しましたが、
同じものです。
ETC=(BAC−EV)/CR
・TCPI(To Complete Performance Index:完了までの所要コスト効率指数)
TCPI=(BAC−EV)/(BAC−AC)
残作業を残予算で完了するために必要なコスト効率を表します。
CPI が1未満になり進捗遅れが生じてくると、TCPI は1を超え増加していきます。
この場合、現状が計画に達していないコスト効率であるにもかかわらず、今後は
計画を超えるコスト効率を求められることになり、対策を急がないといけません。
以前掲げたものと合せて、EVM の用語・指標類をリストしておきましょう。
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◆EMV 用語・指標の一覧
◇状態を表す用語
・PV(Planned Value:計画価値)
・EV(Earned Value:アーンド・バリュー(出来高))
・AC(Actual Cost:実コスト)
・BAC(Budget At Completion:完了予定予算)
・SV(Schedule Variance:スケジュール差異)
・CV(Cost Variance:コスト差異)
◇分析に使用される指数
・PC(Percent of Completion:出来高パーセント)
・SPI(Schedule Performance Index:スケジュール効率指数)
・CPI(Cost Performance Index:コスト効率指数)
・CR(Critical Ratio:危険度指数 又は 効率指数)
・TCPI(To Complete Performance Index:完了までの所要コスト効率指数)
◇予測値として使用される指数
・ETC(Estimate To Complete:今後発生するコストの予測)
・EAC(Estimate At Completion:完成時総コスト予測)
・VAC(Variance At Completion:完成時コスト差異)
◆SPI、CPI を使った分析例(その1)
当シリーズ No.8 でも例示して説明しましたが、単に SPI と CPI の動きを時系列にプロ
ットしただけでもプロジェクトの状況が分かります。
<図1>
1.2
指数
1.1
SPI
CPI
1
0.9
下方管理限界(LCL)
0.8
1
2
3
経過週
4
5
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図1の例では、EVM による測定を開始した時点ではスケジュール遅れが生じていた(SPI
が1未満)ため、これを改善するために 2 週目からリソースを追加投入しました。これ
によりスケジュール遅れがキャッチアップされ、3 週目以降では SPI が1を超え、むし
ろ計画よりスケジュールは先行しています。しかし、全体としての生産性が良くない理
由からか、コスト効率が悪化傾向(CPI が1未満で漸減)にあることも分かります。
最終的にスケジュールが計画を達成できても、収支が計画より悪ければ、プロジェクト
は成功と言えません。したがって、今の時点で CPI が悪化している理由を追求すること
が必要です。
なお、CPI と SPI の下方管理限界(LCL:Lower Control Limit)を定めて(例えば
LCL=0.9)、図1のようにコントロール・チャートとして管理する方法がよく採られます。
◆SPI、CPI を使った分析例(その2)
図2は SPI と CPI をプロジェクトの最初からプロットした例です。
<図2>
1.2
1
指数
0.8
SPI
CPI
0.6
0.4
0.2
0
1
2
3
4
経過週
5
6
7
図を見ると、SPI、CPI とも、プロジェクトの初期段階では安定していないことが分かり
ます。したがって、SPI、CPI を利用するのはそれらの動きが安定してからになります。
一般的に、SPI、CPI が安定するのは、PC(出来高パーセント)が 15%に達したあたり
からと言われています。例えば、予算(BAC)が 1000 万円のプロジェクトであれば、
EV=150 万円を超えた頃になりますが、図2の例では6週目がその時期に該当します。
参考文献:1.アーンド・バリューによるプロジェクトマネジメント
第2版
Quentin W. Fleming & Joel M. Koppelman, PMI(東京支部監修)
日本能率協会マネジメントセンター
2.改訂版 解説:アーンド・バリュー・マネジメント
富永章著
PM 学会
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