平地研究室技術メモ No.20061230 フォワード型 DC/DC コンバータの負方向の励磁電流 (読んでほしい人:パワエレ技術者) 2006/12/30 舞鶴高専 平地克也 ■負方向の励磁電流が流れる原理と電流経路 2006/11/25 の技術メモでフォワード型 DC/DC コンバータにも負方向の励磁電流が流れることを 説明しましたが、今回はその実測波形を紹介します。 図1に 1 石式フォワード型 DC/DC コンバータ(以下 1 石フォワード型と略す)の主要な波形の模 式図と動作モードを示します。図2にモード②とモード③の電流経路を示します。モード②では負荷 電流はフライホイールダイオード D3 を通って還流しており、励磁電流は帰還ダイオード D1 を通っ て電源側に帰還しています。このモード②の動作は従来の定説通りであり、疑問の余地はないでしょ う。モード②の期間中は図1に示すようにトランス TR1 の n1 コイルには負方向の電圧(-Vin)が印 加されているので励磁電流は減少します。やがて励磁電流が 0A になってモード②が終了します。 モード③では図1に示すようにトランジスタ T1 の電圧が 2Vin から Vin まで低下します。T1 の電 圧は T1 のスナバコンデンサ C1 の電圧に等しいので C1 の電圧も 2Vin から Vin まで低下しているこ とになります。よって、C1 はモード③の期間中放電していることになりますが、その放電電流の経 路は図2のモード③の点線の経路以外に考えられません。また、モード③の期間中は以下に示すよう に D1 と D2 は逆バイアスされているので n2 巻線と n3 巻線には電流は流れません。よって、C1 の 放電電流はトランス TR1 に磁束を作る唯一の電流であり、即ち励磁電流です。そしてその電流の方 向は n1 コイルの黒丸「・」から流れ出る方向であり、負方向の励磁電流です。 -Vin<Vn1=Vn3<0、Vn2∝Vn1 なので、 VD1=-(Vin+Vn3)<0 VD2=Vn2<0 TR1 D2 2Vin→ T1 電圧 L1 C2 n3 Vin→ n2 0V→ I1 V in Cin T 1電流 D1 T1 D3 n1 R1 モード② C1 0A→ Vin→ TR1 D2 n1電圧 0V→ n3 vn1 vD2 -Vin→ I1 V in 励磁電流( 推定) 図1 vD1 Cin 0A→ モード ① ② L1 n2 vn1 n1 D1 T1 D3 R1 C1 モード③ ③ ④ 1 石フォワード型の波形と動作モード 図2 モード②と③の電流経路 1 C2 ■負方向の励磁電流の実測波形 図3に T1 のドレイン/ソース間電圧とトランスの入力電流 I1 の実測波形を示します。(a)はトラ ンスの鉄心にギャップがない時、(b)はトランスの鉄心に 0.18mm のギャップを設けた時の波形です。 ギャップを設けると励磁電流が大きくなり I1 電流波形も大きくなっています。(c)は(b)の白枠部分の 拡大写真です。(d)に示すようにモード②③④の I1 電流波形を示しています。モード②では I1 は帰還 ダイオード D1 を通って流れており、徐々に減少してモード②の最後に 0A になっています。そして モード③で再び I1 電流が流れ初め、徐々に負方向に増加しています。このモード③の I1 電流が負方 向の励磁電流です。モード③の終了時に I1 電流はいきなり 0A になります。それなら、励磁電流は モード④では流れてないのでしょうか? 実は励磁電流はモード③の終了と同時に n1 コイルから n2 コイルに転流し、モード④の期間中は n2 コイルを負方向に流れているのです。このことについては 後日詳しく説明します。 0V ← 0A 0A (a) ギャップなし (b) ギャップあり 0.18mm (c) 拡大写真 (左の白枠部分) 時間:10µsec/div 上:T1 の電圧波形:50V/div 下:I1 電流波形:2A/div ② ③ ④ モード (d) 拡大写真の 説明図 図3 T1 の電圧と I1 波形 <図3の測定条件> 入力電圧 60V、出力 48V1A、動作周波数 20kHz、L1=3.4mH、R1=10Ω、C1=2200pF トランス:EI60、H7C1(TDK) 、n1=n3=23 ターン、n2=45 ターン、励磁インダクタンス 1.4mH 図4にスナバコンデンサ C1 を変化させた時のモード③の負方向の励磁電流の変化を示します。コ ンデンサの容量が大きいほど負方向の励磁電流が大きくなることが分かります。 (a) スナバなし 図4 (b)C1=1000[pF] (c) C1=2200[pF] (d) C1=4700[pF] モード③の入力電流 I1 波形(ギャップなしにて)50mA/div 5μsec/div 以上 2
© Copyright 2024 Paperzz