1 集落排水汚泥 1)賦存量 (1)概要 全国各市町村の集落排水等※1(小

集落排水汚泥
1)賦存量
(1)概要
全国各市町村の集落排水等※1(小規模汚水処理施設)より排出される年間当たりの汚泥量を市町村
別賦存量(固形物換算【DS-t/年】)として推計した。ただし、農業集落排水等処理施設のうち、既設
の下水道処理施設に接続されている施設の汚泥については下水汚泥の賦存量に含めた。
(2)推計式
市町村賦存量【DS-t/年】
=集落排水処理施設当たりの汚泥発生量【DS-t/年】を当該市町村単位で合計
市町村別集落排水処理施設当たりの汚泥発生量【DS-t/年】
=集落排水処理施設当たりの処理人口【人】
×( 流入 BOD 量原単位【DS-t/人・年】 × 集落排水処理形式別*1BOD 除去率×集落排水処理形式別*1 汚泥転換率)
市町村別集落排水処理施設当たりの処理人口【人】
= 市町村別汚水処理人口【人】×( 処理施設別計画処理人口*1【人】/ 市町村計画処理人口*2.3.4【人】)
(3)推計方法
①市町村賦存量
市町村別集落排水処理施設別排出汚泥量を当該市町村単位で合計した。
②市町村別集落排水処理施設当たりの汚泥発生量
集落排水処理施設当たりの汚泥発生量は、集落排水処理施設へ生活排水を流入している人口当
たりの汚泥量を乗じて算出した。
集落排水処理施設別汚水処理人口【人】に BOD※5 原単位=0.01791*5【DS-t/人・年】と集落排水等処
理施設の処理型式別に表 1-1 に示す、JARUS 型施設における BOD 除去率※6、汚泥転換率※7 を乗
じて算出した。
③市町村別集落排水処理施設当たりの処理人口
集落排水処理施設へ生活排水を流入している人口を以下の方法で推計を行った。
表 1-2 に示す市町村別汚水処理人口を当該市町村別処理施設別計画処理人口で按分した。ただ
し、市町村別集落排水等汚水処理人口は、汚水処理人口普及率※3【%】として公表する都道府県
もあり、その場合は該当市町村の行政人口※4 を用いて汚水処理人口【人】を推計した。
1
表 1-1 JARUS 型施設における BOD 除去率及び汚泥転換率
区分
生
物
膜
法
接触ばっ気方式
回分式
浮
遊
生
物
法
間欠ばっ気方式
膜分離方式
OD 方式
型式
BOD除去率*5
【%】
【%】
Ⅰ
S
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
ⅢG
ⅢR
ⅣS
ⅣH
ⅩⅠ
ⅩⅡ
ⅩⅡG
ⅩⅡH
ⅩⅢ
ⅩⅣ
ⅩⅣP
ⅩⅣP1
ⅩⅣG
ⅩⅣGP
ⅩⅣH
ⅩⅤ
膜
高度膜
FM
OD
ODH
90.0
90.0
90.0
90.0
90.0
90.0
90.0
90.0
90.0
90.0
90.0
95.0
95.0
95.0
90.0
90.0
90.0
92.5
92.5
95.0
95.0
97.5
97.5
97.5
90.0
90.0
40.0
40.0
35.0
35.0
35.0
60.0
60.0
60.0
65.0
60.0
60.0
60.0
65.0
65.0
60.0
65.0
65.0
60.0
65.0
65.0
60.0
70.0
70.0
70.0
60.0
65.0
2
汚泥転換率*5
表 1-2 都道府県別の市町村汚水処理人口の推計方法一覧
都道府県
北海道
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
茨城県
栃木県
群馬県
埼玉県
千葉県
東京都
神奈川県
新潟県
富山県
石川県
福井県
山梨県
長野県
岐阜県
静岡県
愛知県
三重県
滋賀県
京都府
大阪府
兵庫県
奈良県
和歌山県
鳥取県
島根県
岡山県
広島県
山口県
徳島県
香川県
愛媛県
高知県
福岡県
佐賀県
長崎県
熊本県
大分県
宮崎県
鹿児島県
沖縄県
推計方法
H19(道公表)、H20 県汚水処理人口(国交省)、H19 計画人口(公共投資J)より推計
H13 市町村汚水処理人口(県公表)、H20 県汚水処理人口(国交省)、H23 計画人口(県公表)より推
計
H20 市町村汚水処理人口(県公表)を使用
H20 市町村汚水処理人口(県公表)を使用
H20 市町村汚水処理人口(県公表)を使用
H20 市町村汚水処理人口普及率(県公表)と行政人口(総務省)より推計
H20 市町村汚水処理人口普及率(県公表)と行政人口(総務省)より推計
H20 市町村汚水処理人口(県公表)を使用
H20 市町村汚水処理人口普及率(県公表)と行政人口(総務省)より推計
H20 市町村汚水処理人口普及率(県公表)と行政人口(総務省)より推計
H19 市町村汚水処理人口(県公表)、H20 県汚水処理人口(国交省)、H19 計画人口(公共投資J)よ
り推計
H20 県汚水処理人口(国交省)、H19 計画人口(公共投資J)より推計
H20 都汚水処理人口(国交省)を使用
H20 時点では農業集落排水等なし。H22 より供用開始予定。
H20 市町村汚水処理人口(県公表)を使用
H19 市町村汚水処理人口(県公表)、H20 県汚水処理人口(国交省)、H19 計画人口(公共投資J)よ
り推計
H20 市町村汚水処理人口(県公表)を使用
H20 市町村汚水処理人口(県公表)を使用
H20 市町村汚水処理人口(県公表)を使用
H20 市町村汚水処理人口普及率(県公表)と行政人口(総務省)より推計
H20 市町村汚水処理人口普及率(県公表)と行政人口(総務省)より推計
H20 県汚水処理人口(国交省)、H19 計画人口(公共投資J)より推計
H20 市町村汚水処理人口普及率(県公表)と行政人口(総務省)より推計
H20 市町村汚水処理人口(県公表)を使用
H20 市町村汚水処理人口普及率(県公表)と行政人口(総務省)より推計
H20 市町村汚水処理人口(府公表)を使用
H19 市町村汚水処理人口(府公表)、H20 県汚水処理人口(国交省)、H19 計画人口(公共投資Jより
推計
H20 県内地域別汚水処理人口普及率(県公表)、H20 県汚水処理人口(国交省)、H19 計画人口(公共
投資J)より推計
H20 県汚水処理人口(国交省)、H19 計画人口(公共投資J)より推計
H20 市町村汚水処理人口(県公表)を使用
H20 市町村汚水処理人口(県公表)を使用
H20 県内地域別汚水処理人口普及率(県公表)、H20 県汚水処理人口(国交省)、H19 計画人口(公共
投資J)より推計
H20 市町村汚水処理人口(県公表)を使用
H14 市町村汚水処理人口(県公表)、H20 県汚水処理人口(国交省)、H19 計画人口(公共投資J)よ
り推計
H20 市町村汚水処理人口(県公表)を使用
H20 市町村汚水処理人口(県公表)を使用
H20 市町村汚水処理人口(県公表)を使用
H19 市町村汚水処理人口(県公表)、H20 県汚水処理人口(公表値)、H19 計画人口(公共投資J)よ
り推計
H20 市町村汚水処理人口(県公表)を使用
H20 市町村汚水処理人口(未公開、県下水道課からの提供資料)を使用
H20 市町村汚水処理人口(県公表)を使用
H20 市町村汚水処理人口(県公表)を使用
H20 市町村汚水処理人口(県公表)を使用
H20 市町村汚水処理人口(県公表)を使用
H20 市町村汚水処理人口(県公表)を使用
H20 市町村汚水処理人口普及率(県公表)と行政人口(総務省)より推計
H20 県汚水処理人口(国交省)、H19 計画人口(公共投資J)より推計
3
(4)用語の説明
※1:集落排水等
集落排水等は、主に以下の3つの国の補助事業をまとめて呼ぶ場合に用いられる。
a:農業集落排水処理施設(農集排):農林水産省の農業農村整備事業。数が多く設計指針も出
ている。
b:漁業集落排水処理施設(漁集排):水産庁の漁業集落環境整備事業。漁港の後背集落を対象
とし、数はやや少ない。
c:林業集落排水処理施設(林集排):林野庁の森林居住環境整備事業。対象地域が限られ数が
少ない。
集落排水事業とは、農業集落や漁業集落等において、し尿や生活雑排水を処理する汚水処理場を
建設し、宅内排水設備工事によって集落排水処理施設に接続し、汚水を処理することにより、集
落における生活環境の向上と、海や川の水質保全に寄与する事業のことをいう。
※2:汚水処理人口
下水道、農業集落排水施設等、浄化槽、コミュニティ・プラントの各汚水処理施設の普及人口。
※3:汚水処理人口普及率
行政人口に対する下水道、農業集落排水施設等、浄化槽、コミュニティ・プラントの普及人口の
割合で示され、汚水処理人口普及状況の指標として用いられている。
平成 8 年度から集計がはじめられ、平成 14 年度までは汚水処理施設整備率と称していたが、平
成 15 年度より「汚水処理人口普及率」と名称を変更し、平成 17 年度より、農林水産省、国土交
通省、環境省の 3 省連名で「汚水処理人口の普及状況」として、毎年 8 月下旬に、全国の汚水処
理人口普及率を公表している。また、併せて多くの都道府県で、同時期に市町村の汚水処理人口
普及率が公表される。
※4:行政人口
住民基本台帳に基づく人口で、総務省より毎年度、全国市町村の行政人口が公表されている。
※5:流入 BOD 量
流入 BOD 量とは、浄化槽等の汚水処理施設の設計で、一日に処理施設に流入する汚泥の指数とし
て用いられる。 また、農業集落排水の流入 BOD 量原単位は人口一人当たりの標準的な発生汚泥
量である 54【g/人・日】(0.01791 【DS-t/人・年】)が使われている。
BOD:Biochemical Oxygen Demand の略で生物化学的酸素要求量という意味で、一般的には水の
汚濁指標として用いられる。ここでいう BOD の場合、活性汚泥中の好気性微生物が下水中の有
機物を分解するときに消費する酸素量として表され、この値が大きいほど下水は汚れている。
※6:BOD 除去率
BOD 除去率とは、浄化槽等の汚水処理施設の性能を表す指数として用いられている。以下に示す
ように、汚水が流入し、放流されるまでにどれだけの BOD が除去されたかを表している。
BOD 除去【%】=(流入水の BOD-放流水の BOD)÷流入水の BOD×100
※7:汚泥転換率
除去された BOD に対する汚泥の生成量比率を BOD の汚泥転換率という。
4
(5)引用参考文献
①統計資料
*1 公共投資ジャーナル(2009)農業・漁業集落排水事業データファイル
*2 各都道府県.市町村別汚水処理人口
2008 年度版
*3 国土交通省(2009)都道府県別汚水処理人口普及状況(平成 20 年度末)
*4 総務省(2010)住民基本台帳に基づく人口・人口動態及び世帯数 参考資料 4:市町村別の人口及
び世帯数(平成 21 年 3 月 31 日現在)
②推計方法等
*5 社団法人地域資源循環技術センター(2008)地域資源循環センターFM型、分離活性汚泥方式地
域資源循環センターFM型 設計指針(平成 19 年度改訂版)
5
2)有効利用可能量
(1)概要
賦存量より、堆肥※1 等として農地還元※2 や緑地還元されている汚泥および建設資材原材料として
リサイクルされている量を除いたものを、有効利用可能量とした。
(2)推計式
市町村別有効利用可能量【DS-t/年】
= 市町村別賦存量【DS-t/年】-市町村別集落排水汚泥等利用量【DS-t/年】
市町村別集落排水汚泥利用量【DS-t/年】
=市町村別賦存量【DS-t/年】× 市町村別集落排水汚泥等リサイクル率*1.2【%】× 0.01
(3)推計方法
①市町村別有効利用可能量
市町村別賦存量より市町村別集落排水汚泥利用量を除いた量とした。
②市町村別集落排水汚泥利用量
市町村農集排等賦存量に、肥料等で農地、緑地に還元される汚泥や建設資材原材料としてリサ
イクルされている率を乗じて行った。
リサイクル率は、埼玉県(78.0【%】)、長野県(78.8【%】)、石川県(85.7【%】)の市町村について
は県で公表している県全体の集落排水等施設における排出汚泥のリサイクル率を用い、それ以外
の都道府県の市町村については、表-2.1 に示す全国 9 地域の農業集落排水等発生汚泥のリサイク
ル率を用いた。
6
表 2-1 農業集落排水等発生汚泥の利用・処理先
汚泥量
地域
発生
リサイクル
汚泥の利用先
最終処分等
農地還元
m3/年
m3/年
%
m3/年
%
m3/年
942,8 535,4
407,3
394,6
合計
56.80
43.20
05
83
22
69
38,89 36,97
35,50
北海道
95.06 1,922
4.94
6
4
4
127,2 51,16
76,09
38,28
東北
40.20
59.80
59
3
6
0
196,6 124,4
72,21
84,12
関東
63.27
36.73
42
23
9
3
119,8 51,17
68,69
35,10
東海
42.69
57.31
71
6
5
1
115,9 54,46
61,49
30,78
北陸
46.97
53.03
59
3
6
1
122,0 53,35
68,73
28,95
近畿
43.70
56.30
85
5
0
3
116,9 89,79
27,19
73,74
中四国
76.76
23.24
91
7
4
7
96,48 69,13
27,35
64,11
九州
71.65
28.35
7
1
6
6
沖縄
8,615 5,001 58.05 3,614 41.95 4,064
参考文献:社団法人 地域資源循環技術センター「JARUS
排水等発生汚泥の利用・処理先」
%
41.86
緑地還元
m3/年
72,71
1
%
7.71
建設資材
m3/年
68,10
3
%
7.22
91.28
1,470
3.78
0
0.00
30.08
7,344
5.77
5,539
4.35
17.25
6,372
3.24
10.69
3,265
2.72
42.78
29.28
33,92
8
12,81
0
26.54
0
0.00
23.72
14,24
1
11.66
63.04
879
0.75
66.45
1,102
1.14
23,68
2
10,16
1
15,17
1
3,913
20.42
8.32
12.97
4.06
47.17
937 10.88
0
0.00
平成 17 年度地域整備課調査 農業集落
(4)用語の説明
※1堆肥
有機物を微生物によって完全に分解した肥料のこと。
※2農地還元
生ゴミ、落ち葉、刈り払い植物、し尿・下水の処理場や浄化槽で発生する汚泥など従来は廃
棄物とされていたものを農地に入れ、肥料等として有効活用すること。
(5)引用参考文献
*1 社団法人地域資源循環技術センター(2005)JARUS平成 17 年度地域整備課調査 農業集落排
水等発生汚泥の利用・処理先
*2 埼玉県農林部農村整備課(2007)平成 19 年度 農業集落廃水処理場から出た汚泥のリサイクル率
*3 長野県環境部(2009)生活排水データブック
*4 石川県環境部水環境創造課(2010)生活排水処理構想エリアマップ 汚泥減容化の仕組み
7
3)熱量
(1)概要
メタン発酵施設でのエネルギー利用を想定し、賦存量・有効利用可能量において、集落排水汚泥
をメタン発酵し、発生するメタンガスの発熱量を推計した。
(2)推計式
市町村別賦存熱量【GJ/年】
=市町村別賦存量【DW-t/年】×固形物に対する有機物の割合×有機物(VS)分解率
×分解 VS あたりのメタンガス発生量【Nm3-CH4/t-分解 VTS】×メタンの発熱量【GJ/Nm3】
市町村別有効利用可能熱量【GJ/年】
=市町村別有効利用可能量【DW-t/年】×固形物に対する有機物の割合×有機物(VS)分解率
×分解 VS あたりのメタンガス発生量【Nm3-CH4/t-分解 VTS】×メタンの低位発熱量【GJ/Nm3】
(3)推計方法
賦存量、有効利用可能量に固形物に対する有機物の割合(VS※1/TS※2)を乗じて、有機物量をもと
め、有機物分解率、分解 VS あたりのメタンガス発生量を乗じてメタンガス量を算出した。これに、
メタンガスの低位発熱量※3 を乗じて行った。なお、エネルギー利用を想定する場合はボイラ効率等
を考慮する必要がある。
表 3-1.熱量の変換に用いた変数
固形物に対する有機物の割合
(VS/TS)
0.75*1
0.46*1
有機物(VS)分解率
分解 VS あたりのメタンガス発生量
【Nm3-CH4/t-分解 VTS】
メタンガス低位発熱量【GJ/Nm3】
780*1
0.036*2
(4)用語の説明
※1 VS(volatile solids)有機物量
全固形物分中の有機性物質の量
※2TS(total solids)全固形物量
汚水を蒸発乾固した後、105℃で乾燥した蒸発残留物の量
※3低位発熱量 :
燃焼時に水分が蒸気のまま(気体)でいる場合の発熱量。
(5)引用参考文献
*1 (社)日本有機資源協会(2003)バイオガスシステムの現状と課題
*2 財団法人畜産環境整備機構(2001)家畜排せつ物を中心としたメタン発酵処理施設に関する手引き
8