学生の確保の見通し等を記載した書類

学生の確保の見通し等を記載した書類
1 学生の確保の見通し及び申請者としての取組状況
(1) 学生の確保の見通し
① 入学定員設定の考え方
本学は平成24年度の開学時、工芸学部伝統工芸学科の1学部1学科とし、入学定員95
人、3年次編入学定員10人、収容定員400人とした。
開学初年度は大学設置認可後の11月以降の学生募集となったため、入学定員の確保は困
難であったが、その後の広報活動による大学認知度の向上に併せ、入学定員超過率は年々
改善を見せ、平成27年度においては、入学生の質を維持しつつ、入学定員の確保が実現
した。
既設の伝統工芸学科は、履修分野として、伝統工芸コース・工芸デザインコース・文化財
修理コース・伝統建築コースとしてスタートしたが、平成25年度に建築系授業科目20
科目を追加し、学びの幅を広げたことにより、
「伝統建築コース」から「建築コース(建築
デザイン・伝統建築)
」とした。
この建築コースは、他大学にはない、美術工芸を基盤とした建築教育であることや、キャ
リア支援事業である「二級・木造建築士受験資格講座」等が理解されることにより、年々
希望者が増加し、平成27年度には入学者全体の48.9%(47人)が建築コースの希
望者で占めることになった。
このことから、より建築教育を充実、強化させる必要性から「建築学科」を新設するに至
った。学部全体の収容定員は変更することなく、入学定員、編入学定員とも既設の伝統工
芸学科の定員を減とし、
「建築学科」の入学定員50人、3年次編入5人とした。
② 定員充足の見込み
学科新設に当たって、現役高校生のニーズを把握するため、学外の調査機関である株
式会社進研アドに依頼して、
「京都美術工芸大学工芸学部『建築学科』
(仮称)設置に関す
るアンケート調査【高校生対象調査】」を平成27年4月~5月に実施した。
調査は、平成26年度に京都美術工芸大学に資料請求を行った現在の高校3年生、高
校3年生以上を対象に調査を実施し、263人から有効回答を得た。
「京都美術工芸大学工芸学部建築学科に対する興味度」では、「興味を持った」
14.4%、「やや興味を持った」51.7%と、回答者の66.2%が工芸学部「建
築学科」に興味を持つと答えた。
1
工芸学部「建築学科」を「受験したいと思う」と答えた人は31.9%(84人)、
このうち合格したら、工芸学部「建築学科」に「入学したいと思う」と答えた人は、
86.9%(73人)となった。
また、工芸学部「伝統工芸学科」(既設)を「受験したいと思う」と答えた人は
32.7%(86人)、このうち、合格したら工芸学部「建築学科」に「入学したいと
思う」と答えた人は19.8%(17人)、工芸学部「伝統工芸学科」に「入学したい
と思う」と答えた人は76.7%(66人)であった。
この結果、工芸学部「建築学科」に「入学したいと思う」答えた人は、合計90人と
なった。この調査結果やこれまでの入学者の動向から、入学定員の50人は十分確保でき
る見通しである。
③ 定員充足の根拠となる客観的なデータの概要
「京都美術工芸大学工芸学部『建築学科』
(仮称)設置に関するアンケート調査【高校生
対象調査】
」の概要は次のとおりである。
ⅰ)調査目的・概要
平成28年4月に新設予定の、京都美術工芸大学工芸学部「建築学科」構想に関して
高校生のニーズを把握するため、京都美術工芸大学に資料請求した高校3年生、高校3
年生以上、全国6,271人を対象に、平成27年4月~5月に、郵送調査で実施し
263人から有効回答を得た。
ⅱ)調査項目
主な調査項目は、高校卒業後の希望進路、工芸学部「建築学科」に対する興味度・受
験意向・入学意向、工芸学部「建築学科」及び「伝統工芸学科」
(既設)への受験意向・
入学意向で、工芸学部「建築学科」構想を記載した資料を配布して行った。
ⅲ)工芸学部「建築学科」への受験意向
工芸学部「建築学科」を「受験したいと思う」と答えた人は31.9%(84人)であ
った。
ⅳ)工芸学部「建築学科」への入学意向
工芸学部「建築学科」を「受験したいと思う」と答えた84人のうち、合格したら工
芸学部「建築学科に入学したいと思う」が86.9%(73人)
、工芸学部「伝統工芸学
科に入学したいと思う」と答えた人は、9.5%(8人)であり、工芸学部「建築学科」
の入学定員50人を上回る結果となった。
ⅴ)
「伝統工芸学科」への受験意向
2
工芸学部「伝統工芸学科」を「受験したいと思う」と答えた人は32.7%(86人)
であった。
ⅵ)
「伝統工芸学科」への入学意向
工芸学部「伝統工芸学科」を「受験したいと思う」と答えた人は86人のうち、合格
したら工芸学部「建築学科」に「入学したいと思う」が19.8%(17人)、工芸学部
「伝統工芸学科」に「入学したいと思う」と答えた人は、76.7%(66人)であり、
工芸学部「伝統工芸学科」の入学定員45人を上回る結果となった。
以上の調査結果から、
「建築学科」
「伝統工芸学科」どちらかに受験意向のある人は合計
で170人、学部の入学定員95人を上回る結果となった。
また、合格した後の入学意向では合計で「建築学科」が90人、
「伝統工芸学科」が74
人となっている。
<資料1:京都美術工芸大学工芸学部「建築学科」
(仮称)設置に
関するアンケート調査結果報告書【高校生対象調査】>
さらに、平成27年4月以降、新たに本学に資料請求した高校3年生、高校3年生以上
は、平成27年6月末現在、24都道府県から1,126人。この内、希望分野を意志表
示した人が362人で、その中で建築分野を希望したのが116人となっており、ここか
らも工芸学部「建築学科」への受験者が一定数見込まれることになる。
④ 学生納付金の設定の考え方
新たに設置する学科の学生納付金を設定する際、学生納付金や補助金、手数料等の収入
で、教育・研究活動に必要となる人件費及び経常経費等を賄い、完成年度以降において消
費収支が均衡の見通しを持つことが原則である。
今回設置する工芸学部「建築学科」は、既存の「伝統工芸学科」の教員体制に加えて6
人の専任教員を置き、また多くの建築系の専門教育科目を配置するため、多人数の兼任教
員を揃える計画となっている。
このことに加え、本学は美術系大学に属しており、多くの演習・実習科目を必修及び選
択必修とする教育課程の性格上、他分野の大学に比べ、学生納付金は高めに設定せざるを
得ない状況にある。
本学科の学生納付金の設定については、近畿における私立系競合校等の学生納付金を参
照にしつつ、人件費および実習費等の経常経費を織り込んだ収支見通しを勘案して、工芸
学部「建築学科」の初年度学生納付金は既存の「伝統工芸学科」と同額の、入学金150
千円、授業料は年間、1,550千円とすることとした。
近畿における建築系学科を持つ美術系私立大学は5大学あり、資料2のとおり学納金総
3
額の平均は、6,291千円で、本学の学納金総額6,350千円はこの平均額に近く、
妥当な額といえる。
なお、本学独自のキャリア支援事業として実施している二級・木造建築士受験資格取得
講座の授業料1,600千円(京都建築大学校二部の2年間の授業料と3年目の受験対策
講座受講料)は奨学金対応として、全額免除となっており、これを勘案すると他大学より
かなり有利な条件となっている。
<資料2:近畿における私立系競合校等の学生納付金>
(2) 学生確保に向けた具体的な取組状況
平成24年の開学初年度の入学者の定員充足率は0.7未満であったが、以降、積極的
な広報活動(高校訪問・会場ガイダンス・オープンキャンパス等)を実施してきた。さら
に産学公連携事業、地域連携・社会貢献事業を積極的に展開し、大学認知度の向上に努め
た。一方で、アドミッション・ポリシーに沿って、多様な入学試験を実施してきた。
こうした取り組みの結果、入学者は年々増加し、完成年度の27年度入試において、入
学者定員の確保ができた。平成26年度における本学の学生確保に向けた具体的な取り組
みは次のとおりである。
① 広報活動
ⅰ) 高校等訪問
専任の広報担当者が、近畿地方を中心とした高校訪問を年間通じて実施。進路指導部
教員、美術系教員を対象に大学広報に努めている。さらにアートスクールにも幅を広げ、
平成26年度の訪問回数は述べ、10,988回であった。
ⅱ) 高校・会場ガイダンス(進学相談会)
高等学校主催の進学相談会や、業者企画による芸術系大学合同の会場ガイダンスに積
極的に参加している。26年度は前年度の約1.5倍の414回の実績となった。
ⅲ) オープンキャンパス
オープンキャンパスは入学につながる確率が高く、基本的に毎週実施している。26
年度は50回実施したが、参加者は346人にとどまっており、学科新設に併せ、今後
さらに充実、強化していく。
ⅳ) 大学 HP、大学案内誌等による広報
大学 HP のほか、教職員協働により制作した大学案内を、全国高等学校の進路指導教
4
員(約5,500校)、美術系教員(約1,000人)、アートスクール(約200校)
にオープンキャンパス案内と共に発送している。
ⅴ) 産学公連携事業等の実施による、マスコミによる広報
全国紙・地方紙への広告のほか、産学公連携事業等を積極的に展開し、一般記事とし
て取材、掲載されることで、大学の認知度向上に努めている。26年度においては、
(資
料3:「平成26年度京都美術工芸大学広報活動」)に示したように、正倉院展協賛プロ
ジェクトや、琳派400年関連などを中心に、多くの紙面に掲載された。
② 多様な入試の実施
本学は、アドミッション・ポリシーに沿って、本学が求める学生を一人でも多く確保す
るため、次のとおり多様な入試を実施している。
ⅰ) AO 入試 1期~6期
ⅱ) 公募推薦入試 1期・2期
ⅲ) 指定校推薦入試 2期
ⅳ) 一般入試 A 日程・B 日程・C 日程
ⅴ) 大学入試センター試験利用入試 前期・後期
以上のうち、AO 入試、一般入試で各1回ずつ、東京会場で入試を行っている。
<資料3:平成26年度 京都美術工芸大学広報活動>
27年度の広報活動は、これまでの取り組みをベースとするが、工芸学部「建築学科」
の設置届出後は、受験生向け広報誌の発行や大学 HP での広報活動を早期に進める。
高校・会場ガイダンスでは「建築分野」において重点的に参加していく一方で、オープ
ンキャンパスを充実・強化し、
「建築学科」の模擬授業などを実施し、工芸学部「建築学科」
への関心度を高めていく。
また入学試験でも、
「建築学科」と「伝統工芸学科」に区分した入試形態とし、より進路
を明確化した、目的意識のある受験生を確保していく。
2 人材需要の動向等社会の要請
(1) 人材の養成に関する目的その他の教育研究上の目的
① 教育研究上の理念、目的
本学の学部では、美術工芸を基盤にしながら、「伝統工芸学科(伝統工芸コース・総合デ
ザインコース・文化財コース」と「建築学科(建築デザインコース・伝統建築コース)」に
5
分かれ、多様な建築・工芸の世界で必要となる知識・技術を修得させることを、教育研究上
の目的としている。
② 養成する人材と教育上の目的
既述のように「建築学科」では、美術工芸を基盤とした建築教育の履修モデルとして「建
築デザインコース」と「伝統建築コース」を設ける。
「建築デザインコース」においては、社会的要請に応じた建築計画・設計の実践能力を持
った人材が育成される。
「伝統建築コース」においては、伝統建築や関連技術を理解し、諸
史料を統合して伝統建築及び町なみの調査や保存修理工事を指導できる人材が育成される。
具体的には、
「建築デザインコース」では、設計に対する幅広い要求を統合した明確な建
築計画を提示し、実現に導く設計を CAD 等の技術を応用して行う能力のある人材、「伝統建
築コース」では、伝統建築に関する知識と用語、様式的展開、構造特性を理解し、古文書
や文献・絵画史料から情報を把握して復原、再生設計を行い、完成まで監理ができる人材
である。
③ 卒業後の進路
卒業後の主な進路は、
「建築デザインコース」は建設会社や工務店、建築設計事務所や住
宅産業、インテリア関係を想定している。「伝統建築コース」では、社寺建設を特徴とする
企業や工務店における現場技術者、伝統建築関連業者、行政における保存修理技術者すな
わち技師、実測調査や復原・再生設計を担う建築設計事務所を想定している。
④ 研究対象とする中心的な学問分野
「建築学科」において研究対象とする中心的学問分野は、美術工芸を基盤とする点は共
通しながら、建築デザインコースでは「建築デザイン」に関連する学問分野すなわち「建
築計画(都市計画・大規模建築物・住宅・児童施設等)」
、「建築設計」
、「建築環境」、
「建築
設備」等に関する教育研究を行う。伝統建築コースでは「伝統建築」に関連する学問分野
すなわち「日本建築史」
、
「文化財建造物の調査・維持・保存」、「伝統建築の修理・再生」、
「町なみの調査・保存」等に関わる教育研究を行う。
(以上、
「設置の趣旨等を記載した書類」P6~7より)
(2) 人材育成に関する社会的な人材需要の動向
学外の調査機関である株式会社進研アドに委託し、新設学科である工芸学部「建築学科」
に対する需要を確認するための調査として、工芸学部「建築学科」卒業生の就職先として
想定される企業を対象に、平成27年4月~5月に郵送調査の方法で、全国の建築系企業
500社に「京都美術工芸大学工芸学部『建築学科』(仮称)設置に関するアンケート調査
6
【企業対象調査】
」を行い、141社から回答を得た(回収率28.2%)
。
主な調査項目は、採用予定数、工芸学部「建築学科」の社会的必要性、工芸学部「建築
学科」卒業生に対する採用意向、工芸学部「建築学科」卒業生の毎年の採用想定人数」な
どで、調査結果は次のとおりであった。
回答のあった企業分類は、建設系63.1%、住宅系15.6%、建築設計系
12.1%、本社所在別では、
「大阪府」15.6%、本学所在地の「京都府」が14.9%
と多く、また、
「東京都」が11.3%と大都市圏も多い結果となった。
従業員数別では、100名~500名未満が39.0%、50名~100名未満が
31.2%、50名未満が19.1%と中堅企業が大半を占めている。
これらの企業の、過去3年間の平均的な正規社員の採用人数は、1名~5名未満が
42.6%、5名~10名未満25.5%、10名~20名未満が12.1%などとなっ
ている。また、平成27年度の採用予定数について、「減らす」4.3%、「予定なし・見
送り」1.4%に対し、「昨年度並み」46.8%、「増やす」42.6%と、現在の雇用
情勢を反映した結果となっている。
一方で、本学が新設する工芸学部「建築学科」の設置の理念、養成する人材像、教育内
容、他大学との違い、取得可能な資格などの計画概要を示し、工芸学部「建築学科」の社
会的必要性を聴いたところ、
「必要だと思う」と答えた企業が95.7%(135企業)に
も上った。
さら に、工芸 学部「建築学 科」の卒 業生を「採用 したいと 思う」と答え た企業 は
93.6%(132企業)と、予定している入学定員50名を大幅に上回る採用意向が見
られた。
また、工芸学部「建築学科」の卒業生を「採用したいと思う」と答えた132企業に対
し、工芸学部「建築学科」の卒業生の採用を毎年何名程度想定しているか聞いたところ、
毎年度の採用想定人数は合計で187名程度にもなった。
このことから、安定した人材需要があることが確認できたとともに、想定している入学
定員50名に対し、求人企業数が十分確保できることが示された。
<資料4:京都美術工芸大学工芸学部「建築学科」
(仮称)設置に
関するアンケート調査結果報告書【企業対象調査】>
7