I. 世界の人口 II. 人口転換 III. 途上国の人口動向

国際関係論(1 年生)/国際関係論 I (2 年生以上) 第 13 回 11 月 13 日
「人口問題」
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I.
世界の人口
総人口の動向
総人口:
5 億人→10 億人まで 200 年
2010 年代=総人口は 70 億人超
→1960 年代以降=十数年で 10 億人ペースで増加
→2060 年代=100 億人超
→
→22 世紀=安定化
人口増加率の推移: 1950-2000 年=ピーク→その後ペースが落ちる。途上国の同時期が 2%超←
30 数年で倍増。地域別の増加率=途上国に比べ、先進国の方が先にペースが落ちる
先進国と途上国の人口分布
20 世紀初頭:
2050 年:
先進国=5.7 億人
先進国=13.1 億人
⇔
⇔
途上国=10.7 億人。比率=1:2
途上国=79.9 億人。比率=1:6。先進国は少産少死社会
近代における大きな人口変動
変動要因:
天災、伝染病、奴隷制、戦争
事例: ヨーロッパ(産業革命以降、人口が安定的に増加)。南米大陸(植民地化→①鉱山労働者
として酷使、②天然痘→人口激減)
。アフリカ大陸(①奴隷狩り、②部族間戦争→人口激減)
マルサスの罠
18-19 世紀のイギリス: 100 年にかけて人口が 900→1800 万人に倍増。マルサス:
「人口増加は
食料の壁によって阻まれ、貧困・飢餓が発生」
実際:
→出生率の抑制によって貧困が解消
所得増加により栄養や衛生状態も向上。子供を出産・生育しやすい状況。富の形成が死
亡率を減少させ、人口が増加
人口問題
①途上国の人口爆発:
WW2 後、先進国では人口安定⇔途上国の人口爆発。マルサスの罠:人
口と食料のアンバランス=食糧危機、飢餓、移民
②先進国の少子高齢化・人口減少問題:
少産少死型社会。少子高齢=人口オーナス期、高齢者
介護・医療、年金。人口減少=労力不足、解消策としての外国人移民・労働者受入れ
③南でも北と同じ問題が発生:
NIES 諸国=経済発展、所得増加、保健衛生の改善
人口問題の内容の変化
20 世紀中盤~後半:
途上国の人口爆発と食料・貧困問題
21 世紀: 上記に加え①先進国の少子高齢化・人口減少問題、②両地域における生活の質の改善
II.
人口転換
出生率と死亡率の変化によって変わる自然増加率の段階
1 期:
自然増加率=低い→結果的に総人口は増加しにくい。多産多死。伝統社会
2 期:
自然増加率=拡大傾向。死亡率=栄養・衛生・医療環境が向上→低下。出生率=多産の
習慣・価値観維持。多産少死、人口爆発、人口ボーナス期。南の途上国
3 期:
自然増加率=縮小傾向。多産少死の状態続く→社会経済が安定→多産の習慣が薄れる。
社会経済が安定→死亡率が低下・安定。多産少死から少産少死への移行期。北の先進国の状態
4 期:
自然増加率=低い→総人口は増加しにくく人口減少に転じる国も。死亡率=低い水準で
安定。出生率=低下したところで安定。少子高齢社会。一部の先進国の現状
III.
途上国の人口動向
1
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途上国における人口増加の原因
出生率を高い水準で維持したままでの死亡率の減少=社会が多産多死から多産少死へ移行。少産
少死への移行の手前。人口爆発の原因=出生率の高さが維持されている理由
原因①:
出産や子供の存在に対する伝統的価値観や宗教的規範
原因②:
子供=労働力。子供は家計を支える貴重な働き手、多いほど家計が潤う
原因③:
子供=老後の保障の手段。途上国では高齢者向け社会保障制度未整備。多いほど安泰
原因④:
子供=安全保障の手段。途上国は法治能力・警察能力欠如。多いほど家の権勢確保
途上国における人口増加の解消
途上国:
①経済・所得水準低い、②公共政策が不十分。子供を持つ性向、インセンティブ高い
解消策:
目標:「多産少死から少産少死→子供をもとうとする性向を下げる」。手段=経済・社
会全般の発展。20 世紀後半の新興国は、経済成長と保健衛生の普及で人口増加率が低下
途上国の経済成長と人口
問題の違い:
先進国=人口減少により高水準の経済が維持できない
⇔
途上国=過剰な人口
増加が経済発展の妨げとなる
影響と問題:
人口増加=経済発展のため資本蓄積に回す経済余剰を消費。経済余剰の源泉=国
内の雇用問題、貿易赤字、債務問題などが深刻化。人口抑制=①資本蓄積と②先進国へのキャッ
チアップに有効
女性への投資(Investment in Women)
WWII 後:
人口増加の抑制=産児制限。強制的な避妊手術、ピルや避妊具の配布など
1970 年代後半以降: 女性に制限加えるよりも、社会環境の改善を。
「女性は家の付属物」
「子は
宝」→教育を受けて自立を促進。少ない子供に高い教育を施し人口の質を高める
22 世紀の人口予想
国連世界人口中位予測(2012 年)
: 2050 年は 80-100 億人
によって 166~67 億人の幅
IV.
→2100 年は人口問題への取り組み
←安全保障、エネルギー、資源、食料などに大きな影響
人口分布の変化
人口分布
定義:
地域別、階層別、職業別、性別、年齢ごとの人口の配置。現代の人口問題=都市と農村
の人口分布に差異→人口密度、耕作面積、経済・所得水準、電化率、など多様な問題生む
日本の都市・農村人口の変遷:
戦後は農村人口が全体の 50%程度
→2000 年は 33%に減少。
原因:①高度成長期に農村部から都市部への移動(集団就職)、②経済発展における都市部の拡大
世界の都市・農村人口の推移
1950 年=農村人口は都市人口の 2 倍
→2011 年=都市人口が農村人口上回る
→2030 年=農村
人口はほぼ同数。都市人口は 1.37 倍。2050 年=農村部減少⇔都市部継続増加
都市・農村人口の傾向から読み取れること
①途上国でも都市人口の方が多い:
1970 年代=都市人口、南が北を上回る
→2011 年=都市
人口、南は北のほぼ 3 倍。都市化現象と問題は、先進国だけでなく途上国でも発生
②農村人口が南に集中:
1950 年→2050 年=北で半減⇔南では倍増。農村人口:
比率とも農村人口が途上国に集中
総数、構成
→農村問題、農業問題、食糧問題が途上国で集中的に発生
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急激な都市への人口流入
都市側の要因:
相対的に高い所得を得られる職の存在。雇用の機会の高さ
農村側の要因:
農村での過剰な人口→職がなく食べていけない層を創出
農村から都市への労働移動:
一国内だけでなく、国際的にも移動が発生
都市化に伴って発生する問題
①スラム化:
安全な水や衛生設備へのアクセスを欠き、不十分な住居に過密状態で人びとが住
み、居住権も保障されていない人びとの居住地域。①職・収入が不安定、②災害にあいやすい、
③人権保障されない。2001 年は 9.2 億人→2030 年には 20 億人。南の都市人口の半数がスラム
②エネルギーの使用: 都市部で生活=農村部に比べエネルギー(電気、ガス)の使用量多い
→
資源の利用可能性や環境問題への圧力。省エネルギー、持続可能な都市生活の実現が課題
③社会意識の変化:
都市化=民主主義文化を強める傾向。消費文化に流されがちな大衆社会を
形成。ネット犯罪、扇動政治への危惧
国連の取組み
国連人間居住計画(UNHSP)
: 1976 年、人間居住会議。1978 年、ハビタット委員会(現 UNHSP)
設置。1996 年、第 2 回人間居住会議を開催、行動計画採択
行動計画(ハビタット・アジェンダ)
: 急進行する都市化への対応を協議。スラム問題、都市の
過密、都市計画、土地・住宅問題、上下水道、交通、廃棄物処理、建築資材、住宅融資。世界的
ネットワーク、政府・民間のパートナーシップ構築の必要性
V.
人口の高齢化
人口の高齢化
定義: 高齢化社会(aging society)=国内の 65 歳以上の人口比率が 7%以上。高齢社会(aged
society)=同 14%以上。超高齢社会(super aged society)=同 21%以上
高齢化の進展:
少産少死社会=高齢者が長生き⇔子供の出生率減少。北の先進国=現在直面し
つつある問題。南の途上国=所得水準上昇→出生率低下→いずれは直面する問題
各国・地域の特徴
ヨーロッパ諸国:
20 世紀の 100 年かけ、高齢人口が 5%→20%に上昇
日本: 1960 年=5%→1970 年=7%→1990 年代半ば=14%→2013 年=23%。ペースが極めて速
い。2033 年には 33%を突破と予想
アメリカ:
中国:
高齢化は進展
⇔
絶えざる若年層の人口流入
→高齢化のペースは遅い
一人っ子政策で急速な高齢化。2010 年=9%→2050 年=26%
シンガポール:
経済発展で急速な高齢化。2010 年=8%→2050 年=32%
高齢社会
原因: ①高所得国では医療水準が高い→平均寿命が 70 代後半まで伸びる。②生活の質への関心
高まる⇔結婚・子育てへの関心・リソースが低下
ポジティブな影響:
①競争よりも智恵の分かち合い、②肉体労働よりも知識集約労働、③思い
やりと協調の社会、④「効率と競争」を優先する価値観の転向
ネガティブな影響:
①労働者への負担が高まる:
より少ない生産年齢(15-64 歳)人口でよ
り多くの従属年齢(15 歳未満と 64 歳以上)人口を支える必要。年金や健康保険は改革必要。②
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労働者の絶対数が足りなくなる:
日本の生産年齢人口=1995 年の 8,717 万人がピーク→2040
年代=6,000 万人。現状の 8,000 万人を維持するには毎年 67 万人の外国人労働者受入れ必要
日本の急激な少子高齢化
現状:
1.43
「子供を持とうとする性向」が低い。人口維持に必要な出生率=2005-2013 年、1.26~
→2014 年に減少に転じる。団塊ジュニア(1971-1974 年)による出産ブームが終了
←今
後何も方策を打ち出さない限り減少傾向は続く
出生率の低さの原因:
①晩婚、高教育、個人生活を重視する価値観、男女格差、夫の協力不十
分。②男女格差=女性が仕事と家庭とを両立させる時の社会的サポートが不足。③社会的サポー
ト=託児所、フレックスタイムなど
→子供を二人もつことへのためらい
改革と出生率の回復: 家族・女性政策、男女平等、など。フランス(1960 年 1.65→2010 年 2.00)、
イギリス(1.63→1.96)
VI.
外国人の人口
グローバル社会における人の移動
グローバル以前:
移民・難民、ブルーカラーの出稼ぎ。鉱山・建設、工場、メイド
グローバル社会:
上記に加えて、①ホワイトカラー、②留学生、③研修生、④観光客
先進国での移住者増加
経済の国際化、先進国の労働力不足、南での新興国の出現
→世界的に増加傾向
主要国の外国人定住移住者: 2010 年代=米:100 万人、独:80 万人、英:50 万人、露:30 万
人、加:25 万人
日本の在留外国人登録者数:
2002 年:175 万人→2011 年:205 万人。年平均 3 万人程度で増
加。中国(33%)、韓国・朝鮮(26.4%)、フィリピン(10%)、ブラジル(10%)
外国生人口比率(2012 年):
OECD 平均=13.2%。20%台=豪、加。日本=1.1%程度
世界の移民の流れ
国際移住機関(IOM)による 2009-2011 年の調査: 南→北=40%、南→南=33%、北→北=22%、
北→南=5%。経済のグローバル化に従った人の流れ
北から北への移動:
全体の 1/4~1/5。国際業務、研究開発、留学、研修、など
南から南の移動: 全体の 1/3。湾岸産油国、アジアの新興国(シンガポール、マレーシア、タイ)
←アジアの途上国・地域(中国、ミャンマー、バングラデシュ)
労働者の本国送金
2012 年:
4,000 億米ドル
←ODA1,300 億米ドルの 3 倍に匹敵する規模
送出国:
①アメリカ:150 億米ドル、②独:50-60 億米ドル
受取国:
①中国:700 億米ドル、②インド:660 億米ドル、③メキシコ:240 億米ドル、③フ
ィリピン:240 億米ドル
移民受け入れに伴う社会問題
需給の一致:
労働力不足の受入国⇔職・収入に乏しい送出国
→北と南、それぞれで需要と供
給が一致
受入国側の社会問題:
①人種差別、排外主義を掲げる政党の躍進。②不況時には先に解雇され
る傾向。③低家賃住宅街が外国人労働者によって占められる。④二世、三世の就職難
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「南北問題」
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I.
南北格差の現状
南北問題とは?
北=先進国が多い地域
⇔
南=途上国が多い地域
→①南北間の経済格差、②経済格差によっ
て発生する諸問題
南北問題の顕在化:
WWII 後、旧植民地諸国が独立
→旧宗主国との格差が明らか。問題の顕
在化は 1960 年代以降
先進国
欧州諸国(英、仏、独、伊、など)
。欧州諸国から派生した諸国(米、加、豪、NZ、など)。一部
アジア諸国(日、韓、台湾、香港、シンガポール)
一般的な理解:
先進国≒高所得国←天然資源に依存する国は含まず。近代工業化を通じた所得
の拡大。高度な工業生産技術と生産性。高付加価値生産による高所得
→歴史的段階を経て近代
工業化を通じた所得の拡大を実現したかを重視
開発途上国
「近代工業化を通じた所得の拡大」という歴史的段階を踏まえていない。高度な生産技術を持た
ない。生産性が低い。高所得国ではない。高所得であっても石油など天然資源に依存している
開発途上国から抜けられない原因
モノカルチャー経済構造:
特定の一次産品に依存している経済構造
→国際価格の動向が、そ
の国の経済(国際収支)を大きく左右。(例)農作物、鉱物、石油・天然ガス
累積債務問題:
債務返済のため、さらなる債務を負って多重債務化した国。1980 年代におけ
る南北問題の最大の課題。多重債務国が累積債務を解消し、成長路線に戻すことが重要
人口爆発:
急激な人口増加=自然増。途上国ほど人口増加率(出生率)が高いため、食糧生産
追い付かず。経済構造が食糧生産に傾注するため、他の経済分野の発展を阻害。環境問題の誘発
1 人あたりの GDP の国別分布
(2009 年、IMF)
20,000 米ドル/人以上の国: 42 ヶ国、10.0 億人。人口比 15.6%。GDP 総額の比率 55.4%。世
界の人口の 1/6~1/7 の人だけで、世界の GDP の半分を享受
5,000 米ドル/人以下の国:
73 ヶ国、30.6 億人。人口比 45%。GDP 総額の比率 11%。世界の
GDP の 1/10 を、世界の人口の半分で分け合う
南北問題は解決に向かっている?:
先進国と途上国:
地域別の GDP に占める比率(%)
1980 年=70:30→2009 年=54:46。30 年でギャップが改善の方向
地域別の動向: シェア率の低下(EU、南米) ⇔
注意点: ギャップ縮小⇔人口比率は開いたまま
シェア率の上昇(中国、インド、ASEAN)
→南北の経済格差は依然として存在。30 年間
で、国内の所得格差の拡大した国も増加
II.
南北問題の歴史的展開と枠組み
南北問題の問題意識と枠組み
問題意識: 前提=北の先進国と南の途上国の二項対立。問題群=①南北の経済格差そのものと、
②格差から生じる諸問題。問題群の根本的解決=南北格差の是正。解決方法=途上国の開発
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「南北問題」
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枠組みの変化:
①途上国群の発展=産油国・NIES 諸国などの登場。②冷戦終結=「東西」の
枠組み変化→「南北」の枠組みも変化。③先進国の国内状況=国内で貧富の差が発生
新国際経済秩序
概要:
New International Economic Order(NIEO)。1974 年、国連特別総会(国連資源特別
総会)での「NIEO 樹立宣言」と行動計画
NIEO 樹立宣言:
現行の国際経済秩序は先進国に有利
主権平等・平和共存・内政不干渉
→南北問題発生。新秩序が必要
→各国が平等に国際経済決定に参加
途上国に不利な貿易制度・交易条件を改善
途上国の発展:
国際協調によって促進
途上国の資源主権・経済主権を確立
→自国資源の有効活用で経済的自立
資源ナショナリズム
国連:
国際法で、途上国の国内にある資源・経済に対する主権を認める
資源ナショナリズムと外交:
国際経済は先進国に有利
→途上国にも配慮した仕組み構築を。
国内天然資源の開発・販売を外交手段に先進国に対抗、経済発展を目指す国が登場
途上国群の改善:
①産油国
1973 年第四次中東戦争:
アラブ諸国(エジプト、シリアなど)vs.イスラエル
→産油国、イ
スラエルに味方する国に石油販売しない戦略
日・米はじめ西側諸国で石油価格が大幅上昇
→産油国にオイルマネー
→経済発展の原資に
OPEC 加盟の中東 8 カ国の石油収入の変化: 1973 年=277.2 億米ドル→1980 年=2,244 億米ド
ル。1973-1987 年の総額=1 兆 7,400 億米ドル
石油収入=産油国の治安問題に大きく左右。インフラ投資⇔モノカルチャー構造の転換進まず
途上国群の改善:
概要:
②NIES
新興工業経済地域(Newly Industrializing Economies, NIES)。1979 年の OECD レポ
ートで 10 ヶ国・地域を指定。88 年に 3 ヶ国追加
該当国(下線;1988 年):
アジア(韓国、台湾、香港、シンガポール、中国、マレーシア、タ
イ)、南米(メキシコ、ブラジル)、欧州(ギリシャ、ポルトガル、スペイン、旧ユーゴスラビア)
南米 NIES の経済成長:
国内市場に依存する経済成長を目指す。教育水準が低く、経済基盤が
未整備。膨大な対外累積債務を抱える
アジア NIES の経済成長:
→NIES から「脱落」
資本や商品の開放・自由化、外資・海外市場に基づいた経済成長を
目指す。教育水準が高く、高レベルの生産への転向が可能。1997 年アジア通貨危機=経済成長に
ブレーキ。高度経済成長期から安定経済成長へ転換
途上国群の改善:
定義:
③BRICS
2001 年の米金融機関のレポートで初使用。ブラジル(B)、ロシア(R)、インド(I)、
中国(C)、南ア(S)の 5 ヶ国
概要: 国土面積=世界の 32%。人口=世界の 45%。GDP=近年になり世界の 24%、米、EU を
上回る。国際政治と地域の安全保障に影響力を持つ。BRICS サミットで連携強化を確認
途上国群の改善:
④後発開発途上国
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「南北問題」
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英語:
Least Developed Country(LDC) / Least Less-Developed Country(LLDC)
国連開発計画委員会(3 つの条件)
: ①国民一人あたり GNI(国民総所得)
: 992 米ドル以下、
②人的資源開発の水準(栄養不足人口、識字率、就学率、など)、③経済の脆弱性(農作物の生産
の安定性、輸出入の安定性、など)
現状(地域別、2012 年):アフリカ 34 ヶ国、アジア 9 ヶ国、オセアニア 5 ヶ国、中南米 1 ヶ国
歴史的な変化:
1971 年=24 ヶ国→2012 年=49 ヶ国。四十年余りで倍増(アフリカ=16→34
ヶ国、アジア=6→9 ヶ国、オセアニア=1→6 ヶ国)
←資源が乏しい、教育水準と人件費、政
情不安、など
途上国群の改善:
⑤南南問題
南南格差: 1960 年代までは固定された二項対立
→1970 年代以降は資源国、NIES⇔LDC →
「南」諸国の間で経済格差が発生
南南問題:
「南」諸国の間で経済格差、および格差によって生じた諸問題。近年ほど、格差が
拡大する傾向。「南」諸国によって開発・経済発展の段階異なるため、解決方法も異なる。「南」
諸国の間での問題解決のための協力関係進まず
東西の枠組みと南北の枠組み
冷戦時:
西側諸国=アメリカを中心とする資本主義諸国。東側諸国=ソ連を中心とする社会・
共産主義諸国。南側諸国=東側諸国に近づくことによって西側諸国からの支援を引き出す
冷戦終結後:
西兼北側諸国=支援の実施者。東側・南側諸国=西兼北側からの支援を求めて東
と南とが競合
III.
国連と南北問題
国連開発の 10 年
きっかけ: 1961 年国連総会、ケネディ米大統領、途上国の開発促進のための提唱。先進国と途
上国の国際協力により途上国全体の経済発展を促進。1960 年代を「国連開発の 10 年」と定め、
以降、4 次(~2000 年)まで設定
第 1 次国連開発の 10 年(1961~70 年):
開発途上国の GDP 成長率=年 5%を目標。貿易の振
興、国連補助機関 UNCTAD の設置。人口増加により南北格差がむしろ拡大。「挫折の 10 年」
第 2 次国連開発の 10 年(1971~80 年)
: 1973 年石油危機で湾岸産油国をきっかけに途上国の
発言力強まる。天然資源持つ国と持たない国の格差拡大=南南問題が顕在化
第 3 次国連開発の 10 年(1981~90 年)
: 途上国の経済成長率の目標を年 7%に設定。累積債務
問題、
第一次産品価格の下落
→3%程度に留まる
第 4 次国連開発の 10 年(1991~2000 年):
数字にとらわれた過去を反省、数値目標設けず。
国際開発戦略と持続可能な開発
UNCTAD
定義:
1964 年国連総会、途上国側からの要望に応えて設置。国際連合貿易開発会議(UN
Conference on Trade and Development)国連の補助機関。事務局はジュネーブ
目標=①発展途上国の経済開発促進
②南北問題の経済格差是正。役割=途上国グループの国連
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内での事務局。総会=4 年に 1 回。1964 年第 1 回(ジュネーブ)~2012 年第 13 回(ドーハ)
成果:
①一次産品の価格の決定、②特恵関税制度の採用
77 ヶ国グループ(Group of 77)
: UNCTAD 第 1 回会議に参加した途上国側 77 ヶ国がグループ
を結成。UNCTAD は 77 ヶ国グループ事務局として機能。64 年結成時は 77 ヶ国→現在は 130 ヶ
国以上加盟。アジア、アフリカ、南米諸国が中心。途上国の経済・技術協力の促進、加盟国の意
見調整、先進国と交渉が目的。定期的にサミットを開催、問題意識の共有と結束を確認
IV.
国際社会と援助
国際社会と援助
援助の授受:
提供者=先進国の政府・政府機関⇔受益者=途上国の政府。①二国間での直接的
授受、②国連等を通じた間接的授受
政府開発援助=国が行う開発途上国援助
⇔
NPO/NGO=両者とも草の根・市民レベル
ODA
定義:
政府開発援助(Official Development Assistance, ODA)。実行者=政府または政府の実
施機関。提供先=開発途上国または国際機関。目的=開発途上国の経済・社会の発展や福祉の向
上に役立てる。提供内容=資金・技術提供による協力
資金・技術の拠出先: ①二国間援助=相手国に対して資金や技術を直接提供、日本の ODA の 7
割。②多国間援助=国連などの国際機関を通じて援助
提供されるもの: ①資金援助=返済義務があるもの(貸付、有償資金協力)。②資金援助=返済
義務がないもの(贈与、無償資金協力)。③人材育成=技術協力
日本の ODA
順位:
1991~2001 年=世界 1 位、2002~2005 年=世界 2 位、2006 年~=順位低下
背景:
日本=国内景気悪化
⇔
他国=9.11 以降「貧困がテロの温床」
問題・批判: ①理念の欠如。②グラント・エレメント(ODA に占める贈与の割合)の低さ=貸
付が多い。③インフラ建設・整備が中心。④アンタイド率の高さ=物資調達先が日本に限定され
る比率。⑤対 GNI 比の低さ(国民総所得に対する ODA 支出)=0.18%←DAC23 カ国中 21 位
⇔
0.7%の確保が望ましいとされる。⑥国内経済の悪化=「外国よりも日本のために税金を使うべき」
との批判
→日本政府、国内外の状況に応じて ODA の原則を変更
ODA 大綱
1992 年、宮沢内閣による ODA 大綱策定: ①環境と開発を両立。②軍事的用途や国際紛争の助
長のために使用させず。③対象国の軍事動向(軍事費支出、兵器製造、武器輸入)に注意。④対
象国の民主化、市場の自由化、基本的人権のあり方に注意
2003 年、小泉内閣による ODA 大綱改正:
財政悪化→ODA 支出に対する納税者からの批判=
「外国よりも日本へ」
「ばら撒き」
「現地で感謝されていない」。費用対効果を重視。①日本の国益
重視、日本の安全と繁栄の確保に資する。②国連、NGO、民間企業との連携を強化。③紛争やテ
ロを防止し、平和構築に貢献。④対象国の要請に基づく要請主義から、日本が主体的に援助
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