学生主体の品質マネジメント分野の標準化教育 「ものプロ」 - J

(15)グローバル化時代における工学教育 -Ⅰ
講演番号:1D03
学生主体の品質マネジメント分野の標準化教育 「ものプロ」
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○伊藤佳世※1 保浦徹※ 田中駿吾※2 池田敬介※2
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キーワード:品質マネジメントシステム,標準化教育
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成要素である3'&$に合致する.マスは周することで1
.はじめに
国際的な競争力が求められる中,国際標準化を担う
人材の育成(標準化人材育成)は急務の課題である.
中部大学では,学部1年生から大学院生を対象に環
境マネジメント分野及び関連分野の標準化人材育成に
取り組んでいる.本稿は,中部大学 (6' エコマネーチ
ームが学生主体で開発した品質マネジメント分野を中
心とした標準化教材「ものプロ」に焦点を当て,開発
の経緯とその成果を概説することを目的とする.
中部大学 (6' エコマネーチームは持続可能な社会を
担うための標準化人材育成を目的とした活動を実践し
ている.環境マネジメント及び関連分野に関する標準
化に関する授業の履修等を通じて①「標準を使う力量」,
②「標準を作る力量」,③「標準を教える力量」を身
につけている.複数のマネジメントシステムをチーム
で運用する一方で,大学で学んだ内容を広く社会に活
かすために小学生以上を対象とした標準化教材を開発
し,主要なイベントにおいて標準化教室を開講するこ
とで標準化に対する理解を推進するための普及活動を
行っている.
.標準化教材「ものプロ」の開発
小学年生以上が楽しみながら品質分野の標準や経
営を学ぶことを目的としたボードゲームである.企業
の新人研修等で活用するためのフル版とイベントや小
学校等で用いる簡易版を開発した.いずれも,プレイ
ヤーが経営者として品質マネジメントシステムを構築
する.
ゲームは規格の要求事項と種類(イベント,投資,
スタート,ラッキー,アンラッキー,税務署,内部監
査)のマスで構成する.ボード上のマスの配置を四角
形にし,辺それぞれが品質マネジメントシステムの構
※
中部大学経営情報学部 [email protected]
年の経営を経験する.全体でマスある.
プレイヤーは品質マネジメントシステムの要求事項
に関するクイズにこたえながら規格を理解し,資本金
を増やす.同時にサイコロをふり,マスをすすめなが
ら経営者として意思決定を行いながら品質管理をする.
3'&$それぞれに設定しているパラメーターで顧客満足
をあげる.品質の標準の学習を経験しながら,ゲーム
開始時の資本金とパラメーターをゲーム終了までにど
れだけ増やせるかを競う.
表1標準化ゲーム「ものプロ」の主要構成要素
要求事項
,62 の要求事項の学習
規格学習
,62 ファミリー及び ,62,,(& におけ
イベント
製品・サービスに関するイベントの体験
投資
品質管理に関する経営判断
スタート
スタートポイント及び1年ごとの通過点と
る品質分野の国際標準化動向や規格の学習
して,成果を反映する
ラッキー
ボーナス
アンラッキー
設備不良発生
税務署
税金徴収
内部監査
内部監査と改善提案
子供から品質管理責任者までが楽しみながら品質管
理を学ぶための良い標準化教材に近づけるよう試行錯
誤を積み重ねながらチーム一丸となって教材開発プロ
ジェクトを進行した.,62 での国際規格開発にあわせ
て教材を開発した.',6 の翻訳,規格の進捗による変
更点の反映を行いながら教材を開発した.
デザイン面では,色のアクセシビリティや子供でも
絵を見て内容を推測できるように配慮をした.第一次
原案ができた段階で標準化教育に実績のある日本規格
※2 中部大学経営情報学部学生
公益社団法人日本工学教育協会 平成 28 年度
工学教育研究講演会講演論文集
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協会に対して実演を行い,コメントを反映して環境イ
ベントでの展示につなげた.ゲーム体験者に対するア
ンケート調査結果を基に教材の改訂を行い,精度を高
めた.
国内外での実践と成果
教材開発後,様々なイベントで実演を行ってきた.
主な実績は以下のとおりである.
表 中部大学 (6' エコマネーチームによる「標準化教室」
対象
名称
専門家
日本規格協会
一般
環境デーなごや
子供
エコプロダクツ 地元企業向け標準化教室
学生
1$*2<$学生 (;32
中部大学フェア
(6'・教育研究発表会中部大学
子供一般向けの実演
チームの学生がファシリテーターとして関与しなが
ら標準化についての理解推進のための啓発活動とゲー
ムの実演を行う.小さい子供に対しては一緒にゲーム
を実施し,途中でヒントを提供することで,楽しみな
がら標準が学べるように標準化教室を展開した.
産業界向けの実演
中部大学は,地(知)の拠点大学による地方創生推
進事業として,春日井市における世代間交流における
地域活性化・学生共育事業を行っている.本プロジェ
クトでは,地域の人と人を結びつける媒介者としての
地域創成メディエーターを育成している.中部大学(6'
エコマネーチーム地域部が中心となり,産業の活性化
を目的に春日井市及び中部地域の産業界を対象とした
標準化教室を開催した.品質マネジメントシステムの
標準化教材を含むこれまでチームで開発したすべての
教材を用いた.様々な企業のマネジメントシステム担
当責任者や審査機関から社員に対する研修や内部監査
教育での教材活用について問い合わせを受けた.品質
マネジメントシステムについては現在社が教材を社
内の教育に用いている.これらの活動成果及び標準化
教材はZHE上で公開している.
.キャリア教育と標準化教育の連携
学生が活動を通じて得た標準化に関する力量を将来
の仕事に活かすため,標準化スキルを評価する指標と
してつの業務評価指標とつの業務能力評価指標があ
る.社会人基礎力は「職場や地域社会で多様な人々と
仕事をしていくために必要な基礎的な力」を指す.①
チームで働く力(発信性,傾聴力,柔軟性,状況把握
力,ストレスコントロール力)②前に踏み出す力(主
体性,働きかけ,実行力)③考え抜く力(課題発見力,
計画力,創造力)で構成する.
標準化スキルスタンダードと社会人基礎力を組み合
わせてチームの学生全員を対象に標準化スキル評価を
行った.その結果,標準を作る・使う・教えるという
活動を実践しながら,標準化業務の戦略・開発・活用,
普及の能力を身につけた.上級生になると事業理解力
とコミュニケーション力,表現力,リーダーシップ,
ネゴシエーションを高める学生が増えた.
社会人基礎力については,学生主体の(6'活動を通じ
て行う標準化人材育成業務を通じて,「チームで働く
力」の発信性,状況把握力,傾聴力,柔軟性を高めた.
また,つの統合マネジメントシステム運用を通じて
「前に踏み出す力」の働きかける力を得た.品質マネ
ジメントシステムの標準化教材開発を通じて「考える
力」の課題発見力と創造力を習得した.
なお,チームが社会人基礎力グランプリ中部地区大
会において奨励賞を得たこともあり,学生の自信向上
につながった.また学生が就職活動で成果をアピール
することが可能となり,キャリア教育としても成果を
出している.
.結果及び考察
チームに所属する学生は,標準に関する専門知識を
身につけながら教材開発を行う.また,チームの運営
を通じて管理能力を身につける.さらに実演を通じて
企画力や開発結果をわかりやすく伝える力を身につけ
る.学生主体による品質マネジメントシステムに関す
る標準化教材は,様々な団体から関心を得て,受け入
れられた.また実践を担当した学生たちは標準化スキ
ル及び社会人基礎力という観点から様々な力量を身に
つけ社会的に評価された.このことから,学生主体に
よる品質マネジメント分野の標準化教育は有効である
と結論づけられる.
注及び参考文献
社会人基礎力
KWWSZZZPHWLJRMSSROLF\NLVRU\RNX
標準化スキルスタンダード
KWWSZZZMLVFJRMSSROLF\VNLOO67'VNLOOVWGB
WRSKWP
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