以下は、企業行動部会 November 14, 2011 古山英二 北川さん、峰内さん報告に対する補足的 comment:です。 Committeeとcommissionは同義、いずれも日本語には委員会と翻訳する。日本 語の審議会は、Councilないし、Commission for Inquiries。 CommitteeとCommissionの違い:committeeはcommit=委嘱するという動詞の受 身形(employ→employeeと同様)で構成員が誰かに任命されるような場合に用 いられる。Commissionはそれよりも独立性が高く、委員長は内閣総理大臣の任 命だが、委員会の構成員選任は委員長が行う。On behalf of Federal Chancellor Dr. Angela Merkel Chair: Prof. Dr.‐Ing. Matthias Kleiner, Prof. Dr. Klaus Töpferとあるとおり、これら両名 が首相に指名され、メンバーを人選したことが知られる。故にCommitteeではなく Commissionとした。ドイツ語ではDer Ethik-Kommission zur Nutzung der Kernkraft。 同委員会の議長の一人である Prof. Dr. Klaus Töpfer は、2011 年 3 月 27 日、BILD 誌 (Der Spiegel と並ぶドイツ有力誌、Der Spiegel よりも俗っぽいと言われている)と のインタヴィユーで、"Eine Herausforderung für die Schöpfung"(直訳すると創造への 挑戦:Schöpfung は Die Schöpfung der Welt=天地創造=神の御技の意味に用いられる)と いうタイトルで「原子力利用に関する委員会」の役割について、「我々が今日までに達成 した全てのことを危険にさらすようなリスクに耐えることが出来るかどうかと言う倫理上 の問題に関する内容である。」(Im Interview mit der Bild am Sonntag spricht Klaus Töpfer über die Aufgaben der Ethik-Kommission zur Nutzung der Kernkraft. "Es geht um die ethische Frage, ob wir Risiken in Kauf nehmen wollen, die alles, was wir erreicht haben, gefährden können", so der Kommissions-Vorsitzende. )と述べている。 Risiken in Kauf nehmen は熟語的表現で、“他に利点があるので、それを堪え忍ぶことが 出来る”ことを表現するときに用いられる。Cost/benefit 的内容の表現。つまり、Risiken im Kauf nehmen が出来るかどうか(功利主義的発想で処理できる問題かどうか)を検討した が、結論は「できない」となった、ということ。 Prof. Dr. Klaus Töpfer クラウス・テプファー1938 年生まれ、マインツ、フランク フルト、ミュンスターの各大学で経済学を修め、博士号を取得、ミュンスター大学 で教授の職にあった。環境専門家として知られ、キリスト教民主同盟(CDU)所属、 1998 年から 2006 年まで国連環境計画(UNEP)の議長を務めた。 Prof. Dr.‐Ing. Matthias Kleiner マティアス・クライナー1955 年生まれ、ドルトムンド 大学教授、専門は冶金工学、特にステンレススティールの研究で知られる。現在 DFG=Deutsche Forschungsgemeinschaft=German Research Foundation の会長。 北川報告にある“倫理≠Ethics (倫理と Ethics は異なる)”という論旨がよくわからな いが、「倫理とは・・・」という“そもそも論”を展開するつもりはないので、ごく一般 的な解釈に従って「社会生活を行う上でお互いに守るべき規範、道徳とほとんど同義。」 としてよいと思います。日本語に道徳と倫理という二つの言葉が存在するのは、morality の 訳語として道徳がすでに存在し、ethics or Ethik を日本語化するに際し、井上哲次郎が“人 倫”の“倫”と“理論”の“理”を組み合わせて“倫理”という言葉を造語したという経 緯によります。また、英語に morality と ethics という二つの言葉があるのは、ラテン系の moral とギリシャ語系の ethics の両方を取り入れたからです。ドイツ語はラテン語の影響を 英語ほど受けていないので、moral or morality という言葉はなく、該当する言葉としては Sitten です。Vid.Grundlegung zur Metaphysik der Sitten 道徳形而上学原論。 ドイツ倫理委員会報告の中で私が最も注目したのは、The economist and Nobel prize winner Joseph Stiglitz recently expressed this view in a comparison of risk management in the financial and nuclear industry: “When others bear the costs of mistakes, the incentives favour self-delusion. A system that socialises losses and privatises gains is doomed to mismanage risk”という一文です。 以上
© Copyright 2024 Paperzz