17 ハイテンションボルト・ボルト機具商品 摩擦接合用高力六角ボルト 使用の手引き ●摩擦接合用高力六角ボルト・六角ナット・平座金のセッ トは、その品質および検査基準についても JIS B 1186 に基づき製作・検査されています。 ●セットは、ボルト・ナット各 1 個、座金 2 個により構 成されています。 ①種類・等級 機械的性質 トルク系数 適用する構成部品の機械的性質による等級の組合せ による種類 値による種類 ボルト ナット 座 金 A 1種 F8T B A 2種 F10T B F35 F10 A (3種) F10 (F8) (F11T) B ※備考( )を付けたものはなるべく使用しない。 ③トルク係数値及び締付けトルク値 摩擦接合ではボルトに所定軸力を導入することが重要で すが、ボルト軸力を直接測定することは試験的にしかで きません。そのため、ナットを締付けるトルクを測定し、 ボルト軸力を推定します。この締付けトルクとボルト軸力 との関係式の係数がトルク係数です。締付けトルクが一 定であっても、トルク係数がバラツキますとボルト軸力も バラツクため、所定の接合強度を得られなくなりますの で、トルク係数はできるだけバラツキの小さいものでなけ ればなりません。また、ボルトの等級、ボルトサイズによっ ては、所定のボルト軸力を得るには大きな締付けトルク を必要とし、締付け器具の面で問題となることがありま すので、トルク係数はできるだけ値が小さいことが必要 です。ハイテンションボルトセットのトルク係数値は、特 に指定のない場合次の値になっています。 呼び径 トルク係数値 等級 M12、M16 M20、M22、 M24 ②機械的性質 ●試験片の機械的性質 ボルトの機械的 耐力 引張強さ 性質による等級 (N/mm 2) (N/mm 2) F10T 900以上 1000〜 1200 伸び (%) 絞り (%) 14以上 40以上 ●製品の機械的性質 ボルトの 機械的性質 による等級 M16 M20 M22 M24 M27 M30 F10T 157 245 303 353 459 561 ねじの有効 断面積 (mm 2) 最小引張荷重(kN) 硬さ 27〜38 HRC 157 245 303 353 459 561 F10T 備考 平均値 標準偏差 0.150〜0.190 0.013以下 B種 0.110〜0.150 0.010以下 A種 (ナット潤滑処理) 締付けトルク値 T は下式により、工場または現場で実験 的に求められたトルク係数 K、規準で定められた標準ボ ルト軸力(締付け軸力)N を用いて定めます。 T=k・d・N T:締付けトルク値(kgf・m) k:トルク係数値 d:ボルト円筒部径の基本寸法(m) N:標準ボルト軸力(kgf) 標準ボルト 等 級 F10T 単位:tonf 呼 び 土 木 建 築 M16 ー 11.7 M20 18.2 18.2 M22 22.6 22.6 M24 26.2 26.2 硬さ ナットの機械的 性質による等級 最小 最大 F10 95 HRB 35HRC ●座金 座金の機械的 性質による等級 硬さ F35 35〜45 HRC 保証荷重 ボルトの最小 引張荷重に同じ 呼び 締付け長さに 加える長さ(mm) M12 25 M16 30 M20 35 M22 40 M24 45 ハイテンションボルト・ボルト機具商品 ④ボルトの所要長さ ●ナット ボルトの長さ:ボルトの長さは締付け長さに上表の長さを 加えたものが標準です。 1603 297 17 ハイテンションボルト・ボルト機具商品 摩擦接合用高力六角ボルト 使用の手引き ●溶解亜鉛メッキの付着量が 550g/㎡以上と厚く(中ボルトでは 350g/㎡)長期にわたり防食性がすぐれています。 ●ボルトおよびナットのねじ加工の後にメッキを行いますので、ね じ部にまでメッキされ、電食などの心配もありません。ナットは メッキ前にオーバータップしますが、その量は強度に心配のな いものです。 ●酸洗いをしないので酸脆性がなく、遅れ破壊の心配がありません。 ●メッキ前もメッキ後も強度は F8T。F10T をメッキするような強 度変化がなく、靭性に富み安定しています。 ●トルク係数値は低く安定しており、共回り防止にすぐれているの で、ナット回転法による施工に適しています。 ●建設大臣の一般認定(建設省千住指発 1 号)を得ているので、 建築物はもちろん、道路橋やその点検廊などの付帯設備・無線 鉄塔などに巾広く適用できます。 ①種類及び呼び径 セットの種類 適用する構成部品の機械的性質による等級 機械的性質 トルク係数値 による種類 による種類 1種 ボルト ナット 座 金 F8T F10 F35 A ※セットはJIS B1186(摩擦接合用高力六角ボルト・六角ナット・ 平座金のセット)で規定するセットの種類1種(F8T)Aに準ずる。 呼び径 M16、M20、M22、M24 ③機械的性質 ●試験片の機械的性質 ボルトの機械的 耐力 引張強さ 性質による等級 (N/mm 2) (N/mm 2) 伸び (%) 絞り (%) 800〜1000 16以上 45以上 ●製品の機械的性質 最小引張荷重(kN) ボルトの機械的 性質による等級 M16 M20 M22 M24 M27 M30 F8T 126 196 243 283 368 449 硬さ 18〜31 HRC ねじの有効 157 245 303 353 459 561 断面積(mm 2) ●ナット 硬さ ナットの機械的 性質による等級 F10 最小 保証荷重 最大 95 HRB 35HRC ボルトの最小 引張荷重に同じ ●座金 座金の機械的性質による等級 硬さ F35 35〜45HRC このような処理は物理的な目粗し処理ということになりますが、 これに対して化学的に表面処理をして摩擦係数を上げる処理法 が、 「りん酸塩処理法」として数年前から実用化されるようになり ました。ただしりん酸塩というのは、りん酸と金属との反応生成 物をあらわす一般的名称なので、より厳密には「りん酸亜鉛処理 法」というべきですが、現在では通称として「りん酸 塩処理法」 と呼ばれています。 この方法は特殊なりん酸亜鉛処理液を亜鉛めっき鋼材の摩擦 接合面に塗布または浸せきして、緻密なりん酸亜鉛の不溶性結晶 を生成させる方法です。実際の工程は、例えば塗布法では摩擦接 合面のたれなどを除去後、刷毛で均一に塗布するだけですむので、 ブラストに比べ工期的に大幅な短縮がはかれ、コストの削減にも 寄与します。またこの処理法は特殊な設備や工具も必要としませ んので、工場でも建設現場でも手順通り行えば施工が可能です。 一方、生成するりん酸亜鉛の結晶皮膜は 3 〜 10 μ m 程度あり ますので、全体として皮膜の厚さは増加します。またりん酸亜鉛 処理は、金属の塗装下地処理としての長い歴史があり、塗料の密 着性と同時に防錆力を高める処理法としてよく知られております。 したがって、りん酸亜鉛処理によって亜鉛めっき皮膜の耐食性が 劣化するという懸念はありません。この点は物理的にめっき皮膜 を研磨するブラスト法に比べて、耐食性の面からも有利といえるで しょう。 3. すべり耐力試験結果 現在、日本建築学会「建築工事標準仕様書・同解説 JASS6 鉄骨工事」 (後述)及び国土交通省大臣官房官庁営繕部監修「建 築工事共通仕様書」平成 13 年度版(後述)では、特記によりブ ラスト以外の方法で処理する場合は、すべり耐力等を確認するこ ととされています。 但し 設計すべり耐力 = 設計ボルト張力× 0.4 ×摩擦面数(2) ×ボルト数(2)判定:すべり耐力比 = すべり荷重 / 設計すべり耐 力≧ 1.2 下表は、すべり耐力が経時的にどのように変化するか について調べた一例です。この表で見るとおり、すべり耐力比は 締め付け直後から 3 年を経過しても低下せず、むしろ上昇の傾向 にあることがわかります。 ●すべり耐力比の経時変化(M20) (3 試験体の平均値) 締付け後 経過時間 24時間 6ヶ月 1年 3年 トルク係数値に よる種類 トルク係数値の 平均値 トルク係数値の 標準偏差 すべり荷重 (t・f) 32.5 33.9 34.7 35.5 A 0.11〜0.15 0.010以下 すべり耐力比 1.53 1.6 1.63 1.67 ④セットのトルク係数値 298 溶融亜鉛めっきされた鋼材を溶融亜鉛めっき高力ボルトにより 摩擦接合を行う場合、亜鉛めっきのままでは接合面の表面粗度が 小さいため所定のすべり耐力比が得られません。この解決策とし て従来から行われてきたのがブラストによる目粗し処理です。ただ しこの方法は専用の設備や工具を必要とし、コストや納期の点で 負担が大きいのがネックとなっています。 りん酸亜鉛処理液中に含まれるりん酸亜鉛は水溶性化合物で すが、処理後生成するりん酸亜鉛皮膜は、組成の変化した不溶性 の白色結晶です。皮膜形成のために表面の金属亜鉛も消費されま すが、その量は 2 〜 3 μ m とごく僅かです。 JIS H8641 2 種 HDZ55 めっきの付着量スペース 550g/㎡以上 640以上 1. 摩擦面処理 2. りん酸亜鉛皮膜の特性 ②溶融亜鉛メッキの方法 F8T ⑤摩擦面 1603 17 ハイテンションボルト・ボルト機具商品 4.「建築工事標準仕様書・同解説 JASS6 鉄骨工事」 日本建築学会 1996 年 本書においては溶融亜鉛めっき高力ボルト接合の摩擦面の処理 に関して次のように規定しています。 「12.5 溶融亜鉛めっき高力ボルト接合 d. 摩擦面の処理 (1)摩擦面はめっき後、軽くブラスト処理を施し、表面粗度は 50μmRy以上とする。 (2)摩擦面のブラスト処理の範囲は図 12.1 による。 図 12.1 ブラスト処理の範囲例 (2)特記により、摩擦面をりん酸塩処理とする場合は、指定又は 認定された条件に基づき、すべり耐力等を確認する。 」 6. 注意点 亜鉛めっき高力ボルト接合面の処理として、ブラスト処理とあ わせて、りん酸亜鉛処理法の特徴をまとめました。ブラストなど の物理的処理とりん酸亜鉛処理法とでは、すべり耐力などの特性 にはほとんど差がないことが理解いただけたと思います。しかしな がら、りん酸亜鉛処理法については、基本的な手順が守られなけ れば十分な性能は発揮できません。即ち ・摩擦接合面のたれなど突起物を除く。 ・処理液と亜鉛面との反応を阻害する油や汚れを除く。 ・外気温が氷点下の場合、処理面を加温し、氷結水などを乾燥さ せると同時に、処理液も 10℃以上に加温する。 ・塗布法の場合、刷毛で均一に塗布し、必要以上に厚く塗らない。 などの諸点に留意する必要があります。はじめて現場施工をされ る場合は、あらかじめめっき会社にご相談されることをお勧めいた します。 ⑥高力ボルトの締付け ● 1 次締め 1 次締めは、仮締めボルトを締付けて部材の密着を確認した後、 全ボルトについて下記に示すトルク値でナットを回転させて行う。 1 次締付けトルク値(N・m) 呼び径 1次締付けトルク値 M12(※) 約50 M16 約100 M20・M22 約150 M24 約200 ※M12は、F10T六角高力ボルトのみ ●マーキング (3)摩擦面にブラスト以外の特別な処理を施す場合は、その方法 を特記する。この場合、すべり耐力試験を実施し、次式を満 足することを確認する。 すべり荷重≧ 1.2 ×設計ボルト張力× 0.4 ×摩擦面数×ボルト本数 なお、すべり耐力試験は実状に合せた試験片を用い、組立て後 24 時間以上経過した後行う。やむを得ない場合は標準試験片を 用いてもよい。」 本仕様書では、第 7 章 鉄骨工事の中で、溶融亜鉛めっき高力 ボルト接合の摩擦面の処理に関して次のように規定しています。 ●本締め 本締めは、1 群単位の 1次締め及びマーキング完了後を起点として、 ナットを 120°回転させて行う。ただし、ボルトの長さがボルト呼 び径の 5 倍を超える場合のナットの回転量は実験により定める。 ●締付け後の検査 目視にて規定のナット回転量に対して +30°〜ー 30°の範囲にあ るものを合格とする。この範囲を超えて締付けられた高力ボルト は取り替える。又、ナット回転量の不足している高力ボルトについ ては、所要のナット回転量まで追締めする。 「7.12.4 溶融亜鉛めっき高力ボルト接合 ハイテンションボルト・ボルト機具商品 5.「建築工事標準仕様書」国土交通省大臣官房官庁営繕部監修 平成 13 年度版 1 次締め後、ボルト・ナット・座金及び部材にわたるマークを施す。 マーキングは、1 次締めの確認・ナット回転量の測定・締め忘れ の発見・ボルト、ナット、座金の共まわりの発見などのために行う もので、ていねいに施す。 (a)摩擦面の処理は、次による。 (1)溶融亜鉛めっき高力ボルトを使用する場合の摩擦面は、特記 による特記がなければ、すべり係数値が0.4以上確保できるよ う溶融亜鉛めっき後、軽くブラスト処理を施し、摩擦面の表面 粗度を50μmRy以上とする。また、フィラーについても同様の 処理を行う。 1603 299
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