京浜島工業団地の土地利用動向と今後の整備方策に関する研究

京浜島工業団地の土地利用動向と今後の整備方策に関する研究
A Study on the trend of Urban Land Use and the Improvement of Future Strategies in Keihin Island Industrial Estate
公共システムプログラム
08M43050 内野創 指導教員 中井検裕
Public Policy Design Program
So Uchino, Adviser Norihiro Nakai
ABSTRACT
In Keihin Island Industrial Estate, the withdrawal of the factory increases and non-manufacturing industry
has entered the site. Development strategies in Keihin Island Industrial Estate need to be considered, because
it is expected that the land use changes continue to accelerate coping with changes in social situations.
This paper aims to clarify the changes of urban land use and the mechanism of the withdrawal and the entry
of the enterprise and to consider development strategies.
1. は じ め に
1.1 背景・目的
京浜島工業団地は昭和 40 年代、公害防止の観点から、既成
市街地に立地する製造業工場の内、移転によらなければ公害
を除去することが難しい、主に振動・騒音型企業を京浜六区
埋立地(京浜島)に移転・集団化させたことにより誕生し、
以来、ものづくりの集積拠点として大田区の工業を支えてき
た。
しかし、近年は製造業を巡る社会状況の変化から、工場の
転廃業が増加し、その跡地には製造業の他、産業廃棄物処理
施設や運送業等の非製造業の企業の参入も目立ち始めている。
今後も社会状況の変化と共に土地利用の変化はますます加
速していくと予想されることから、島内の一体的な整備方策
を検討する必要がある。
そこで、本研究では移転・集団化事業の概要を把握した上
で、土地利用状況の変遷と企業の撤退・参入のメカニズムを
明らかにし、今後の整備方策を検討することを目的とする。
既往研究には、産業振興の面から大田区臨海部の製造業企
業の調査を行ったもの 1)2) や移転・集団化事業に関する報告
書3)は存在するが、土地利用変化の視点から京浜島について研
究したものは存在しない。
1.2 研究の方法
本研究では、歴史的資料を用いた文献調査、住宅地図を用
いた土地利用変遷調査、京浜島工業団地に立地する企業への
アンケート調査、および関係主体へのヒアリング調査を用い
て進めることとする。
アンケート調査の概要を以下に示す。
アンケート調査の概要
【調査期間】2010 年 1 月 20 日~2 月 1 日
【調査対象】京浜島工業団地内(京浜島二丁目)の企業 164 社
【配布方法】京浜島工業団地協同組合連合会から各企業へ手渡し
【回収率】37%(61/164) (2010 年 2 月 1 日現在)
1.3 研究の構成
2 章では、対象地域である京浜島の概要を述べ、3 章で移
1
転・集団化事業の全容を明らかにする。4 章では土地利用状
況の変遷を、5 章では集団移転以後の企業の参入・撤退のメ
カニズムを明らかにする。6 章では、今後の企業動向につい
て推測し、7 章でこれまでの結果を踏まえて整備方策を提案
する。最後の 8 章では本研究のまとめを述べて結びとする。
2. 対 象 地 域 に つ い て
2.1 大田区臨海部の概要
対象地域の京浜島は、東京都大田区臨海部、羽田空港直近
北西の東京湾上に位置する人口島(総面積 103.3ha、埋立地
名:京浜六区)である。
大田区臨海部では、昭和 42 年の平和島、昭和島の竣工を皮
切りに、同 49 年に京浜島、その後、城南島、羽田空港沖合展
開事業が竣工・形成され、地域一帯で基盤技術1産業を中心と
したものづくりの集積拠点、羽田空港や東京港との近接性を
生かした流通業務拠点としての機能を担っている。京浜島周
辺の埋立地の概要を以下に示す。
昭和島(埋立地名:京浜三区)
公害工場の移転・集団化事業により羽田鉄工団地が建設さ
れている。移転当初は鉄工業が中心であったが、その後、工
場跡地には卸売業や運送業者等の非製造業の立地が進んでい
る。
平和島(埋立地名:京浜二区)
南部流通業務団地が整備され、現在も流通業務が集積して
いる状況に変化は無い。
城南島(埋立地名:大井埠頭その2)
1990 年代までは工場アパートの建設等、工場の集団移転事
業が行われていたが、現在はそれらの工場跡地に物流関連の
施設や、自動車修理工場等が進出している。また、スーパー
エコタウン事業による産業廃棄物処理施設の建設が進められ
ている。
2.2
【事業名称】
「京浜 6 区公害工場移転集団化事業」
【事業主体】東京都公害局
【移転対象企業】大田区を中心とした 12 特別区及び 1 市に所在した製造業の
企業。業態は主に製缶、鈑金、プレス等。
京浜島の概要
表1 事業年表
昭和14年 1 月
43年
45年 3
46年 1
49年 3
49年 5
49年 11
49年 12
50年
56年
59年
3.2 移転対象企業の選定
積極的に移転の意思のあることが確認された 382 企業に対
して、公害の程度が「東京都公害防止条例」の基準を上回る
こと、騒音・振動型工場であること、跡地が工業系用途に利
用される恐れの無いもの等の基準に基づく実態調査・経営調
査を行い、230 企業を移転対象企業として選定した。
しかし、オイルショック等の経済情勢の悪化による移転辞
退企業が相次いだため、144 企業が辞退し、96 企業を追加選
定した。
最終的に移転を果たした企業は、選定過程で比較的厳しい
経営審査をパスしていること、経済情勢の悪化にも関わらず
移転を辞退しなかったこと等から、中小企業の中では比較的
規模の大きく、体力のある企業であったと考えられる。
3.3 用地の割り当て方法
各企業に対する用地割り当てに関しては、工場等制限法に
よる作業場面積の制限に対して、事業の目的を考慮し、従前
の作業場面積の 1.5 倍を上限とする拡大移転が特例として認
められた。そのため、全体的にみると、移転前の 1.5 倍前後
の用地面積が割り当てられたケースが多かった。
しかし、建物建設時の「施設建設要綱」や、その後の「環
境保全協定」に基づく、壁面線の維持、敷地内駐車スペース
及び緑地(8%以上)等制約事項が多く、既に移転時より、実
質的な敷地の拡大感を持てない企業が絶対面積の少ない企業
に多くみられた。
3.4 協同組合の設立
表2 協同組合の概要
移転事業に際しては、
企業数 従業員
業態
設立
東京鉄鋼工業協同組合
54
1204 鉄鋼その他
44年8月
事前に協同組合を設立 城南鋳物協同組合
24
605 鋳物
46年1月
東京都城南金属プレス工業
24
723 プレス
45年3月
し、組合ごとの集団移 協同組合
中央鍍金工業協同組合
24
490 メッキ
46年6月
転を行う事業協同組合 城南板金工業協同組合
15
207 板金
46年3月
東都京六金属協同組合
16
148 製缶その他
52年3月
方式が採用された。こ 京六工業協同組合
14
278 製缶その他 46年11月
京浜島鍛造協同組合
10
321 鍛造
48年11月
れは、1)公的融資制度
「京浜6区公害工場移転集団化事業に関する報告書」 (1979)
を利用する為と 2) 集積効果を高め、相互扶助を可能とする為
の主に二つの理由による。資本力が脆弱で、なおかつそれま
での公害対策で疲弊していた中小企業にとって、一度に多額
の資金を必要とする移転を自力で行うことは困難であったた
めである。
なお、協同組合は業種・規模・公害等の(主に業種)種別
によって 8 協同組合が初めに設立された(表 2)。
移転は協同組合ごとに行われ、初期の 8 組合移転後、続い
て 7 協同組合が移転を行った。
3.5 公的融資の適用
移転事業では、1)公害防止事業団事業、2)中小企業高度化
事業、3)公害防止資金融資あっせん制度の3つの事業や制度
の適用に基づき、公的融資が貸与された。土地の造成段階と
建物築造段階の二段階に分けて各制度が併用されることもあ
った。
また、前二者の事業に基づく融資は組合を通して行われ、
組合から各企業へと転貸される形となった。その為、融資の
償還期間(15 年)が終了するまでは土地や建物は組合所有で
あり、企業が自由な取引を行うことは出来なかった。償還年
島内は全域が工業専用地域の指定で、一丁目から三丁目ま
で存在する。三丁目の一部が臨港地区に指定されている。
(図
1)
東京湾岸道路沿いの一丁目には、倉庫や物流関連施設が、
三丁目にはコンテナバースや倉庫、大田清掃工場等が立地し
ており、どちらの地域にも中小工場はほとんど存在しない。
二丁目には製缶、プレス、鈑金等を中心とする中小工場が
13 の協同組合ごとに集積しており、京浜島工業団地を構成し
ている。製品の設計や最終製品の製造を行っているところは
少なく、基盤技術を生かし、大手メーカーの部品加工業務を
図1
公有水面埋立法による京浜6区埋立事業免許取得
埋立工事着工
京浜6区を工場集団化用地として活用する方針を決定
東京都 「都民を公害から防衛する計画-1971-」 策定
港湾局、公害防止事業団へ埋立地譲渡(東京鉄鋼工業協同組合分)
「京浜6区公害工場移転集団化事業計画」知事決定
埋立工事竣工
京浜6区埋立地を大田区に編入
工場の移転開始
8協同組合が移転完了
7協同組合が移転完了
京浜島内の様子
担っているところがほとんどである。
2.3 埋立地造成の歴史
内務省港湾調査会は昭和 2 年(1927)に「京浜運河の開削
と埋立地造成計画」を決定し、その中で神奈川から東京にか
けて一大臨海工業地帯の創出と、京浜運河の開削工事を併せ
て行っていくこととした。同計画は品川区から大田区の羽田
沖にかけて、海岸沿いに東西 2 列、南北 5 列の計 9 つの埋立
地(京浜 1 区~京浜 9 区)を造成するものである。
第二次大戦の影響を受けて資材等が欠乏し、最北西部の京
浜一区の一部完成により工事は打ち切られたが、昭和 30 年代
より埋立工事が再開された。
3. 移 転 ・ 集 団 化 事 業 に つ い て
3.1 事業の背景と目的
昭和 40 年代、大田区の工業は中小・零細企業により構成さ
れ、主に大企業の下請けとしての形態で互いに交錯して横断
的分業関係を形成していた。これらの企業は、職・住が一体
化することで中小工場の強みを生み出していたが、一方で騒
音、振動などの公害問題が顕在化することにもつながった。
一中小企業で公害対策を出来るところは少なかったため、東
京都は昭和 39 年に公害工場を埋立地に移転する方針を立て
た。同 46 年(1971)には「都民を公害から防衛する計画」を策
定し、公害から都民の健康を守るための総合的な施策を計画
した。
「京浜 6 区公害工場移転集団化事業」は、上記の「都民を
公害から防衛する計画」に基づき、大田区を中心とする既成
市街地の住工混在地域に立地する工場のうち、移転によらな
ければ公害を除去することが困難な主として騒音・振動型の
工場を京浜 6 区埋立地(京浜島)へ移転集団化させ、(1)住・
工分離による公害発生源の除去、及び(2)移転工場跡地の適正
利用による都市環境の整備・改善をはかるとともに、併せて
(3)移転を契機とする中小企業の近代化・高度化を進める目的
で実施された。
事業の概要を以下に示す。
事業概要
2
融機関や所属する業界団体等のネットワークによって、後継
となる企業を紹介することが多いためである。
新規企業の仲介をしている機関には以下のものがある。
数経過後は組合から各企業へ分割登記された為、その後は企
業の所有物として自由な取引が可能になっている。
4. 土 地 利 用 状 況 の 変 遷 と 島 内 環 境 変 化
4.1 企業件数の変遷
企業件数の変遷に着目すると、1989 年に
表3 企業件数の変化
239
1989
は 239 件、99 年には 251 件、09 年には 243
△6 6 ▼5 4
件と推移しており、大きな変化は無い。
28%
23%
251
1999
次に、参入、撤退の件数をみると、89-99
△7 8 ▼8 6
には、66 件の参入と 54 件の撤退、99-09 に
31%
34%
は 78 件の参入と 86 件の撤退が起きており、
243
2009
参入・撤退の件数は共に増加傾向である(表
(件)
3)
いずれの期間においても、京浜島全体の 2 割から 3 割程の
企業が撤退をしているが、その跡地には新たな企業が参入し
てきているため、土地の低未利用化はほとんど発生していな
い。
また、2009 年に存在する企業 243 件の内、1989 年から存
在するものは 133 件(55%)であり、移転集団化事業による企
業の半数近くは既に撤退をしている。
組合別に企業件数の変化を見ると、撤退・参入の件数は組
合によって大きな違いが見られた。
4.2 業種の変遷
表4 非製造業の内訳(2009)
業種の変遷に着目す
業態
件数
産業廃棄物処理施設
21
ると、非製造業の企業が
運送
9
卸売・小売
9
占める割合が増加して
機器レンタル
5
物流関連事業所
4
いる。1989 年には 12
その他
5
事務所
4
件であった非製造業の
駐車場
3
不明
2
企業数は、1999 年には
図2 業態の変化 (件数)
計
62
34 件、2009 年には 63
件となり、全体の 35%が非製造業となっている。
非製造業の内訳は産業廃棄物の中間処理施設が最も多く、
次いで物流関連事業所、運搬・運送業、事務所等である(表
7)。
組合別に業種の変遷を見ると、非製造業を多く含む組合と
ほとんど含まない組合に分かれた。
5. 集 団 移 転 以 後 の 参 入 と 撤 退 の メ カ ニ ズ ム
5.1 京浜島参入の経緯
集団移転以後に京浜
0%
5%
10%
15%
20%
25%
30%
島へ移転してきた企業
公害への配慮
28%
施設の拡大
24%
の 6 割以上が、京浜島に
都心への進出
0%
参入してくる以前から
物流上の利便性獲得
4%
別の場所への移転を検
取引先の移転
0%
わからない
4%
討していた。移転を検討
その他
4%
していた理由としては
図3 移転を検討していた理由(複数回答)
「公害への配慮」と「施
設の拡大」が主である。
5.2 参入理由
最終的な移転場所として京浜島を選択した理由としては、
上記の問題を解決できることに加え、
「地価の安さ」と「都心
へのアクセスの良さ」を挙げた企業が多かった。
地価に関しては、集団移転時と比較して 10 倍程度にまで上
昇しているが、工業専用地域のため、都心の立地にしては、
依然として安いためと考えられる。
また、集団移転時と比較し、公的融資の利用を理由にした
企業は大きく減っている。これは、集団移転以後に参入して
きた企業は、公的融資を必要としないだけの資本力を持って
いることが一因となっていると推測される。
5.3 新規参入企業の仲介者
京浜島工業団地では、企業撤退後の土地や建物が一般的な
不動産市場に出ることは少ない。撤退企業の資金調達先の金
0
50
100
1989
150
200
250
(1)民間の金融機関
撤退企業の資金調達先であった商工中金や信託銀行を中心とす
る民間の金融機関である。
(2)京浜島工業団地内の協同組合
協同組合が関与したケースとして、組合内で共同処理施設を使
用している関係で同業種の企業をあっせんしたケースや、組合
出資の株式会社が土地を買い上げ、空港利用者向けの駐車場に
しているケース等がある。
(3)業界団体
(4)不動産業者
(5)行政(東京都、大田区等)
(6)その他(知人、同業者等)
紹介する企業の業種については、仲介機関によってある程
度の傾向はあるものの、製造業から非製造業まで多岐に渡っ
ている。
5.4 撤退理由
撤退の理由としては倒産、廃業が最も多い。工業専用地域
であり、製造業にとっては操業しやすい環境であることから、
別の場所への再移転は少ないと考えられる。 再移転の事例
としては、施設の拡大のための移転、地価のより安価な地方
部へゆるやかに撤退する等が存在した。
5.5 産業廃棄物処理施設の受け入れ方針
近年、産廃施設の参入が増加してきているが、島内への受
け入れ方針は協同組合によって大きく異なる。これは、製造
業企業の衰退傾向の中、産廃施設の加入によって組合の資本
力増強やスケールメリットの維持を期待できる一方で、
「路上
で作業する」、「周囲を汚す」、「悪臭がする」等、使い方やマ
ナーに問題のある企業が存在するためである。
加入に賛成する協同組合では、協同組合で企業撤退後の跡
地を買い取り、その後、定款2変更を行って産業廃棄物処理業
も加入できるようにした上で、土地や建物を産廃施設へと売
却したケースも存在した。
一方で受け入れ反対の組合では、組合決議によって産廃施
設には土地を売らないと取り決めを行っているところもあり、
組合間での産廃施設の受け入れ方針に関する温度差は大きい。
300
98
1999
39
2009
66
製造業
非製造業
6. 今 後 の 動 向 に つ い て
6.1 現在、操業中の企業の動向
表5 今後、別の場所へ移転する意向 (件)
現在、操業中の企業で、別の場所
移転する予定
2
への再移転を検討している企業は少
移転の意向はあるが困難
6
移転する気は無い
48
ない。これは、京浜島が工業専用地
わからない
9
域の為、製造業、非製造業に限らず、
操業しやすい環境である点が大きいと考えられる。
従って、今後、京浜島の土地が空くのは、企業の廃業、ま
たは倒産の場合が多いと予想される。
将来の不安要素としては、
「業界の先行き」を挙げる企業が
業種にかかわらず多い。全国的な景気の停滞も深く影響して
いると考えられる。
後継者問題に関しては、全体
的な傾向として後継者不足が
深刻な状況ではないが、問題を
抱えている企業に対しては、事
業継承円滑化、人材支援等を行
う必要がある。
図4 将来、不安だと感じていること(複数回答)
資金繰りに関しては、集団移
転時より地価は上昇していき、それが資金調達の際の担保力
につながっていた背景があるが、2007 年の世界金融危機の影
響を受けて地価が下落したため、その影響を受けている企業
も多いと予想される。
0%
20%
後継者問題
40%
業界の先行き
25%
資金繰り
31%
特にない
3
80%
73%
取引先の移転・倒産
その他
60%
22%
10%
3%
具体的には、企業撤退後の跡地が複数、発生した場合に既
存の工場を集約化することで、まとまった大きさの敷地を生
み出し、そこへ大型の物流施設や敷地拡大を希望する製造業
を移転させる等である。
土地利用再編の可能性を探
6% 9%
るべく、敷地拡大等のメリッ
トがある場合の島内の別の場
18%
所への移転意向をアンケート
44%
の中で聞いたところ、
「移転意
23%
向のある」企業と「積極的な
意向は無いが可能」とする企
業を併せた 32%の企業で移転
が可能なことが分かった。
図5 島内再移転の意向
「意向はあるが困難」とし
た企業の理由をみると、移転資金の調達が困難とした企業が
ほとんどであり、移転資金の補助等を行うことで移転可能な
企業は増える可能性がある。
7.2.2 推進体制の確立
ここまで述べてきたような整備方策推進には、島内の企業
の合意形成と全面的な協力、行政の全面的なバックアップが
必須である。島内では、集団移転時より協同組合が存在し、
組合融資等の金銭面でのサポートと共に、地域のコミュニテ
ィとしての役割も果たしており、それが島内の足並みを揃え
ることに貢献してきた。しかし、近年は組合の解散や、組合
に属さない企業が増加する等、組合の力は弱まりつつあり、
協同組合に替わる新たなコミュニティの整備が急務となって
いる。
また、行政に関しては、大田区には整備方策の実施主体と
して、主導的な役割が求められる他、東京都や近接する羽田
空港の管轄市である川崎市とも協議して、産業政策と連携し
た将来像を考えていく必要がある。
8. お わ り に
8.1 まとめ
本研究の結論は以下のとおりである。
(1)京浜島工業団地内では撤退する工場が増加し、その跡地に
は産廃施設や運送業等の非製造業が参入してきており、製造
業との混在が進行している。
(2)集団移転以後、工場撤退後の跡地は民間金融機関や業界団
体等のネットワークにより、新規参入企業を紹介している。
(3)今後、新規に参入してくる企業の数は減少する見込みであ
るが、需要はあるため、空き地・空き家化する可能性は低い。
(4)今後の整備方策として、新規企業参入の際の土地利用コン
トロール、島内環境の整備、製造業企業の倒産や廃業への対
策を推進していくことが必要であり、その際は島内土地利用
再編の検討や推進体制の確立が重要である。
8.2 今後の課題
より広い視野からの整備方策検討のため、大田区の産業政
策やその中での京浜島の位置づけについても考慮する必要が
ある。また、隣接する川崎市や横浜市、東京都の産業政策と
も連携していく必要がある。
6.2 新規参入企業の動向
全国的な景気の停滞の影響もあり、今後は参入してくる企
業の数は減少していくと予想される。しかし、立地は良く、
価格を下げれば需要はあると考えられるため、土地が埋まら
なくなる可能性は少ない。
また、参入企業の割合に占める製造業の数も減少していく
と予想される。これは、産業構造の転換や海外企業の台頭等
によって、下請けの国内製造業の社会的必然性が低下してい
ることや、現在の地価が中小の製造業にとっては高すぎるこ
とが要因である。
産業廃棄物処理業に関しては、環境に対するニーズの高ま
りを背景に増加してきていると考えられるが、施設の全国的
な設置件数も横ばいであり、業界の先行きは厳しいとする京
浜島の企業も多いことから、今後も依然、需要はあるものの、
増加傾向にも限度があると考えられる。
以上のことより、今後は団地内において、製造業企業が穏
やかに減少し、非製造業を含めて様々な業種の企業が混在し
ていくと予想される。
移転しても良い
意向はあるが困難
積極的にするつもりはないが可能
移転する気は無い
わからない
7. 整 備 方 策 の 検 討
7.1 整備方策の要件
整備方策検討にあたり、公害防止を目的とした集団移転事
業の経緯や現在の製造業の集積状況を考慮すると、基本的に
は、今後も製造業の集積を維持していくことが望ましい。し
かし、一方で、製造業の全体的な衰退傾向や非製造業へのニ
ーズの高まりを考慮すると、非製造業の参入もやむを得ず、
製造業が操業しやすい環境となる様、非製造業の混在をコン
トロールすることを考えた方が現実的である。
そこで、これまでの分析を踏まえ、実際の整備方策につい
て考察する。まず、新規参入企業のコントロールを行う必要
がある。これは、製造業集積の維持のため、工場撤退後の跡
地にも、なるべく製造業が参入してくる仕組みをつくること
である。具体的には、企業撤退後に金融機関や業界団体とい
った仲介機関が新規企業の紹介をするよりも前に行政等が情
報を把握し、跡地の周囲の状況を考慮した上で、仲介機関の
ネットワークから最適な製造業企業を選択すること等が考え
られる。
また、参入に適した製造業が存在せず、非製造業が参入す
る際は、周囲の製造業への影響に配慮し、混在によるトラブ
ルを防ぐことが求められる。
次に、島内環境の整備が求められる。これは、製造業にと
って操業しやすい環境を作り出すためである。具体的には、
現在、産廃施設や運送業等の業務車両による路上駐車や路上
作業によって、製造業の企業にとって操業しにくい環境とな
っているが、駐車場の整備等を行うことで解決する可能性が
ある。また、工業専用地域のために住居が存在せず、公害へ
の心配をしなくて済む一方で、飲食店等の生活支援施設が不
足しており、就労環境は十分とは言えない。労働者にとって、
より働きやすい環境を作り出すためにも、店舗等の建設を検
討する必要もある。
そして、現在、操業中の製造業の倒産や廃業への対策もま
た、重要である。それは、現在の製造業が倒産や廃業をせず
に操業し続けられる様、支援を行うことで製造業の集積を維
持出来るからである。万一、事業の存続が困難となった場合
にも、緩やかな着地点を見つけることで、倒産を回避するこ
ともできる。具体的には、融資や補助金等の金融支援や後継
者のあっせん、税制改革、中小企業診断士の派遣等である。
行政はもちろんのこと、協同組合や協同組合連合会にも、そ
の役割は要求される。
7.2 整備方策の実現に向けて
7.2.1 島内土地利用の再編
前節での整備方策実現のための積極的な案として土地利用
の再編も考えられる。これができれば、まとまった大きさの
敷地を生み出すことができ、用途の混在も改善し、その結果、
島内整備を大きく進展させる可能性がある。
【参考文献】
(1)大田区(2004)
大田区臨海部産業動向調査報告書
(2)大田区(2007)
大田区の産業に関する実態調査
(3)東京都公害局(1979)
「京浜 6 区公害工場移転集団化事業に関する報告書」
【補注】
1 基盤技術…切削、プレス、成形、研磨、鋳造、鍛造、金型製造など、工業製品を造る際に基本となる加工技術
2 定款:中小企業等協同組合法で定められる、事業協同組合における組合員の資格に関する記述
4