1 <広告計画> 1.広告計画の意義 広告活動は企業の広告担当者が

<広告計画>
1.広告計画の意義
広告活動は企業の広告担当者が単独で行なえるものではない。広告活動は、経営戦略の一端を担うマ
ーケティング戦略のサブシステムとして機能しているため、その実施にあたっては、他のマーケティン
グ要素との統合や、より上位概念である事業戦略や企業戦略との一貫性が保たれなければならない。マ
ーケティング戦略の一端としての広告計画の流れは、次のように示される。
広告計画の段階では、マーケティング環境の分析をスタートとして展開されるマーケティング・プロ
グラムに基づいて、まず、広告目的が設定され、続いて、広告予算の決定、広告表現の決定、広告媒体
の決定などが行なわれる。
2.広告目的の設定
広告計画の第1段階では、マーケティング目標を達成するために広告はどのような目的を果たすべき
かの検討がなされる。広告目的は、主に次の3つの型に集約される。
(1)
情報提供型
消費者に新しい製品や特徴を知らせて、一次需要を創造する。
1.新製品についてターゲットに知らせる。
2.新製品の新しい用途を提案する。
3.新製品の機能を説明する。
4.製品の背後にあるサービスを知らせる。
5.製品に関する顧客の誤った認識を正す。
6.企業・商品イメージを構築する。
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(2)
説得型
同じ価格ならばこのブランドこそが最高品質を提供すると説得して、消費者の選択的需要を創造する。
1.ブランド選好を高める。
2.ブランドへの信念を変える。
3.自社ブランドへのブランドスイッチを促進する。
4.製品特性に関する顧客の知覚を変える。
5.店頭購入(衝動買い)を促進する。
6.製品購入に関する顧客の抵抗感を低減させる。
7.販売員の訪問を支援する。
8.製品を購入する理由を提供する。
9.製品の使用頻度を増加させる。
(3)
想起型
消費者にそのブランドを思い起こさせる。
1.近いうちにその製品が必要になるであろうことを顧客に思い出させる。
2.その製品がどこで販売されているのか思い出させる。
3.オフシーズンの間も顧客の心にその製品の存在を残す。
4.トップオブマインドの認知(特定の商品を思い起こすときに最初に名前が挙げられること)
を獲得し維持する。
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<広告の種類>
1.広告の意義
広告とは、特定のスポンサーがいて、それが費用負担する媒体を通じて伝えられる、意見、製品、お
よびサービスなどのノンパーソナル・プレゼンテーションによるプロモーションの形式である。
2.広告の種類
テレビ広告や新聞広告など媒体別による広告の種類は一般的であるが、
同じテレビ広告でも訴求相手、
訴求地域、訴求内容などによっても分類することができる。
(1)
訴求対象者別
広告の訴求対象者が誰であるかによって消費者広告、産業広告、流通広告の3つに分類される。
消費者広告
製品を自己の消費の目的で購入する人々に対して行われる広告で、広告の大部分はこれ
にあたる。
産業広告
産業用品もしくは業務用品と呼ばれる原材料や、業務用目的のために使用される製品の
広告である。
流通広告
「業者広告」とも呼ばれ、メーカーにより、再販売の目的で製品を購入する卸・小売業
者向けになされる広告である。
(2)
訴求地域別
広告が全国的規模で行われるのか、それとも限られた一地域だけ行われるのかによって、全国広告、
ブロック広告、地域広告に分かれる。
全国広告
新聞、テレビなどマス・メディアをとおして行われる広告で、全国的に販売網をもっ
ているメーカーが広告主の場合が多いが、最近では、全国的に販売力を身につけてき
た小売店によってもなされるようになってきた。
ブロック広告
「リージョナル広告」とも呼ばれ、数県にまたがって行われる広告である。中小規模
のメーカーや、数県にわたる顧客を対象としている小売業者などにこの広告主が多い。
地域広告
「地元広告」ともいわれ、県内を商圏とする小売業者によって行われることが多い。
ローカル紙ばかりでなく、テレビやラジオを媒体として使う地域広告も最近は増えて
きた。
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(3)
広告目的別
広告の対象となるものの違いによって、製品広告と企業広告とに分かれる。
製品広告
製品の名称、性能、優位性などを知らせ、購買を促す広告で、大部分の広告がこれにあた
る。
企業広告
自社企業のイメージやパトロネージ(愛顧心)の獲得増進のための広告である。
(4)需要創造別
広告は製品のライフ・サイクルによってその内容、目的が変わってくる。
開拓的広告
製品が市場へ出始めた時期である導入期や、市場で地歩を固める確立期には、広告は需
要開拓的目的でなされるので、この種の広告を開拓的広告という。
競争広告
ライフ・サイクルの成長期、成熟期には、シェアの拡大を目指して競争は最も激しくな
る時期で、品質、価格、サービスなどあらゆる点で競争を意識した広告(=競争広告)
がなされる。
維持広告
ライフ・サイクルの最後の段階である衰退期は、いかにして売上の減少を防ぎ維持する
かということに広告の目的が絞られるので、この種の広告を維持広告という。
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<広告表現とメディア>
1. 広告表現の意義
広告の使命は、情報の送り手が意図した「心理変容」さらに「態度変容」を情報の受け手にもた
らすことである。そのためには、情報の受け手、つまりターゲットを想定し、情報を加工して狙い
を絞り、確実に到達させ、効果を上げるための工夫が必要となってくる。それが広告表現である。
朝、新聞をひらくと載っている車のモデルチェンジ広告。
テレビから聞こえてくる新しいビールの新発売広告。
ふだんなにげなく接しているさまざまな広告にも、そのひとつひとつにそれぞれの「広告目的」があ
り、
「コンセプト」が設定されて、具体的な広告表現が作られている。
広告したい商品を、
どんなコトバで伝えるか。
どんな映像で見せるか。
どんな媒体にのせるか。
それぞれ専門の技術をもった人間がアイデアを出し合って作られた表現が、世の中に現われてくるの
である。
2.広告表現とメディア(媒体)
広告表現にもさまざまなメニューがある。
『どのような商品を広告するのか』
、
『タ一ゲットは誰か』
、
『伝えたいのは商品か、企業姿勢か』
、いろいろな条件によって、有効な媒体を選び、その媒体に合った
表現を作っていくことになる。
(1)
新聞広告
新聞のページをめくるときの気持ちを思い出してみよう。「きょうは世の中何が起きているのだろう
…」
、こんな気持ちに入っていくときであるから、新聞広告は有効である。たとえば、新製品の発売や企
業名の変更などを、社会的なニュースとして伝えることができる。キャンペーンでは、節目となるタイ
ミングに新聞広告を出すことが多い。
(2)テレビCM
テレビCMは、いきなり目に飛び込んでくる。音が耳に残る。そこで、商品の使い方を見せたり、名
前を耳で覚えさせることができる。また食品などの、いかにもおいしそうに「そそる感じ(=シズル)」
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なども伝えやすい。広告の中では、最も人の感覚に訴える表現ができる。それだけにインパクトが強く
話題になりやすいので、世の中の注目を集めるアイデアが必要である。
(3)雑誌広告
雑誌は年齢、性別、趣味などで、はじめからターゲットが絞られている。商品のターゲットに合わせ
て雑誌を選べば、より実感のある表現を盛り込むことができる。たとえば、化粧品は女性誌で女性の気
持ちをつかむ表現をしている。また、同じ読者が同じ雑誌を読むことが多いので、キャンペーンでは、
雑誌にシリーズ広告を展開して、ブランドイメージを形成していくことができる。
(4)ラジオCM
ラジオを聴いている場面を想像してみると、仕事をしながらだったり、運転をしながらだったりと、
たいてい「ながら聴き」である。そういう聴き手を音だけで引きつけなければならない。効果音や歌、
タレントの肉声などを使って、耳を傾けさせる表現がされている。
(5)DM(ダイレクト・メール)
自分宛に届いた封筒には、なにかいい情報が入っていそうな気がする。そこを狙うDMも広告のメニ
ューのひとつである。ターゲットが特定の個人なので、より絞り込んだ情報を送ることができる。また、
リアクションも期待できる。
(6)インターネット
インタラクティブ(双方向)なコミュニケーションが可能なインターネット。これまでの媒体と画期
的に違うのは、利用者自身がその場で情報を選択できるところである。したがって、相手の好みに応じ
てよりきめ細かい表現も可能である。
(7)キャンペーン
いくつかの媒体を使って、ある期間にわたり広告活動を展開するのが「キャンペーン」である。キャ
ンペーンを行うと、生活者はいろいろな場面でその広告情報に接することになる。昨夜テレビで見た商
品の広告を次の日は雑誌で読む、という具合である。つまりキャンペーンは、媒体の特性に合わせた表
現を組み合わせて、いろいろなカタチで広告情報を届けることができるのである。
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<価格はどのように決める?>
■
製品につけられる価格は、利益が生じ(つまりコストよりも高く)
、しかも需要が発生する範囲内で
設定する必要がある。また、競合ブランドの価格、競合店の価格などを考慮して価格は決定される。
つまり、価格決定には、
「コスト」
「需要」
「競争」という3つのポイントが考慮される。
【価格設定の方法】
1.コストに基づいた価格設定(利益は出るのか?)
企業が安定した利益を得ることを目的として価格を設定する方法である。大きく分けて以下の2つの
種類がある。
A.コストプラス法
コスト(原材料費、人件費、宣伝広告費、物流費など)にある一定の利益率を加えて価格を設定す
る方法。
B.目標利益確保価格法
前年の平均原価とその年の目標利益から価格を決める方法。この方法では、売れ行きが前年より大
幅に悪い場合に、赤字になってしまう危険性もある。
2.需要に基づいた価格設定(買ってもらえるのか?)
生産者側の原価ではなく、消費者の意識や所得の額(支払い能力)をもとにして価格を決める方法で
ある。製造原価とは別に、その製品を消費者がどれほど欲しいと思っているか、いくらくらいまでなら
支払うつもりがあるのかを調査し、それをもとにして売価を決める。
先に価格を決めて、後からコストがいくらかかるか、利益がどれくらい上がるかを計算し、それに見合
う製品をつくるという方法もある。電化製品や車などの価格を決めるときにこの方法が用いられること
が多い。
3.競争に基づいた価格設定(選んでもらえるのか?)
同じ製品を販売している他の競合会社と競争することを念頭において価格を決める方法である。
例えば、ある製品を売り出そうとしたとき、他の会社が同様の製品にいくらの価格をつけて売っている
のかを調べて、それよりも安い価格を設定したり、同じ価格に設定したりすることがこれにあたる。生
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鮮食品やガソリンのように品質で差をつけにくい製品や、他社よりも遅れて開発・発売した製品で他社
との差をつけたい場合などにこの方法で設定する。
■
この他、消費者の心理面を考慮して価格を設定する方法もある。
【消費者の心理面を考慮した価格設定方法】
1.端数価格
「1,980 円」
「98 円」といった端数のついた価格で、2,000 円、100 円などよりさらに値引きした「最
大限まで引き下げた価格である」というイメージを与えるための価格である。
2.慣習価格
消費者の間で、その価格が浸透していて、それ以上でもそれ以下もで売れない価格である。
3.名声価格
消費者が価格が高いことによってその製品を買うというケースである。ブランド物などの高級品が
この価格をつけている。
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<価格設定の方法>
■
前回、前々回で見てきた「需要の価格弾力性」、
「新製品の価格政策」
、
「心理的価格政策」などに基
づいて価格設定が行われる。製品につけられる価格は、利益が生じ(つまりコストよりも高く)
、しかも
需要が発生する範囲内で設定する必要がある。また、競合ブランドの価格、競合店の価格などを考慮し
て価格は設定される。つまり、価格設定には、
「コスト」
「需要」
「競争」という3つのポイントが考慮さ
れる。
(1)コスト志向型価格設定
コスト志向型価格設定は企業が安定した利益を得ることを目的として価格を設定する方法で、「コス
ト・プラス法(値入れ価格設定)
」や「損益分岐点を用いた価格設定法(目標利益価格設定)
」などがあ
る。
1.コスト・プラス法
コスト(原材料費、人件費、宣伝広告費、物流費など)に一定の利益を加えたものを、販売価格
にしようとする最も単純な方式である。以下のような計算方法で求めることができる。
2.損益分岐点を用いた価格設定法
損益分岐点売上数量を越えた場合には黒字が発生し、損益分岐点売上数量を越えなかった場合に
は赤字が発生するという点を考慮したうえで設定される価格設定方法である。損益分岐点販売数量
は、以下のような計算方法で求めることができる。
(2)需要志向型価格設定
生産者側のコスト(原価)ではなく、消費者の意識や所得の額(支払い能力)をもとにして価格を決
める方法である。製造原価とは別に、その製品を消費者がどれほど欲しいと思っているか、いくらくら
いまでなら支払うつもりがあるのかを調査し、それをもとにして売価を決める。先に価格を決めて、後
からコストがいくらかかるか、利益がどれくらい上がるかを計算し、それに見合う製品をつくるという
方法もある。
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(3)競争志向型価格設定
同じ製品を販売している他の競合会社と競争することを念頭において価格を決める方法である。例え
ば、ある製品を売り出そうとしたとき、他の会社が同様の製品にいくらの価格をつけて売っているのか
を調べて、それよりも安い価格を設定したり、同じ価格に設定したりすることがこれにあたる。
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<心理的価格政策>
■
心理的価格政策は、理性に訴えるよりも、むしろ「顧客の心理面に訴えて購入を促そう」とする価
格政策である。
この政策は、
最終消費者に対する価格設定を行う小売店の段階で用いられることが多い。
1.威光価格(名声価格)
買い手に品質の良さを印象づけるために、意識的に高く付けられた価格(威光価格)である。高級
品やぜいたく品などのように購入頻度が低く、消費者が品質を判断しにくい製品の場合に多く用いら
れる。
2.慣習価格
長期にわたって一定している価格が、買い手によって受容されている場合に、引き続き同じ水準で
設定される価格である。慣習価格は、一度形成されると固定的になり、たとえ慣習価格より低い価格
が設定されても需要はあまり伸びず、逆に高めの価格が設定されると需要は大きく減少する。
3.端数価格
ちょうど 10,000 円というように、区切れの良い価格を付けるのでなく、9,980 円などのように9や
8などの端数を使って設定される価格である。
10,000 円と 9,980 円ではわずか 20 円しか差がないが、
端数価格を設定することによって、消費者は20円以上の差があるという心理的な印象を受けるので
ある。
4.プライス・ライニング
ネクタイやベルトに代表されるように商品によっては、消費者が一定の価格の範囲内では価格の小
さな相違を気にせず購入するものがある。このような商品の場合には、1つひとつに異なった価格を
つけるよりは、高級品、中級品、低級品といった区分を設け、それぞれのクラスに見合った価格をつ
けている。これを「プライス・ライニング」と呼んでいる。小売業では、このようにして、多くの商
品を数種の価格にまとめている。
5.マルチプル・ユニット・プライス
これは2個で80円、5個で 150 円というように、2つ以上の複数商品をひとまとめにしてそれに
設定された価格である。マルチプル・ユニット・ブライスは、1 個ずつ買うよりは一括購入すること
によって、単位あたり商品価格は安くなるという消費者心理を利用したものである。これによって小
売業者は売る手間を省き、大量の商品を売りさばくことができる。
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