平成 24 年度大阪 CDE 認定試験 1)糖尿病療養指導士の役割として正しい組み合わせはどれか。2つ選べ。 a 服薬指導——————————————————————事務補佐員 b 運動療法指導——————————————————理学療法士 c 食事摂取量決定————————————————栄養士 d インスリン量の変更————————————薬剤師 e 血糖自己測定の指導————————————看護師 正解:b,e 解説:食事摂取量の決定やインスリン量の変更は、医師が行う。服薬指導は、医師や薬剤 師が行う。 2)療養指導について正しい記述はどれか。1つ選べ。 a 自分の専門性に関わる内容のみカルテに記載する。 b 患者のエンパワーメントは不要である。 c 病院や診療所以外では行わない。 d 保険診療として認められていない。 e 合併症進展阻止が目標である。 正解:e 解説:療養指導の活動場所は、病院・診療所の他、保健所や老人福祉関連施設、リハビリ テーションセンター、など多岐に渡る。療養指導の保険点数については、2008 年から糖 尿病合併症管理料が新設され、フットケアの保険点数が認められた。 3)糖尿病に特有の合併症はどれか。1つ選べ。 a 蛋白尿 b 高血圧 c 増殖網膜症 d 急性心筋梗塞 e 神経因性膀胱 正解:c 解説:蛋白尿は腎疾患一般に認められる。心筋梗塞や神経因性膀胱は糖尿病の合併症と して知られているが、必ずしも糖尿病を合併していなくても認められる。 4)糖尿病の病態について誤っているものはどれか。1つ選べ。 a 糖尿病は慢性高血糖状態を主徴とする代謝症候群である。 b 1型糖尿病はインスリンの相対的不足が原因で生じる。 c 劇症1型糖尿病はケトアシドーシスを伴って発症する。 d 2型糖尿病の発症は遺伝的素因が関与する。 e 2型糖尿病の治療は食事療法が基本である。 正解:b 解説:b 相対的→絶対的 1 平成 24 年度大阪 CDE 認定試験 5)ただちに糖尿病と診断できるのはどれか。1つ選べ。 a 尿糖陽性 b 空腹時血糖 140mg/dl c 随時時血糖 140mg/dl d 75gOGTT 2時間血糖 140mg/dl e 空腹時血糖 140mg/dl かつ HbA1c (NGSP) 7.4% 正解:e 解説:糖尿病治療ガイド 2012-2013 P20 参照 6)妊娠糖尿病について正しいものはどれか。1つ選べ。 a 既に診断されている糖尿病も含まれる。 b 75g 経口糖負荷試験は禁忌ではない。 c 出産後の経過観察は必要ない。 d ビグアナイド薬の適応である。 e 患者数は減少している。 正解:b 解説:妊娠糖尿病には明らかな糖尿病は含めない。また、妊娠糖尿病の診断基準は 、 75gOGTT において、次の基準の1点以上を満たした場合に診断する<空腹時血糖値 ≧92mg/dl、1 時間値≧180mg/dl、2 時間値≧153mg/dl>。母体の糖代謝異常が出産後一旦 改善しても、一定の期間後に糖尿病を発症するリスクが高いことにあるので、定期的な 経過観察が重要である。妊娠中の血糖コントロールの目標は、朝食前血糖値 70〜 100mg/dl、食後 2 時間血糖値 120mg/dl 未満、HbA1c 6.2%未満。 7)メタボリックシンドロームの診断基準について誤っているものはどれか。1つ選べ。 a ウエスト周囲径 90 cm 以上(男性) b 収縮期血圧 130 mmHg 以上 c 拡張期血圧 85 mmHg 以上 d 空腹時血糖 110 mg/dl 以上 e 高トリグリセリド血症 150 mg/dl 以上 正解:a 解説:ウエスト周囲径は男性 85 cm 以上, 女性 90 cm 以上である。拡張期血圧は 85 mmHg 以上が基準である。 2 平成 24 年度大阪 CDE 認定試験 8)合併症について正しいものはどれか。1つ選べ。 a 起立負荷試験は副交感神経機能を反映する。 b アキレス腱反射は正常では陽性である。 c 腎症は臨床徴候により分類される。 d 単純網膜症は視力低下をきたす。 e 網膜症は 2 病期に分類される。 正解:b 解説:CVR-R や深呼吸心拍変動は副交感神経を反映し、起立負荷試験は交感神経を反映 しているといわれている。腎症は蛋白尿と腎機能検査の検査値より分類される。網膜症 の病期は単純、前増殖、増殖の 3 期に分類され、単純網膜症で視力障害をきたすことは稀 である。 9)検査について誤っているものはどれか。1つ選べ。 a HbA1c は過去 1~2 ヵ月の平均血糖値を反映する。 b グリコアルブミンは妊娠糖尿病の管理に有用である。 c 1,5-アンヒドログルシトールは高血糖では低下する。 d 尿糖は血糖値が約 126 mg/dl を超えると陽性になる。 e 血液中のケトン体が増加するとアシドーシスをきたす。 正解:d 解説:グリコアルブミンは過去 2 週間の平均血糖値を反映する。尿糖は血糖値がおよそ 160~180 mg/dl を超えると陽性となる。 10)食品交換表における食品分類表で表 1(主に炭水化物を含む食品)に分類され るものはどれか。1つ選べ。 a 牛乳 b 豆腐 c りんご d かぼちゃ e アボカド 正解:d 解説:表1に含まれる野菜としては、ほかにいも類、れんこん、とうもろこし、くりなど が挙げられる。また大豆は表 3 だが、あずき、そらまめ、グリーンピースは表 1 に含まれ る。これらの食品を料理に含む場合は、主食の量を調整する必要がある。 3 平成 24 年度大阪 CDE 認定試験 11)食事療法において誤っているものはどれか。1つ選べ。 a 副食は大皿盛りとする b 3食の摂取カロリーを均等に配分する c 同じ糖質量を含む食品を摂取しても、血糖値に及ぼす影響が異なる d 表 6 の食品のうち 1 日量の 1/3 以上は緑黄色野菜を摂るようにする e 肉や魚の料理には、海藻類や野菜料理を添えてボリューム感をもたせる 正解:a 解説:副食は実際に食べた量を把握しやすいように個別に盛ったほうがよい。 12)糖尿病患者の運動について、正しいものはどれか。1つ選べ。 a 心拍数を測定する b 早朝に行う c 無酸素運動がすすめられる d レジスタンス運動をさける e 1日に集中しておこなう 正解:a 解説:心拍数は運動強度の目安になる。運動は食後 1~2 時間が最適である(食後高血 糖の是正効果)。薬物治療中でない 2 型糖尿病患者では、食前の運動を許可してもよい が、早朝は不適当である。歩行、ジョギング、水泳、自転車など全身の筋肉を使った有酸素 運動がすすめられる。筋力、筋量を増加させるレジスタンス運動は、基礎代謝量の維持・ 増加や、関節疾患の予防など、高齢者には特に有効である。運動によりインスリン感受性 が改善するが、その運動の効果は、3 日以内に低下し 1 週間で消失するとされるので、週 3~5 回に分けて行ったほうが効果的である。 13)糖尿病合併症と運動の適否について、誤った組み合わせはどれか。1つ選べ。 a 単純網膜症——————————————————————ウォーキング b 増殖網膜症——————————————————————レジスタンス運動(抵抗運動) c 腎症 2 期(早期腎症期)——————————自転車 d 腎症 4 期(腎不全期)————————————軽い散歩 e 知覚障害————————————————————————水泳 正解:b 解説:活動性の増殖網膜症の場合、激しい運動は禁止する。運動可能な場合でも、低血糖 と血圧の急激な上昇を避けることが必要である。とくに収縮期血圧の変化の大きいレジ スタンス運動はさけるべきである。 4 平成 24 年度大阪 CDE 認定試験 14)ヨード造影剤使用の際、中止する必要がある薬剤はどれか。1つ選べ。 a スルホニル尿素薬 b チアゾリジン薬 c ビグアナイド薬 d DPP-4阻害薬 e α―グルコシダーゼ阻害薬 正解:c 解説:乳酸アシドーシス防止のため、ヨード造影剤使用の際は、使用の2日前から2日 後までの間投与を中止する(CDE 講習会テキスト P27 参照)。) 15)インスリン療法の絶対的適応でないのはどれか。1つ選べ。 a 妊娠 b 静脈栄養 c 高血糖性昏睡 d 重度腎障害合併 e ステロイド治療 正解:e 解説:ステロイド治療時のインスリン療法は相対的適応( CDE 講習会テキスト P28 参 照) 16)インスリン吸収速度を遅延させる因子はどれか。1つ選べ。 a 運動 b 食事 c 高温 d 喫煙 e 局所マッサージ 正解:d 解説:運動、食事、高温、局所マッサージはインスリン吸収速度を亢進させる(CDE 講習 会テキスト P31 参照) 5 平成 24 年度大阪 CDE 認定試験 17)糖尿病に合併した高血圧症での第一選択薬はどれか。1つ選べ。 a アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB) b カルシウム拮抗薬 c 利尿薬 d α 遮断薬 e β 遮断薬 正解:a 解説:高血圧治療ガイドライン 2009 にて ACE 阻害薬、ARB が第一選択薬として推奨され ている(糖尿病治療ガイド 2010 P66 参照) 18)高浸透圧性高血糖症候群でみられる身体所見はどれか。2つ選べ。 a 皮膚ツルゴール低下 b Kussmaul 大呼吸 c アセトン臭 d けいれん e 血圧上昇 正解:a,d 解説:高浸透圧性高血糖症候群では著明な脱水(皮膚ツルゴール低下)や血圧低下、神 経学的所見(けいれん、振戦など)を認めるが、明確で特異的な所見に乏しい。Kussmaul 大呼吸、アセトン臭は糖尿病性ケトアシドーシスでみられる所見であり、糖尿病性ケト アシドーシスでは神経学的所見は乏しい。 19)糖尿病性ケトアシドーシスの誘因として誤りはどれか。1つ選べ。 a 感染 b ストレス c メトホルミン d 清涼飲料水多飲 e インスリン中止 正解:c 解説:メトホルミンは特に腎機能が低下した患者に投与すると乳酸アシドーシスの原 因となりやすい。その他の項目は糖尿病ケトアシドーシスの原因となる。 6 平成 24 年度大阪 CDE 認定試験 20)1型糖尿病を発症した幼児の療養指導について正しいものはどれか。1つ選べ。 a 疾患管理は母親に一任する。 b 合併症についての話はしない。 c HbA1c が上昇した時は叱責する。 d 低血糖時のグルカゴン注射を指導する。 e 血糖測定に興味を示しても触らせない。 正解:d 解説:父親、祖父母にも指導や教育を行う。治療に当たっては糖尿病の管理だけでなく、 心理面にも配慮し、患者や家族が病気を需要しやすくすることが大切である。グルカゴ ン注射は乳幼児にも投与可能であり、手技を家族全員が把握しておく。血糖測定に興味 を示せば手伝わせ、実施できたことをほめる。 21)糖尿病合併妊婦について正しいものはどれか。1つ選べ。 a 網膜症は悪化しない。 b インスリン必要量が減少する。 c 肥満があれば体重を減少させる。 d 妊娠 8 週までに奇形の有無は決定される。 e 食後 2 時間血糖 140mg/dl 未満を目標とする。 正解:d 解説:前増殖性網膜症及び増殖網膜症は妊娠により悪化することが多い。妊娠の経過と ともにインスリンの需要は増加する(分娩直前には少し減少することがある)。低カロ リーにしすぎると妊婦はケトーシスになりやすい。肥満妊婦の栄養に関しては現時点で は一定の知見はないが、少なくとも体重減少に努める時期ではない。妊娠初期のコント ロールが悪いと奇形の発生率が高いため、妊娠前からのコントロールが重要となる。妊 娠中は食前血糖 70~100mg/dl、食後 2 時間値血糖 120mg/dl 未満を目標とする。 22)糖尿病網膜症で光凝固療法の適応となるのはどの段階からか。1つ選べ。 a 正常期 b 単純網膜症期 c 増殖前網膜症期 d 早期の増殖網膜症期 e 硝子体出血を認めた時期 正解:c 解説:増殖前網膜症、早期増殖網膜症の段階で失明予防の観点から光凝固療法を 施行することで網膜症の進行を阻止、または遅らせることができる。 硝子体出血、網膜剥離は硝子体手術で対応する。 7 平成 24 年度大阪 CDE 認定試験 23)糖尿病腎症で蛋白質制限食(0.8~1.0 g/㎏/日)の適応となるのはどの段階か らか。1つ選べ。 a 第 1 期 b 第 2 期 c 第 3A 期 d 第 3B 期 e 第4期 正解:c 解説:蛋白質制限食を腎症 3A 期から開始することで尿蛋白の減少、ひいては腎障害の 進行を抑えることができるとの報告がある。 「食品交換表」を用いる糖尿病食事療法指導 のてびき第 2 版参照。 24)糖尿病性神経障害の自覚症状として不適切なものはどれか。1つ選べ。 a 頭位変換時のめまい b 手袋型異常知覚 c 勃起障害 d 残尿感 e 便秘 正解:a 解説:頭位変換にて誘発されるめまいは内耳に起因する疾患である。 25)高齢者糖尿病患者について適切でないものはどれか。1つ選べ。 a 低血糖症状が出現しにくい。 b 運動療法は必須ではない。 c 介護者に対する栄養指導が有効である。 d 患者自身の食習慣に配慮して指導する。 e HbA1c は若年者より低値を目標とする。 正解:e 解説:高齢者においては、口渇などの高血糖症状および低血糖症状が出現しにくいため、 注意が必要である。若年者より低い HbA1c 値を目標とすると低血糖のリスクが高まる。 また、ADL などに個人差が大きいため、個々に合わせた運動療法や食事療法を指導する 必要がある。 8 平成 24 年度大阪 CDE 認定試験 26)療養指導について正しいものはどれか。1つ選べ。 a 「カロリーオフ」の表示のある飲料水の摂取制限は不要である。 b アルコールは、食品交換表の表1と交換可能である。 c コーヒーは血糖を上昇させない。 d 禁煙は血糖を上昇させる。 e 禁煙補助薬は避ける。 正解:c 解説:100ml 当たり 20kcal 未満であれば「カロリーオフ」と表示できるため、 「カロリー オフ」の飲料水でも血糖値は上昇しうる。コーヒーは砂糖などを入れなければ血糖値に 影響しない。禁煙の際にニコチンパッチなどの補助療法を使用することは構わない。 27)糖尿病患者におけるセルフケア行動について誤っているものはどれか。1つ選べ。 a セルフケア行動の実行度は、種類によって異なる。 b 生活習慣の大きい変更を伴う治療法の実行度が低い。 c 異なるセルフケア行動間の実行度の関連性は低い。 d セルフケア行動の実行度は、時間とともに変化する。 e セルフケア行動の実行度と HbA1c は相関しない。 正解:e 解説:セルフケア行動の実行度と HbA1c は相関する。しかしその関連性は強くない。 (糖尿病療養指導ガイドブック 2011 P100、大阪 CDE 認定機構基礎講習会資料 P38 参 照) 28)セルフケア行動に影響する心理・社会的要因において内的要因に 含まれないも のはどれか。1つ選べ。 a セルフエフィカシー b 家族の協力のあり方 c ヘルスビリーフ d ストレス e 認知機能 正解:b 解説:家族の協力のあり方は外的要因(環境要因)に含まれる。肯定的な援助は促進的 に、否定的なかかわり方は妨害的に働く。(糖尿病療養指導ガイドブック 2011 p.101、 大阪 CDE 認定機構基礎講習会資料 P38-39 参照) 9 平成 24 年度大阪 CDE 認定試験 29)行動変化を促進するための援助について正しいものはどれか。1つ選べ。 a HbA1c や血糖値をもとに、実行を促す。 b 問題行動について、一方的に指導する。 c 知識、意欲、報酬の3つの条件が必要である。 d 準備状態は行動連鎖のうち納得に主に影響している。 e セルフエフィカシーは行動連鎖の意図と実行に主に影響している。 正解:e 解説:習慣を変えるためには、知識、意欲、技術の3つの条件が必要である。行動変化の 準備状態は、行動連鎖のうち注目に主に影響している。信頼関係が確立したうえで、患者 自身の問題解決能力を高めるようなカウンセリングの姿勢が必要である。また、 HbA1c や血糖値といった行動の結果ではなく、行動達成の有無を重視する。(糖尿病療養指導 ガイドブック 2011 P104-105、大阪 CDE 認定機構基礎講習会資料 P39-40 参照) 30)変化ステージを促進する援助における介入法として適切ではないものはどれか。 1つ選べ。 a 前熟考期に感情を聞く。 b 熟考期に利益・障害のバランスを変える。 c 行動期にセルフエフィカシーを用いたアプローチを利用する。 d 維持期に患者会活動を勧める。 e 再発に対して、不適切な行動の引き金となった考え方を調べる。 正解:c 解説:行動期には①より高度な知識と技術の提供、②問題解決技術、③再発予防訓練、④ 行動療法(強化など)といった介入法が適切である。(糖尿病療養指導ガイドブック 2011 P105-106、大阪 CDE 認定機構基礎講習会資料 P40-41 参照) 31)重症合併症をきたした患者への援助として誤っているものはどれか。1つ選べ。 a 現状がどう認識されているかを明らかにする。 b 悲嘆期から解消期への変化を急がせる。 c 感情が表現できる場を提供する。 d 利用できる社会資源を伝える。 e 自殺念慮に注意する。 正解:b 解説:悲嘆のプロセスは正常な適応過程であり、急がせることはできない。(糖尿病療 養指導ガイドブック 2011 P108 参照) 10 平成 24 年度大阪 CDE 認定試験 32)患者教育の意義について誤っているものはどれか。1つ選べ。 a 知識の習得 b 自己管理の動機づけ c 糖尿病の心理的受け入れ d 治療に対する心構えの形成 e 糖尿病に対する不安感の形成 正解:e 解説:患者教育においては、知識や技術の取得のみならず、自己管理への動機づけや、糖 尿病の心理的受け入れなども重要な意義である。教育により治療法の種類と治療の意味 を理解することで、患者は治療に対する心構えができる。さらに正しい知識を得ること で、糖尿病に対する不安や恐怖を取り除くことが可能になる(糖尿病療養指導ガイドブ ック 2011 P111 参照)。 33)患者教育の原則について誤っているものはどれか。 1つ選べ。 a 共感的な姿勢 b 信頼関係の確立 c 十分な情報提供 d 「開かれた質問」の利用 e 受動的な知識授受型の教育 正解:e 解説:患者教育においては、患者自身が能動的に学習することが有効であり、受動的な 知識授受型の教育ではない。患者と医療者間の信頼関係が確立されることが重要であり、 患者に十分な情報が提供されていることが必須である。さらに信頼関係が確立されるま では、患者の感情や考えに耳を傾け共感を示すことも大切である。 「開かれた質問」は患 者との代表的なコミュニケーション技術であり、イエスやノーで答えられない疑問詞で 始まる質問で、患者の立場からみた光景が把握できる(糖尿病療養指導ガイドブック 2011 P112 参照)。 11 平成 24 年度大阪 CDE 認定試験 34)個別指導による患者教育の長所について正しいものはどれか。2つ選べ。 a 患者個々の状況把握 b スタッフの効率的活用 c プライバシーへの配慮 d 一方通行的な意思疎通 e 患者間の相互作用の醸成 正解:a,c 解説:個別指導では患者個々の状況に即した指導ができ、患者と医療者との相互作用を 重視したかかわりが取りやすいという利点がある。さらに場所が確保できればプライバ シーに配慮した指導が可能である。一方では、直接患者同士の相互作用が生まれにくい、 人手や時間がかかるというデメリットがある(糖尿病療養指導ガイドブック 2011 P116 参照)。 V(作成者:小澤) 35)糖尿病教室について誤っているものはどれか。1つ選べ。 a 講師は専門用語を多用する b 効率のよい教育方法である c 受講患者のアンケートを活用する d 最新の研究は患者の関心度が高い e 繰り返し受講することは有用である 正解:a 解説:糖尿病教室はグループを対象とした効率のよい、系統的な教育方法である。講師 は専門用語を避け、やさしい言葉でわかりやすく話すことが重要である。さらに、教室の 内容は多すぎたり難解なものは敬遠される。一度受講しても理解が不十分な場合、忘れ てしまう場合があるため、再受講することの意味は大きい。受講患者のアンケートを参 考に、患者の希望にあったプログラムの見直しが必要である(糖尿病療養指導ガイドブ ック 2011 P117 参照)。 12 平成 24 年度大阪 CDE 認定試験 36)糖尿病の治療目標として正しいものはどれか。1つ選べ。 a LDL コレステロール 120mg/dl 未満 b 食後2時間血糖値 300mg/dl 未満 c 収縮期血圧 160mmHg 未満 d 中性脂肪 40mg/dl 未満 e BMI 20 正解:a 解説:血糖値:空腹時血糖値 130mg/dl 未満、食後2時間血糖値 180mg/dl 未満。血圧: 収縮期血圧 130mmHg 未満、拡張期血圧 80mmHg 未満。脂質:LDL コレステロール 120mg/dl 未満、中性脂肪 150mg/dl 未満、HDL コレステロール 40mg/dl 以上。体重:BMI=22。以上を 目標とする。 37)54 歳の男性。2年前から糖尿病治療中である。前回来院時の検査では空腹時血糖 140 mg/dl, HbA1c 7.3 % (NGSP 値)であった。 血糖コントロールの評価で正しいのはどれか。1つ選べ。 a 優 b 良 c 不十分 d 不良 e 不可 正解:c 解説:糖尿病治療ガイド 2012-2013 P25 参照 38−39)24 歳の男性。1週間前に発熱を自覚。口渇、多尿、悪心が次第に増悪するた め来院した。体温 37.8℃、脈拍 80/分、血圧 118/60mmHg、尿糖3+、尿ケトン2+、血糖 776mg/dl、HbA1c 7.2% (NGSP)、血中 C ペプチド<0.3ng/ml.動脈血液ガス pH 7.26、BE2.4. まず行うべき治療はどれか。2つ選べ。 a 抗菌薬 b ステロイド c 生理食塩水 d スルホニル尿素薬 e 速効型インスリン 正解:c,e 解説:本症例は、尿糖3+、尿ケトン2+、血糖値 776mg/dl、血液ガス pH 7.26、BE-2.4 よ り糖尿病性ケトアシドーシスである。輸液とインスリン持続投与を行う。 13 平成 24 年度大阪 CDE 認定試験 この患者の経過観察の要点について誤っているものはどれか。1つ選べ。 a チームによる教育 b 自己血糖測定 c 定期的通院 d 血圧の定期的測定 e 厳格なカロリー制限 正解:e 解説:糖尿病症状発現から糖尿病ケトアシドーシスと診断されるまで1週間未満であ ること、高血糖のわりには HbA1c 7.2%と低いこと、発症血中 C ペプチド<0.3ng/ml より、 糖尿病性ケトアシドーシスを伴って発症した劇症1型糖尿病と考えられる。 (糖尿病療 養指導ガイドブック 2011 P14 用語解説)。1型糖尿病、特に劇症1型糖尿病はインスリ ン依存状態であり、インスリン療法は不可欠である。 (糖尿病療養指導ガイドブック 2011 P14 参照) 40)55 歳の男性。6 年前、心筋梗塞で入院した際、糖尿病と診断された。4 年前からスル ホニル尿素薬を内服している。身長 172 cm, 体重 73 kg, 腹囲 88cm, 血圧 164 / 92 mmHg。空腹時血糖 142 mg/dl, HbA1c 7.6 % (NGSP)。蛋白尿(-), 微量アルブミン尿 10.2 mg/gCrea。眼底検査において、網膜症は認めない。 この患者の治療目標に関して正しいものはどれか。1つ選べ。 a 血圧 140 / 90 mmHg 未満 b HbA1c 7.9% (NGSP)未満 c LDL コレステロール 120 mg/dl 未満 d 中性脂肪<トリグリセリド>150 mg/dl 未満 e BMI 20 正解:d 解説:血圧は 130 / 80 mmHg が目標値。血糖コントロールの目標は「優または良」HbA1c 6.9 % 未満(NGSP)である。LDL コレステロールの目標は冠動脈疾患のある場合は 100 mg/dl 未満である。 14 平成 24 年度大阪 CDE 認定試験 41)62 歳の男性。健康診断で高血糖を指摘され来院した。身長 166cm, 体重 72kg, 腹 囲 89cm, 血圧 120 / 80 mmHg。空腹時血糖 150 mg /dl, HbA1c 7.8 % (NGSP), 中性脂肪 < ト リ グ リ セ リ ド >152mg/dl, HDL コ レ ス テ ロ ー ル 42mg/dl, LDL コ レ ス テ ロ ー ル 136mg/dl, 尿アルブミン 10.2 mg/g Cr。眼科では単純網膜症と診断された。 この患者に当てはまるものはどれか。2つ選べ。 a 血糖コントロールの評価は、「不可」である。 b メタボリックシンドロームの判定基準を満たす。 c 眼底に毛細血管瘤を認める。 d 光凝固療法の適応である。 e 蛋白制限食の適応である。 正解:b,c 解説:血糖コントロールは可(不良)である。光凝固療法は進行した増殖前期から増殖 期が適応となる。腎症の病期は 1 期で、蛋白制限食の適応とはならない。 42−43)63 歳の女性。主婦。10 年前に検診で耐糖能異常を指摘されていたが、放置し ていた。検診で血糖高値を指摘され、来院した。身体所見:身長 158㎝、体重 63㎏、BMI 25.2 kg/m2、脈拍 66/分、血圧 136/84 mmHg.両側眼底は単純糖尿病網膜症、下肢腱反射 正常で両側振動覚軽度低下している。検査所見:血液所見;白血球 7200/μl、赤血球 420 万/μl、Hb 15.4 g/dl、Ht 45.0 %、血小板 22.0 万/μl 血清生化学所見;空腹時血 糖 168 mg/dl、尿素窒素 15mg/dl、クレアチニン 0.6 mg/dl、尿酸 4.0 mg/dl、TG 108 mg/dl、HDL-C 68 mg/dl、LDL-C 126 mg/dl、HbA1c 8.4 %(NGSP) 尿所見;尿蛋白(±)、尿 糖(1+)、尿ケトン(-)、尿アルブミン 60 mg/gCr(随時尿) 安静時心電図:異常所見な し 適切な 1 日の指示カロリーはどれか。1つ選べ。 a 1200 kcal b 1440 kcal c 1680 kcal d 1920 kcal e 2160 kcal 避けるべき運動はどれか。1つ選べ。 a テニス b 山登り c ジョギング d ベンチプレス e エアロビクス 正解:b,d 15 平成 24 年度大阪 CDE 認定試験 解説:身長 158cm より、理想体重は約 55kg。主婦で身体活動量は軽労作と考えると、適正 なエネルギー摂取量は 25~30 kcal/kg 標準体重で 1375~1650kcal となる。BMI 25.2 で 減量も必要であることを考えると、選択肢の中では b の 1440kcal (26.2kcal/kg 標準体 重)が適正である。 糖尿病合併症として、単純網膜症、早期腎症(2 期)、神経障害を認める。いずれも激 しい運動でなければ運動制限は不要であるが、網膜症があれば、いずれの病期でもバル サルバ型運動(息をこらえて力む運動)は避けるべきである。 44)82 歳の女性。低血糖発作にて救急車で搬送された。来院時の意識レベルは 10~20 で血糖は 30mg/dl であった。ただちにブドウ糖静注を行い、15 分に血糖測定したところ 、 187mg/dl であったが、その 90 分後には再び血糖 58mg/dl まで低下した。家族の話による と処方薬の中で経口血糖降下薬は1種類だけだという。 処方されていると思われる薬剤はどれか。1つ選べ。 a スルホニル尿素薬 b チアゾリジン薬 c ビグアナイド薬 d DPP-4阻害薬 e α―グルコシダーゼ阻害薬 正解:a 解説:スルホニル尿素薬は、高齢者で遷延性低血糖の危険がある(CDE 講習会テキスト P26 参照)。b~e は単独投与での低血糖はまれ 45)53 歳の男性。視力低下のため眼科を受診し、前増殖網膜症を指摘されたため来院 した。41 歳で糖尿病と診断され、スルホニル尿素薬による治療を受けていたが、血糖コ ントロールは不良であった。身体所見:身長 165cm、体重 68kg。脈拍 64/分、整。血圧 158/96mmHg。胸部と腹部に異常を認めない。両下腿に浮腫を認め、アキレス腱反射は消失 している。両側足底にピリピリとした自発痛がある。検査所見:尿所見;蛋白3+、糖3 +、ケトン体―.血液生化学所見;空腹時血糖 180mg/dl、HbA1c 9.2%(NGSP)、総蛋白 6.3 g/dl、アルブミン3.2 g/dl、尿素窒素 34mg/dl、クレアチニン2.0 mg/dl、LDL コ レ ス テ ロ ー ル 155mg/dl 、 ト リ グ リ セ ラ イ ド 440mg/dl、AST19IU/L、ALT18IU/L、Na138mEq/L、K 4.3 mEq/L、Cl105mEq/L。 適切でない治療はどれか。1つ選べ。 a 蛋白・塩分制限食 b ビグアナイド薬 c インスリン d アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB) e カルシウム拮抗薬 正解:b 16 平成 24 年度大阪 CDE 認定試験 解説:ビグアナイド薬は腎機能障害がある者に投与禁忌 46)15 歳の男性。2 か月前から全身倦怠感があり、1 か月前より多飲と多尿が出現した。 今朝から意識混濁を来し、救急搬送された。来院時血糖 567mg/dl、血清 Na132mEq/l、血清 K4.6mEq/l、尿蛋白±、尿糖 4+、尿ケトン 3+。動脈血ガス分析にて pH7.13、HCO38mEq/l、pO2 86Torr(room air)。 まず投与すべきものは何か。2つ選べ。 a カリウム b 生理食塩水 c ドーパミン d 重炭酸塩 e インスリン 正解:b, e 解説:若年者の高血糖で、尿ケトンやアシドーシスの出現より、糖尿病性ケトアシドー シスと診断される。糖尿病性ケトアシドーシスの初期治療の中心は、輸液とインスリン 投与である。補液は生理食塩水で行い、最初の 2~3 時間で 2~3L 補う。同時にインスリ ンも投与するが、急激な浸透圧の低下は脳浮腫を起こすことがあるため、大量静脈投与 は行わず、5~10 単位/時間程度をポンプで持続投与する。インスリン投与に伴い、血清 カリウム値が低下するため、カリウムが 5mEq/l 未満となれば補充が必要である。重炭酸 塩は pH<7.0 となれば投与を検討する。 47)13 歳の女性。8 歳時に 1 型糖尿病を発症し、インスリン強化療法を行っている。現 在、身長 150cm、体重 44.5kg、HbA1c 7.1%、尿アルブミン 18.2mg/gCre、糖尿病性網膜症は 認めない。 生活指導として正しいものはどれか。1つ選べ。 a 学校給食を食べさせる。 b クラブ活動への参加は控える。 c 修学旅行では個室に宿泊させる。 d 運動時はインスリンを増量する。 e 学校には糖尿病であることを隠しておく。 正解:a 解説:合併症の進行していない 1 型糖尿病では、運動制限や蛋白制限は必要ない。運動 前は低血糖予防のため、あらかじめインスリンを 10~20%減量することもある。食事は 食べる量や食品交換の調節を必要とすることはあるが、みんなと一緒に食べることを優 先する。クラブ活動にはむしろ積極的に参加し、目標を持った活動を奨励する。単独行動 や個室での宿泊はなるべく避ける。必要に応じて医療者より学校関係者に説明し、糖尿 病の療養について理解を得、注射や血糖測定が安心して行える環境を整える。 17 平成 24 年度大阪 CDE 認定試験 48)65 歳の男性。3 日前から 100 mほど歩くと左下肢に痛みを自覚し、数分休むと痛 みが消失することを繰り返すようになり来院した。グリメピリド 1㎎服用中で HbA1 c 7.8~8.2% (NGSP)、喫煙歴は 40 本×45 年であり、現在も 40 本/日喫煙中である。 症状、検査結果として不適切なものはどれか。1つ選べ。 a 下肢冷感 b ABI 0.9 以下 c 下肢安静時疼痛 d 足背動脈の拍動減弱 e 後脛骨動脈拍動の左右差 正解:c 解説:PAD(末梢動脈疾患)は糖尿病症例に特有ではないが糖尿病患者の 10~15%と 高頻度に合併し、喫煙はリスクファクターである。症例は Fontaine 分類Ⅱ度の間欠性跛 行をみとめて間もない時期でありⅢ度である安静時疼痛を自覚するまでは至っていな いと考えるのが妥当である。 49)80 歳の男性。経口血糖降下薬による治療を受け、HbA1c7%前後であったが、血糖コ ントロールが増悪したために受診した。娘によれば、妻が他界した 2 年前から本人の活 力が低下し、最近では物忘れも認めるようになった、とのことである。日常生活には自立 している。空腹時血糖値 187mg/dl、HbA1c 8.9%。 まず行うことはどれか。2つ選べ。 a 服薬確認 b 食事指導 c 運動療法指導 d 経口血糖降下薬追加 e インスリン治療 正解:a,b 解説:認知症の出現が疑われる高齢糖尿病患者である。血糖コントロールの増悪につい ては、活力低下による食事療法の乱れ、また物忘れによる服薬コンプライアンスの低下 をまず考慮する必要がある。服薬遵守、食事療法の改善によっても血糖が改善しない場 合には、薬物療法の変更を考慮するが、本人の理解力や社会的背景をもとに血糖コント ロール目標を設定する必要がある。 18 平成 24 年度大阪 CDE 認定試験 50)56 歳の男性。50 歳時に 2 型糖尿病と診断された。ここ 1-2 年は仕事が忙しく生活 は不規則で、食事療法を行なえておらず、外来通院も不定期となっている。身長 170 cm、 体重 75 kg、HbA1c(NGSP)7.8 %。 この時点で最も適切な対応はどれか。1つ選べ。 a 食事療法を遵守できていないことを批判する。 b 一方向的に治療について指示する。 c 家族に食事運動療法を監視させる。 d 合併症の感情的体験を強調する。 e 心理社会面について理解する。 正解:e 解説:a、b 患者に対して批判するとか、勧告するのではなく、問題を一緒に考えていく という関係であることを説明し、円滑なコミュニケーションを心がける。 d 行動変化につながるためには、予防できるのだという安心感を伴う必要があ る。 c 一緒に運動や減量努力をする、栄養指導を受けるなどの援助の仕方が望まし い。 19
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