NEWS LETTER OMOTESANDO HILLS PRESS Vol.13 (2014 年 2 月発行) 文化 人 環境 商業 ニュースレター「OMOTESANDO HILLS PRESS」は、 『文化』『環境』『人』『商業』の4つの視点から 表参道ヒルズの“今”をお届けします。 箭内道彦 月刊 風とロック展 ~愛と伝説のフリーペーパー、その神髄〜 箭内道彦氏 インタビュー 数々のヒット広告を世に送り続けるクリエイティブディレクター、箭内道彦氏。彼が私財を投じて まで、出版し続けるフリーペーパーがある。「月刊 風とロック」(定価 0 円)だ。今や、発行当日に配布 が即終了してしまうほどの人気を誇り、入手自体が難しい伝説的なフリーペーパー。“棺桶に入れて 欲しい一冊” “金持ち中学生のスクラップブック” “好きな人しか載せない” そう公言しながら、「0 円」 であることに頑にこだわる箭内氏。売ればいいのにと言われても、経済にはしたくないと、毎号数百万 円の赤字を出しながら、仕事と仕事の合間に、全部自分で作り続けてきた。 そんな「月刊 風とロック」が、ついに創刊 100 号を迎える。これを記念して、ゴールデンウィーク 期間中表参道ヒルズでは、彼のライフワークの集大成とも言える展覧会を開催する。これまで誌面を 彩った様々な著名人の写真展示や会場での生インタビューなどで構成される本展。彼はここで、何を 表現し、何を伝えようとするのか。制作秘話、撮影時のエピソードも交えながら、その想いに迫った。 ■僕がもし誰にも作れない広告を作れているとするならば、それは「月刊 風とロック」のおかげ ―「月刊 風とロック」を出版することになった、経緯を教えてください。 2003 年の 5 月 2 日に、広告代理店から独立して、ショップを併設した小さな事務所「風とロック」を 原宿に構えました。その頃、ラジオ番組「風とロック」(TOKYO FM/JFN 各局)のパーソナリティを務めて いましたが、2005 年 3 月に番組が一時休止(※2007 年 10 月に再開、現在も放送中)。このタイミングに ラジオ番組からリレーをする形で、フリーペーパー「月刊 風とロック」の発行をスタートしました。 僕自身がそれまで、東京藝術大学でデザインを学び、広告代理店のデザイナーだったことは、元気が なくなったと言われる紙媒体をあえて選んだモチベーションのひとつでした。あのインクの匂いが好きなん です。「宝物」として「所有」する「肉体性」も、「紙」ならではのものですね。 ―「月刊 風とロック」は、他のクリエイティブワークと比べて何が違いますか。 私財を投じてまで「0 円」にこだわる理由は? 広告制作は、ほぼ 100%が受注業務です。「月刊 風とロック」は逆に 100%僕からの発信メディア。 その意味では違いがあります。ただ、好きな人、好きなもの、好きなことを応援したい、多くの人に伝えたい、 その気持ちは、自分のどのクリエイティブワークにおいても一貫しています。「月刊 風とロック」がある ことで、その純度をキープし続けることができる。そして広告の仕事にその感覚がフィードバックされ続ける。 僕がもし誰にも作れない広告を作れているとするならば、それは「月刊 風とロック」のおかげです。「0 円」 にこだわるのは、誰にも媚びず誰にも何も言われずに「好き」なことだけを通したいから。この社会の経済 のサイクルの中では、絶対に成立しない形。それを持続すること自体が、リビングメッセージになっていた らうれしいですね。 ■死ぬまで作り続けます。発行人も編集長も、箭内道彦一代限り ―創刊 100 号を迎えて、何を想いますか。 創刊当時は、「月刊 風とロック」がこれだけたくさんの人に 読んで頂けるようになるとは想像できませんでした。アニバー サリーは苦手で すが、感慨はありま す 。月並みで すが、 これまで支えてくださった全ての方々、登場してくださった 全てのみなさんに、改めて心から感謝しています。死ぬまで 作り続けます。もちろん死んだら廃刊。発行人も編集長も、 箭内道彦一代限りです。 ―創刊当初から現在に至るまで、変わったこと、変わらないことは何でしょうか。 変わったことは特にありません。変わらないことは、好きな人しか載せない。ノーカットインタビュー。0 円。 僕が発行人、編集長、インタビュアー、編集者、アートディレクター、全部僕。このスタンスはずっと変わり ません。それに、「月刊 風とロック」はページ数が決まっていません。載せたい写真を組むのも自分、決裁 するのも自分、その印刷費を出すのもすべて自分なので。そのせいで異常に分厚い号がある。もちろん 赤字も大きくなります。「月刊 風とロック」をどこかの編集プロダクションに外注して大人数で作っていると 思っている方もいますが、基本的に全部僕ひとりで作っています。出力や入稿、文字起こしのアシスタント がいるくらい。忙しい広告の仕事の合い間にコツコツ作る。それが楽しい。だから毎月の発行日が決まら ないのです。10 月号が 12 月に発行されるなんてこともしばしば。読者の方々や関係者の皆様には、 いつもご心配をお掛けしています(苦笑)。 ■「女性を中学の初恋の人のように撮り、男性を中学の同級生のように撮る」、愛ですね ―写真もご自身の撮影によるものとお聞きしました。アーティストたちの豊かな表情、ありのまま の姿を捉えているように思いますが、独特な撮影方法があるのですか? 創刊時はカメラマンさんにお願いしていましたが、すぐに自分が撮るようになり、以降、自分が出演者の 場合や、企画としてカメラマンを起用する以外は、基本的に僕が撮影しています。僕はいわゆるカメラマン ではありません。露出計を持っていないし、写真を勉強したことも技術もありません。仕事じゃないからこそ、 相手が構えず、油断してくれるんです。だから「特等席」で撮影ができます。粒子感含め「肉眼性の高い 写真」と自分で呼んでます(笑)。以前誰かが言ってくれました。「箭内さんは、女性を中学の初恋の人の ように撮り、男性を中学の同級生のように撮る」。できているかどうかはわかりませんが、うれしい言葉でした。 愛ですね。 ―これまで誌面に登場された方との、エピソードを教えてください。 ●樹木希林さん 以前より仲良くさせていただいている希林さんの今を、どうしても、聞きたいと 思いました。希林さんの提案で、東京をふたりだけで歩きながら話しました。 「他の大きな雑誌のインタビューは断ってあなたのだけを受けたのよ」と笑い ながら。国会議事堂の前、皇居、靖国神社。楽しい日でした。たくさんの大切な 話をしました。宝物のような時間でした。(2013 年 4 月号) ●TOSHI-LOW & りょうさん 撮影:箭内道彦 結婚 10 年目で、初めて結婚式を挙げたふたり。その幹事をしながら出席した 僕が撮った写真。そう、アンオフィシャルに撮影された、完全なプライベート 写真集です。とても幸せそうなりょうさん、見たこともない表情で照れる TOSHI-LOW。この号は、ふたりの記念であると同時に、その姿と「10 年目の 結婚式」という素敵な出来事を、たくさんの人に伝えることで、世界が少しでも 幸せになればいいなと思って出した号です。(2013 年 6 月号) ●成海璃子さん ず い ぶ ん 前に ラ イブの 打ち 上 げで 会った 時に 、 「わたし、風とロックに出たいんです!」と言ってきた 撮影:箭内道彦 璃子さん。「何でもやる?」「はい!」「じゃあ」という ことで、渋谷のライブハウスで、成海璃子ファースト ライブを開きました。顔を赤くしてドキドキしながら歌う 璃子さん。お客さんはひとりもいれずに。その年齢の その瞬間にしか撮ることのできないドキュメンタリー でした。数年後、「私が二十歳になる瞬間を撮って ください」と璃子さんが言ってきました。2012 年 8 月 17 日から 18 日へのカウントダウン。二十歳を迎える 瞬間を、原宿の路上で、買ってきたケーキでお祝いを した。これも素敵で家宝的なドキュメンタリーですね。 撮影:箭内道彦 (写真左から:2010 年 7 月号、2012 年 9 月号) ●THE BACK HORN バックホーンの松田晋二の実家、福島県塙町に、他のメンバーたちとともに 行きました。東北新幹線の郡山駅から在来線の水郡線に乗って。おばあちゃん、 お母さん、お父さん。たくさんの手料理で迎えてくれました。大切な思い出の 記録です。(2010 年 2 月号) 撮影:箭内道彦 ●忌野清志郎さん 僕の大好きな、大好きな人。 (写真左から:2005 年 8 月号、2007 年 5 月号、2011 年 4 月号、2009 年特別増刊号、2009 年特別増刊号 2) 撮影:平間至、佐内正史、三浦憲治、鋤田正義 ほか ■会期中、公開取材を開催。そしてそれが丸ごと、「月刊 風とロック」101 号目の特集に ―本展で、特に注目してほしいポイントは? 今回の展覧会は、「月刊 風とロック」99 号 分 の総集編的大空間です。「月刊 風とロック」は、バック ナンバーを通常外に出しません。展示作品を通じて、「バカだなあ。でも楽しそうだなあ。この人わけ わかんないなあ(笑)。自分も好きな人や好きなものを大切にして暮らさなきゃ」。そんな風に感じながら 楽しんで頂きたいです。あと、企画制作をした伊藤総研のディレクションと、トラフ建築設計事務所が手掛ける 斬新な会場構成にもご注目ください。会期中には、ほぼ毎日お客様の前で公開取材をする「〈生〉風と ロック」を開催します。これまで、ミュージシャン、女優、俳優、お笑い芸人など、様々な方々にご登場頂き、 ノーカットインタビューで作ってきた「月刊 風とロック」の取材の様子を、“生”でみなさんに見て頂きます。 そしてそれが丸ごと、101 号目の特集になります。すごいゲストが続々来ますよ。ご期待ください。 ■表参道は地元。世界で一番好きな道。毎日この街でクリエイションを重ねます ―ライフワークの集大成を披露する場に、“表参道”を選んだ理由。何かありますか? 表参道は、地元です。故郷である福島とともに。僕の事務所があります。僕の仕事場があります。僕を 育ててくれた場所です。欅の並ぶ表参道の通りは、世界で一番好きな道。以前、表参道イルミネーション のプロデュースをした時に、斉藤和義さんに「表参道」という歌を作ってもらったほどです。若い人がいる。 大人もいる。かわいくなりたい。カッコよくなりたい。おしゃれになりたい。たくさんの純粋な志が毎日、 日本中から、世界中から、集まって来る素晴らしい場所です。 窓の開かない高層ビルで、僕はものを作れません。風を感じながら、表参道を歩きながら、街を行き交う、 広告を届ける相手のその顔を見ながら、「ああ、この人に何を見せたら喜んでくれるだろう?幸せ に なるんだろう?」そんな風に考えながら、毎日この街でクリエイションを重ねます。 だから表参道ヒルズという会場は、まさに“地元開催”。僕にとっては、東京オリンピックみたいなもの。 大好きな人たちを載せた風とロックを、大好きなこの街で、たくさんの人たちに見て頂けることは、この上 ない幸福です。 ―新たに挑戦してみたいことは? 今後の活動の予定もお聞かせ下さい。 「月刊 風とロック」創刊 100 号関連では、いくつもの企画が進行中です。歌が生まれたり、ライブが 行われたり、写真集が出たり・・・。ワクワクするアイデア達が実現に向けて動き出していて、発表できる タイミングが待ち遠しいです。今年は、僕自身 50 歳になる年でもあります。アンチ・アニバーサリーで 生きてきたのですが(笑)、50 歳は「なりたかった年齢」。楽しみな年になると思います。 ただし、基本的には今日、目の前で起きたことや課題に反応をしていくことが僕の仕事だと思っている ので、それ以上先のことは考えていません。あ、でも、そんな自分が珍しくやってみたいと思ったことが ありました。絵本を作ること。この先 10 年くらいのうちに。いや、もっと早くかな。どうしても伝えたい メッセージがあるのです。でもまだ自分には、その力がありません。がんばらなきゃ。 <開催概要> タ イ ト ル : 箭内道彦 月刊 風とロック展 ~愛と伝説のフリーペーパー、その神髄~ 期 間 : 4 月 25 日(金)~5 月 6 日(火・休) 時 間 : 11:00~21:00 ※4 月 27 日(日)は~20:00、最終日~18:00 場 所 : 表参道ヒルズ 本館 B3F スペース オー 入 場 料 : 無料 問 合 せ : 03-3497-0310(総合インフォメーション) 主 催 : 風とロック、森ビル株式会社(表参道ヒルズ) 企 画 制 作 : 伊藤総研 会 場 構 成 : トラフ建築設計事務所 箭内道彦 プロフィール クリエイティブディレクター 1964年生まれ。福島県郡山市出身。東京藝術大学美術学部デザイン科卒。博報堂を経て、2003年「風とロック」 設立。主な仕事に、タワーレコード「NO MUSIC,NO LIFE.」キャンペーン、リクルート ゼクシィ「Get Old with Me」 「芸人30人、本気のプロポーズ」、サントリー「ほろよい」、グリコ「ビスコ」など。LIVE福島ドキュメンタリー映画 「あの日~福島は生きている~」発起人。「月刊 風とロック」(定価0円)発行人。風とロック LIVE福島 CARAVAN 日本実行委員長、2011年NHK紅白歌合戦に出場した猪苗代湖ズのギタリストでもある。ミュージシャンとともに 福島の59市町村を毎月一カ所ずつ訪ねていく「風とロックCARAVAN福島」で県内を巡回中。秋には恒例の イベント「風とロック芋煮会」を福島で開催予定。 [風とロック 公式HP] http://www.kazetorock.co.jp/ [風とロック ブログ]REALTIME.REALISE. http://blog.magabon.jp/kazetorock/ <表参道ヒルズ 施設データ> 【TEL】 03‐3497‐0310(総合インフォメーション) 【ADDRESS】 〒150‐0001 東京都渋谷区神宮前 4-12-10 【HP】 www.omotesandohills.com 【facebook】 http://www.facebook.com/omotesandohills 【twitter】 @omohillfukukan ■営業時間 ショッピング・サービス レストラン カフェ 11:00~21:00 日曜~20:00 11:00~23:30(L.O.22:30) 日曜~22:30(L.O.21:30) 11:00~22:30(L.O.21:30) 日曜~21:30(L.O.20:30) ※一部営業時間が異なる店舗もございます。 ※日曜日が祝日、休日の前日の場合、営業時間は通常と同じになります。 ※連休最終日の祝・祭日の営業時間は日曜日と同じになります。 ■休館日 無休(年 3 日休館日あり) ■アクセス 東京メトロ銀座線、千代田線、半蔵門線「表参道駅」A2 出口より徒歩 2 分 東京メトロ千代田線、副都心線「明治神宮前〈原宿〉駅」5 出口より徒歩 3 分 JR山手線「原宿駅」表参道口より徒歩 7 分 内容に関してのお問合せ、箭内道彦氏の顔写真または作品画像をご入用の際には、下記までご連絡下さい。 このインタビュー記事は、本文をご自由にご利用下さい。 箭内道彦氏、及び、本展をご取材頂ける際には、下記までお問合せ下さい。 本件に関する報道関係の方のお問合せ先 表参道ヒルズPR事務局:小村・木暮 TEL 03-4574-6250 FAX 03-3265-5058 森ビル株式会社 表参道ヒルズ運営室 プロモーションチーム:梅木 TEL 03-3497-0292 FAX 03-3497-0318
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