乳牛のサラ(SARA)って知ってる?!

四変部会から
四変の予防について考える2 乳牛のサラ(SARA)って知ってる? !
を妨げるようなマイナス要因 す。このことをルーメンの恒 少します。
ヒトでは「産後、冷たい水
に触れるのは良くない」とい を取り除くように管理すべき 常性といい、この機能を維持 図1はルーメン内 とVF
するためにはとくにルーメン Aの関係を示した図です。繊
う言い伝えがあります。昔は なのです。
維の割合が減り、デンプンの
の安定が重要です。
現 在 の よ う な 白 物 家 電 が な さて、今回は産後のルーメ
く、洗濯は川でゴシゴシ、お ンの活動に障害をもたらすと まず、基本的なルーメン発 割 合 が 増 え て く る と
前
風呂の準備も水汲みから、料 さ れ る 亜 急 性 ル ー メ ン ア シ 酵メカニズムは、穀類や粗飼 後から繊維分解細菌の活動が
pH
pH
6.2
理 も 食 材 を 井 戸 水 で 洗 う な ド ー シ ス(
前後では完全
SARA;
subacute料を食べるとルーメン内の発 低 下 し、
ど、家事全般、水仕事は重労
) に つ い て 酵 量 が 増 加 し、 酢 酸、 酪 酸、 に活動が停止します。すなわ
ruminal acidosis
プロピオン酸と呼ばれる揮発 ち、ルーメンアシドーシスと
働だったため、産後に無理を 取り上げます。
pH
ドーシスとは、ルーメン(第 ん産生されて、ルーメン内の 食滞の原因になるなど、乳牛
は酸性に傾きます。しかし、 の健康維持にとって悪影響が
一方、乳牛の産後はどうで 一胃)内において乳酸、ある
しょうか? たとえば、寝わ い は 揮 発 性 脂 肪 酸( V F A ) このVFAはルーメン壁から あるとされています。泌乳初
らも乏しく寝起きのしづらい の異常な蓄積のためにルーメ どんどん吸収されていくため 期における生産性保持と健康
ていたそうです。
するな、という意味で言われ ご存知の通り、ルーメンアシ 性脂肪酸(VFA)がどんど いう症状で、これが分娩後の
pH
5.5
(ペーハー・水素イオン にルーメン内のVFA濃度は 維持とのバランスが難しいの
が上昇して中性の はこのためです。
体 調 に 関 係 な く 完 全 に 搾 り 分からなかった亜急性ルーメ 唾液は1日に
~
Lもルー
200
を 中 性 に 安 定 化 さ せ ま す。
ただし、繊維の摂取が多いと
吸 収 し な け れ ば な ら な い の るためにはルーメンの環境が 量が多いとプロピオン酸や酪
唾 液 分 泌 量 は 増 加 し ま す が、
産のためにルーメンをフル回
ルーメン内には多数の微生
転してより多くの栄養を消化 物が存在し、それらが活動す デンプンを多く含む穀類摂取
な高能力牛ほど、産後は乳生 やかなものを言います)
かもしれません。現在のよう 急性に準ずるもので変化が緩
強いられていることがあるの 紹 介 し ま す。( 亜 急 性 と は、 酸などの緩衝物質がルーメン
乳牛はしばしば過酷な仕事を ずつ明らかにされてきたので 含まれる大量の重炭酸、リン
きってしまう…など、産後の ンアシドーシスの実態が少し メン内に流入して、唾液中に
100
厚飼料の急激な増給、年齢や ます。近年、見た目ではよく 状態に戻ろうとします。また、
水設備、馴らし給与不足、濃 濃度)が低下した状態をいい 低下し、
コンクリート床、不十分な給 ン
pH
pH
で、ルーメンなど胃腸の活動 常に一定であることが重要で 酸が増加し、唾液分泌量は減
図1
pH
pH
5
かけはし 216
図2はルーメン内 の変化
を連続して示した図です。分
SARAの何が問題である
かというと、一つはルーメン
の朝6時半までの
を測定したと
されることです。ご存知の通
してルーメン
ころ、繊維分解細菌の活動が
り、エンドトキシンは大腸菌
pH5.6 以下の時間(分 / 日)
59.6
64.6
37.7
5.7
2.6
写真
原因物質です。エンドトキシ ランダの獣医師が生産者や学
ンは血中に入り、蹄の毛細血 生実習向けに作った本から引
管を破壊し出血して脆弱な蹄 用しました。この写真のウシ
角質を作り、乳牛の主要なト のように、必要があるときに
ラブルの一つである蹄病をも はこういった実践も有効なの
たらすとされます。さらにエ かもしれません。現場でもこ
ンドトキシンは乳房や生殖器 のように産後のウシの回復を
ときどき見かけますが、とて
にも影響することが知られて 大事にするような取り組みを
います。
SARAは、穀類多給へと乳 も感心してしまいます。興味
牛の飼養形態が変化した結果 のある方はこの本を是非一度
として、知らず知らずのうち ご覧下さい。
寺﨑 信広)
に乳牛の健康を阻害して疾病 ( 音別白糠家畜診療所診療課
を増加させる背景になってい
参考文献
瀬野豊彦
DAIRYMAN
J a n H u l s e n:
Cow
SIGNALS
デーリィマン社
)
2006
パン社 オールドファッショ
ンの飼養管理( 2007
)
五十嵐弘明 デーリィジャ
デーリィマン夏季臨時
2011
増刊号( 2011
)
デイリーマン社 Cow SIGNALSより
なり、ときには起立不能、そ 写 真 は『 Cow SIGNALS
』(
して死亡にいたることもある ( デ ー リ ィ マ ン 社 ) と い う オ
性乳房炎時にも検出される毒
13.4
ていきますが、下がっては回
14.7
素で、これにより食欲がなく
21.6
繰 り 返 し て、 最 終 的 に
pH6.0 以下の時間(%)
に接近していきます。表のよ
193.3
時
以下になってい
211.6
うに分娩後第一週では、
間内に
%も占めていまし
以下は
分( 5 時 間 以 上 )
% を 占 め、
る時間が
で
分で
の低下して
た。つまり、平均値だけでは
わからなかった
312.2
pH6.0 以下の時間(分 / 日)
いる時間が、かなり長くある
こ と が 明 ら か と な り ま し た。
6.39
24
り時期では、見た目は健康な
表 フレッシュカウにおける SARA の発生状況
pH
5.5
復、さらに下がっては回復を
低下する
以下に低下し
よってエンドトキシンが産生
娩後の牛で朝6時半から翌日
3週
内での細菌が死滅することに
図2
時間連続
pH
24
pH
5.6
牛でも日常的にSARAがみ
6.35
24 時間平均 pH
pH
312 6.0
4.1
られるとされています。
6.27
pH5.6 以下の時間(%)
4.1
注:SARA; 亜急性ルーメンアシドーシス
出典:Gary Oetzal 1999.
たのです。
かけはし 216
6
pH
pH
6.2
pH
2週
1週
分娩後週数
21.6
59
このように分娩後の立ち上が
四変部会から