社会保険紀南病院 麻酔科 部長 中川 雅史 先生 初期研修医対象 Medical Emergency Team (MET)トレーニングコースの紹介 社会保険紀南病院麻酔科部長 中川雅史先生には、2008 年 8 月 23・24 日の二日間、テルモメディカルプラネッ クスで開催された 初期研修医対象 Medical Emergency Team(MET)トレーニングコースの内容をご紹介いただきま した。 院内の急変対応に関しては、各医療施設内外で盛んにプロバイダーコースが開催され、医師や看護師をはじめと する多くの医療従事者がトレーニングを受けていますが、実際の急変場面においては、互いの能力や背景を知らない 即席の医療チームでは十分に機能しきれていないというのが現状です。そのような状況を改善させるためのトレーニング コースとして、今回は特に初期研修医を対象として、MET が開催されました。 コースでは高性能シミュレータ SimMan®が使用され、その機能を活かしたシナリオトレーニングとディブリーフィングを 3 セット行いました。使用されるシナリオは「救急外来での診察中に患者が急性増悪に陥る」というストーリーで、3 セット とも同一のシナリオを使用しました。また、各セットの間にコースの核ともなるべき講義が入り、MET の概念、患者急変 の前兆となる徴候の確認、MET が行う CPR 時の 8 つの役割分担と「Stay&Stabilize」の考え方などが受講者に伝え られました。受講者にとっては次のセットで実践すべき課題とその根拠がより明確になることで、回を追うごとに医療チー ムとしての動きが円滑化し、処置の手技ともに改善していくことが実感でき、受講者・インストラクターの双方が達成感 を得られる結果となりました。米国からの報告では、コースの中で蘇生に関わるタスクごとのスコアリングと死亡率(シミュ レーションにおけるシミュレータの死亡率)のデータ取りを行ったところ、回数ごとにタスク遂行率が上昇し、かつ死亡率が 低下するという好成績を収めたという例があり、このコース展開は受講者のモチベーションの向上にも大きく寄与してい ることが示唆されています。 中川先生によれば、今後、プログラムの更なる充実を目指した見直し等を行うことが課題、とのこと。発表後の質 疑応答の中では、看護師など医師以外の医療職種との共同トレーニングの可能性や、院内全体で MET システムへ の啓蒙や理解を深めていくことの重要性など、活発な意見交換がみられました。
© Copyright 2024 Paperzz