ソロモンの宝~自然と知恵~ 私の活動は、教員養成学校での体育指導で

ソロモンの宝~自然と知恵~
私の活動は、教員養成学校での体育指導である。同僚となった 40 代の男性教員に学
校の施設、備品を紹介してもらうと、なんとソフトボールの道具がある。私の最も好
きなスポーツがソフトボールである。ソロモンに来てから一度もプレーをしている姿
を見たことがなかったが、1999 年の民族紛争が起こるまでは、中高等学校やリーグ
戦があるくらい盛んに行われていたらしい。
すっかり気分が高揚した私は、同僚にぜひ体育の授業で教えさせてほしいとお願い
した。そして、同僚は2つ返事で了解してくれた。
ソフトボールの指導が始まった。日本の学校では、グローブの持ち方、ボールの投
げ方、バットの振り方、1 から全部教えないといけないが、ここでは違った。
肩が恐ろしく良かったのである。
「すごい」「すごい」と感激していると、学生たちは「マンゴーの実を取るために
石を投げてるからね。」とか「飛ぶ鳥を落とすために石を投げてるからね。」と笑いな
がら教えてくれた。
また、バッティングもみんな自然にバットが振れる。ボールに当たる。また、感動
である。すると今度は、
「ブッシュナイフ振ってるからと」また豪快に笑ってくれた。
子どもの頃からの習慣がそのままソフトボールの動作につながってた。
ソフトボールの練習を通して、私は、彼らの自然と暮らす文化をまざまざと感じさ
せられた。そして、どこでも生きていけるたくましさに感動した。
その一方でルールを理解するのは、とても難しかった。そこで、やはり理論より実
践ということで、同じように活動する隊員、JICA 事務所の所長、大使館職員、さら
には、現地で結婚し暮らしている日本人など、多くの日本人にお願いし、学生との交
流試合を企画した。
試合に向けての準備をする中で壁にぶち当たった。ソフトボールのグランドを作る
ための石灰がないのである。さて、どうしたものか。配属先のグランドの横には、サ
ッカー場があるので、まずサッカー場に言って聞いてみた。ペンキを使ってラインを
引いていることがわかったが、ペンキ代が高額過ぎて出せない。
しかし、少しでも本物に近いものを味あわせたい。
アイデアが浮かばないまま何日か経った頃、同僚に相談してみた。
すると、日本人の私では、到底思い浮かばないアイデアが返ってきたのである。
「砂浜の白い砂を使えば良い!!」お金もかからない、グランドの芝にも影響しな
い。本当に素晴らしいと思った。何でもっと、同僚に早く相談しなかったのか、後悔
した。
そして、大会当日、同僚と学生と白砂によるラインを引いて、日本人を迎えた。参
加してくれた日本人もみんな驚いていた。なんだか、ソロモン人と一緒に築いたグラ
ンドが誇らしかった。
このソフトボールの練習、試合を通じて、ソロモンの良さを実感した。そして、私
がもっている知識をソロモンの人のために使うには、ソロモン人の知恵、知識が必要
なことを実感した。今でも、同僚に抱いた尊敬と感動は、忘れられない。